堕ちた神と新たな神
2年後…
各勢力は殆ど動きを見せず、時だけが過ぎて行った。
テトラガーデン ルイの屋敷
いよいよルークの神化の準備が整い、マモンの宝物庫内で最終確認をしていた。
「ルークその新しい身体を見て見よ」
目の前の神化寸前の自分の身体を見ながら不安を漏らす。
「コレに移るんだよな?」
「安心せい!お主の魂なら使い熟す事が可能じゃ」
「まあ今更か…ホムンクルスから魔王そしてヒューマノイド最後は神か」
ガチャ… ライラが宝物庫内の研究室に入って来た。
「ん?ライラ?」
「ワシが呼んだんじゃ」
「ルークいよいよだね、私が傍に居るからね!」
「少し大袈裟じゃないか?」
ルークはマモンを見る。
「お主が暴走した時、誰かが抑える必要がある…」
「そうか…ヒューマノイドじゃないから緊急停止が出来ないのか」
ルークは壁のカプセルに入る。
「次に目が覚めたら神じゃな、取り敢えずお主は何がしたい?」
「女神を殺す…ジークの仇だ」
「ホッホッホッ…恐ろしいのう、では始めるぞ目覚めるのは明日の夜じゃ」
ルークはゆっくりと眠りに着いた。
翌日 早朝 大聖堂 地下
女神が思考停止したナンバーズ達の前に立っている。
(長かった…まさか2年も掛かるとは…)
女神は手を翳すとナンバーズ達の覚醒を促す。
「目覚めよ!」
暗く何も無いこの空間で耐え切れず思考停止で凌いでいた者達が叩き起される。
「ん…フローラ様??」
ベータは普通に目を覚ましたが…
「ぐおおおおおおおお!!!」
「アアアアアア!!」
他のナンバーズ達は次々と異形の姿に変わり果てて行く。
「なっ!?皆どうしたんだ!」
「本当に何時までも中途半端…覚醒すら出来ないとは、仕方が無い足りない因子を探すかのぅ」
「ギイイイイイ!!」
突然ナンバーズ達が呻き声を上げ覚醒が途中で終わった。
(七罪に成らない??因子が足りない?そんな筈は…まさか覚醒者が他に居るのか?)
本来なら七罪として生まれ変わる予定だったが、既にディアボロスが七罪の力を手に入れている。
女神の目の前には醜いモンスターが5体並んでいた…
「何だコレは…フローラ様?貴方がやったのか?」
「眠れ」
ゴトンッ ベータはその場に崩れ落ちた。
(色欲の因子…近くにあるといいが)
「あぁ忌々しい…何も上手く行かぬ…」
同日 お昼過ぎ
地下研究所 マモンの屋敷
「母さん行ってくるね〜」
「もう行くのか?」
「だって早く姉さんに会いたいし…」
エリザと娘のカーミラが玄関で話をしていた。
「モリガンに偶には帰ってこいって言っといて!あの子、放っといたら全然顔を見せない誰に似たのやら」
「絶対父さんだね!もう2年も帰ってこないし」
「はぁ…マーちゃんに会いたいなぁ〜」
エリザは大きくため息をすると…
「姉さんもう出発するの?」
サタナエルが顔を出す。
「うん、じゃあ行ってきます!」
カーミラは元気よく駆け出して行った。
「さてと…エル?晩御飯何が良い〜?」
「何でもいいよ」
「それが1番困るんだよな〜」
エリザはキッチンに向かい食材を確認する。
(姉さんは修行で半年は帰って来ない…やった!やったぞ!等々母さんと2人きりになれた!)
サタナエルの顔が恍惚の笑みを浮かべる。
(姉さんには僕の魅了は効かなかった…でも母さんなら…僕の初めての相手に相応しい!)
サタナエルは色欲の力が強まり夜魔として覚醒していた。
サタナエルはキッチンのエリザを呼ぶ。
「母さんこっちに来て」
「ん?どうしたエル?」
サタナエルの目が怪しく光る。
「あっ…はっ…」
「やった!掛かった!」
エリザは目がトロンと瞼が落ちフラフラしている。
(母さん、その持て余した身体僕が慰めてあげるよ…そして僕の子を産ませてあげる!)
サタナエルがエリザに触れようとしたその時!
「ガッ…なっ…」
エリザの左手はサタナエルの首を掴み、高く持ち上げる。
「ぐっ…ぁぁ…があざん…」
ジタバタと藻掻くと更にクビが絞め上がる。
「ゔっ…」
白目を剥き泡を吐き失神すると…エリザの手が緩んだ。
ドサッ!! その場に無様に倒れ込む。
「ん??オレは何を?」
マモンはコレを予測してエリザの無意識下に暗示を掛けていた、魅了が掛けられたら「目の前の相手を気絶させよ」と。
足元で泡を吹き倒れるサタナエルを見て慌てふためく。
「エル!?大丈夫か!しっかりしろ!」
サタナエルを抱き抱えカイの元に全力で走る。
研究室
「カイ!居るか!?」
息を切らしエリザが飛び込んで来た。
「エリザ?」
抱えているサタナエルの様子を見て察する。
(そう夜魔として目覚めたのね…可哀想に)
「助けてくれ!エルの様子がおかしいんだ!」
「ベッドに寝かせて、検査するわ」
カイはマモンとの約束を実行に移す…
「取り敢えず鎮静剤を打つわ」
勿論鎮静剤ではない…夜魔として覚醒すれば手当り次第に女を襲う、魔王の種を撒く訳にはいかない。
「すぅ…すぅ」
「落ち着いて来たな…良かった〜」
カイは複雑な顔をしていた。
(あぁ勿体無い…ルークの血を引いてるのに…殺す前に食べたい…)
「しばらく様子を見ましょう」
「此処に居てもいいか?」
「ええ」
それから数時間が経ちサタナエルはゆっくりと衰弱して死にかけていた。
「おい!何とかならないのか!?」
「落ち着いて」
エリザは慌てる様子の無いカイを不審に思い始めていた。
(何でそんなに冷静何だ!?)
「これが落ち着いてられるか!!」
「この子は悪魔と天使の子、その危ういバランスが崩れたのかも…」
最もらしい事を言って誤魔化す。
「エルしっかりしろ!」
(血が繋がっていないとはいえ、やっぱり母なのね…やはり殺さなくても…)
カイの気が変わろうとしかけたと同時に…
「ほう?その小僧夜魔か?」
突然背後から声が聞こえた。2人が振り向く間もなく壁に叩きつけられた。
「ぐっ」
「ガハッ」
「これは好都合じゃ!色欲を感じて来て見れば夜魔ではないか!」
エリザが立ち上がり構える。
「てめぇ…オレの子に近寄るな!」
「フローラ何を?」
「ふふ…そなたの相手は隣じゃ」
女神はカイに植え付けた嫉妬を解放し覚醒を促した。
「がっ…うぅ…アアアアアア!!」
「カイ!?」
カイは青い身体に触手に包まれた異形に変わり果てた。
「シャアアア!!」
「くそっ!イグニッション!!」
狭い狭い部屋で2人の戦いが始まった…
「ほう…これは…ルークの血を引いておるのか?死にかけじゃが少しは役に立つのぅ」
女神はサタナエルから色欲の因子を抜くと後ろを振り向く。
「終わった様じゃな」
「フシュ〜」
カイがエリザを倒し女神の前に跪く。
「話せないのは不便よな…言葉を話す事を許す」
「感謝します、この者始末しますか?」
「駄目じゃ騒ぎが大きくなる放っておけ、それよりこの小僧を連れて先に行け…場所は東の隠しアジトじゃ」
「畏まりました」
気絶したエリザを他所にカイはサタナエルを包み東に飛ぶ。
大聖堂 地下
「待たせたのう」
「アンタは何がやりたいんだ!」
ベータが理解出来ない女神の行動に叫ぶ。
「答えると思うのか?ホレお前に足りない因子じゃ」
ベータに因子を植え付ける。
「やめろ!アアアアアア!!」
「さて…お前達話す事を許す」
異形の者達が並ぶ…ベータは陰鬱な姿に、ガンマは黒い外骨格と融合しメタリックに、エータは緑色の二足歩行のカエル、ゼータは溶けたスライムの様な姿、ニューは赤く染まり鬼の様な姿に、グザイは小さく携帯可能な髑髏に変容していた。
「ご命令を」
「先ずは東の隠しアジトに向かえ、そこから北へテトラガーデンを目指す」
「直接向かわれては?」
「ケルベロスに見られておる、聖地に向かうと思わせる必要がある…邪魔をされたら面倒じゃ」
「了解しました」
ナンバーズ達が動こうとした時。
「ベータは残れ、自信をつけさせてやろう…」
「はっ」
夜になる頃、女神はブリュンヒルデを大聖堂に呼びつけた。
「女神様、私に用とは?」
「お前の力が必要になった」
パチンッ! 指を鳴らすとヒルデは放心状態に陥る。
「本来ならカリバーンが欲しかったが…フラガラッハでもコヤツなら戦えよう」
暗闇からベータが現れる。
「私は何をすれば?」
「コレをやる、壊さない程度に躾ておけ」
ベータの目の色が変わって行く…ヒルデを見つめ口からヨダレが垂れ思考が色欲に染まる。
「ぐへへへへへ!!イイオンナダ!オレノオンナダ!ウマソウ!ハヤクヤル!」
醜い手がヒルデに触れようとした時 ヒュッ!!
閃光と共にベータの腕が地に落ちた。
「ギャァァァァァア!!!ウデガ!オレノウデガ」
「ふう…危なかったわね」
ヒルデはフラガラッハを抜きベータの腕を切り落とした。
「何故じゃ!?何故妾の支配が解けた!?」
「さあ?そんなの知らないわよ」
ダダダ… 背後からシルファとラミーが駆け付ける。
「間に合ったっすね!」
「良かった呪いも解けてる」
女神がシルファを睨みつける。
「アルファ!何をした!!」
「ルークからの指輪、それにはオルスの浄化の炎が少しだけ宿ってる」
「なるほど…ゆっくりバレない様に私の呪いを解いていたのね」
3人が剣を構える。
「ルーク様流石っす!」
「そうね、会ったらご褒美あげないとね」
女神は爪を噛む…
「忌々しい…何故そこ迄妾を比定する…」
「お互い様でしょ?」
「黙れ!!」
女神は一瞬だけ辺りを閃光に包む。今の彼女は以前と違い戦闘力は無い、力の殆どをナンバーズに与えていた。
「こんな子供騙しで!」
視界が戻ったが女神もベータもそこには居ない…神隠しを使い姿を完全に消す。
「サーチ」
シルファが辺りを調べるが何も見つからない。
「消えた…」
「油断しないで!」
3人は戦闘態勢を解けない、まだそこに居るのか既に逃げたのか判断が出来ない。
「2人とも引くわよ、屋敷の子供達を守ります」
「はい!」
東のアジト
地面に隠した扉を開きカイは中で後続を待っていた。
(サタナエルは奥の部屋に)
部屋にサタナエルを投げ入れ暫くすると。
カンカンカン! 金属音と共にガンマが降りてきた。
「カイ、フローラ様が来るまで待機だ、俺はニューと外に居る」
「了解」
入れ替わる様にエータとゼータが降りてきた。
「あら?いい臭い美味しそうな臭いだわ」
「ホントだ〜ルークに似た匂いだ〜」
カイは奥を指差す。
「その部屋に餌が居るわよ」
「フローラ様もまだだし食べちゃおう〜」
「良い考えですわ!カイ貴方もご一緒に!」
カイは少し考えると…
(どうせ死ぬんだから一思いに食べても一緒ね)
「いいわ3人で食べましょう」
サタナエルの居る部屋に3人が入る。
アジトの外
ガンマとニューは空を見ている。
「なぁ何か見えんのか?」
「…」
造り替えられたナンバーズ達は自分の今の姿に違和感を覚えない、造り替えられた認識も無い。
ボーッと眺めていると開いたアジトから叫び声が響き渡る。
「何だ?下で何かやってんのか?うるせえなぁ…」
ガンマは肩に載せていたグザイをアジトに投げ入れる。
「グザイ!鬱陶しいから彼奴らの部屋を隔離してくれ」
グザイは奥の部屋に飛びながら入り、部屋のベッドに張り付くと部屋を遮断で包んだ。
アジト 奥の部屋
サタナエルは生きたまま3人に喰われていた…
「痛い痛い痛い痛い痛い!!やめて!助けて!もう許してえぇ!」
「ウマいウマい…ウマウマウマ…」
腕や脚を取り合い、体に噛み付く。
ピッ! ナンバーズ3名を傍に確認しました。メギド起動します。
(何これ??こんなの知らない)
カイの頭の中でシステム音声が流れた。
(メギド?)
知らない単語を調べようとした瞬間。閃光に包まれ…次の瞬間とてつもない爆発がカイの体内から炸裂する。
アジト 外
「熱源?真下!?ニュー飛べ離れるぞ!!」
「!?」
外の2人が空に飛び上がったと同時に地面が盛り上がり、半径50m程が木っ端微塵に吹き飛んだ。
「ぐああああ!?」
大小の岩が降り注ぐ。
「何が起きやがった!?おい!返事をしろ!」
アジトに居た4人からは反応が無い。爆心地に居た以上文字通り消し飛んでいた。
「何だよ…何なんだよ!何が起きたんだ!」
悲観している所に女神が追い付いた。
「ガンマ説明せよ」
「わかりません…」
本当にわからない事は説明出来ない。
「そうか、直ぐに移動じゃ…騎士団や悪魔達が嗅ぎつける」
女神と残りの3人は遠くのアジトに移る為に移動を開始した。
王都 地下研究所
ピッ! メギド発動確認。カイの覚醒を開始。
「ん?あっ上手く行ったのね」
作業用ヒューマノイドの1体がカイとして覚醒した。
「これで私もただの量産型ね」
カイは女神に嫉妬を植え付けられる前に、既に本体の記憶と人格は隠していた。
嫉妬を植え付けたのは本来の体に入れた分体、それを更に戦術兵器メギドへと改造。ナンバーズ4体以上が揃った時に起動する。
(王都には被害が無い?大聖堂毎吹き飛ばす予定が狂ったわね)
カイは研究室に戻るとその荒れように驚く。
(何?此処で戦闘したの?)
部屋の片隅にエリザを見つけた。
「エリザ!」
(まだ生きてる!早く手当てを)
エリザを寝かせると回復魔石と機材を動かす。
「これで良し…後は」
マモン宛に連絡を送る。
「此方は成功、女神は行方不明…と」
宝物庫内 マモンの研究室
「どうやら上手く行った様じゃな…此方も成功じゃ!」
遂にルークの神化が終わった。
長きに渡る神の不在が終わりを迎える…世界に新たな神が降臨しようとしていた。




