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可愛い女の子のうなじはキレイ

「だいたい何も言わずに認定試合やってるのがいけないんですけど」

「俺の裁量でいいと言われている」

「ば・あ・い・に・よって、です!」


 けっこうな握力で掴まれたのか、小さな顔の側面に赤い斑点を五つ付けたまま喰ってかかる女性を見ていると、張り詰めていた神経も空気もいつの間にか霧散していた。それはセントロさんも同じようである。


「しかもベン様まで出しちゃって」「変な名で呼ぶな」

「たかが認定試合で出すなんて、相手がかわいそうですよ」


 裏表の無さそうな彼女の言葉に悪気はない、と思いたい。

 しかしセントロさんは何も言い返さなかった。その表情から見るに間違いなくメンドくさそうだった。

 そうこうしている内に女性がこちらを向いた。


「あの、あなたが認定試合されていた方ですか?」


 そうです、ととりあえず頷く。まだ若い。若干幼いとさえ言える。十代か二十代前半だろう。


「申し訳ありません! 今回はセントロが急に決めてしまいましたが、本来であれば日程を決めた上で数名の組合員の監視下で認定試合は行うものでして」


 深く息を吸い込んだ後、振りかぶるように下ろされた頭に俺は戸惑う。うなじがキレイだ。いやそうではなく。


「え、そうなんですか?」

「そうなのです」


 言いつつ女性はセントロさんを睨んだ。が、逆に睨み返されると喉奥から変な(うめ)き声を出した。


「先ほども言ったが、俺はリルフィールドから『場合によっては』個人で認定試合をしていいと言われている。今回はそれに則っただけだ。何も問題は無い」


 手順を少し省略しただけだ。とそう(うそぶ)いたセントロさんに、女性は恨めしそうな顔を向ける。

 しかし俺としてはこの注目を集める状況から早く逃げ出したい気持ちであった。なんたって異世界一日目なのだ。色々あり過ぎて頭がフットーしちゃうかもしれない。さっさと開拓者として登録して説明を受けたら宿に直行したい。


 まだ喧々諤々と会話している2人に目を向ける。と、そこでセントロさんと目が合った。彼は少しバツの悪そうな顔をした後、ため息をついてキャンキャン可愛く吠える女性に手の平を見せた。


「分かった。ミリアのいう事も正しい」

「でしょう! ―えぇ!?」

「権利は与えられているとは言え、一言報告すればよかった。そこは詫びよう。……なんだその顔は」

「い、いえ? おおぅ、わかればいいんですよ! こちらこそすみませんでした!」


 ミリアと呼ばれた女性が突然の方針転換にあたふたしている間に、セントロさんが機先を制する。


「うむ。でだ、報告は省いてしまったが、認定試合を行う権利自体は元々俺にはある」

「―それは、そうですね」

「であれば、この認定試合の結果は認めてくれるか?」


 ミリアはうーんと唸っていたが、「一応確認は取りますが、おそらく認められると思います」と肯定した。

 それを聞いたセントロさんは「よし」と一言頷くと、俺ではなくまずリドルくんの方に視線をやる。


「リドル、まずは仲間全員連れて受付へ行け。訓練担当者は俺の名前を入れていい。それほど相手はできんがな」

「おお、久しぶりに仕事熱心ですね! いいことです」


 無邪気にサムズアップを向けたミリアに「やかましい」と一言呟いたが、彼女は無視してリドルに話かけた。


「ただ、本人が今言ったようにセントロさんはけっこう忙しいんです。なので彼が空いてなかったら他の人に訓練をお願いしてください。……あの人が訓練担当してくれるのはけっこう珍しいんですよ。期待されてると思うので、頑張ってください!」

「―は、はい!」


 リドルくんは混乱したような顔から一転、喜びを押し殺したような顔で、ミリアに指差された出口へ足早に向かっていった。


「……さて」「え?」


 微笑ましそうな顔をしていたミリアがセントロさんの声でぱっと振り返った。


「オズよ」「はい」

「あ、オズさんて言うんですねー。服どうしたんですかそれ」


 ナチュラルに失礼を含んだ言葉を投げかけるミリアは無視する。彼女もどうやら真面目そうな話だぞ、と気づいたようで、一歩引き下がった。


「認定試合の結果を伝える。ミリア」

「へ? はい!」

「この男をクラス2で登録しておけ」


 一瞬、何をいってるのかわからないというように首を傾げたミリアは、先ほどの言葉が脳まで到達した瞬間くりくりした(まなこ)をいっぱいに広げた。ついでに胸いっぱいに息を吸い込んだ。


「えええええええー!」


 その声は闘技場に反響し、少しずつ興味が逸れていった周囲の耳目をさらに集めることになって、俺とセントロさんは顔をしかめた。

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