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第32話

「ヤミホムラの気配…無いわ」

 レイチェルがそう判断した。

 連携による攻撃が決まって数分、未だ中心部は土煙と高熱の為目視が出来ないが、そこにヤミホムラの力は感じられなかった。

「終わった…の?」

 ただ見るだけだったユメカだが…今度こそ、という手応えは確かに感じていた。

 普通の人間なら生きているはずがない、あのヤミホムラであったとしてもここまでの攻撃をうけて無事でいるわけはない。

「うん、僕の『侵』の力でもヤミホムラは検知できないね」

「ヤミホムラさま…ごめんなさい」

 聖竜の背中にいるルーシアが両手を合わせ祈った。

 大恩あるホムラに対して、申し訳ない想いがあるのだろう。

「結局…どうしてヤミちゃんたちはここまで戦ったんだろう…深淵ってそんなに大切なものなのかな?」

 ユメカはセイガにだけ聞こえるように声を送った。

「分からない…でも彼女たちにとってここで戦うことは意味があったのだと思う…そうじゃないと…とても悲しい」

 セイガはヤミホムラがいた方をみつめた、先程までの大きな高揚感は薄れ、寂しさが募っていた。

「この力は一体…何なんだろうな」

 自分の手を見る、無から有さえ生み出す…

「…!」

 その時、セイガには見えた。

 何もない、そう気配も力も感じられないそこに…まだ深淵はあった。

『イタイ…クルシイ』

 そう、泣いていた。

『コレハ…コレイジョウハ…っ』

 何が起こるのか?

『是れ以上の力の発現は危険…最早制御不可』

「ヤミっ!」

 それはヤミの声だった。

『もう手加減出来ねえかも…これは失敗したなぁ』

「ホムラちゃん!?」

 ふたりの言っていることの意味が…少しずつ分かった。

『全力…回避、強制…排除』

『お前たち…特にセイガっ、ここから早く逃げろ!!』


 灰色の巫女が空中に再び姿を現す

『深淵ノ…チカラヲ見セテヤロウ』

 だが、そこにいたのは、もう…セイガの知っているヤミでもホムラでもない…どこまでも深い恐怖だった。


 虚空に、爆炎が渦巻き、大地は闇色に染まった。

 セイガは硬直した、動かないといけないのに…

 美しい…けれどそれは残酷な存在

『アアアアアアアアアアアアア』

 歌うように、叫ぶような声と共に絶望がセイガを襲った。

「セイガっ!!」

「おおおお!」

 瞬時にセイガは飛び退き、逃げ続ける。

 一歩遅れて空間が壊れていく。

 少しでも触れたら…最期だろう

「くそっ」

 長物である狼牙は逃げるには手に余るので一度鞘に戻しアンファングを握った。

 闇が貫くように大地を薙ぎ払う、それをすんでの所で躱す。

「大地よ、盾と成れ!」

 キナさんの声と共に地面が壁のように盛り上がり、セイガを上空へ運ぶ、それを足場にヤミホムラから距離を取る。

 しかし直後に土の壁は燃やされ崩壊する。

「はぁっはあっ…」

 セイガの息が荒くなる…このまま逃げ続けるのは厳しい。

「頑張れ、もっと速く…行くんじゃ」

 横に飛翔しながら並んだ上野下野が回復魔法をセイガにかける。

 再び黒の刃が両者の間を切り裂き、店主はセイガから引き剝がされた。

「こっちだセイガっ」

 セイガの斜め前、上空に翡翠色の聖竜が滞空していた。

 導かれるまま走る。

 それを追うヤミホムラだが

「お前の相手は我だ…<暴 民 熱 束(ライオット・ビーム)>」

 黄金色の爆熱に押し止められた。

 だがそれも一瞬のことで、平然と現れたヤミホムラは両手を振り下ろす…闇の風が前方全てを飲み込む。

『消エロ』

「聖竜さまっ!」

 自前のシールドを張りながらも少なからずダメージを受けた聖竜が上空へと逃げる、セイガの方は何とか風の範囲からは外れて逃げおおせていた。

「糞がっ…我等は眼中にも無いか…やはり先程までは手加減していたのだな」

 珍しくエンデルクが汚い言葉を口にしていた。

「ああ、ヤミホムラはセイガ以外には牽制の攻撃しかしていなかった…だからこそ隙を作れたのだがな」

 アルザスもそれに気づいていた。

 だから先刻は無謀にも見える突撃をしたのだ。

「今は…違うってコト?」

 ユメカが恐る恐る聞いた。

「邪魔なら躊躇なく殺す、それが今のヤミホムラじゃよ…困ったのう」

「セイガ君に近付くことさえ出来ないなんて…ここままじゃ」

 地上の面々は再び集まっていた、最前線との距離はかなりある。

 そこでレイチェルが中空に大きなモニターを複数浮かばせて、最前線のセイガとヤミホムラの様子を映しとっていた。

 一同の前にセイガの苦しそうな表情が見える。

「どうにかならないかなぁ…ねぇテヌート、あんたの『真価』は?」

「無茶言わないで下さいよ瑠璃さん、僕の『世界構成力』と彼女のとでは次元が違い過ぎです」

 やれやれとテヌートがお手上げのポーズを取った。

 何もない空中に取り出した針をぷすりと刺す。

「こうやってここまで離れた場所ですらヤミホムラの勢力下ですよ、お陰で情報を抜くことくらいは出来ますけどね」

 テヌートの『侵』の力は触れたものに干渉できる…ヤミホムラの存在が大きすぎて遙か離れた場所でも触れているのと同義なのだった。

「何か使えそうな情報は無いのか?」

 エンデルクが期待していない目で隣のテヌートとヤミホムラを交互に見た。

 そんな中でもヤミホムラからセイガへの苛烈な攻撃は止まらない。

「う~~ん、今の彼女は暴走しているような状態なので有益なものは正直ないですね、そもそもあれに弱点とか無さそうですし」

「暴走…なら目を覚ましてもらったらいかがですか?」

 ぽんと手を叩きながらルーシア

「それが出来ればええんじゃがのぅ…どうやら深淵の力とやらを使うほど暴走を加速させておるようじゃから…難しいよ」

「そうですか…ざんねんです」

 しょぼんとする、近付かなければ比較的安全とはいえ、セイガを救うには手を出さずにはいられない…どうすれば…

 そしてそのセイガの限界も近い。

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