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第25話

 夢を見た

 それは起きた時には既に泡沫(ほうまつ)となる、そんな夢

 でも、断片的に

 浮かぶこともある

 蒼い…そんな記憶

 そして、そこで…笑っていた


 セイガが目を覚ました時、外はまだ雨だった。

 詳しく思い出せないが…夢の中では晴れていたような気がしたので、なんだか不思議な感じだった。

 ゆっくりと起き上がり、いつものように白と赤を基調とした戦闘用の服を着て、用意した幾つかの装備を身に着ける。

 そこにはもう、迷いはない。

 向かうのだ。

 決戦の地、マケドニアへ


 大平原に雨が降る。

 灰色に世界が塗り固められている、それはまるで時間が色褪せ停止しているようだった。

 見渡す限り、地平線が続く、そこは自生する植物もまばらで、厳しい自然の圧倒的な存在だけが続き、人間を拒絶するかにみえた。

「本当に、ここでいいのね?」

 隣の立会人であるレイチェルが聞いた。

 かなりの雨なので傘をさしている、正直なところ、この天候は決闘をするには不適なコンディションだった。

「はい、雨についてはおそらくふたりとも気にしません…俺もよく外で戦闘…おそらく戦場を駆けていたのでしょうね」  

 自然は人の事情など気に掛けない、人間がそれを利用して勝手に有利不利を作るのだ。

「それでは、アルザスを呼ぶわね」

 レイチェルが言うや、緑の魔法陣がセイガの少し前に現れた。

 そしてうっすらと形が成される、剣聖アルザスだ。

 燃えるような赤い髪に鋭く煌く赤い瞳。

 逞しい体躯に、いつもの鎧を着ている…肩から大剣を伸ばし、大地に根を張るように仁王立ちしていた。

「…」

 彼は無言だった。だが油断なく周囲に気を張っているようだ。

「準備は…いいですか?」

「はい」

「うむ」

 レイチェルが向いあう対戦者の間に入る。

「これは学園が定めた正式な決闘として扱われます、ルールは申請者セイガの案となりますが受諾者アルザス、それでいいですか?」

 レイチェルがセイガ、アルザスとその顔を窺う。

「既に確認した、それで構わない」

「分かりました、それでは改めて説明します。まず両者使う剣は一つとします…まずは申請者セイガ、ここで見せて説明してください」

 セイガの眼前に『剣』の文字が浮かぶ、右手を大きく振り上げるとそこには長き刀が白銀の刀身を見せつけ顕現した。

「これが今回の剣…種類としては日本刀だ、銘は『狼牙』…猛る狼の鋭いキバだ」

 鞘は最初から額窓(ステータス)にしまいつつ、刀を無音で降ろした。

「受諾者アルザス、同じく説明をしてください」

 アルザスは背中の鞘の機構を動かす、かちゃりと音を立て、自由になった大剣が現れた。

 真横にして、見せつける。

「絶剣アウグストゥス、両刃の剣、グレートソードだ」

 恐ろしいまでの存在感、おそらく幾度も激しい戦闘を繰り返しただろう殺気を纏っているようだ…セイガはその刃をじっと見る。

 切なくも、恐れつつも、それから

「勝敗はどちらかが敗北を認めるか、剣が破壊されるか、死亡を含め戦闘不能になるか…その何れかで決定する、それでいいですね」

 両者頷く。

「時間は無制限、中断は両者の合意、または私の判断で可能、禁止行為は自分以外の『真価(ワース)』による加勢のみ、あくまで1対1、剣対剣で決めること、それ以外は基本無制限とします」 

「はい」

 セイガは自分一人でこの剣聖と戦う…ただそれだけの話だった。

「……」

 アルザスは何度、このような死線を潜り抜けて来たのだろうか…

「開始は私が告げます、ふたりとも宜しいですか?」

 無言のまま、セイガは後ろに下がる、距離をとるため、それからレイチェル先生に危害を与えないため。

 同時にアルザスが半身になりながら大剣を振りかぶる。

 レイチェルはそれらを確認しながら充分にふたりから距離をとる、遮蔽物が殆どないので視力を絶対領域で上げておけばかなり離れても様子は確認できそうだった。

 ふたりの動きが止まる。

 土砂降りの雨音だけが続く、誰かの涙のようだ。

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