魔女の朝
この森の奥には、小さいながらも立派な屋敷がある。
そこには一人の女性が住んでいて、魔法薬やその材料を売っている。
近くにある村の人は、その屋敷と森を含め、魔女の森と呼んでいる。
窓からうっすら入る光が、眠る一人の女性の顔を照らす。
窓があるのはロの字型になった家の、内側。中庭がある方向なので、あまりカーテンを閉めるといったことがない。現在、この屋敷には彼女のみしか住んでいなのだから。
顔に当たる朝日に、朝が来たこと知る。
もぞりもぞりと布団の中で動いたあと、ぱっと起き上がる。
一度起きてしまえば、あとは長年しみついた癖で朝の支度を済ませていく。
朝食を食べ終わる頃には、朝日は完全に昇りきっている。
屋敷の表側、彼女の職場である小さな店。
その扉の前に『OPEN』という立て看板を出し、開店準備は終了。
あとは客を待ちながら、薬草の処理、保存。魔法薬の調合をするだけだ。
店の名前は特にない。
彼女一人で切り盛りしている小さな店。
近くの村だったり、この森の近くで活動する冒険者や猟師が主な客だ。
客が来ない日も少なくない。彼女はそれでも気にはしない。
元々が彼女の長い長い生の暇つぶしとでも言うべき商いだ。
村の人や冒険者は、森の奥でひっそりと暮らす女性だから魔女と呼んでいる。それが真実てあるとも知らずに。
魔女。それはこの国だけではなく、この世界にはもういない存在だ。
昔々、子供に聞かせるお伽噺のように昔の話。とっくの昔にいなくなったとされる存在。
誰に知られることもなく、一人ひっそりと森の奥に住む彼女以外には。
これはそんな魔女と、彼女に関わる人々との話し。
ゆっくりのんびり思いついたことを書きたいと思います。お手柔らかにお願いします。