倒したはずなのに、何度もやってくる
不審者を倒し、幾らか気が楽になる。
あとは交番までむかうだけ。
そのはずだった。
「なんで死んでないんだよ」
隠れたとある家の庭で、少年は頭を抱えた。
確かに銃を撃ち込んだはずだった。
普通の人間ならそれで死ぬ。
即死は免れても、治療を受けなければ命に関わるはずだ。
たとえ死にはしなくても、痛みで動きが鈍るもの。
だが、不審者は生きて目の前にあらわれた。
後ろからではない、少年の進んでいく方向の前にだ。
さすがに少年も背筋が凍った。
死んでるはずなのに生きている。
後ろにいたはずなのに、前にいる。
どうやればそんな事ができるのか分からない。
分からないから、とりあえず逃げた。
銃を使えば良かったのかもしれないが、それも今はためらわれた。
どれだけ効果があるかわからなくなったからだ。
一応、当てれば死ぬのは分かってる。
一時的に動けなくなるだけではあるが。
それでも、使いどころは大事にしたかった。
銃弾には限りがある。
無駄にはできない。
そのため、物影に隠れて移動する事にした。
無作法どころか不法侵入だが、あちこちの家の庭を横切って。
たいへん申し訳ないと思うのだが、身の安全のためにはやむをえない。
(本当にすんません)
胸の中で謝罪しながら庭の中に入り込む。
そこで気付いてしまった。
雨戸も閉めてない家の中。
そこに転がってる死体を。
(え?)
なんで、と思った。
なぜ殺されてるのか分からない。
だが、血を流して横たわってるのは、たしかに人間だ。
おそらく生きてはいない。
携帯電話を取り出す。
表札の名前と住所を確かめて警察に電話をする。
通報相手に状況を説明、死人がいる事を伝える。
それを聞いた警察は、慌ただしい声を出していく。
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