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第八話 ハーズ商会

「よし、街に着いた」


 サルトさんとザイルさんから、盛大に褒められ(?)ながらも、何とか全員無傷で街に戻ることが出来た。


「今日は助けてくださり、ありがとうございます。都合がよろしければ、今からハーズ商会本店に来ていただけませんか?」


「ああ、行けるよ」


 急ぎの用事はないので、俺は今からハーズ商会本店に行くことにした。


「分かりました。では、ついて来てください」


 サルトさんはそう言うと、俺たちをハーズ商会本店まで、案内してくれた。その間、ザイルさんがめちゃくちゃ静かだったのを見て、俺は「サルトさんの怒りのスマイルって凄いんだなぁ」と思っていた。




「ここがハーズ商会の本店か……」


 ハーズ商会の前に立った俺は、そう呟いた。ハーズ商会の本店は、三階建ての木造建築で、入り口には”ハーズ商会本店”と書かれた看板が付いていた。


「では、どうぞお入りください」


「分かった」


 俺たちはそのまま扉を開けると、中に入った。一階は、商談に来た人の待合室だった。俺とノアは、ハーズ商会会長の孫二人と一緒にいるということもあってか、視線をかなり浴びた。そして、その視線のほとんどは、何かを見極めるかのような視線だった。

 俺たちは、そんな視線を浴びながらも、そのまま階段を上がり、三階にある商会会長室に入った。


「おばあ様。ただ今戻りました」


「おばあ様。ただいま」


 サルトさんとザイルさんは、部屋の奥で椅子に座って、書類を書いている老婆にそう言った。

 老婆はその言葉で手を止めると、顔を上げた。


「一体どこに行ってたんだい!……て、その後ろにいる二人は……」


 老婆は俺とノアを見るなり立ち上がると、ゆっくりと近づいてきた。


「えっと……あ、あなたは――」



 俺は、目の前にいる老婆の顔を見て、目を見開いた。なんと、この老婆は、あの時ひったくりの被害にあった人だったからだ。


「あの時は本当にありがとう。それで、サルト、ザイル、何故この二人を連れてきたんだい?」


 老婆は俺とノアに礼を言うと、サルトさんとザイルさんにそう訊(たず)ねた。


「はい。実は……古代の森で魔物に殺されかけた私たちを助けてくださったのです。なので、お礼がしたいと思い、ここにお連れしました」


 サルトさんは、後ろめたそうな顔をしながら、そう答えた。


「そうかい……何故、危険な古代の森に行ったのか、きちんと説明してくれるかな?」


 老婆は目つきを鋭くさせると、二人のことを睨みつけた。


「はい。先日Bランクになったので、あの森の魔物でも弱い魔物なら倒せるだろうと思ったので……」


 サルトさんは俯(うつむ)きながら、少し声量を小さくさせて答えた。因(ちなみ)みにザイルさんは、サルトさんの後ろに隠れて、縮(ちぢ)こまっていた。

 俺はその様子を見て、何となく察した。恐らく、ザイルさんがこの事件の主犯で、サルトさんはそれに巻き込まれたようなものなのだろう。まだ二人と会って、あまり時間は経っていないが、サルトさんが望んで古代の森に行くような人とは思えなかった。

 祖母である老婆も、サルトさんの言葉を聞いて、何か察したような顔になった。


「そうかい……私を心配させおって……Aランクになるまでは、古代の森に入るのは禁止じゃからな」


「はい。分かりました」


「……分かりました」


 二人は、俯きながら返事をした。


「それにしても、まさか孫の命まで助けてくれるとはね。私の名前はキャサリン・ハーズ。ハーズ商会の会長をやっております。今日はは本当にありがとう」


 老婆――キャサリンさんはそう言うと、深く頭を下げた。


「いえ、たまたま見かけただけですし……」


「そういうのは関係ない。形はどうあれ、助けてもらったのだから、礼をするのは当然のこと。何か望むものはありますか? ここは商会ですので、大抵のものはご用意できますよ」


「望むもの……ですか」


 武器は最上級の品を手に入れた。服も、冒険者向きの、動きやすいものを手に入れた。マジックバッグも持っている。そうなると、今の俺が欲しいものは……


「そうですね。お金でいいですかね? 今は特に欲しいものはないので……」


 俺は、頭を掻(か)きながら、そう言った。


「分かりました。では、そちらのお嬢さんは?」


 キャサリンさんはそう言うと、今度はノアに欲しいものを聞いた。


「え~と……私もお金にする。それで、美味しいものを一杯食べたい」


 ノアも、俺と同じお金を選んだ。ただ、ノアは美味しいものを食べる為にお金をもらうという、なんともノアらしい目的を持っていた。

 キャサリンさんは、ノアの目的を聞いて、笑みを浮かべた。


「そうかい。育ち盛りなんだから、美味しいものを一杯食べなさい。さて、礼金はこれくらいでいいかな?」


 キャサリンさんはそう言うと、机の方へ向かった。そして、机の引き出しの中から革袋を二つ取り出すと、俺とノアに一つずつ手渡した。


「ありがとうございます」


 俺はそう言いながら、革袋を受け取った。その瞬間、俺はその革袋の重さに絶句した。そして、恐る恐る革袋の中を覗いてみた。


「……何か銀貨が一杯あるんですけど……」


 革袋の中には、数えきれないほどの銀貨が入っていた。そう、小銀貨ではなく、銀貨だ。


「ああ、その袋には、銀貨が百枚入っている。金貨一枚にしようとも思ったが、それだと買い物しにくいだろう?」


「確かにな……ここまで考えてくださり、ありがとうございます」


 俺はそう言うと、頭を下げた。ノアも、俺の真似をして頭を下げた。


「そう頭を下げなくてもいいよ。困ったことがあったらいつでも来なさい」


「分かりました」


 俺はもう一度礼をしてから、部屋を出た。

 その後、商会会長室から、キャサリンさんの怒鳴り声と、ザイルさんが怯える声が聞こえた気がしたが……うん。ご愁傷様ですとだけ言っておこう。

読んでくださりありがとうございます!!


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