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第十七話 背後にいるのは…

 ガスラーの首を切った俺は、ガスラーが最後に言った言葉が気になっていた。


(あの感じ。ガスラーの背後に誰かいるのか?)


 ただ、影の支配者(シャドールーラー)がこの街最大の犯罪組織であることを考えると、背後にいるのは、他の犯罪組織ではないだろう。そうなると、考えられるのは――


「貴族か?」


 悪徳貴族が後ろめたいことをする際に、犯罪組織を使うのはよくあることだ。

 貴族からすれば、自分の元に疑いの眼が向けられにくいし、例え向けられたとしても、犯罪組織が勝手に貴族の名前を使ったと言ってしまえばそれまでだ。

 犯罪組織からしてみても、貴族の名を使うことで、裏社会での地位を高くすることが出来るというメリットがある。

 それらを考えれば、俺の考えは正しいだろう。


(ん? だがこういう貴族は犯罪組織のことを、使い捨ての駒として扱っている。だから、恨まれることはあっても、組織を潰した奴を、わざわざ探し出して殺すなんてことはしないよな……)


 そう考えると、ガスラーというのは死ぬ直前でなお、俺に対して嫌がらせをしたことになる。


「ちっ 油断ならないやつだな」


 俺は舌打ちをすると、そう言った。


「てか、その貴族ってあいつらじゃないだろうな……」


 影の支配者(シャドールーラー)を手駒にして、一番得をしそうな貴族というと、あいつ――ガルゼンしかいない。

 あいつはこの街の領主だ。帝都から送られてくる衛兵に注意していれば、裏で好き放題出来るだろう。だが、それはそれで、疑問が出てくる。


「う~ん……あいつってそういうのは好まない性格なんだよなあ……」


 正義という言葉を好むガルゼンは、犯罪組織のことをかなり嫌っている。その為、あいつが犯罪組織を手駒にするとは考えにくい。かと言って、他の街の貴族がこの街の犯罪組織を手駒にするのはリスクが大きすぎる。

 連絡するにも距離があるせいで不便だし、連絡している所を帝国の警備隊に見られる危険性も高くなる。


「……まさかあいつにも裏の顔があるのか?」


 貴族は、様々な顔を使い分けて、少しでも利益が出るように行動する。あいつも、その類(たぐ)いの人間なのだろうか。


「まあ、俺は復讐の為に、いずれあいつの元に行くのだからな。その時に、聞けたら聞くとしよう」


 俺はそう呟くと、ガスラーたちの懐(ふところ)をハゲタカの如(ごと)く漁(あさ)った。

 その後、俺はかなりの大金を自分の懐に入れてから、アジトの外に出た。


「ふぅ……そろそろ日が暮れるな。ノア、夕食を食べに行くか」


「うん。行く」


 ノアはそう言うと、俺と手を繋いだ。心なしか、いつもより距離が近い気がする。


(何かノアとの距離が日に日に狭くなっているような……)


 もし、ノアが普通の人族の少女なら、婚約をしたいぐらいだ。だが、ノアはドラゴンだ。人間とは考え方が違う。同じベッドで寝たり、抱き着いたりするのも、ドラゴンからしてみれば普通のことなのだろうか……


(まあ、楽しいからそれでいいんだけどね)


 叶わぬ恋であったとしても、ノアは、ずっと一緒にいると言ってくれた。なら、その一緒にいる時間を、楽しめばいい。

 俺は心の中でそう思うと、飲食店へ向かった。



「ん~……今日は海鮮丼にしようかな」


「じゃあ私も」


 飲食店に入り、対面の二人席に座った俺たちは、早速注文をした。


 十分後、二つの海鮮丼が届けられた。


「ほう……美味しそうだな」


 海鮮丼は、どんぶりの中にご飯が入っており、そのご飯の上にマグロ、サーモン、ハマチがどんぶり上のご飯をきれいに三分割するように乗せられている。そして、中央にはいくらが乗せられていた。


「ねぇ、カイン。これは何? 肉ではなさそうだけど……」


 ノアが、マグロを指さしながら、首を傾(かし)げた。


「ああ、それは魚と言う、水中に生息している生き物だ。ご飯と一緒に食べると美味いぞ」


「これが魚なのか~」


 ノアは、目を輝かせながら、ご飯の上に乗るマグロ、サーモン、ハマチを眺めた。どうやら、魚のことについては、前に言ってたお母さんから聞いたのだろう。だが、見るのは今日が初めてのようだ。


「では――はむっ」


 ノアは箸(はし)を手に取ると、マグロとご飯を一緒に食べた。


「……美味しい」


 ノアは頬に手を当てると、ご満悦(まんえつ)な表情をした。


「そうか。じゃあ、俺も食べるか」


 そう言うと、俺も箸でマグロとご飯をつまみ上げて、口に入れた。


「美味しいな……」


 俺は、そう呟くと、箸をどんどん動かした。ノアも、どんどん箸を動かしていく。

 そして、僅か十分で、互いのどんぶりは空っぽになった。

 その後、夕食を食べ終えた俺たちは宿に行った。

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