42.最弱姫プVer.ゼアン/ゼイン 予約受付中
―――巡り合う前兆。
「ゔぇ〜」
「ヴァ〜」
「は、はは……」
現在、俺たちは大きな樹海の中をガシンガシンと進んでいた。
のはいいのだがもう既に3時間程この“黒き機人”に乗って移動しているせいか、桜花やアンはだいぶぐったりとしていた。
(疲れたか……それとも酔ったか。まあどっちでもいいや)
正直俺も暇だし、結構疲れたし、桜花たちのことを気にしている余裕はあんまり無かった。
『皆さん。突然で悪いんですけど良い知らせと悪い知らせがあります。……どちらから聞きたいです?』
「え……良い知らせと悪い知らせ?」
するとここまで全く音沙汰の無かったサイケリが、機体の中から俺たちにそう問いかけてきた。
突然喋ったと思ったらいつの間にそんなお知らせ出来るような事出来てたのかよ。
「ぅ……じゃあ悪い知らせから教えるのだ」
桜花がそう答えた。
確かに後味は良いほうが良い。
『分かりました。それでは悪い知らせから報告させていただきますよ』
サイケリは頷いたのか、乗っている機体の首も「うん」と動いていた。
何だかこれだけ見ればかわいいな。
『申し訳ありません。もうこの機体を動かすのも限界みたいなので、あと残り少しの道は本当の徒歩で行かなければなりません』
「お、降りれるのだ!?」
『え、えぇ。降りれます、ね』
その言葉を聞いた桜花の目が、パァァっと明るくなるのが見えた。アンは既にダウン状態だったから反応が変わることは無かったけど。
「それで……? 良い知らせっていうのは?」
『良い知らせは、単純明快な事です。もう間もなく、目的地《ゼアン村》に到着しますよ。ただそれだけです』
「おお……マジか!」
馬車とかでも、《ペイン王国》から獣人の大陸まで移動するのに数日かかった覚えがあるけど、そこから移動開始して3時間程度で到着するとは……。
周りの風景がとにかく木ばっかりだったから全然気が付かなかったけど……
『ぬ……やはり完全に脚部がダメになっているな……。悔しいがここまでだろう。―――チッ、あのガキめ……脚から潰すとは汚い……』
サイケリの独り言がブツブツと聞こえてくる。
かと思えば、俺達の乗っている機体の体が、ゆっくりと地面に膝をついた。
「ふぅ……ここでコイツは置いていく。また回収しに来るからステルス状態は継続しておくぞ。そら、早く降りろ」
「お、おう」
俺たちを乗せたグレンの左手は既に地面に接地していた。
「ひゅ〜! 久しぶりの地上なのだ〜!」
「ツチのカオリなのダ〜!」
桜花たちは息を吹き替えしたようにはしゃぎ回りながら地面を駆け回っていく。
「お〜い。あんまり勝手に行き過ぎるなよ〜!」
「分かってるのだ〜!」
桜花はそう答えてくれるが……
(そう言いながらどんどん進んでいくじゃん……)
「っし……!」
桜花たちの子守り(?)をサイケリから任されてしまっているので、俺は仕方なくすぐに降りて桜花たちを追いかけて行った。
「そのままそっちの方に進んでいけば村がありますからね」
「お、おう!」
■
「で……アイツらめ。テンション上がってどんどん進んだはいいけど結局迷ったって訳か」
そう思ったのには理由がある。
何故ならば、俺の目の前には既に一つの集落―――村が広がっていたからだ。
そしてここに来るまでに桜花たちとは会わなかった。
となると……この森の中で迷った可能性がある、という訳だ。
「―――おや。あのガキ共は何処へ行ったのですか? まさかもう既に村の中へ?」
「ああ、サイケリ。それが……」
俺は桜花たちが迷っているかもしれないことを、後から追いついてきたサイケリに話した。
すると。
「ふむ。では放っておきましょう」
「はぁ!? お前いきなり何言って……!」
「いやいや。冷静に考えて下さいよ。あのガキ―――オウカは貴方の所有物なのでしょう? なら、所有者の魔力なりなんなりを感じ取ってここまでこれますよ。それが“契約”というモノ―――んん?」
と、サイケリの言葉は途中で止まってしまった。
どうやら何かを不思議そうに見ているが……
俺もサイケリの見ている方を見てみることにした。
するとそこに“居”たのは―――
「―――びゅ〜ん!!! なのだ〜!」
「アワワ〜!!」
………………?
「なんだ、アレ」
「……どうやら、既に順応しているようですね」
俺達の視界に映ったのは。
「びゅんびゅんびゅ〜んなのだぁ〜!」
「あわあわアワワ〜ナノ〜!」
桜花とアンと、二人と一緒に遊んでいる、謎のモンスターたち……という不思議な光景だった。
「まあ……何はともあれ。全員無事に到着ですね。ここが、ゼアン村。私の、隠しラボがあるところです」
◆
《―――十ノ色視点》
「あのー? ちょっと聞きたいんですけど〜?」
「ん? どうしたの奏ちゃん?」
「今私たちって何処に向かってるんです〜? あと今どこら辺なんです〜?」
服を一枚着ただけの状態から、戦闘向きとは思えない程可憐なワンピースやアクセサリーを身に着けて変身してみせた影咲奏が、隣を歩くメリドにそう尋ねた。
「えっと、今向かってるのはカースっていう国だね。で、今はもう魔人族の大陸まで来てて、あとちょっとで目的地のゼインっていう村につくところだよ」
「ゼイン……ふーん」
「あ、でも気をつけてね。隣のゼアンっていう村とは長年争ってるらしくてさ。下手なことすると、全面戦争になりかねないから」
「は〜い」
奏は手元に紫色の火を出しては消して……と遊びながらメリドの話を聞いていた。
近くには村が見える。でもあそこには用が無いのだろう。
奏以外、誰もその村に気を留めてなかったからだ。
「はぁ……なんか退屈―――」
そう、溜め息混じりに呟いた、直後のことだった。
「びゅ〜んびゅ〜ん! なのだ〜!」
「ナノ〜!」
「―――ッ……!!?!」
何処か、聞いたことのある声が聞こえて。
そして、それと同時に体の奥が沸々と煮えたぎるような熱い気持ちに、衝動に駆られた。
奏はすぐに声のした方へ視線を向けたが、何も見えない。
「む。どうかしたか?」
「……あの人の、気配が……」
「あの人……?」
「―――ううん。多分、気のせいだわ」
「そうか。そうか……」
クロカゲは、奏の異変に気がついて声をかけるが、奏はそれを誤魔化した。
もし、その気配が本当に彼の―――あの人のものだとしたら。
きっと、近いうちに会えるだろう。
それに、もしその気配が違う人の物であれば、たくさんの人に迷惑をかけてしまうことになる。
だから、準備も思考も入念にする必要があったのだ。
「ふふっ……行ってらっしゃい」
ポゥっ……と紫色の火に、命が宿り。
自我を持ったように、まるで人魂のように、それは宙を舞って何処かへと消えていった。
◆
《―――???》
私は、何?
私は、誰?
私は……私は?
「ヘヘッ……ここかァ? 噂のかっけぇ槍があるっつう洞窟は!」
「そうッス! ここの奥にめちゃくちゃかっけぇ槍を見つけたってコイツが!」
「へい! 赤と黒のめちゃくちゃかっけぇ槍があったんスよ!」
「ならそれ使って、お前らが前言ってたクソ強えスケベ女を捕まえに行こうぜ!」
「でも、あんときのチンピラたち……何処に消えたんスかね……」
「んなこたァどうでもいいんだよ! おら、とっとと回収しに行くぞ!」
違う。
コイツらは違う。
コイツらに、触れられたくない。
「おっ、これかァ……本当にあるし、本当にかっけぇじゃねぇか!」
「っすよね! ほらアニキ! 抜いちゃってくださいよ!」
「おう! 任せとけ!」
手が、迫る。
嫌だ、嫌だ、嫌だ。
“近づか、ないで”
「へ―――?」
◆
命からがらです!
ブックマークや高評価が増えるとモチベが上がる男
次回更新予定日は13日くらいに。
近いにうちに全体の話の整理・改稿をしたいので一週間くらい休みいただくかもです。
と思ったけどいっつも大体一週間くらい開いてましたね
ペースアップしていきたい所存!




