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シンさんが店の仕込みを始めないといけないというので、観光はそこまでにして東部宇都宮駅へ帰った。二人は駅の改札口まで私を見送ってくれた。二人は口々に、
「じゃあ、元気でね」
「もう来ちゃだめだぞ」
と笑顔で見送ってくれ、しんみりした感じもなく、私は満ち足りた気分で電車に乗った。
電車に揺られながら、私は父のことを考えた。父はどうして成仏できないのだろう。自分で言うのはおこがましいが、父は私と会いたいがために、成仏せずに浮遊霊になってしまったのではないのだろうか。それならば、私と父はもう三回も会っていて、父はとっくに成仏できていてもおかしくないように思える。
父やシンさんが、いつまでも成仏できずに、オリオン通りで見たおじいさんみたいにぐずぐずに腐っていって「アラヤマ」行きになってしまうのは嫌だった。なんでお父さん、成仏できないんだろう。車窓をのぞきながら、私はもう一度考えた。




