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赤い切符  作者: 渡辺正巳
15/27

3-5

 藤岡に帰ると、手早くスーパーで買い物をして中華丼を作って母の帰りを待った。母が帰ってくると二人で夕飯を食べた。


 ちなみに言っておくと、当時私たちが住んでいたのは三階建てのアパートの一階部分で、二、三階部分にはそれぞれ三室入っている広さをぶち抜いた住居だった。母の叔父がそのアパートを経営していて、その一階部分に自分が住もうと考えて建てたのだが、わけあってこのころは住んでおらず、格安の家賃で母に貸していたのだった。リビングがあり、部屋が三つあって、母と私がそれぞれ一部屋ずつ使い、余っている一部屋には二人の服や雑貨などを放り捨てて、それらが部屋の中央に山をなしていた。


 リビングで食事をしながら、母は、私の作った中華丼においしいけどちょっと味が薄い、と文句をつけた。しかし夕飯が出来ていることには上機嫌で、めずらしく、ありがとね、と言った。


 私は食事中もずっと、父のことを思い出していた。それが表情に出たらしい。母が私の顔を見て、


「何かあったん? うれしそうな顔して」


と聞いてきた。私は、


「あのね、もし今お父さんが生きてたとしたら、まだ髪の毛あると思う?」


と返した。母はきょとんとした顔をしていた。

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