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ex 帰ってきた女神ちゃんねる☆彡

とんでもなく久々の女神回です。

「それでは先にお風呂使わせていただきますね」


 エレーナはそういって着替えを持ってカデミアと共に風呂場へ向かった。

 この家もお風呂は、女神様が俺の記憶から作り出したものなので、この世界にもとからあるお風呂と少し変わっているらしい。

 それをカデミアに教えてあげるという事で、今日は二人で入浴なのだそうだ。


 正直この家の風呂はそんなに広くないので、大柄なカデミアと一緒にお風呂とか無理げなのだが大丈夫なのだろうか。

 俺は狭い風呂場の中で、ギュウギュウに押し合いへし合いしている二人の姿を想像して『アリだな』と思った。


 けっして邪な気持ちではない。

 ないったらない。


「さて、二人が風呂に入っている間にテレビでもつけるか」


 もちろん家中を網羅しているあの盗撮システムで覗きをしようとしているわけではない。

 信じろ。

 俺を信じるお前を信じ……お前……信じてないな?


「すっげー久々だけど女神様いるだろうか」


 すっかり存在を忘れそうになっていた役立たずな駄女神。

 結局旅立ちの時も会えず、ポータブルテレビを持っていくのを忘れたので旅先でもアクセスできなかった。


「ぽちっとな」


 とりあえずテレビの電源をONにする。

 女神様が居れば、旅の間の話を報告して色々聞いておきたいことも在るのでそれを聞くつもりだ。


 特にあのイグルナウスとかいうヤツの話と焔竜の封印については聞いておかねばならない。


「のわっ!!」


 画面が映ると同時に、その画面にドアップで女神様の顔が表示されて俺は思わず声を上げてしまった。

 彼女はきれいな顔の眉間に深いシワを刻んで、なにやら俺を睨んでいる様子。


「……へ、へろーごっです」

「ヘローじゃないですわ!」


 久々の再会だってのにいきなり怒られた。


「貴方、今まで連絡もせず何をやっていたのですかっ」

「いや、ちょっとダスカール王国まで遠出を」


 連絡ったって、旅立つ日まで姿をくらましてた女神様が悪いのではなかろうか。

 解せぬ。


「貴方がポータブルテレビを持っていったのかと思ってそっちにアクセスしてみたら、真っ暗な埃だらけの倉庫の隅が映るだけでしたし」


 それに関しては正直すまんかった。


「まぁ、いいでしょう。 暫くの間私も留守にしていたわけですしお互い様としましょう」

「そうそれ、俺も出かける前に連絡したかったけど、何時見ても居なかったから仕方なかったんだよね」


 女神様は画面から引くと、いつものテーブルセットに腰掛ける。


「って、なんでツナギとか着てるんですか!?」


 テーブルセットで優雅に紅茶を飲み始めた女神様。

 しかし気品あふれる顔立ちとは似つかわしくないその服装に俺は驚きの声を上げる。

 工事現場とかでおっちゃんたちがよく着ているのをみるツナギを着た女神様のその姿は、アンバランスという言葉を見事に体現していた。


「これには深いわけが在るのよ」


 ふっと俺から顔を逸らした彼女の頬にひとつぶの涙が光った。


「いやいや、なんかシリアスぶってますけどその格好じゃギャグですから」

「……貴方のせいなのに……」

「えっ」


 女神様の肩が震えだす。

 本格的に泣いているのだろうか?


「それもこれも貴方のせいなのにっ!!」


 ガシャン!という大きな音を起てて、女神様は掴んでいたティーカップをテーブルに叩きつけた。

 肩が震えてたのは泣いてたんじゃなくて怒ってたのか。


っていうか俺のせいって何が?


「貴方のあのとんでもないステータス、ステータスアップの種を食べたんでしょう?」

「そこに気がつくとは、やはり神か」

「神よっ!」


 女神様はあの後、俺のステータスが異常に上がってた理由を調べるために天界にある自分の家に調べに戻ったらしい。

 どうやらこの白い部屋自体は天界ではなく、天界と地上(?)との狭間にある死者を導く場所なのだそうだ。


 というか家あるんだ。


「それでね、汚れるからこの服に着替えて部屋中のライーザの資料を漁ってたら……」


 女神様は何処から出したのか小さめの袋を数個テーブルの上に置いて。


「これが出てきたのよ」

「それってなんですか?」

「野菜の種よ」

「野菜の……あっ」


 もしかして。


「そう、貴方に渡して無くなってたはずの野菜の種が部屋から出てきたの」

「部屋片付けてないんですか? もしかして女神様の家ってゴミ屋敷とか汚部屋化してるんじゃ……」


 と、いいかけたら睨まれた。


「さてここで問題です。私が貴方に手渡したはずの袋がここにあります」


 ずいっと女神様が立ち上がってこっちに寄ってくる。


「ではあの時私が貴方に渡したあの袋の中に入っていたのはなんでしょうか?」

「た……種でしたよ」

「何の?」

「さ、さぁ」


 女神様の死んだ魚のような目が怖い。


「あれはね、私達神々が世界を広げる可能性のある者たちにあたえる『ご褒美の種』なの」


 我々の業界ではご褒美ですというやつじゃなくてほんとうの意味でのご褒美?


「世界を作った時に、いろいろな場所に色々なものを隠しておくの。それは、その世界の可能性を広げるために冒険したりする人達へのご褒美に少しだけ与えるものなのよ」

「ロープレとかでよく『なんでこんな所に宝箱があるんだよ』って思ってたけど、あれってもしかして神様が置いてたのか」


 まぁ、あれは製作者が設置してるわけだが、製作者ってその世界の創造神だからあながち間違っては居ないだろう。


「それを貴方は食べたのですね」

「はい」


 俺は素直に認めることにした。

 ここで嘘をついても意味はない。


「今回については完全に私の落ち度でした。しかしまさか知らずに種を食べる人が居るなんて思いもしませんでしたよ」

「えっ、普通は食べないの?」

「食べるために作られた種なら食べますけど、大抵は埋めて育てようとするので宝箱にはセットで説明書を置いて上げることになってます」


 親切設計!!


「時々それでも埋めて育てようとする人もいるのですが、天界とごく一部の土地以外では『ご褒美の種』は育ちませんからね」

「……」

「どうしました?」


 突然黙り込んだ俺に訝しげな視線を送る女神様。

 言うべきか。

 言わざるべきか。


「貴方、もしかして!」


 思い悩んでいた俺を見て気がついたのか女神様が大きな声を上げた。


「あっ、はい。育てました……緑の手(グリーンハンド)の力を使って」


 俺のその言葉を聞いて顔面蒼白になった女神様は、そのまま画面の向こうで地面に突っ伏すように倒れ込んだのだった。



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