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異世界ソロ暮らし if 閑話集(チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフをめざします~ )  作者: 長尾隆生@放逐貴族・ひとりぼっち等7月発売!!
第一章 スローライフはじめました。

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2/10

ex 寂しい一週間

二部の準備の間に、間章をちょろちょろと書いていきます。


「畑のためならえんやこ~ら」


 俺は野生動物たちに荒らされた畑を一生懸命また耕していた。

 それというのも、本来番犬の役目をするはずだったウリドラが一週間ほど留守にしているせいである。


 俺に愛想を尽かして出ていったというわけではない。

 あのチートの種の生る茎が俺にしか作れない以上、奴が俺のそばを離れることはないのだ。


 言ってて虚しくなった。


「まぁ、男所帯じゃどうしょうもないからな」


 原因は俺とエレーナがとてつもなく良い雰囲気になったあの日だ。


 そう、あの日。

 俺はエレーナの顔に一本髭を見つけてしまった。


 覚えているだろうか?

 ドワーフ族は大人の体になると髭が生える。

 それまでは普通の人間族と変わらない容姿をしていると。


 つまりエレーナのあの髭は、まさにエレーナが大人の体になったという証であるのだ。

 ということはその後に来るのは……。


 俺は学生時代にあった女の子だけの授業の事を思い出す。

 あのとき俺達にも同じ授業を受けさせて貰えればこんな時に何とかなったかもしれない。


 いや、ならないだろうけど。


 というわけで急遽ウリドラに頼んで、エレーナをダスカール王城に現在住み込んでいるエリネスさんの元に送り届けてもらったわけだ。


 そしてはや一週間経とうとしていた。

 まだエレーナもウリドラも帰ってこない。


 もしかして王城でまた何かあったのではなかろうか。

 イグルナウスが実は国外に逃げていなくて、王城のどこかに隠れていて出てきたとか?


「う~、心配だ」


 そしてエレーナが一週間も留守にしているので、我が家の家電製品の魔力もかなり心配だ。

 心配なのでここ数日、夜はなるべく明かりをつけずに過ごしている。


 そのせいで、せっかく緑の手(グリーンハンド)で育った野菜たちも、森の野生動物たちにやられ放題。

 あっという間に食い散らかされてしまうので、朝になると荒らされた畑を修復する仕事から始まるようになってしまった。


 幸い野菜の種はまだまだ豊富にあるからよいものの、このままではイタチごっこである。

 いっそ俺がイタチのマネをして動物たちを襲ってやろうか。


「とにかくウリドラだけでも一旦帰ってきてくれれば、それでなんとかなるんだが」


 そんなことをぼやきながら俺は空を見上げる。


 今日も抜けるような青空だ。

 そういえばこの世界にやってきてから俺はほとんど雨が降った記憶がない。

 魔道具の水道があるから今のところ問題ないが、地下水だってあまりに雨がふらなければ枯れてしまうだろう。


「ダスカール王国はあっちの方だっけか」


 俺はウリドラが飛び立った空の方に目を向ける。

 そこにはなんと、こちらに向かって帰ってくるウリドラの姿が!!!


 なんてことはなく、ただただ青い空に白い雲が浮かんでいるだけだった。


「ウリドラ~~~!! 早く帰ってきてくれ~~~!!」


 俺はその空に向かって叫んだ。

 特に意味はないし、呼んだところで伝わるわけもないのだが、言わずにいられなかったのだからしかたない。


「ぴぎゅ」

「ウリドラちゃんだけ帰ってこいだなんてひどすぎます拓海様」


 突然俺の背後からそんな声がかかった。

 驚いて振り返る。


「えっ、なんでそんな所にいるの?」


 そこには今まさに俺が求めてやまなかった二人……一人と一匹の姿があった。

 いったいどういう事だ。


「まさか陸路で帰ってきたのとか?」

「そんなわけないじゃないですか」

「ぴぎゅう」


 ウリドラまで『やれやれ』といった表情で鳴き声を上げる。


「転移魔道具を使ったんです」

「えっ、あれって公爵家の地下に埋まったんじゃなかったっけ」


 あの事件の後、俺達はダスカール王都を復興すべく頑張った。

 だけど、今のところ誰も住む予定のないキーセット公爵家についてはまったくの手付かず。


 俺が……いや、ルーティカの馬鹿皇太子がぶっ壊して燃やした状態のまま放置されていたはずだ。

 もちろん転移魔道具が置いてあった地下も、その瓦礫の下にうずもれていて。


「ですのでフィルモア家の転移魔道具を使わせていただきました」

「ああ、そっか。そりゃあっちも公爵家だから同じ様な魔道具は置いてあるのか」


 フィルモア公爵邸も少し被害は受けたものの、俺がルーティカをふっとばしたおかげで屋根の一部損壊程度で済んでいた。


「ですのでこれからは行きだけウリドラちゃんに送ってもらえれば問題なく帰ってこれるようになったんですよ」

「そりゃ便利だな。まぁ、そうしょっちゅうエレーナさんにそばから離れられても困るけどね」

「えっ、それってどういう……」


 せめて俺の家の側に居てもらわないと家電の魔力充填が出来なくて困るからな。

 現に今俺はかなりの節約生活に疲弊仕掛けていたわけで。


 俺のその返答に、何故かエレーナは顔を真っ赤に染めてもじもじしている。

 かわいいけど何故もじもじしてるんだ?


 俺が首を傾げていると、エレーナは意を決したように顔を上げ、なぜだか必死な顔で俺に詰め寄ってくると。


「わかりました拓海様。私はもう貴方様の側から離れないと誓います!」

「いや、俺の側とかじゃなくてだな。それもまぁ嬉しいけどさ」


 その時になって俺は自分の言葉がエレーナにどう勘違いされたのかを理解した。

 だが、それを訂正したら彼女が激おこぷんぷん丸に変身してしまいかねない。


「それじゃあまぁ、これからもよろしくお願いするよ」

「はい、お願いされました」

「ぴぎゅ」


 満面の笑顔を浮かべたエレーナを見て俺は、自分もなんだかジゴロっぽくなってきたなと心の中で自嘲する。

 あとウリドラには言ってない。


「さて、そろそろ昼だな。エレーナさんはご飯食べた?」

「いいえ、まだです。拓海様と一緒に食べようと思って」

「そっか、それなら今から軽く作るか」

「手伝います」

「ぴぎゅう」

「お前は庭番してろ!」


 わいわいがやがやとした日常が一週間ぶりに我が家に戻ってきた。

 俺はその幸せを心に感じながら、氷室の中に残っている食材を頭に思い浮かべ、今日の昼食の献立を考えるのだった。



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