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1日遅れの  ☆ Merry Christmas ☆

 あれからいろいろ考えた。

 彼と今後どうするか。


 答えなんて本当はもう決まっているのに。

 でも、もう哀しい想いはしたくない。

 辛く寂しい夜を過ごしたくはないの。


 胸のなかのモヤモヤが私のこころを占領していく。

 ああ、どうしよう。どうしよう。どうしよう。


 約束の時間はもうとっくに過ぎている。

 今からでも行ってみる?

 でも、もうきっと待ってはいないはず。


 昨日はきっとクリスマスの魔法にかかっていただけだわ。

 あの美麗びれいなきらきらに惑わされていただけだわ。

 そうよ、きっとそう。


 私はソファーに深く腰かけ、リモコンを手に取った。

 画面からはお笑い番組が流れている。

 客席は大爆笑だがちっとも面白くもない。


 チャンネルを変えると、いつも楽しみに見ていた恋愛ドラマのクライマックスシーン。

 全く頭に入ってこないし、心にも響かない。


 時間だけが過ぎてゆく中、そわそわする自分に気づく。


 あ、でも。


 ……でも。




 気づけば走り出していた。

 コートも着ないで、あのツリーの元へ。


 待ち合わせの時間からは優に3時間は経っている。


 それでも待っててくれている?


『来てくれるまで待ってるよ』


 彼の言葉を思い浮かべながら、少しの期待と大きな不安を胸に、やっと辿り着いた。




 昨日まで綺麗に飾り付けられていたツリーも、今は飾りが取り払われて、ただのモミの木になっている。


 辺りを見渡してみたが、彼の姿はどこにもない。


「やっぱり」


 この世の中に確かなものなんて、きっとないんだろう。

 恋愛だってそう。いくら好きになっても、いくら好きだと言われても、その気持ちが、その想いが永遠に続くなんてことない。……なんて負け惜しみ。


 失った想いの大切さに、今更ながら気づくなんて。



 街灯に照らされて、ふわふわと綿雪わたゆきが舞い降りてくる。


 クリスマスの魔法はもう解けてしまったのね。




 


 そのとき、なにかがそっと私の背中にかけられた。

 暖かい。

 振り向くとそこには。


 こころの中で鐘が鳴る。


 話には聞いたことあるけれど、実際そんな話は信用していなかった。

 

 運命のひとに出逢えたときに鳴る鐘。

 

 今まさにこころに鐘が鳴り響いている。


「待ちくたびれたよ」


「ごめん」


 これが運命の出逢いだというの?

 それともクリスマスの魔法がそう感じさせているだけ?


「来てくれるって信じてたよ」


 この世の中に確かなものなんて、きっとないんだろう。 

 よくは解らないが、ただ漠然とそう思っていた。


「結婚してくれる?」


 だけど、この世の中に確かなことがあった。

 それはふたりが出逢えたということ。



 クリスマスの魔法が解けたあとでも、まだこんなにも想えるひと。





握りしめた手から

こぼれ落ちる砂のように


はみ出した想いが


なんでこんなに

苦しいのか切ないのか


退屈な日々の中で

呼吸をするのもままならない


もがいて足掻あがいて


一体なんのために

生まれてきたのか


なんのために

同じような日々を繰り返す


答えなんて誰も知らない


ただひとつわかったこと

この世の中に

確かなものなんて

きっとないんだろうってこと



なんのために生きて

そしていつか消えて


見つからない答えを

探しながら



それでも今日を精一杯

あらがって生きてゆこう



 あなたとふたりで……。

 

 確かにそう想えた。



 1日遅れの


 ☆ Merry Christmas ☆



お読み下さりありがとうございました。


『1日遅れのクリスマス』は今話を以て完結いたしました。


クリスマスに合わせての駆け足での投稿でしたが、

ラストまでお付き合い下さりありがとうございました。


拙作を読んで下さった全ての方に、素敵な出来事がありますように……。

願いを込めて。


1日遅れの


☆ Merry Christmas ☆

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