最高のクリスマス・イヴ
今日は巷でいうところの『クリスマス・イヴ』。
今の私には関係ないイベントだ。
いつものろけ話をしている友人たちは、当然デートなわけで。
私もいつもなら、いそいそとお出かけしているのだが、今年はなんの予定もなく家でひとり。
こんなことならクリスマス後に別れればよかったのか、なんて。
でも、一度イヤだと思ったら、自分の心にウソはつけない質なので。
って、簡単に言えばワガママなのかな。
それとも強がりなのかな。
結局、クリスマスだからとショートケーキを1つ買って。
やっぱりクリスマスにはケーキは欠かせないので。たとえ独りでも。
でもケーキをひとつだけ買うのって勇気がいる。
見栄をはって2つ買えばよかったのかもしれないが、どうせ食べきれなくって余らせてしまうくらいならと、少々の勇気を振り絞って購入する方を選択した。
「クリスマス用にろうそくをおつけしましょうか?」
店員さんのマニュアル通りのセリフが心に刺さる。
ショートケーキひとつに、ろうそくをひとつつけてもらって、ひとりで吹き消すってこと?
一応脳内でその光景をイメージしてみた。
電気を消した室内に、火をつけたろうそくを立てたひとつのショートケーキ。
目をつぶり両手を胸の前で組み合わせて、お願いごとをする。ひとり。
そして勢いよくろうそくの火を吹き消す。ひとり。
くっ……虚しい。
よくもそんな酷いことが聞けるわね!
独りでクリスマスケーキにろうそくを……。
「あ、はい。じゃあ、お願いします」
私は見栄を張るのをやめた。
ひとりでクリスマスパーティーをしてやるぞ。
思う存分楽しむことにしよう。
そう開き直って本当にイヴの夜に、ひとりでショートケーキにろうそくをつけて、吹き消して拍手なんかしちゃって。
うっ……泣けてきた。
でもいい。そんなクリスマスがあったっていいじゃないの。
その後はみかんを食べてふて寝して。
最高のクリスマス・イヴだった。……なんて。
お読み下さりありがとうございます。
次話「鐘が鳴る」もよろしくお願いします!
更新は明日の朝7時過ぎの予定です。