6.帰還
「リン、これ被っとけ」
「っ」
拾った小鬼・・・リンと連れ立って町へ戻る最中。
そう声をかけて外套を放った。
「お前は町の奴らに面が割れてる。これで顔隠しとけ」
「・・・」(コク)
幸いまだ門は開いてるようだから止められることはないだろう。
あとは町に入ってからのことだが、ある程度見れるようにしてやればバレない・・・か?
「まずは俺の宿に行く。湯を用意してもらうからまずは体をきれいにしろ」
「・・・」(コク)
「俺はその間にこいつを金に換えてくる。それから飯だ」
「・・・わたし、おかね、ないよ?」
「今は俺が出してやる・・・がいつか返せよ?」
「・・・うん」
問題なく門を通過し足早に宿へとたどり着いた俺とリン。
宿の女主人に湯浴みをしたいから湯の用意をしてくれと頼み、リンには気配を殺して部屋で待ってもらう。
俺はその間に予定どうりギルドへ行って金を貰う・・・のだが。
「ほ、本当に一人で退治されたのですか・・・?」
「だから何度も言ってるじゃねーか・・・この腕輪で間違いないんだろ?」
「確かに本物のようですが・・・にわかには信じられません」
「つってもな・・・やれちまったもんはしょーがねーだろ」
「しょーがねーだろって・・・」
「うだうだ言ってねーで金よこせよ金」
「・・・分かりました。お支払いしますので少々お待ちください」
「ああそうしてくれ。人待たせてるんで早くしてくれよ」
時間つぶしにタバコを加えながらしばらく待つとそれなりの大きさの袋を携えた老人がやってきた。
誰だこいつ・・・
「君が盗賊団を一人で壊滅させたという冒険者かね?」
「あーそうだよ。てかそれ報酬の金だよな、さっさと寄こせよ」
ジジイから袋を取ろうと手を伸ばすがさっと避けられた。
「なんだよ・・・報酬じゃねーのか?」
「・・・報酬ではある、が君に一つ提案があってな」
「人待たせてるって俺言ってなかったっけか?」
「悪い話ではない。そう時間も取らんから聞いていかんか?」
「じゃーさっさと話しな。手短にな」
ジジイは咳ばらいを一つ挟むとこう続けた。
「特例で君の冒険者ランクをDに上げようと思うのだ」
「ほー」
「・・・あまり驚かんな」
「ぶっちゃけ興味ねーしな。上がったところでどうなるかとか覚えてねーし」
「説明は受けておったと思うのじゃがな」
「長ったらしくて覚えちゃいねーよ」
「ふむ。まぁ良い。長話は嫌そうじゃから恩恵はまたの機会に聞くがよい」
「そうさせてもらおう」
聞く機会はしばらくなさそうだがな。
「それで、昇格については了承でいいんじゃな?」
「ああ、構わねーよ」
「それではギルドカードを出すがよい」
「なんだっけそれ・・・あーそういやなんか貰ってたっけか。どこやったかな」
懐をまさぐると硬質な板状の何かがあった。
「あ、これだっけ?」
「ああ、それじゃ。なくしたら再発行に結構な金のかかる代物じゃぞ?」
「うげ・・・」
それからまたしばらく、リンの奴大丈夫かなーと考えていたところにさっきのジジイがギルドカードを持って帰ってきた。
「ほれ。今後はちゃんと管理しておくんじゃぞ」
「わかったわかった。」
「それと、これが約束の報酬じゃ。聞けば旅をしておると聞いたが路銀か?」
「ああそうだ。んじゃこれで用はないな。急がねーと・・・」
「ああもう一つだけ」
「なんだよ」
「ギルド内は禁煙じゃ」
「・・・今度から気ぃつけらぁ」
シロが去ったギルド内で先ほどの老人と受付嬢が同時にため息をついた。
「惜しい人材でしたね。ギルド長」
「仕方あるまい。引き留めるもんでもないからのぅ」
「あの方本当に大丈夫ですかね?」
「大丈夫・・・ではないだろうが、ああいう奴ほど生き残れるのもこの世界の常じゃよ」
「そういうものですか」
「そういうもんじゃ。わし等にできるのは彼の旅の無事を祈ることくらいじゃて」
「そう・・・ですね」