7.ルーキー参上
新人さんの話。
■■7.ルーキー参上
はいはい、今年も新人の配属時期がやってきました。 戦闘部は、配属されても当分は課長クラスの下で実践経験を含む研修がある。 思えば、赤坂が配属されてきたとき、斉藤課長が日に日に削られていく様子が目に浮かぶ。 まあ、今では俺が削られてますが。 赤坂は実際かわいい。 うちの2大アイドルでもあるくらい、かわいい。 当初は奪い合いになるはずだった。 しかし、あの斉藤課長の様子をみて、一斉に手を引き始める。 気がついたときには、誰もいなかった・・・ そこで、俺を独立させて赤坂とペアを組ませる、というトンでもない案がでてきた。 たしかに、独立はうれしかったが・・・・
で、今回。 新人3名、うちルーキーを含む、がやってきました。 まあ、斉藤課長とか、千葉さんとかのチームで面倒を見るはずなんですが・・・ ルーキーうちなの? 俺、平社員だけど? それって会社としてどうなの? それに、うち赤坂いるよ?
「まあ、沖田。 世の中にはいろいろあるんだ。 とりあえず、これは業務命令だから。」
いや、斉藤課長、それおかしいから。 つうかなんでベテラン勢に囲まれないといけないの? で、近藤部長とか、1課の土方課長とか、永倉さんまでいるのは何故? 会社がらみの陰謀か何かなの? 俺、死ぬの?
「千葉さん、赤坂引き取ってもらえませんか?」
空気が凍りつく。 俺様最大の反撃である。 ふふ、千葉さん目が泳いでますぜ?
「いや、なんだ、うちは魔法職は静岡がいるから。 残念だけど。 それにバランスって重要だから。 ね、斉藤課長?」
「あ、あ、ああ。 バランスは重要だな。 ルーキーは捜索寄りの前衛だから、お前のところに赤坂は必要だ。」
いや、残念そうなそぶりがない。 この2人の連携が崩れるのを始めてみた。 でも、逃げられた・・・ これがベテランってやつですか・・・
「あ、そうそう。 永倉はもうしばらく沖田たちに同行するから。」
「沖田君、もうしばらく、お付き合いよろしくね。」
それは、赤坂と魔法少女ネタで盛り上がりたいだけでは? ひょっとして、ルーキーってそっち系の人なの?
速攻で田中に連絡を取る。 ルーキー対策案件を探してもらうためだ。
「ああ、田中? 悪いんだけど・・・」
「ルーキーだろ? 任せろ。 越後部長からも直々にご達しがでている。」
嘘だろ、どんだけだよ、ルーキー。 つうかなんでもう知ってるんだよ。
はい、すべては計画済みでした。 親父、お袋、先立つ不幸をお許しください。
ルーキーが配属されてきた。 事前情報によると、結構優秀らしい。
「服部 佐助っす。よろしくお願いします。」
「あ、沖田です。 彼女が赤坂さん。 こちらこそよろしく。」
しかし、服部 佐助って、お前は忍者かっていうの。
「自分、シーフとか忍者が向いてるんで、そっち希望です。」
まあ、その名前で魔法職とか言われると、でかいカエルとか出されそうで怖い。
「とりあえず、装備とりにいくか。」
ルーキーを連れて、開発部に向かう。 赤坂も一緒に来るそうだ。 真田課長に何か頼んでるのだろうか。 もう、いや。
「おー、来たか。」
予想はしてたけど、真田課長自らお出迎えとか。
「ハイこれ。 服部君の装備な。」
「あざーっす。」
ん? まて、何それ? 黒くない? 剣も刀じゃないの? 赤坂と同類?
「あ、うちの家訓で、これに決まってるっす。 ちなみに家宝のレプリカっす。」
家訓てなに? 家宝ってなに? ここは誰? 私はどこ?
「沖田、ちょっと来い。」
上条さんに呼ばれる。 どうもルーキーはマジで忍者の家系らしい。 しかも、結構有名な大手警備会社のご子息とか。 家の方針で、こういう業界とかで修行することが決まっているらしい。 で、関連会社のうちを選んだ、と。 忍者ってまだいるのかよ・・・
あと、もうひとつ。 どうもルーキーの装備は、俺の装備よりいいらしい。 まあ、オーダーだしな。 ちなみに、赤坂の装備も俺の装備よりいいらしい。 例のクレナイは別格として、他の装備も、下手するとブラックシャドウ装備より若干落ちるくらいだそうだ。
何それ。 前衛の俺が一番しょぼいってあり?
一応、バランスをとるために、俺の装備も性能を上げるという話も出たんだが、例の光る一件で、保留になっているらしい。
とりあえず、装備の確認にルーキーをトレーニング室に連れて行く。 我らが赤坂さんは、平常運転で真田課長と何か話しているので置いていくことにした。
ルーキーはさすがに、忍者装備が似合っている。 まあ、オーダーだから、似合って同然なんだろうけど。 で、ルーキーの動きは、結構凄い。 赤坂も結構凄い動きをするけど、ルーキーには適わないだろう。 業務の説明とか、システムの説明とかは、斉藤課長のほうでまとめてやってもらえる事になっているので、確認が完了したところで、斉藤課長のところにつれていって、本日の業務は終了。 赤坂? しらん。
ルーキーの初仕事です。 ちなみにルーキーって呼び始めると、一生ルーキーと呼ばれ続けそうなので、サスケにしました。
とりあえず、ギルドに向かいます。 安定の「猫耳」お姉さん。 うん、頑張るよ、俺。 当然、永倉さんは外で待機です。 これでその笑顔を独り占めさ。 君の猫耳に乾杯。 ・・・ 赤坂さん、痛いんですけど? 短剣で刺すのやめてもらえますか? また始末書になりますよ?
当然、赤坂装備はスルーです。 どうせ、永倉さんがいるし。
ボーランドさんに挨拶にいく。 一応、聞いている様子。 ちょっと安心。 これまで何度かこなしている護衛案件なので、大丈夫かと。 他チームと打ち合わせして、出発する。
「いや、自分、初めてなんで緊張するっす。」
例によって、魔法少女チームがもりあがってるので、俺がサスケの相手をする。 つうか、お前、緊張しているように見えないから。
「なんか、動き凄いんだけど、なにかやってたの?」
「自分、こういう家系なんで、小さい頃から鍛えられてるっす。」
ある種の英才教育ってやつみたいです。
「じゃあ、将来は親父さんの会社に入るの?」
「いや、父上の会社は、兄が3人いるんで、自分は入らないっす。」
いまどき、4人兄弟て凄いな・・・
「ちなみに、姉が2人と、妹も1人いるっす」
・・・・ 何者? 妾とかいるの? ひょっとして、一夫多妻制の国?
なんだかんだで、危険地帯まで来る。
「サスケ、山側を重点的に警戒頼む。」
「了解っす。」
赤坂にレーダー監視をしてもらい、俺は本隊で状況の確認をする。
「前方、ゴブリンを3匹発見っす。」
早っ。 どうもレーダーでは感知していないらしい。 どこまで行ってるんだ、あいつ・・・
「サスケ、今どこ? レーダーに反応ないんだけど?」
「大体200mぐらい先にいるっす。 一応、輸送団の周辺150mには、このゴブリンしか居ないのは確認済みっす。」
あー、レーダーの範囲外だわ。 レーダーってせいぜい100mぐらいだし。
「サスケ、そのまま待機。 見つからないように注意ね。」
「了解っす。」
俺は赤坂と永倉さんに目を向ける。 さすがに二人もあきれているようだ。
しばらく進むと、サスケの反応があった。 俺は他のチームにゴブリンの件を伝え、戦闘準備をしてもらう。
ゴブリンが確認されると、弓職による攻撃が開始される。 かなり腕がいいようで、2匹が矢で倒れた。 残る1匹が逃げ始める。
「ゴブリンが逃げるっす、どうするっすか。」
「あー、別に1匹くらいいいや。」
「こっち来るんで、始末してもいいっすか?」
「え? 大丈夫なの?」
なぜか、赤坂がうなずいている。 その自信はどこから来るの? 特注装備同士だと分かるの? あ、そうだ、特注装備だった。
でも、俺は躊躇っている。 初戦、もしくは初仕事で死亡、もしくはそれに順ずる負傷をした場合、8割ぐらいが心を折られてやめていく。 俺の同期でも何人かいる。 サスケでも、さすがにそこは同じだろう。 でも、おそらくサスケは、俺が止めてもやるだろう。 そんな気がする。 なら、やらせるか。
「じゃあ、注意して。 俺がいくから、それまで足止めで。 駄目だと思ったら、すぐ撤退すること。」
「了解っす。」
俺は赤坂と永倉さんに、サスケの応援に向かうことを伝え、飛び出していく。
俺が着いた時には、サスケの初戦闘は終わっていた。 おそらく一撃だったのだろう。 ちなみにサスケは攻撃を受けた形跡はまったくない。 こいつ、凄いわ。
サスケには斥候を継続させて、どんどん進む。
2日目。 大体同じ感じ。 3日目。やっぱり同じ。
4日目。 なんかサスケっていつ寝てるの? 夜の見張り番以外のときでも、結構起きてるような気がする。 昨日の夜とか、見張りが見つける前に、サスケが見つけてたし。 ちょっと張り切りすぎっぽい感じ。 ヤバイかも。
5日目。 さすがに昨日の夜は寝てたっぽい。 でも、日中にまったく響かないので、こいつは凄いかも。 若いって素晴らしいな。 あと、ゴブリンとかダークウルフなら、2匹ぐらいは相手にできそうなくらい強い。 新人にはありえない。 装備の性能もあるけど、実力も結構ある。 ああ、あっさり抜かれるわ、これ。
という感じで、無事終了。 永倉さんも驚くぐらい、サスケは優秀でした。 これは当たりかも。 ただ、赤坂とサスケはあまり相性がよくないっぽい。 どうも赤坂がサスケを避けてる様子。 サスケもちょっと赤坂に対してびびってる感じがする。 まあ、誰でもびびるよ、赤坂には。 だってあのカッコだもん。 そのうちなんとかなるでしょう。 一応気はつけておく。 俺って中間管理職っぽくなってきたような・・・
ボーランドさんに、完了の挨拶をしに行く。 挨拶は大事だからね。
「はい、お疲れ様でした。 今回も無事終了で、助かりました。 しかし沖田さんのところの、黒い人は凄いですね。 新人とは思えませんな。」
「あ、彼はちょっと特殊かもしれません。 普通の新人だと、あれはありえませんから。」
「でも、黒い彼といい、派手な彼女といい、もう一人の黒い男性といい、沖田さんのチームは変わった人が多いですね。 ひょっとして、特殊部隊とか?」
ボーランドさん、それは言わない約束でしょう。 あ、約束してないわ。 永倉さんはブラックシャドウだから、特殊部隊はある意味正しい。
でも、赤坂とサスケの特殊の意味って・・・・
速攻帰りましたよ。 ええ。