番外.むかしむかし あるところに赤坂がいました
あまりいいタイミングじゃなくて申し訳ないですが、突然番外編です。すっかり忘れてました。
■■番外.むかしむかし あるところに赤坂がいました
その竹は金色に光っていた。
「婆さん、用意はいいかね。」
「婆さんじゃありません。米沢です。」
「あのさ、米沢さんよ。雰囲気って重要じゃない?」
「いえ、そんなものはいりません。とっとと終わらせてもどりますよ、係長。」
係長と呼ばれた男は、しぶしぶその金色に光る竹を鉈のようなもので叩く。
すると、その竹はパカっと割れて、中から赤坂が出てきた。
「あ、お疲れ様です。戦闘2課の赤坂です。」
「ああ、お疲れ様。戦闘5課の上高地です。こちらの婆さんが米沢さん。」
「ですから、婆さんじゃありません。始めまして、米沢です。」
赤坂はいつもの魔法少女シリーズで身を固めていた。
「でも、本当に赤坂さんてそういうカッコしているんですね。」
「ええ。」
赤坂は満天の笑顔で答える。そして、逸れにつられるように、上高地と米沢は頷くばかりである。
「では、事務所に向かいましょう。」
この世界は御伽噺といわれる異世界であった、で、この二人はこの世界の担当者である。赤坂達は、山道をしばらくいった先にある山小屋へと向かう。
上高地は山小屋の扉の脇にある、暗証キーを押すと掌をパネルに乗せた。すると、木製と思われていたその扉が重々しく開いた。そう、ここは見た目は山小屋だが中は普通の事務所である。スチールの机や椅子、電話、パソコンなどが並んでいた。しかし、その脇にはダンボールが山積みだ。
「まあ、どうぞ。」
上高地にうながされ、赤坂は応接室へと通された。
「兵庫課長、赤坂さんが見えられましたよ。」
米沢が部屋のどこかに向かって声をかけた。すると、ダンボールの間から、男が顔をだす。
「もう来たのか。分かったすぐ行く。」
しばらくすると、先ほどの男が応接室に現れる。
「赤坂さん、わざわざすみません。営業部の兵庫です。」
「戦闘2課の赤坂です。始めまして。」
とりあえず、同じ会社なので名刺のやり取りとかはない。
「すみません、まだ湯のみが見つかってないので。」
米沢がトレイに缶コーヒーを4本のせてやってくる。
「いえいえ、お構いなく。」
赤坂が恐縮しているのを尻目に、兵庫と上高地は早速飲み始める。
「申し訳ないが、早速案件の話をさせていただこう。」
この事務所は最近出来たばかりである。つまり、この世界は新規開拓中ということだ。一応戦闘5課の担当エリアなのだが、どうも予定していたよりも仕事が多く、立ち上がりで苦労していた。
「まあね、新規開拓ってことでそれなりには覚悟はしていたけど、まさかここまでとは。」
兵庫が頭を抱える。
「いったい何があったんですか?」
上高地が兵庫をちらっと見て、口を開く。
「実はですね、桃太郎ってご存知ですよね。」
「ええ、キジと猿と犬をつれて、鬼退治に行く話ですよね。」
「そうなですけどね、実際、キジとか猿とか犬で鬼退治ってできると思います?」
赤坂がプッと噴出す。しかし、あわてて真顔に戻る。
「いや、実際普通はそういう反応だと思うんですよ。」
上高地も兵庫、米沢も真顔である。
「で、結果からいいますとね、無理なんですよ。」
赤坂が、あ、やっぱり という顔をする。
「で、桃太郎が今、鬼が島で捕まってるんですよ。」
「え? そうなんですか?」
頷く3人。
「しかし、ちょっと強すぎましてね、鬼が。私達じゃ手が出せないんですよね。」
米沢がしんみりと言う。
「でも、5課にも鬼退治できる人っていらっしゃいますよね。」
さらに米沢がしんみりと答える。
「ええ、居るには居るんですが。イメージが。」
桃太郎は、少年である。少なくとも、見た目は少年でなくてはならない。しかし、5課には見た目が少年といえる人材が居なかった。
「では、私に桃太郎をやれと?」
「「「ええ、是非!」」」
ちょっと考え込む赤坂。
「「「なにとぞ」」」
さらに考え込むが、にこっと笑って答える。
「条件付きで、お受けします。」
「なんだ? これが条件だったのか?」
俺はなぜかキジのカッコをしている。
「まあ、赤坂さんに頼まれたら、断れないっすけどね。」
サスケは犬の着ぐるみだ。ちなみに喉のあたりから顔は出ている。
「で、なんであたしが猿なわけ?」
いや、花子が一番似合ってるんだが。
「というとことで、これから鬼退治にいって、桃太郎を救出します。」
もちろん赤坂が桃太郎である。
「それでは、よろしくお願いしますね。」
上高地係長と兵庫課長が頭を下げてくる。
「ちょっとまった!」
その声とともに、米沢さんが現れる。
「はいこれ。」
そして、なにかが入った袋を差し出してきた。
「なんですか、これ?」
俺は首を捻る。
「まあ、このタイミングだと、キビダンゴっすね。」
「ああ、なるほど。って、俺達すでに仲間になってるぞ?」
「ええ、そうなんですけど、一応お約束で準備しました。」
米沢さんはいたって真顔。
「じゃあ、沖田さん、あーん。」
赤坂がキビダンゴを俺に差し出す。テレながら口を開くと、赤坂がキビダンゴを口に入れてくる。ああ、幸せ。
「一つ貰うっす。」
「あたしも。」
サスケと花子は、その隙に袋から一つづつ取り出して、勝手に食べ始めた。
「では、気をつけて。」
3人に見送られ、俺達は鬼が島へと向かう。
さて、鬼ヶ島だが、見たところ普通の島である。畑もあれば、家もある。お店も普通にあり、喫茶店すらある。おそらくお姉さんがいそうな飲み屋もあり、店の名前が竜宮城なのは突っ込まないでおこう。たぶん、二度と出てこれなそうな感じだ。
「で、どっちに行けばいいんだ?」
赤坂がマップを取り出す。この世界はまだ調査が完全に終わっていないため、俺たちの端末にデータが入っていなかった。
「あっちみたいですね。」
赤坂が指さす方向に、なにやら城のようなものが見える。といっても、いかにも鬼が住んでます的な外見ではなく、普通の中世あたりの城である。
さっそく、歩き始めると、カバンを背負った子鬼の集団とすれ違う。
「「こんにちわ!」」
突然、子鬼の集団から挨拶されて、戸惑ってしまった。
「こんにちわ。この辺に住んでるの?」
「そう。学校が終わったから、帰る途中。」
「じゃあ、気を付けて帰ってね。」
「ありがとう、綺麗なお姉さん。」
子鬼達はさわやかに去って行った。
「なあ、鬼ってやたらとフレンドリーじゃねえ?」
「そうっすね。」
「でも、赤坂、綺麗なお姉さんとか、桃太郎の変装まったく意味なかったみたいだな。」
「「「あっ」」」
おまえら、そこはもっと早く気が付け。
「なんか、鬼の討伐とか、意味なさそうな気がしてるんだけど。」
花子のセリフに、俺たちも思わず頷く。
「とりあえず、城に行ってみよう。」
ここで話をしていても始まらないので、城に向かう。
しばらくして、今度は中学生ぐらい?と思われる集団にであう。セーラー服を着ているので、中学生か高校生だと思う。
「こんにちわぁ。」
今度は花子が声をかける。
「うわっ、猿がしゃべった。ってか、猿のくせに話かけてくんじゃねぇよ。」
そういうと、そそくさと向うにいってしまった。なんか、がらが悪そう。そして、花子は猿に見えてるようだ。
「なんか、こいつらムカつく。やっぱり鬼は退治しよう。」
猿のかっこしているとはいえ、猿と思われることが気に入らなかったらしい。よくわからん。
「まあ、個人的感情は置いといて、とっとと行こう。」
そして、ようやく城に到着する。
「さて、ついたけど、どうしようか。」
俺は回りを見渡すが、城は塀に囲まれている。しかし、塀は乗り越えられなくはない高さである。
「なにか御用ですか?」
そんなことを話をしていると、門番の鬼が話しかけてきた。
「いや、あの。」
鬼は俺たちを胡散臭そうに見ていたが、赤坂のかっこをみて、何かきがついたようだ。
「ああ、桃太郎とかいう集団の保護者の方ですか。」
「え? 保護者?」
思わず顔を見合わせる。
「じゃあ、こちらへどうぞ。」
なんか、城の中に通されてしまった。
通された部屋で待っていると、一人の鬼が入ってくる。
「初めまして。桃太郎、キジ、犬、猿の保護者の方ですね。」
挨拶もそこそこに、俺たちの向い側に座る。どことなく、困惑しているような表情だった。
「いや、あの、なにかやらかしたんですか。」
恐る恐る聞いてみる。
「え? ああ、傷害事件ですよ。島にくるなり、手当り次第喧嘩を吹っ掛けたあげく、戦利品だとかいって、カツアゲまでしましてね。」
うん、桃太郎の立場でいえば鬼退治に来ているので、鬼は見つけ次第倒すし、倒した鬼から金品をとることは何となく理解できる。しかし、鬼からしてみれば、そういうことになるのだろう。
「まあ、未成年のようですし、幸いからまれた鬼たちも擦り傷程度で、とられた物も戻ってきてますので、厳重注意ですますつもりですが。」
「はあ、申し訳ありません。」
なぜか、謝ってしまう。
「じゃあ、引き取ってもらいましょうか。あと、二度とこんなことはしないように、しっかり教育してくださいね。」
ぺこぺこ頭を下げていると、扉があき、桃太郎たちが部屋に張ってくる。桃太郎たちは俺たちを怪訝そうにじろじろ見ていたが、
なぜか赤坂を見るとぺこっと頭を下げる。
「このたびばいろいろとご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」
赤坂が頭を下げると、桃太郎たちも慌てて鬼たちに頭を下げる。
そして、鬼たちに見守られるなか、城をでる。
「あのー、伝説の桃太郎さんですよね。サインもらえませんか。」
城を出た途端に、桃太郎が赤坂に話かける。
「え? お前が桃太郎だろ?」
俺は桃太郎をじっとみる。こいつは俺の知ってる桃太郎だった。
「ええ、正確には153代目桃太郎です。」
そういうと、桃太郎は俺たちにぺこっと頭を下げる。
「なんか凄いことになってそうっすね。」
サスケが頭をかいていた。
「とりあえず、一旦事務所に戻りましょう。」
赤坂が言う通り、ここにいてもしょうがないだろう。一旦事務所に戻ることにした。
事務所に向かう途中の山道で、なんかやばそうな気配がしていた。
「沖田さん、たぶん盗賊が待ち伏せしてるっすよ。」
赤坂もレーダーを見ながら頷いている。
「なあ、桃太郎。盗賊がいるみたいなんだけど、お前らでなんとかできる?」
ふと見ると、桃太郎たちの様子がなにやらおかしい。たぶん、これはビビってるな。
「いや、俺たちなら楽勝だけど、今日はちょっと調子が悪いからやめとくよ。」
キジ、猿、犬もうんうん頷いている。
「え? お前ら桃太郎一行だろ? ちょっとぐらい調子悪くても、盗賊なんか楽勝だろう?」
とたんに桃太郎が真っ青になる。
「いえ、無理無理無理無理。絶対無理。」
ああ、こいつら実は弱いのか。まあ、お供はしょうがないとしても、桃太郎も153代目とかになると、結構弱くなっているみたいだ。しょうがないな。
「おい、盗賊を片付けるぞ。」
赤坂達が頷き、それぞれが動き始める。
俺が前に進んでいくと、盗賊たちがばらばらと姿を現す。
「やい、ってキジかよ・・ まあいい、荷物なんぞ持ってないかもしれないが、とりあえず置いていけ。命は助けてやる。」
「断る!」
キジっぽくはないが、腰に手を当てて答えておく。
「え? キジがしゃべった。」
盗賊たちが、慌てふためく。うん、このかっこはこいつらにはキジに見えてるようだ。ふと上を見上げると、花子が木から飛び降りてきた。それに合わせてサスケも盗賊たちの背後に回る。
「やべえ、猿もいやがる。って、犬に背中をとられた。」
盗賊たちがパニックに陥った。わからん、犬と猿とキジを相手にパニックになるとか、こいつらどんだけ弱いんだ?
花子が盗賊の一人を殴り倒す。そして、サスケも盗賊たちの刀を軽くよけると、バッタバッタとなぎ倒していた。
俺も目の前の盗賊を殴ろうと襲い掛かる。
「うわっ。このキジ、俺を殴ろうとしてる。」
え? キジが殴ったらダメなの? サスケはなぎ倒してるけど。しょうがないので、襟元をつかんで投げようとする。
「うわっ。キジのくせに、俺を投げようとしてる。」
いや、まてまて。俺にどうしろと。 ふと思いついた。
「や・ら・れ・た」
キジは頭突きが正解だったらしい。でも、これは俺の頭も結構痛い。ふと、回りを見ると、盗賊は残っていなかった。
「さすがは伝説の桃太郎だ。恐るべき強さだ。」
いや、お前らが弱すぎるだけだと思うぞ。とりあえず、それは置いといて事務所に帰る。
「じゃあ、なにか。別に鬼たちとはトラブルもなく共存してるってことか。」
伝説の桃太郎であること、(自分たちと比べて)恐ろしく強いことが発覚した影響だろうか、桃太郎たちはすらすらと説明を始める。
桃太郎の話を聞くと、100年ほど前までは、鬼たちとのトラブルが絶えなかったようだが、鬼たちの生活レベルが上がるにつれてトラブルもへり、今では鬼たちの方が文化的にも進んでいるらしい。
そして、それに合わせて桃太郎たちが鬼ヶ島へ鬼退治にいくこともなくなったのだが、この桃太郎は先祖達がやっていた鬼退治というものをやってみたかったそうだ。それと、財宝目当てであったことも白状した。これについては、桃太郎が強くないので、手に入ったらうれしいな、ぐらいの話だ。
「これ、どうしましょうか。」
兵庫課長たちを見ると、頭を抱えていた。まあ、そうだよな。でも、俺たちも手が出せない。
「あとは、こちらでなんとかします。ええ。」
兵庫課長がため息をつきながら、頷いた。
「じゃあ、俺たちは戻りますんで。ところで、俺たちの着換えってどこですかね。」
「え? ああ、そうでした。忘れてました、あまりにも自然なので。」
米沢が慌てて俺たちの着換えの入ったかごを持ってくる。
「その着ぐるみ、記念に持ち帰られてもいいですよ。」
上高地係長がにっこり微笑みかけてくる。
「「いえ、結構です。」」
俺たちはそそくさと本社へ戻って行った。二度とこの世界には来るまいと、堅く心に誓って。
次は3章に戻ります。




