27話
2章の2つ目の話となる27話です。
■27話
評議会との打ち合わせは、ロンドガル王国の国王が議長を勤めている関係で、ロンドガル城の会議室で行われた。
「本日はお集まりいただき感謝する。早速だが、評議会を開催する。」
ロンドガル国王の挨拶で、評議会が始まった。
「まず、本日の議題だが、チャーズ共和国によるヨーレル帝国への侵略行為について。 あと、実験島についての説明の2件となる。」
全員が手元の資料に目を通し始める。といっても、コピーではない。文官が羊皮紙に手書きした資料だった。これは大変だな。
「それでは、ヨーレル帝国より、現状の説明を行わせていただく。」
ヨーレルの大臣が説明を始める。
現在、国境付近で散発的に戦闘が行われているらしい。そして、ヨーレル帝国は押され気味。といっても、大きく負け越しているわけではなく国境付近の砦で防いでいるので、国内は比較的安定しているらしい。
とはいえ、戦闘状態であることには変わりなく、このまま続けば、国力の低下は免れない。
ロンドガル国王が立ち上がる。
「一点確認させていただこう。話を聞くと、国境付近の戦闘は散発的だそうだが、チャーズ共和国の軍隊はそれほど投入されていない、ということだろうか。」
「報告では、それなりの数は投入されているようですが、噂に聞く50万とか100万という訳ではありませんな。」
ヨーレルの大臣が答えていく。
「おそらくですが、チャーズ共和国の内政はそれほど安定していない様子。よって国内の制圧のための軍や、北の魔物に対する防衛線の確保などにもかなりの兵をとられているかと。」
あちこちでうなずいている。
「しかし、それでもおよそ5万ほどの兵は投入されているようですから、気は抜けません。」
たしか、ヨーレル帝国は20万といわれていたはず。とすると、国境付近には1万とか2万の兵を配置するのがやっとだろう。やはり、ヨーレルは工業国家というだけあり、武器などが優れているので、その戦力差があっても耐えているのだろう。
「よって、ヨーレル帝国としては、評議会にチャーズ共和国の討伐のための連合軍を要請する。」
ちょっとはざわつくのかと思いきや、静かなものだった。予想の範疇なのだろう。
「では、連合軍について検討することとする。」
すかさず、あちこちから声が上がる。
「意義なし。」
「早急に連合軍を送り込むべし。」
なんか、血の気の多い連中が多いらしい。ちょっと頭がいたくなってきた。
「冒険者の近藤殿、なにかご意見はござらぬか。」
ロンドガル国王も、さすがにまずいと思ったのだろう。頭を冷やさせようと必死のようだ。
「若輩ものながら、思うところを言わせていただく。」
近藤部長が立ち上がる。若輩とかいっているが、そのオーラはとても若輩とかいうレベルではない。一瞬で静かになった。
「まず、連合軍については必要であろう。むしろ、早急に送り込む必要もあると認識している。」
ここでちょっとざわつくが、ぐるっと見渡すだけで、また静かになった。
「では、討伐した後はどうなさるおつもりなのか。そこを確認したい。」
そうそう、後始末は非常に大事である。戦争して終わり、ではない。むしろ、戦争したあとどうするのかを先に考えておかないと更なる紛争を生むこともあるし、焼け野原が残るだけとか、取り返しが付かなくなるのである。
「うむ。たしかにその通り。チャーズ共和国の存続は認められぬ。それは次なる侵略を生みかねない。」
ロンドガル国王は、ヨーレル帝国の面々に目を向け、話を続ける。
「かといって、ヨーレル帝国がチャーズ共和国をその配下に収めるというのも、ロンドガル王国としては認められない。」
他の国々からも、認められないという発言が、次々にでてくる。
それはそうだろう。評議会の力で勝ち取ったものを、独り占めとかありえない。ましてや、その結果最大規模の国になるのだから。
「ヨーレル帝国として、そのようなことは望んではいない。ご安心いただきたい。」
ヨーレルも国王が必死に反論している。まあ、はじめから貰えるとか思ってなさそうだけどな。
「静粛に。ではチャーズ共和国の領土はいかがするべきか。」
一斉にしずまり帰る。これは答えがでそうもない。
ふと、何かロンドガル国王と目があったような気がした。しかも、不吉な笑いをしている? いやな予感しかしない。
「では、ひとまず、次の提案をする。一つ、チャーズ共和国への連合軍の派遣は、現状を考慮し早急に行うものとする。」
ほぼ全員が拍手をしている。拍手が賛成の意味なのだろう。
「一つ。チャーズ共和国の領地については、今後の継続検討とするが、何らかの結論が出るまで、そこに居られる勇者沖田殿に統治を依頼したいと思う。」
「はあぁ?」
俺は立ち上がって反論しようとしたが、赤坂と斉藤課長に押さえ込まれた。
「沖田、落ち着け。大丈夫だ。問題ない。」
この人達は、なにを言ってるんだ? まったく分からん。 大丈夫な訳もないし、問題もありまくりだ。
「沖田さん、これも計画のうちです。」
周りをみると、先ほどと変わらない位の拍手がされていた。
俺は悟った。これは出来レースだ。はめられた・・・
「では、これにて閉会とする。」
こうして、斉藤課長に押さえ込まれたまま、失意のうちに会場を後にする。
実験島に戻ってきた。
もう、誰も信用できない。いや、「猫耳」お姉さん除く。
「斉藤課長、なんですかあれは。」
「ん?説明してなかったか? まあ、そういうことだ。」
「いや、説明なんぞ何もありませんでしたし、なにがそういうことなんですかね?」
ちなみに近藤部長はさっさといなくなりやがっていた。
「落とし所ってやつだ。考えてみろ、チャーズの領地は結構な規模だ。あれを手に入れたら、一気に大国の仲間入りだ。バランスが一気に崩れる可能性もある。」
「で、今回の案だと、そのバランスは崩れないと?」
「ああ、俺達は永住できなので、好都合というわけだ。」
「問題の先送りってやつですか。」
「その通り。まずはチャーズの脅威を取り除くことが先決だ。その後の懸念で立ち止まると、被害は大きくなる。」
たしかに、チャーズを放っておくと被害は大きくなるだろう。
「分かりました。では、なぜ俺なんですか? この場合なら近藤部長とか斉藤課長の方が適任では?」
「いや、お前勇者だし。俺達は忙しいし・・」
「いや、いや、斉藤課長達も勇者でしょう? それって、俺は暇だと?」
「あっ、そういうわけでは・・・ とにかく、これは業務命令だ!」
そういうと、斉藤課長はさっさと会社に戻ってしまった。
「なんだかなぁ。」
さっきから、ため息しかでない。
「大丈夫ですよ、きっと。」
「赤坂、その根拠は?」
赤坂は黙ってしまった。
「なんとかなるっす。」
「どうやって?」
サスケもやはり黙ってしまう。
「拳で語り合えば、問題ないぞ。」
花子、お前は黙ってろ・・
「はあ、しょうがない。とりあえず知ってることを教えてくれ。」
田中とかもついでに呼び出しておく。ムカつくことに、田中はこの話を知っていた。というか、こうなることすら知っていた。
「じゃあ、まずは連合軍について、分かってる分だけでも教えてくれ。」
「それは自分から説明するっす。」
サスケが説明を始める。しーちゃんのサスケを見る目がハートマークなのは、お約束だろう。
「まず、連合軍は、ロンドガルを中心としてるっす。しかし、今回はルイーネ大陸なんで、冒険者ギルドが中心になる可能性もあるっす。今回の件っすけど、出発までは準備含め最短でも1ヶ月、おそらく3ヶ月はかかると思うっす。」
「なるほど。で、俺達については?」
「おそらくっすけど、事後の対応のために、それほど戦闘への参加はないと思うっす。とはいえ、まったく参加しないで領地だけってのもまずいっすから、形だけでも参加することになると思うっす。」
まあ、妥当なところだろう。
「じゃあ、次は統治について。」
「それは俺から説明しよう。」
田中が詳しそうだった。
「そのまえに、チャーズの歴史について説明する。チャーズはもともと今の半分ぐらいだったんだが、周りの小国を侵略して徐々に大きくなっていった。で、50年ほど前に北の森から魔物の侵略を受けて南に徐々に押しやられていたんだが、そのまま南にあったレットラント公国を20年位前に侵略して今の領土になったわけだ。ちなみに北の魔物は森からは大きく出てこなかったらしい。おそらく瘴気の関係だろうな。」
「じゃあ、あの土地ってもともとはいろいろな国だったわけだ。」
「そそ、ついでに統治も武力による統治だから、結構反乱分子もいるみたいだね。」
「その反乱分子をうまく味方につけられれば、それなりに統治はできそうってことか。」
「そそ、そういうこと。」
「お前、そそってそんなに簡単にいかねーぞ?」
「いや、沖田なら大丈夫だって。俺達も協力するし。」
見渡すと、全員がうなずいていた。
「分かった、つまりお前たちは田中の指揮のもと、例の統治の話も含めてその準備を進めていたってことか。」
「うっ。」
「沖田さん、それは・・」
一斉に下を向きやがった。赤坂だけが平然としている。赤坂が反対していたってのは本当だろう。
「まあいい。今後のことが優先だ。」
そこで何人かが部屋に入ってきた。
「あれ? 青森さん?」
「沖田さん、久しぶりですね。」
青森さんというその人は、俺の知り合いだった。でも、グローバルにいたはずだが。
「沖田は知り合いだったのか、青森さんはグローバルからうちに移ってきたんだ。」
田中がいうには、グローバルはバカ王子のせいで会社が傾いたので、結構な数がうちに移ってきたらしい。
「青森さんには、猫人族とリザードマンの管理とか相談役をやってもらってる。」
これは赤坂の指示だろう。適任だ。実は昔、とある案件でこっちの住民とトラぶったときに、たまたまいた青森さんに助けてもらったことがあった。その時の見事な調整力は忘れられない。俺以外にも、青森さんに助けられた者は多いだろう。
続いて、青森さんの後ろにいた二人が挨拶してくる。
「沖田殿、ご無沙汰しております。ザンギと申します。その節はいろいろとありがとうございました。」
ザンギはリザードマンだが、俺にはまったく見分けがつかない。多分、あのときの誰かであるのは間違いないが。でもリザードマンにしては、言葉が流暢だ。きっとエリートなんだろう。
「沖田さん、始めまして。スマイリーです、よろしく。」
スマイリーは猫人族だが、初めて会う。多分。まあ、男の猫人族なんぞ覚えていないし、覚えるつもりもない。
「ザンギとスマイリーは、それぞれの代表として、連絡などのために常駐してもらうつもりです。」
青森さんが選抜してきたようなので、この二人は安心していいだろう。
「じゃあ、次にここの状況かな。」
「では、私から説明します。」
いきなりプロジェクターが出てきた。しかも資料も作りこんである。いつの間に・・
「まず、現在確認できている、この島の地図です。」
地図が映し出される。
「この事務所は、島の南側の大体この辺りに位置しています。」
うん、ちょっと内陸よりの場所だろうか。周りから隠す意味でも、この場所はいい判断だろう。
「そして、猫人族の皆さんはこのあたりの海岸、リザードマンの皆さんは、このあたりの沼地にそれぞれ住んでいただいております。」
これもそれぞれの好みにあわせた配置だろう。特に問題はなさそうだ。
「次に施設などについてですが、現在この事務所と実験ドームはおおむね完成しております。」
実験ドームはさっき見たドームのことだ。
「また、外部からの侵略などに備えて、レーダーや監視カメラも配置済みです。」
これもさっき聞いたな。
「動力ですが、ソーラーパネルと風力発電は完成しており、電気の利用が可能です。レーダーや監視カメラなども、この電気を利用しております。」
「でも、それだけだと安定供給って難しくないか?」
「たしかにその通りです。そのために、大型のバッテリーを利用しております。とはいっても、節電しながらには変わりませんが。また、北に火山がありそうですので、地熱発電の導入も検討中です。」
もう、完璧すぎて何もいえない。本当の黒幕は赤坂だったりするのか・・・
「ん? 北ってどのくらい確認できてるの?」
「それは自分から説明するっす。」
サスケに変わる。
「正直、南は平地が多いので結構簡単に確認できたっすけど、北は森と山があるのでまだ殆ど手付かずっす。あと結構寒いっす。」
この島は結構不思議な構造になっている。 というか、この世界も不思議な構造なのだが。
まず、この世界は、南にいくと暖かくなり、北にいくと寒くなる。つまり、南のローネシア大陸は暖かく、ルイーネ大陸は寒い。赤道とか海流とか、そんなものは関係無かった。
さらにこの島はこの世界の縮尺になっている。南はローネシア大陸の南部と同じぐらい暖かいが、北はルイーネ大陸の北部と同じくらい寒いのだ。この島一つに、この世界の気候がすべて集約されている感じだ。そういう意味でも、この島は実験に向いていた。
「じゃあ、今後は北の確認が優先ってことか。」
「ええ、北にはチャーズもいますので、レーダーの配備も必要です。」
北からの侵略は、山越えルートになるので結構きつそうだが、可能性はなくはない。なので念には念を入れてレーダーは必要だろう。
「わかった。じゃあ、今日はそろそろ定時だからこの辺にして、細かいことはあとで決めていこう。」
とりあえず、打ち合わせを終わりにする。定時で帰れる日は、さっさと帰るに限る。
翌日、細かい話を詰める前に、一旦下見に行くことにした。まずは実験ドームである。
「こんにちわ。」
この世界には相応しくないセキュリティゲートを抜けて、挨拶しながら中に入ると教授が作業をしていた。
「よう、沖田君。なんか大変なことになってるらしいな。」
「ええ、どうしてこうなるのか。」
苦笑いする。
「ところで状況ってどうですか。」
教授達はすでに1ヶ月ほど、この実験ドームでいろいろな実験をしている。
「まあ、始まったばかりだし、これからじゃな。」
「そうですね。ところで島根さんは?」
ここにいるのは教授だけ。
「島根君は技術指導にいっておるよ。」
教授達の実験がある程度進むのには時間がかかる。その間に実験の下地を作る必要もあるので、島根さんは猫人族やリザードマンの村で農業関連の技術指導をしているようだ。
そのあと、いくつか確認したのちに、実験ドームをでる。
「じゃあ、次は猫人族の村かな。みんなジープ乗って。」
田中に促され、田中の運転するジープの助手席に乗り込む。後部座席には赤坂としーちゃんこと高知さんが乗り込んだ。
1時間ほど走ると、村が見えてきた。
猫人族の村には、30人ほどが住んでいた。ダンジョンの影響で村を追われた人たちである。もっとも、移住先で問題なく暮らしていたのだが、この島の話を聞きつけて押しかけてきたらしい。
「ロドリゲスさーん。」
田中が向こうにいる人に声をかける。すると、村長のロドリゲスさんが猫人族らしいスピードでこちらに走ってきた。
「田中さん、今日は何の用で? って、沖田さんじゃないですか。」
「ロドリゲスさん、久しぶりです。」
そのあと、ロドリゲスさん達と話をする。猫人族の村では、牧畜を中心にやっているらしい。あとは海に出て漁もしているし、近くの森で獲物も取ってくるようだ。
ちなみに、当初は魚の養殖をする予定だったのだが、養殖の魚をつまみ食いするため、急遽牧畜に担当を替えたらしい。
で、重要な「猫耳」お姉さんだが、5人ほどいらっしゃった。すばらしい。ここには頻繁にくることになりそうだ。
ふとみると、海岸には港も完成していた。ついでに港も見せてもらう。
「あれ、これってクルーザーじゃないの?」
「ああ、それ? 中古だけどね。一応防弾仕様にはなってる。」
「いや、田中。そいうことじゃなくて、これいいのか?」
「うーん、いろいろあったんだけど、ここって島だろ? 周りが全部海なのに、船とかないと不便だし。それともお前、手漕ぎのボートで海渡るわけ?」
「あ、たしかに。」
「あと、微妙にこっちの文化に合わせてるから、意外と違和感ないらしいよ。あ、スピード以外ね。」
まあ、OKでてるなら、よしとしよう。便利だし。
その後、俺はここに一泊するつもりだったが、赤坂に引きずられるように猫人族の村をでる。次はリザードマンの村だ。
リザードマンの村は、結構大きな沼のほとりにある。ってか、これは沼じゃなくて湖だろ?と思うが、沼らしい。基準が分からない。
こちらでも村長のバンゴさんに挨拶するが、島根さんもいた。
「沖田さん、ようやく現地入りですね。」
「ええ。ところで、こちらの様子はどうですか。」
「リザードマンの皆さんには、養殖とかプランテーション、ああ大規模農場ですね、なんかを中心にやってもらってます。」
リザードマンが畑仕事とか、生簀のえさやりとか、ちょっと想像できない。
「あ、向いてないと思うでしょう。自分も最初はそう思ってたんですが、実はものすごく向いているんですよ。」
意外だった。なんでも、リザードマンはものすごく真面目なのだそうだ。あと力も強いので、農作業も向いているとのこと。
で、やっぱりこっちにもトラクターとかあった。もう突っ込まない。
「飲み込みも早いので、教授の方が準備出来次第、こちらでも大規模な実験ができそうですよ。」
そのあと、バンゴさん達ともいくつか話しをして事務所に戻ることにする。
昼食をとったあと、細かい話を進めていくことにする。
「じゃあ、打ち合わせ始めるか。 まずは担当きめかな。」
昨日のうちに作った資料をプロジェクターで映す。つまり、家で内職して作った資料だ。
一応、ここでは俺が責任者ってことになるので、俺が帰らないとみんなが帰りにくいかと思って、なるべく早く帰るようにしているため、のこった仕事は家でやることになる。これが中間管理職というやつなのだろう。ま、やってられんな、こんなの。
「防衛とか、戦闘だけど、これはサスケにお願いする。チャーズに狙われている事実があるので、よろしく頼む。」
「了解っす。」
実際、サスケは戦闘能力もあるし、戦闘指揮も大丈夫だろう。なにより、情報戦もこなしてしまう。
「つぎに外交関連だけど、これは田中かな。」
「だろうね。任された。」
田中は営業という交渉のスペシャリストだ。あと、得体のしれない情報網も持ってるので、外交には向いているはず。
「設備系は熊本さん、よろしくお願いします。 あ、6課もつきますので。」
「了解した。」
ここの設備を作ったのが熊本さんなので、これは順当だろう。実際のメンテナンスなどの作業は6課のメンバーが交代で担当する。実際、今も、熊本さんが6課のメンバーに指示を出しているので、問題ないだろう。
「会計なんだけど」
「それさ、しーちゃんでどう?」
「そのこころは?」
「いや、しーちゃん数字強いし。適任なんじゃないかな。」
俺的には赤坂のつもりだったが、意外と悪くないかもしれない。こっちの方面については、田中は信用しても問題ない。
「じゃあ、しーちゃんよろしく。」
「え、あ、はい。よろしくお願いします。」
しーちゃんは立ち上がって、深々とお辞儀をする。この子、いい子だわ。田中のアシスタントとか勿体無い。さすがはサスケの許婚ってところか。カッコはあれだけどな。
「総務とか書類関連は花子だな。」
「おい、沖田。そうなるの?」
「ああ、そうなる。というか、お前は総務経験者だろうが。お前しかいない。ちなみに、北の捜索には参加してもらうから、安心して総務に打ち込め。」
「まあ、しょうがないか。じゃあ、やる。」
花子のやつ、踊り来るってやがる。うるさいので、サスケに黙らせる。
「青森さんには、猫人族とかリザードマンの方の管理とか相談役お願いします。」
「了解しました。謹んでお受けいたします。」
青森さんは、戦闘よりも現地との調整などが向いている。これは俺の経験が立証済みだ。
「最後に赤坂なんだけど」
「私は沖田さんの秘書ですね。」
「え?」
赤坂が当然という感じでうなずく。 なぜか周りもうなずく。
「そ、それって・・」
「赤坂ちゃんぐらい優秀な秘書でもいないと不安だし、いいと思うけど。」
た、田中・・・ その不安ってのはなんだ・・・
「じゃあ、なんかあったら赤坂ちゃんに報告ってフローでいいね。」
一斉にうなずく。
ん? 赤坂に報告? つまり何だ、赤坂が実質的な王様ってことか。 ・・・まあいいや。楽できるし。
「じゃあ、担当はそういうことで。」
次の議題にうつることにする。
「チャーズの状況だけど、サスケ頼める?」
「了解っす。チャーズの状況を説明するっす。」
サスケがプロジェクターの資料をもとに説明していく。
「まずはヨーレルとの状況っすけど、ご存知のようにチャーズに有利な状況っすけど、全体としては膠着状態になってるっす。」
その辺の話は聞いたことだ。
「ただ、気になるのが、そっちはダミーでこの島への侵略準備をしていそうっす。」
なんだと?
「俺から説明しよう。物の動きとかからの推測なんだが、チャーズの海軍が動き出してる感じがある。」
「海軍か。ヨーレルとの戦いに海軍はあまり出番はなさそうだな。」
「そそ、じゃあ、海軍が動くとしたら、目標は? ってここしかないだろ。」
たしかにそうなるな。俺達はうなずく。
「とはいっても、明日、明後日にいきなり襲撃されるってことはないっす。 チャーズからここまでは、1週間ぐらいはかかるっす。」
こっちの船は、基本的に帆船とか、手漕ぎのガレー船らしい。今回の場合だと、兵の運搬や揚陸があるのでガレー船だろう。
帆船てのは、物を運ぶのにつかっているとのこと。操舵も難しそうだし。でも、ガレー船はともかく、帆船は殆どみたことないな。
「一応、レーダーでの監視もできてるっすから、奇襲されてもおそらく事前に把握可能っす。」
「じゃあ、一応斉藤課長には報告しておいて。」
赤坂がメモを取りながら、うなずいてくる。すげー楽w
「じゃあ、次は北の探索かな。」
「そうっすね。早めに探索して、レーダーの追加も設置しときたいっす。北にレーダー設置できれば、奇襲もつぶしやすいっす。」
「あと、地熱発電の調査もしときたいんですが。」
「そうですね。そっちは熊本さん中心で大丈夫ですか。」
「ええ、任せてください。」
その後も、北の状況や探索手順などを検討していく。
探索については、俺のチームにスマイリーと熊本さん、青森さんが加わる。ザンギは寒いところが苦手なので、今回は不参加だ。
「そんな感じでいいかな。じゃあ、明日から始めようか。」
こうして、なんとか体制が出来てきた。明日からは久々の戦闘がありそうだし、こっちの世界での泊り込みになるので、早めに帰ることにした。
2章は週末更新を予定しています。




