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26話

予定より早めですが、第2章開始です。

一部、1章の設定と違っているところがあります。そこは見逃してください。

また、各話のタイトルやめました。なぜならセンスないから。タイトルに1時間とか悩むっておかしいだろう?ということです。

■26話



 久しぶりの出社で会社の前で一人感傷に浸っていたら、思いっきり守衛さんに睨まれた。どうやら不審者と間違われたらしい。

 そう、ようやく退院でき、今日から出社だ。

 思えば、魔王との戦いから3ヶ月が過ぎていた。

 

 

「おう、ようやく来たか。」


 千葉さんをはじめとする、課のみんなから声をかけられながら、久しぶりの自分の席に着く。が、なんだこれは・・・

 

 俺の席は、大量の資料で埋まっていた・・・

 

「まさか・・・ ここまで・・・」


「それぐらいは自分でやりなさいよね。」


 花子が生暖かい声をかけてくる。

 

「さすがにそこの資料は手が出せませんでしたので。」


 赤坂? 青山? がすまなそうに言ってきた。

 どうやら、この3倍はあったそうだが、俺の代わりに処理してくれていたらしい。なんとありがたいことだ。

 

「ということで、1週間お昼ご飯のおごりで手を打つから。」


 花子はドヤ顔だ。

 恐ろしいことに、一番活躍したのは花子だったらしい。まあ、元総務だし、こういうのは得意だろう。当然といえば当然か。

 

 とりあえず、資料の整理から始めることにする。

 

 そういえば、退院のときは赤坂しか来ていなかった。サスケは新規案件とかで、俺の代わりに斉藤課長に拉致されていたそうだ。

 花子も来ていなかったが、それはどうでもいい。おそらく、この資料と格闘していたのだろうけど。


「そうそう、新規案件ってどうなってるんだ?」


「ええ、結構大変です。退院のときも言いましたけど、詳細は斉藤課長から説明がありますから。」


 そう言うと、赤坂も忙しそうにどこかに行ってしまった。

 

「花子、なにがあった?」


 資料を仕分けしながら、花子に尋ねた。

 

「いや、魔王退治したじゃない? あれで結構平和になったんだけどね。別な問題が結構でてるのよ。」


「別な問題って?」


「食料問題とか、国家間の紛争とか。」


 どうも平和になったのはいいが、今後人口増加が予想されるらしい。まあ、これまで魔物による被害は結構あったわけだから、その脅威と被害が減れば人口も増えるだろう。といっても、魔物はまったくいなくなったわけではなく、少なくとも異常な大量発生などはなくなったというレベルだが、それでも突然村が大量の魔物に侵略されて無くなるということがないだけでも、全然違う。

 で、人口が増えるということは、食料不足が懸念されるということだ。

 土地や仕事の不足の問題なども想定されるが、もともとこの世界は未開発の土地がたくさんあるので、それらの開発が進めば土地の問題はなくなるだろう。そして、土地の開発には人手は必要不可欠だ。

 

 あと、これまでは魔王やら、魔物やらの共通の敵がいたので国家間で争っている場合ではなかったが、共通の敵がいなくなったので紛争が出てき始めているということだろう。

 

「でも、評議会とかは動いていないのか?」


 そう、こちらでいう国連みたいな感じの評議会という組織があり、俺達が担当していたロンドガル王国をはじめとして、ラフェリア王国、ヨーレル帝国とかが中心となっている。そして、評議会が国家間の調整などをしていた。

 

「評議会は一応うまく機能してるみたいだけど、全ての国が評議会参加してるわけじゃないでしょ。」


「ああ、ひょっとしてチャーズ共和国あたり?」


「そそ。」


 チャーズ共和国は、戦闘国家で知られている。そしてその性質上、協議会には当然参加していない。参加したところで戦闘国家という性質上、周りに責められるだけだし。

 また、戦闘国家であるため、冒険者ギルドに頼らすに魔物の討伐をしていたため、ギルドを通して得られる情報も非常に少ない。各国は独自でスパイを忍び込ませてはいるが、その情報は評議会のような表にはほとんど出さない。

 

「なんかね、となりのヨーレル帝国とかにちょっかいだしてるらしいのよ。」


「面倒そうだな。」


 とりあえず、書類との戦闘に戻ることにする。

 

 

 2時間後、ようやく仕分けが終わった。

 思ったより早かったのは、花子とかが面倒なのを中心にやってくれていたおかげだ。残ってるのは、俺の経費とか報告書とかだけだった。これなら、今日中に終わるだろう。

 

「あ、沖田さん。ひさしぶりっす。無事退院すね。」


 サスケが戻ってきた。


「よう、サスケ。俺の代わりに拉致とかすまないな。」


「いえいえ、これぐらい平気っす。」


 赤坂も一緒に戻ってきたので、ちょっと早いが昼飯にいくことにする。

 


「で、どうなってるんだ?」


 久々の社食のランチを食いながら、サスケに聞く。ちなみに、全員分俺のおごりだったりする。

 どうでもいいことだが、俺は380円のB定食、サスケが500円のA定食、赤坂と花子は1000円のスペシャル定食だ。どうでもいい。ああ、本当にどうでもいいんだが、なんで俺ですらめったに食えないスペシャル定食なんだ? 俺のおごり・・・


「まず、問題は食料問題とチャーズ絡みの紛争の2つっす。」


 先ほど花子から聞いた情報と同じのようだ。赤坂がちらっとサスケを見るが、すぐ食事に戻る。俺に聞かせたくないのだろうか。

 まあ、目の前にも別な意味で、食料問題というか、財政問題があるんだが。

 

「食料問題は、今後人口が増えることが予想されてので、供給が足りなくなる見込みっす。なので、農地の拡大とか品種改良とかいろいろな手で食料の供給量を増やす必要があるっす。」


「それって、うちがやるのか?」


「確かにうちのテリトリー外っすけど、そうも言ってられないみたいっす。」


「まあ、食料の取り合いってのは、治安の悪化とかに発展しやすいからな。」


 一斉にうなずく。

 食料問題は大きいだろう。それに供給量を増やすことは、人口増加以前に、飢饉などの対策としても有効だ。飢饉による暴動などはこれまでにも発生していた。

 

「で、チャーズっすけど、ヨーレル帝国とかにちょっかい出してるっす。どうも、これも食料がらみのようっす。」


 ヨーレル帝国は、チャーズと同じルイーネ大陸にあり、隣の国だ。鉱山が多数あり、工業が盛んな国である。

 食料問題の解決という点では、農業が盛んなラフェリア王国あたりを狙うのがいいのだが、ラフェリアはロンドガル王国などと同じローネシア大陸にあり、海の向こうである。

 ヨーレルをせめて、食料と工業技術を手に入れ、船の強化をしてから海を渡ってローネシア大陸に攻め込む、とかいう妄想をしているのだろう。



「それは、自国内での食料不足を解消するのに、周りの国から略奪しようってこと?」


「そうっす。」


「どうしようもないな。」


 とりあえず、お茶を飲む。


「もっと厄介なのがあるっす。」


「まだあるのかよ・・」


「ローネシア大陸とルイーネ大陸の間の島あるじゃないっすか。」


 地球に当てはめると、北半球にルイーネ大陸があり、南半球にローネシア大陸がある。

 そして、赤道付近ぐらいにちょっと大き目、といっても、北海道を小さくしたぐらいの島がある。

 

「あそこって、どこにも属してないよね。」


「そうっす。なんでチャーズが狙ってるっす。」


 その島は、立地的に軍事拠点としては絶好の場所にあるため、評議会の管轄下に置かれどこも手出しができないようになっていた。 とはいえ、評議会に参加していないチャーズ共和国にしてみれば、関係の無い話だ。

 また、その島の周辺の海は結構いい漁場なので食料問題の面でも有効だろう。

 

「軍事的にも、食料的にもおいしいってことか。」


「ええ、そういうことです。」


 赤坂? 青山? がデザートのプリンを食べながら、うなずいていた。

 

「ところでさ、話が変わるんだけど、今後は赤坂? 青山? どっちで呼べばいい?」


 赤坂? 青山?はきょとんとした顔で

 

「どちらでもかまいませんよ。会社的には、赤坂のままにしてますけど。」


 そう、赤坂恵は偽名であり、本名は青山紅なのである。 どっちで呼ぶべきか、非常に迷っていた。

 

「じゃあ、これまで通りに赤坂にするわ。」


 赤坂はプリンをほおばりながら、ニッコリ笑いかけてきた。

 その笑顔に思わず、俺のプリンもあげてしまった。

 

「え?あたしは?」


 花子が不機嫌そうに言ってくるので、アジフライの尻尾の部分をそっと渡す。

 

「沖田!」


 いきなり花子に殴られた。

 

「まあ、三村さん。半分あげますから。」


 赤坂はそういうと、花子にプリンを半分よそう。相変わらず赤坂はやさしそうで、ちょっとほっとした。

 

 

 昼飯も終わり、部屋に戻ると斉藤課長から呼び出しがあった。

 赤坂達と斉藤課長のいる会議室へと向かう。

 

「失礼します。」


 部屋に入ると、斉藤課長をはじめ、近藤部長や越後屋、それに青山会長までいた。ほかに見慣れない人も何人かいる。

 

「よう、もう大丈夫か。まあ、座れ。」


 近藤部長に促され、俺達は空いている席に座る。

 

「じゃあ、斉藤くん。ざっと説明してあげてくれ。」


 青山会長に促され、斉藤課長から先ほどサスケ達から聞いた話を説明される。

 合わせて、見慣れないメンバーも紹介された。

 

「北斗大学の鳥取教授と、助手の島根さんだ。主に食料問題を担当していただく。」


 鳥取教授は50ぐらい、島根さんは40ぐらいだろうか。でも、なんかどっかで聞いたことがあるような・・・

 

「触手コンビ?!」


「こらっ!!」


 斉藤課長に怒鳴られた・・・

 

 そう、北斗大学の鳥取、島根コンビといえば、触手を開発したことで有名だ。これにより、とあるジャンルで人気のある触手が、アニメだけでなく、実写でも大活躍しはじめていた。俺も某ハリウッド系の映画でみたことがあった。

 

「まあ、いい加減、そのふたつ名もなれましたよ。」


 鳥取教授が笑いながら答える。島根さんにいたっては、自慢げに胸を張っていた。

 

「あと、三村建設の熊本さんだ。」


 いかにも職人って感じの角刈りのガタイのいいおっさんだ。でも、三村建設?

 

「熊さん、久しぶり。」


 花子が熊本さんに手を振っていた。

 

「え? 花子の親父さんの会社の方?」


「ええ。御嬢が世話になっております。」


 三村建設は、結構大手だ。そして、花子の親父さんは三村建設の専務だった。社長は、親父さんのお兄さんだったはず。

 熊本さんは、花子の親父さんの部下だそうだ。


「熊本さんには、設備とかを担当してもらう。」


 多分、あれだろう。品種改良にせよ、拠点は必要だ。その拠点の構築とかが思い浮かぶ。

 

「でだ、明日評議会と今後についての打ち合わせを行う。沖田も参加するように。」


「俺もですか?」


「ああ、今回の件には魔王を討伐したお前が欠かせない。」


 ちらっとサスケを見る。

 

「サスケも討伐してますけど?」


「もちろんサスケも参加してもらうが、お前も強制参加だ。これは業務命令だ。」


 一斉にお偉方がうなずく。これは逃げられん。

 

「そうそう、装備は今日中に受け取って来い。明日は装備でいく。」


「え?評議会とやりあうんですか?」


「まさか。俺達の正装みたいなものだと思え。」


 まあ、確かに装備は俺達の正装みたいなものだ。あっちの世界にスーツきてくとか、考えたくもない。

 

「すみません。俺達って何をやらされるんですか?」


 凄く気になっていたことを聞く。

 

「聞いた話では、チャーズとヨーレルの間で紛争がありそうとかって。ひょっとして、講和の対応とかですか?」


 斉藤課長が、近藤部長をチラッと見る。近藤部長も青山会長をチラッと見た。で、うなずく青山会長。なんだ、これは・・

 

「斉藤くん、変わろう。」


 近藤部長が話はじめる。

 

「まず、最初に言っておく。これは業務命令だ。」


 いきなり脅しにきた・・・

 

「斉藤課長から話があったように、食料問題と国家間の紛争の大きく2つの問題がある。で、食料問題については、例の島、実験島とよんでいるが、そこを拠点として品種改良などを行う。そしてもう一つ。その実験島は、現在チャーズ共和国の脅威にされされている。沖田達には、島の防衛や管理を担当してもらう。ま、早い話が島の王様ってことだ。」


「はあ?」


 思わず、赤坂とサスケを見る。赤坂はうつむいたままだった。サスケにいたっては俺にGJのサインをしている。意味が分からん。

 

「何人ぐらいアサインされているんですか?」


「まず、食料問題については、鳥取教授と島根さんの2人。今後人員の追加は予定しているが。あと、設備関連は、熊本さんのほかに6課から何人か出てもらう。あとはお前らか。」


「ちょ、ちょっと待ってください。俺達だけでチャーズとやりあえと? それはおかしいでしょう!」


 俺は、思わず立ち上がっていた。

 

「いや、落ち着け。やりあうと決まったわけではない。その可能性がある、というだけだ。」


 斉藤課長も、天井を見上げていた。そして口を開く。

 

「まあ、沖田。当然、やりあう時には援軍を出す。それに、真田課長にもいろいろと対策を考えてもらっている。」


 すかさずサスケが動く。

 

「実は、島にはリザードマン達とか、猫人族なんかも来てるっす。」


 赤坂がチラッとサスケを睨んだ。

 

「な、なんだと・・・猫耳、じゃなくて猫人族だと・・・ やるぞ!」


 なんか、近藤部長達がほっとしているが、大切なことはもっと前に言えよって思う。

 以前、案件で知り合ったリザードマン達や、ダンジョンの影響で避難した猫人族達が、話を聞きつけて移住しているらしい。

 ふ、ふ、ふ。俺のためにあるような案件じゃないか。

 

 

 とりあえず、会議室をでる。

 

「今回のは、沖田さんには断っていただきたかったです。」


 部屋をでるなり、赤坂が口を開く。

 

「なんで?」


「だって、危険ですよ。チャーズの軍は、50万とも100万とも噂されています。」


 あ、そんな話を聞いたことがある。

 

「でも、援軍も出してくれるし、大丈夫じゃないの?」


「いえ、援軍っていっても、50万も出るわけじゃないですよね。劣勢ですよ?」


「あと、真田課長も対策を考えているって。」


「まさか、ICBMとか戦闘機とかが来るわけじゃないですよね。それほど期待できるとは思いません。」


 やたらと赤坂が反論してくる。


「最悪は逃げればいいし。」


「猫耳さん達を置いて逃げれますか?」


「あ、それは・・・」


「だから、心配なんです。」


 赤坂ちょっと泣きそうになってる・・・ とりあえず、開発室に装備を取りに行く。

 

 

「よう、もう大丈夫なのか?」


「上条さん、久しぶりです。今日から復帰です。」


 上条さんは近くのメンバーに俺の装備を持ってくるように指示していた。

 

「ああ、お前の装備な、凄いぞ。」


「まさか・・・ タキシードとか?」


「はあ? な訳あるか? 何者だよ、それ。」


 赤坂が魔法仮面について熱く説明しようとするのを、必死で止める。でも、いきなり赤坂の機嫌が直っていたので、ちょっとほっとする。

 

 そして、装備がきた。きた。きた。

 

「これって・・・ ブラックシャドウ?」


「そう。うちの最強装備。お前も偉くなったもんだよ。」


「いや、俺ブラックシャドウじゃないし。そもそも2課だし。」


「え?2課でも斉藤課長とか、千葉さんとか、ブラックシャドウの装備持ちいるだろ?」


「いや、斉藤課長はブラックシャドウにいたし、千葉さん達もブラックシャドウにいても不思議じゃないし。」


 斉藤課長は元ブラックシャドウで、今でもたまに手伝っている。そして千葉さん達もブラックシャドウへの転籍を断っているが、手伝わされているらしい。

 

「でも、魔王の討伐経験者なら、別に問題はないぞ?」


「じゃあ、赤坂やサスケとかもブラックシャドウ装備?」


 サスケをチラッと見る。。

 

「サスケとか赤坂のやつは、もともとブラックシャドウと同レベルだぞ?」


 な、なんだと・・・

 

「ちなみに、三村のもな。」


 な、な、なんだと・・・ 俺だけ格下装備だったのか・・・ 花子のドヤ顔がちょっとムカつく。

 

「なんで、気にしないで受け取っとけ。」


 どうも納得がいかないが、受け取ることにする。が、

 

「でも、これって支払いは・・・」


 そうである。このレベルの装備はちょっとローンとかですむレベルではない。

 

「ブラックシャドウ装備は完全支給だ。安心しろ。」


 ものすごくほっとした。しかし、そこで例のものが頭をよぎった。

 

「あ、俺がぶっ壊した試作品・・・」


「ああ、あれも気にするな。むしろ、あそこまで限界テストをやってもえるとか、こっちにメリットが多すぎる。」


 たしかに、あれは限界テストとしては最高だったろう。体も限界テスト状態だったが・・・ つうか、二度とやりたくないな、さすがに。

 例の試作品については、もともとが試作品扱いだったのに加え、めったにできないレベルでの限界テストもできたため、開発部としては逆に金一封をだしたいくらいだったらしい。ま、でないんだがな、金一封は・・・

 

 そのままトレーニングルームにいって、受け取った装備の試着をしたのちに、ロッカーにしまう。

 さすがに、周りの羨望の目が痛い。人によっては快感なのだろうが、俺にとっては罰ゲームにしか思えない。でも、死なないためには、これは受け入れざるを得ない。

 

 そのあと、部屋に戻って、残った書類を片付けて、帰ることにした。

 

 

 翌日。

 

 評議会との打ち合わせは午後からなので、午前中は実験島を見に来ていた。

 

 ところが・・・

 

「よう、沖田。復活したか。」


 田中がヘルメットをかぶってジャージを着て、現場監督?さながらに働いていた。

 

「なにやってんの、お前。」


「見ればわかるだろう? 島の開発だよ。」


「いや、見てもわからん。それになんで営業がそんなことしてるんだ?」


「俺に聞くな。越後屋からの命令だ。」


 で、先ほどからものすごく気になってるんだが、田中の後ろに体操着にブルマの中学生がいた。

 

「ところで、なんで中学生がいるわけ?」


「ち、中学生じゃありません!!」


 いきなり田中が噴出す。

 

「ああ、彼女は営業アシスタントのしーちゃん。一応20台な。先月入社した新人さんだ。」


 しーちゃんといわれたその女性は、高知 静という名前だった。しかも<3年2組 高知 静>とかいう布まで縫い付けてある。どうみても中学生なんだが・・

 

「じゃあ、なんで体操着にブルマなんだ?」


「ああ、初日は俺もしーちゃんもスーツできてたんだが、さすがにここでスーツとかやってらんないだろ? で、翌日からジャージに変えたんだが、しーちゃんはジャージとかもってなかったみたいで、しょうがなく中学のときの体操着で来てるわけだ。」


 まあ、買いに行く暇もなかったということだろう。でも、中学のときの体操着がまだ着れるとか、中学生に見えてもおかしくないわけだ。 ・・でも何で中学のときのなんだ? 普通そういう時って高校のとかだろ?

 

「あ、サスケ様。」


「や、やっぱり静さんっすか。でもイギリスにいたんじゃ・・」


 久々にサスケのうろたえた姿を見た。つうか、知り合いだったのか。

 

「知り合いか?」


「ええ、幼馴染っす。」


「そ、そんな・・・ 許婚ではなかったのですか・・・」


 げっ、なんじゃそりゃ。

 

「い、いや。それは親が決めたことっすから。」


「サスケ様は静を嫌いになられてしまったのですね。こんなことなら、イギリスになど行くのではありませんでした。」


「なんな訳? お前ら。」


 サスケいわく、彼女は高知流薙刀の宗家で、彼女も師範代だそうだ。で、サスケの家とは古くから交流があり、親が許婚とか言い出したとのこと。

 さらに、イギリスの大学に留学していたそうだが、卒業後に日本にかえってきたそうだ。

 

「ああ、だから営業なわけね。」


 田中はなにかを理解したようだ。俺達が首を捻っていると、説明し始めた。

 

「いや、戦闘部って研修が特殊だし期間も長いから、4月入社を前提としてるだろ。だから彼女みたいな帰国子女は入りにくいわけ。でも営業はいつでもOKだから入りやすいわけよ。」


「「なるほど。」」


 そんな話をしていると、しーちゃんがサスケの目の前でくるくる回っていた。

 

「どうですか、サスケ様。これでサスケ様のハートを鷲掴みです。」


「い、いや。結構っす・・・」


 なんだ、あのカッコはサスケのためだったのか。つうか、サスケってやっぱりそっちだったんだ。

 ちなみに、赤坂と花子の目がちょっとあれだった。

 

 そんなことをしていると、向こうから工事担当の熊本さんがやってくる。

 

「ああ、沖田さん、お嬢。きてたんですか。」


「ええ、評議会との打ち合わせ前に、一度見ておこうと思って。」


 さっそく、熊本さんから工事の状況を案内がてら説明される。

 まず、目の前のお城が、俺達の事務所になる。 ? ?

 

「なんだよ城って。誰だよ、こんなもの作ったの。」


「言いだしっぺは、お前のところの近藤部長。ついでに、イメージは江戸城。中身は普通の2階建てだがな。」


「え? まじで?」


「ああ。関係者全員一致だったらしい。反対0。」


「うちの会社、大丈夫なのか・・・」


 で、ちょっと離れたところにある野球場みたいなドームが実験のための建物らしい。実験ドームと呼ばれている。

 また、俺達の宿泊用に、社名入りの仮設住宅も立っていた。

 そのほかに、風力発電と太陽光発電がすでに完成しており、電気、水道は一応使えるそうだ。

 

 さらに、外部からの侵略に備えて、島のあちこちにはレーダーや監視カメラが設置されていた。これは事務所の監視ルームで見れるそうだ。

 

 あと、電気自動車があった。といっても、トラックとジープ。さすがにアスファルト舗装はされていないので、このタイプになったのだろう。

 

「田中。この設備ってまずくないのか・・・」


 俺達からすれば、あまり違和感のない設備だが、この世界では違和感ありまくりである。

 

「それな、この島自体が関係者以外立ち入り禁止になってるから、この世界の人は入れないようになってる。なんで、ここまでやっても問題はないってさ。あと、海から見える範囲のレーダーとか風力発電とかは、一応偽装もしてるしな。」


「ならいいか。」


 ふと周りを見渡すが、例の人たちがみあたらない。

 

「そういえば、猫人族とかリザードマンも来てるってきいたけど?」


「ああ、それぞれ海岸付近とかに村をつくってるよ。今、青森さんて人が担当してる。だいたい馬で1日ぐらいかな。」


 そっちは時間が出来たら見に行っておこう。特に猫人族はな。でも、うちに青森さんっていたっけ?

 

 なんだかんだで、打ち合わせの時間になったので、一旦会社に戻ることにする。

 

 会社に戻り、斉藤課長達と合流して評議会との打ち合わせに向かった。


ということで、2章です。

次話は年明けになるかと思いますが、その後は週末更新ぐらいの予定です。

ただ、後ろに行くにしたがって遅くなる可能性はありますけど。

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