19.工事と救助と復旧と
19話です。変更はありません。
18話の続きになるので、話がおかしくなっていたかと思います。
もう、本当に申し訳ない・・・
■■19.工事と救助と復旧と
あの地震による土砂崩れ等の被害があちこちで発生しており、現在6課はその対応で大忙しである。
そして、地震により住処を追われた魔物が町や村に近づいてきたり、復旧作業中の6課に襲い掛かってきたりすることもありうるため、俺達は現地の冒険者達と交代で護衛にあたっていた。
「サスケ。そろそろお昼の準備いきますよ。」
赤坂が、お昼ごはんの食材を狩りに、サスケと森に向かう。俺は留守番。
6課の皆さんが、土砂崩れで埋まった川の、復旧作業をしている。手動のクレーンのような物で、土砂を掘り返しているが、実は偽装したユンボだったりする。さすがにそのまま持ち込めないし、かといって人力でやってたら、いつまでたっても終わらない。そもそも、この辺にはめったに人がこない。流石に、現地の冒険者達は最初は驚いていたが。
しかし、川がせき止められてしまっているため、下流の町や村では水不足の問題が起こりつつある。スピードも重要だ。
しばらくして、赤坂達が獲物を手に戻ってきたので、食事の用意を手伝うことにする。
「みなさーん、出来ましたよー。」
工事の手を止めて、こちらに向かってきた。ここでは大体5人ぐらいが作業している。護衛の冒険者達も、交代でこちらに向かってくる。
「まさか、こっちでこんなにうまい料理が食えるとはね。」
「オークってこんなにうまいとは思わなかった。」
「そういえば、王都にオープンしたラーメン屋って、結構繁盛してるんだって?」
6課の面々にも、赤坂の料理は大好評である。そのせいか、このチームの仕事はとてつもなく速かった。やっぱり人間はモチベーションが重要なようだ。
「森のほうって、どうだった?」
ゴブリンパイを食いながら、赤坂達に聞く。
「地震のせいだとは思いますが、動物達の動きがいつもとは違う感じですね。」
「まあ、すぐにどうこうって感じではないっすけどね。」
おそらく、大丈夫と考えてよさそうだ。
お昼も終わって、作業が再開される。明日、明後日ぐらいには、崩れた部分の修復と補強なども含めて終わりそうだ。
「なんかいるっすね。」
サスケが川の向こうを見ながら、身構える。川の向こう側から、魔物のような視線を感じる。
俺とサスケが様子を見に向かう。
複数の気配があったが、思ったほど殺気を感じない。かといって、動物の視線という感じでもなかった。
俺達はそのまま注意しながら、奥へと進んでいく。強い気配を感じ、そちらを見ると、人影のようなものが居た。
「オイ、オマエタチハ冒険者カ。」
人影のようなものは、俺達に声をかけてきた。ん?トカゲ? リザードマンだ。殺気はないようだ。
「そうだが、何かあったのか。」
「スマンガ、俺達ノ村ガコノ前ノ地揺レデ怪我人ガデテイル。助ケテホシイ。出来ル限リノ報酬ハ出ス。」
リザードマン達も、泥だらけだし、怪我をしているようだ。おそらく、村が土砂崩れか何かに巻き込まれたのだろう。
俺達はリザードマン達に案内してもらい、村へ向かうことにする。
村の場所と、状況を確認し、赤坂にリザードマンの村のおおよその場所と、村の救助に向かうことを伝える。センターには赤坂から報告してもらう。
リザードマン達と森の奥に入っていくと、沼地の辺りの土砂の中に、家の残骸のようなものが多数あった。ここで6家族ほどが暮らしていたそうだ。
脇の山から土砂崩れが村を襲ったのだろう。
俺はリザードマン達を手伝って、家と思われる付近の土砂を退かす作業をする。家の残骸を目安に探すが、結構大変だ。
その間に、サスケには、状況の把握と回りの警戒を頼む。
しばらくして、赤坂と6課のメンバーの何人かが村にきた。
「これはひどいな。ここだと機械は持ち込めないか。埋まってる可能性もあるなら、なおさらだな。」
「ですね。人力でいくしかないと思います。」
土の中まではレーダーは届かないし、状況もわかってないのに、無闇やたらと機械で掘ると、危険極まりない。
俺達が話をしている脇で、6課のリーダーが、センターに状況の報告をしていた。
「あっちは、予定より進んでるから、先にこっちをやっちゃおうか。」
リーダーは報告をおえると、他のメンバーに指示を出し始める。やはり、埋まっていそうなところを特定できないのがきついようだ。
「いいんですか?」
「いいもくそも、どう見てもこっちが優先だろ? 一応許可もとったし。あと、秘密兵器も頼んである。まあ、向こうは順調すぎるぐらいだから問題ない。それに、何人か残してあるから、出来るところだけでも続けてもらってるし。」
俺は念のために、田中にも報告をいれる。
「あ、田中。護衛の最中に、土砂被害にあったリザードマンの村をみつけてさ。え? 優先で対応しろ? 金は営業がなんとかする? マジで? 越後屋から事前に指示でてるの? なにそれ。まあいいや、了解。あとで詳細は報告するよ。」
「どうしたんですか?」
赤坂が不思議そうに聞いてくるので、俺は田中との話をざっと説明した。
「そっちもか。俺もセンターから、越後屋がなんとかするから、出来るだけ対応してくれって言われてるぜ。」
6課の方でも、リーダーも同じことを言われたらしい。どうも、亜人含めて一気に評判を広める計画のようだ。win-winだから、問題はないだろう。
リーダーは、村長らしき村の責任者に話をしにいった。
俺は赤坂に怪我人の手当てを頼む。ついでに手持ちのポーションを渡そうとバックから取り出す。
「いりません。回復の魔法使えますから。」
思いっきり睨まれた。だって、魔法間違ったら大問題なんだけど・・・
リーダーのところにいくと、この村の行方不明は6人とのことだ。また。他の村の状況についても確認していたが、流石に自分達のことだけで精一杯だったようで、そこまでは把握していなかった。一応、出来る範囲で確認を頼んでおく。
できるところから進めていると、秘密兵器とやらが届いた。温度探知機だった。
「よし、全員離れろ。」
温度探知機で、温度の高いところを探っていく。埋まっていても、ある程度の深さなら探せるらしい。おそらく真田課長の開発した機材だろう。
「そこと、そこと、そっちもだな。 あと向こう。 そこもあやしい。」
指定されたところをマーキングして、注意深く掘っていく。
しばらく掘っていくとリザードマンの体がでてくる。まだ生きてる反応があった。顔と思われるところを先に掘ると、ぐったりしているが、はっきりと生きていることが確認できた。その後、生き埋めになった5人が救助された。2人ほど重傷であったが、赤坂の手当てで一命は取り留めている。
最後の1人は、温度感知に引っかからない。おそらくもう助からないだろうが、手当たり次第に探していく。
結局、死体で見つかったが、とりあえず行方不明のままがないだけマシだろう。助かるかどうか分からなかった6人のうち、5人が助かったので、村の責任者にも物凄く感謝された。
俺達が救出している間に、他の村の状況確認をしてもらっていた若いリザードマンが戻ってきていたので、他の村の状況を聞く。
近くに2つほど村があるようだが、1つは大して被害はなかったそうだ。もう一つは、ここ同様に結構被害がひどいらしいので、場所と状況を細かく確認してセンターに報告する。別チームを派遣するとのことだった。
行方不明者の探索がおわったところで、この村のライフラインの確保を進める。
水については問題なかったが、家と食料が問題だ。家は仮設住宅を持ち込むことにし、あわせてしばらくの間の食料も手配する。
「サスケです。ゴブリンとダークウルフが近づいてるっす。おそらく、リザードマンの村を混乱に乗じて襲うつもり見たいっす。数はたいしたこと無いっすが、一人だと抑えきれないので、そっちに流れる可能性があるっす。」
「分かった。急いでそっちにいく。」
もう、こういう時に限って、そういうめんどくさいことが。
「赤坂。ゴブリンとダークウルフがこっち向かってるそうだ、いくぞ。リーダーはここの護衛お願いしていいですか。」
「おう、まかせろ。気をつけていって来い。」
リーダー達は剣をチェックする。6課といっても、この世界では戦闘とは無縁ですまないので、装備も持ってるし、訓練も受けている。
俺と赤坂はサスケの元に向かう。戦えるリザードマンが、2人ほど一緒に来てくれる。しばらく移動してサスケと合流すると、ゴブリンが5匹、それぞれダークウルフにまたがって、こちらに向かってきているのが確認できた。間に合ったようだ。
「赤坂、奴らの足をとめてくれ。他は、ダークウルフを先にやる。ゴブリンの足だけなら、村に被害がでる前に片付けられる。」
全員がうなずくと、赤坂が確実に足を止めるため、サンダーを唱える。サンダーを受けて、ゴブリン達が麻痺状態になったところに、俺達が襲いかかった。
右端のダークウルフの足を切って、動きをとめ、ゴブリンと対峙する。その脇で、リザードマンが、ゴブリンごとダークウルフを真っ二つにしていた・・・ リザードマンって強すぎないか・・・
ゴブリンの剣をいなしながら、胴に一撃をいれて倒すが、その間に、他のゴブリン達は全滅していた。俺は、ありえない、とつぶやきながら足を切られてのたうちまわるダークウルフに止めをさす。
「リザードマンの方々は物凄いっす。ゴブリンとダークウルフをまとめて一撃っすよ。」
「ああ、俺も見た。あれは凄すぎる。しかも、あの鱗って、俺の装備より硬そうだし。」
「イヤ、オ前達モ、十分強イ。見事ダッタ。」
俺達、褒められてるようだぞ。って、褒められてるのはサスケか・・・
念のため、周囲を警戒して、他にいないか確認したのち村に帰ることにする。もちろん、食料としてゴブリンとダークウルフは回収した。
村に戻ると、早速、仮設住宅が届いており、リーダー達が組み立てていた。
でも、これって台所とか、トイレもついてるのね。流石にエアコンはなようだけど。まあ、付いてても電気はないし、蛇口捻っても水はでないけどな。ちなみに、壁にうちの広告がガッツリ入っているのは愛嬌だ。
サスケが組み立てに興味を示していたので、俺達も手伝わせてもらった。
結構面白いな、これ。なんだかんだで、全員で3棟を組み立てる。1棟に2家族になってしまうが、仮設の割にはそこそこ広いので、そこは我慢してもらうしかない。
でもさ、俺達が仮設住宅くみ上げてる間、赤坂がリザードマンの女性達に料理教室やってんですけど。リザードマンにゴブリンパイとか、ダークウルフの串焼きとか流行らせるつもり? 確かに、うまいのは認めるけどさ。
あと、リザードマンの魚料理はうまいので有名なので、その辺は代わりに教えてもらっていたらしい、今後期待できそう。
食は大切だ。
あと、結局、俺にはリザードマンの男性と女性の見分けがつかなかった。だって女性も胸とかないぜ。本当はあるのかもしれないけど。
赤坂とサスケは分かるそうだ。顔つきが違うのだと。うーん俺にはわからん。
でも、しばらく話をすると、なんとなく分かるような気もしないでもない。女性のほうが、やわらかい口調のような気がする。多分だけど。
俺達は、リザードマン達に別れを告げ戻ることにする。戻ってみると、思ったより工事も進んでいた。この調子だと、明日には終わるかな。
とりあえず暗くなってきたので、作業を終了して会社に戻ることにした。
会社に戻り、田中に報告にいく。
「よう、お疲れ、お疲れ。」
書類の山に囲まれた田中が、こっちに手を振ってくる。
「しかし凄い書類だな。」
「復旧案件とか、その護衛とか、今回みたいな急なやつとか。もうヤバいくらいに忙しいよ。」
「まあ、繁盛してるんだから、うれしい悲鳴だよな。」
「まあね。グローバルのところに比べたら、ぜんぜん問題ないけど。」
グローバルはこの前の緊急の一件で、ギルド本部から出入り禁止をくらっていた。そのせいで、今回の復旧案件には参加できていない。その分がうちとかに回ってきているので、恐ろしいほどに忙しいそうだ。
「やっぱ、今回のって赤字なわけ?」
さすがに気になっていたので、聞いてみる。
「リザードマンの件だけを見たら、確かに赤字だな。でも、実は販促費として処理することになってる。仮設住宅に広告入ってただろ? それに、今回の復旧については、もうやばいくらいの売り上げあるから、ぜんぜん気にしないで、むしろじゃんじゃんやってくれ、って感じだね。こういうのが、一番評判が上がりやすいしね。」
越後屋の埋蔵金からも、販促費としてそれなりに出てるみたいだけど、なんか問題なさそうで良かった。
そういえば、春さんの女子会データベースにおける、田中の評価ってどうなんだろう。こいつは見た目も良いし、女子受けしやすいから、Bは硬いところか。ひょっとしたらA? ま、それはないか。あとで、赤坂か花子に聞いてみよう。
翌日、工事も無事完了したので、完了報告をしに町に行く。
「あれ? あの屋台って、昨日のリザードマン達っすよ?」
サスケの指差すほうを見ると、たしかにリザードマンが屋台をやっている。が、見分けがつかん・・・ みんな同じに見えるんだが・・・ 昨日の人たちなのか?
そんな俺を尻目に、赤坂とサスケは、とっとと話をしに行ってしまった。しょうがないから、ギルドに一人で報告にいく。まあ、俺はリザードマン達より、「猫耳」お姉さんのほうがいいから、べつにかまわんが。
おかげで、誰にも邪魔されずに「猫耳」お姉さんとたっぷり話をして、しかも復旧が片付いたらご飯を食べる約束もしてしまった。
話題になっている王都のラーメン屋でも行ってみようか。行ったら手伝わされそうだが。いや間違いなく手伝わされるだろう。
そんなことを考えながら、赤坂達のところに戻ると話は終わっていたようだ。赤坂から、焼き魚の串焼きを1本貰う。リザードマンから貰ったそうだ。う、うまい。
リザードマン達も、食と住が確保できているので、ギルドの護衛や、工事などの案件を請けたり、屋台で食事を売ったりして、復旧の手伝いをし始めたらしい。ついでにお金も稼げるしな。
いまだ、あちこちに地震の被害のあとは残ってるので、復旧作業はしばらく続くだろうが、「猫耳」お姉さんとの食事というか、みんなの日常が戻ってくる日も、そう遠くはなさそうだ。
もうちょっとがんばろう。
ということで、なんとか話は繋がったかと思います。
以後気をつけますので、今後ともよろしくお願いいたします。
ちなみに、20話は来週末ぐらいの予定です。




