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16.海外研修 後編

後編です。戦闘中心になります。

■■16.海外研修 後編

 

 翌日は、結局一日中、赤坂の料理教室だった。

 ミランダとジャックが生徒で、俺達はひたすら材料集めだった・・・

 なぜか花子はずーっと食いつづけていたが・・・

 

「でも、こっちは魔物の数が多いっすね。普通これぐらい狩ったら、見かけなくなるんすけどね。」


「たしかにそうだな。やっぱ、その辺の違いってあるんだな。」


 昼食をとりながら、俺とサスケが話していると、アーノルドさん達も話に混ざってくる。

 

「いや、いつもより多いな。さすがにこの数はちょっとおかしいと思う。」


 そういえば、あちこちで魔物が増えているような話を聞くようになってきている。


 しばらくして、緊急呼び出しが入った。全員帰還命令がでたらしい。理由は分からなかったが、俺達は後片付けをして、戻ることにする。

 

 

 アーノルドに案内され会議室へ向かうと、50人ほどが会議室にいた。周りを見渡すと、上条さんや田中もいる。何か起こったのか?

 

 しばらくして、資料を抱えた何人かが入ってる。この人達は管理部門のようだ。

 

「さっそくだが、緊急案件が来た。ギルド本部からの案件である。どうやら、ゴブリンが大量に発生したらしい。ミネスタに向かっているようだ。また、現時点で3社が対応可能という情報が来ている。」


「数と構成についての情報は?」


 ベテランと思われる風貌の男が質問する。もう、見た目からして強そうな感じ。

 

「とりあえず、確認できているところで、オーガが数体、これがリーダーと思われる。オークは30程度、それぞれがゴブリンを100~200程度引き連れている。ざっと4000ぐらいだろう。」


「今、何チームぐらい対応できそうなんだ?」


 別な、ベテランと思われる男が質問する。

 

「我社は、ここに居る6チームに対応してもらおうと思っている。他社も同数程度だろう。よって18チームぐらいの想定となっている。」


「1チームあたり、ざっと100か。」


 情報に会議室内がざわつき始めた。アーノルドがこちらをちらちら見ている。おそらく、参加して欲しい、ということだろう。

 赤坂たちを見ると、3人とも即座にうなずいてくる。上条さんに目を向けると、なんかニヤニヤしていた。田中がこちらをチラッと見ると、いきなり立ち上がった。

 

「発言許可を求めます。」


 許可が出ると、田中が話を続ける。

 

「本案件ですが、日本からも2チームの参加を調整中です。」


 おいおい、1チームはうちだとして、もう1チームどうすんだよ・・ まさか上条さんと田中じゃないんだろうな・・

 

「1チームは、そこに居る沖田たち、もう1チームは、先日検証が完了している、リモートシステムを利用した参加を予定しております。」


 なんだ、そのリモートシステムってのは? 周りがざわつき始める。でも、管理部門の人達は知ってたようだ。


「リモートシステムについて簡単に説明しますと、日本に居ながら、アメリカの案件に参加、もしくはその逆が可能となります。今回私達がこちらにお邪魔しているのも、今後の日米間におけるリソースの共有、つまりリモートシステムによる参加について調整を行うことが目的の1つです。本案件をリモートシステムのパイロットとして実施させていただきたいと思います。」


 上条さんが話を引き継ぐ。

 

「リモートシステムですが、昨日までに、日本側のチームが問題なく活動できることを確認しております。ちなみに、今回リモートシステムで参加するチームですが、ご存知の方もおられるかと思いますが、異常発生したジャイアントスパイダーをそこにいる沖田達と討伐したチームですので、戦力的に問題はないかと思います。」


 どうやら、千葉さん達が参加するらしい。というか、田中が忙しそうにしていたのは、それが原因か。 ついでに、システムの調整に情シスも借り出されていたらしく、通常業務ですらひーひー言ってるのに、さらに仕事を増やされて、海外研修なんぞ行ってる暇あるか! ということだったらしい。

 

 リモートシステムだが、日本とアメリカの戦闘リソースの共有が目的で、日本の繁忙期とアメリカの繁忙期のずれや、一時的な人手不足の解消などを目的としている。ある意味、戦闘リソースの仮想化みたいなものだろう。また、それぞれの戦闘スタイルの違いについては、俺達がテストケースになっていたようで、多少の違いはあれど、共同作戦は十分可能という結果になっていたらしい。また、お互いの違いが、良い方向に作用するという点もあったようだ。一緒に料理したのが該当するんだろうか・・・

 

 俺達の参加は承認され、そのまま作戦会議となった。

 

 

 1時間後、俺達はミネスタにいた。

 

 先に来ていた千葉さん達が、俺達を見つけて手を振ってくる。リモートシステムを使ってる、といわれないと分からないぐらい自然だ。

 千葉さん達は中央に入るらしい。俺達はアーノルド達と一緒に、右翼側から遊軍扱いでオーガをたたきに行くことになっている。中央は火力が欲しいということで、赤坂が千葉さん達に加わり、代わりに埼玉さんが俺達に加わる。

 

 何か、ミランダが大鎌みたいなものを持ってるんだが、あれ使うんだろうか。魔法職が大鎌とか、違和感ありまくるのだが。ひょっとして、赤坂に影響された?

 そんなことを考えているうちに、先行しているチームから、魔物達の情報が入り、俺達は配置に着く。

 

 しばらくして、中央が魔物と接触したらしく、騒がしくなってくる。俺達も回り込むように移動を始める。

 

 サスケとジャックが先行して状況を探っていく。たまにはぐれたゴブリンと接触したようだが、サスケがあっさりしとめているようだ。しばらくして、サスケ達から連絡がはいる。

 

「サスケっす。どうも膠着状態になってるみたいっす。」


 中央がうまく押さえ込んでいるのだろう。

 

「沖田です。オークとか、オーガはいるか?」


「この辺までは、まだ見かけてないっすね。もうちょっと奥みたいっす。」


 俺達は交戦を避けるように移動しながら、さらに奥に進んでいく。

 

 サスケからオーク発見の連絡が入る。サスケたちと合流すると、100mほど先に指揮を出しているオークが確認できた。その周りには20匹程度のゴブリンも確認される。

 

「じゃあ、サクッとやるか。一応、50mぐらいまで近づきたいかな。」


 埼玉さんが、コンパウンドボウを構える。俺とアーノルドがゴブリンを抑えることにする。他は埼玉さんがオークを仕留めるまでの殲滅を請け負う。

 

 俺とアーノルドがゴブリンに突っ込んでいき、一気に距離を縮めていく。向かってくるゴブリンを盾で抑えながら、剣できっていくと、ミランダとハリーが範囲攻撃を撃つ。サスケと花子は俺達の押さえ切れなかったゴブリンを倒していく。オークを射程に捕らえた埼玉さんが一発でしとめると、指揮統制の崩れたオークが逃げ始めた。へたに追うと他の集団と鉢合わせする可能性もあるため、暴れる花子を俺とサスケで両脇から抱えて、その場を離脱する。

 

 

 さらに奥にいくと、サスケから、オーガを中心とした集団を見つけたと連絡が入った。オーガ1匹、オーク2匹、ゴブリンが200ぐらい居るらしい。おそらく本隊の一部だろう。

 

「さて、どうしますかね。」


 俺は埼玉さんとアーノルドに相談する。

 

「この戦力だと、かなりきついな。オーガは弓だと1撃では仕留められないし。」


 アーノルドが本部と連絡を取っている。

 

「中央の方は、拮抗しているそうだ。よって、こちらに戦力を回すのはきついらしい。」


「じゃあ、しょうがないから、やりますかね。」


 俺はあまり乗り気にはなれない作戦を説明する。

 

「まず、オーガとオークですが、これは埼玉さんとサスケで対応してもらえますか?」


「ああ、サスケくんとなら、楽勝でしょう。」


「そうっすね。」


 アーノルド達は唖然とするが、そこは気にしない。

 

「つぎに、ミランダにサンダーの範囲攻撃で足止めしてもらう。足止めされたものを、花子とジャック、アーノルドで殲滅してほしい。ミランダとハリーの護衛は俺がやる。ミランダのMPがある程度減ってきたら、そのまま退却してもらって、俺とアーノルドで抑えながらの持久戦に切り替える。花子とジャックは、俺達の後ろでミランダ達を守りつつ、抜けていったゴブリンを対処してもらう。ハリーは持久戦に備えて、抑え気味で。埼玉さんとサスケが仕留めるまで耐えられるかどうか、が勝負どころかな。」


 全員がうなずく。

 

「じゃあ、勝率7割ってとこですが、これでいきますか。 あ、花子はちゃんと言うこと聞くように。聞かないときは、強制退去だから。」

 

「わ、分かってるわよ。大丈夫。多分・・」

 

 やっぱ、強制退去の準備しといたほうがいいかな・・・

 

 埼玉さんとサスケが場所を移動するのを確認して、アーノルド達に開始の合図をだしならが、突っ込んで行き、場所を確保する。これで魔法の射程がある程度決まるはずだ。

 

 場所が決まったところで、ミランダがサンダーの範囲攻撃で麻痺にしていく。そこに、花子達が突入して、戦闘が激しくなる。

 

 ミランダのサンダーが決まると、大体5匹前後の動きがとまり、それらを花子達は順調に殲滅していった。俺達のほうにも、何匹かゴブリンがくるが、十分対応できているので、リズムができてきた。

 

「そろそろ、MPに余裕がなくなってきたわ。」


 ミランダがサンダーを10発ぐらい撃ったところで、耐久戦に切り替えることにした。大体、60匹ぐらいは減らせたようだ。


「了解、耐久戦に切り替える。戻ってくれ。」


「「了解。」」


 アーノルドとジャックから、即座に応答が入る。 花子は当然、聞いちゃいない。

 

「花子!強制退去するか?」


「ちょ、ちょっと。すぐ戻るから。」


 どうやら、強制退去がキーワードらしい。あわてて花子が戻ってくる。

 3人は戻り次第、ポーションを飲んで、そのまま戦線に復帰する。俺は、防具の隙間から伸ばしたストローから、ポーションを一口飲む。これは、アーノルドがやっていたのを教えてもらった。よくF1とかで、運転しながら水を飲んでいるのをヒントにしたらしい。こういう乱戦になると、盾はポーションを飲むタイミングが難しいので、これはありがたかった。特にうちは赤坂の回復が・・・

 

 ゴブリンの団体がこちらに向かってくるが、とどめを狙わずに、戦力を奪いながら、持久戦に持ち込んでいく。俺達をすり抜けるゴブリンは、花子とジャックが順調に倒しているようだ。定期的に回復も飛ぶので、しばらくは耐え切れそうである。あとは、埼玉さんとサスケが終わるまで、耐え切ればいい。

 

 しかし、大体100を切ってきたあたりで押され始めてきた。ゴブリン達に囲まれて死んだときのことを、ちょっと思い出すが、今回は仲間が居るから大丈夫だ。そう自分に言い聞かせて、目の前の戦闘に集中する。

 アーノルドの場所を把握しながら、囲まれないような位置取りに注意するが、後ろに向かう数が増えてきた。

 

「花子!そっちに行く数が増えている。頼む」


「無理無理、こっちも手一杯。」

 

 花子とジャックもこちらからあふれるゴブリンの対応に手一杯のようで、何体かがハリー達に向かってしまったようだ。 やばい、崩れるかもしれない。


「おほほほほほ」

 

 突然、得体の知れない笑い声がする。そのほうをチラッと見ると、そこにはハーフプレートのような物をつけたミランダが、死神みたいな例の大鎌を振りかざしていた。

 

「かかってきなさい。この鎌の錆びにしてあげるわ。」


 ・・・ミランダ、マジ怖い。 こいつは、花子と同類だったのか。

 

 ミランダが次々とハリーに向かっていたゴブリンを葬っていく。ミランダって、魔法よりこっちの方がむいてね? ものすごく怖いけど・・・

 

 残りが10ぐらいになったところで、ゴブリン達が自分達の状況を把握したようで、一斉に逃げ出していく。

 

「ちっ、合流されて、この状況で援軍とか呼ばれるとまずい。追撃するぞ。」


 俺達はゴブリン達の追撃に向かうが、ゴブリン達は思ったより足が速い。逃げられるか・・・

 

 突然、矢が逃げ出したゴブリンを倒していく。次々と矢に倒れ始めた。どうやら、埼玉さん達がオーガを倒して、こちらのフォローに回ってくれたようだ。

 

 矢を逃れたゴブリン達の前に黒い影が現れ、次々と葬っていく。サスケか。

 

 最後のゴブリンが、サスケにより倒された。どうやら、全滅させることができたようだ。

 

「とりあえず、完了かな。」


 埼玉さんが、あたりを警戒しながら、俺達のところに戻ってくる。みんなへとへとになっていたが、重症はなかったようだ。

 

 ちなみに、埼玉さんとサスケはもっと早く着いていたようだが、鎌を振り回すを見て、呆然と立ち尽くしてしまっていたらしい。あれを見たら、仕方ないかもしれない。俺なら、ビビッて逃げ出していたかもしれない。

 

 アーノルドが本部に右側のオーガの集団を倒したことを連絡すると、俺達がオーガ達を倒したことで、右は統制が崩れているとのことだ。これで膠着状態からぬけだせそうだとのことだった。あとは時間の問題だろう。

 

 しばらく、指示待ちになる。その場で警戒しながら、回復することにした。


 アーノルド達は、やっぱり絶句していた。向かってくるオーガに、弓で対抗しようとする埼玉さんも、一撃でオーガを倒すサスケも普通はなかなか居ないケースである。しかも、俺達も6人いたといっても、200近い数のゴブリンを相手していたわけである。

 

 ミランダだが、もともと前衛職希望だったようだが、魔法のセンスがあったため、魔法職に切り替えたそうだ。その名残でハーフプレートと例の大鎌は持っていたらしい。今後は大鎌と魔法の両立を目指すつもりのようだ。装備も、ハーフプレートを改造した、メイド服のようなものを特注するとか言い出している・・ やっぱり赤坂の同類だな。

 

 ミランダとハリーのMPがそこそこ回復したあたりで、本部から作戦の完了と、撤収命令がでた。 残党をつぶしながら帰ることにする。あ、ミランダは鎌でね。

 

 

 本部に戻ってくると、千葉さんや赤坂たちが俺達を見つけて、手をふってくる。こっちも粗方終わったようだ。合流すると、千葉さんたちの周りがドン引きしていた・・・

 どうやら、赤坂が非常識レベルの魔法の連発をしたらしい。まあ、それは俺達にしてみたら想定の範囲だと思うが、他の会社には、魔法少女のカッコをした魔法職も、無限ともいえる高出力魔法の連発をする人も居ないと思うので、当然の反応だとは思う。ただ、そのおかげで中央が支えきれていたそうで、赤坂がいなければ、かなりまずい状態に陥る可能性があったそうだ。 

 

「じゃあ、次から赤坂は千葉さんのチーム入りですね。」


 俺が千葉さんに、そう笑いかけると、千葉さんの表情が滅茶苦茶曇る。 目線が俺にむいていない?

 サスケと花子が引きつった顔で、おれの後ろを指差していた。 振り返ると、そこには・・・・・・あ、赤坂さん?そ、それは・・・

 

 

 個人的には大打撃をうけた緊急案件は無事終了し、田中と上条さんの方も、想定以上の成果が確認できたそうだ。リモートシステムについては、技術的には問題なしという結果で、あとは運用、事務レベルでの条件などの調整をすれば、実施可能な状態になるらしい。


 俺達の海外研修は、十分な成果が確認できたので、帰るまではフリーの許可がでた。上条さんや田中は遊びに行き、花子は久々に戦闘して疲れたので寝てるそうだ。 俺とサスケは、赤坂の機嫌を取るべく、買い物の荷物運びが待っていた・・・

 

 こうして、俺達の海外研修はおわりを告げたのである。



どうも、戦闘に臨場感というか、盛り上がりがない感じですね。何度か書き直しはしてみたのですが、どうも難しいです。

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