15.海外研修 前編
ちょっと長めになったため、前後編に分けています。
■■15.海外研修 前編
いやー、成田って凄いですね。飛行機がいっぱい泊まってますよ。何故成田なのかといいますと、実は海外研修で、アメリカ支社に行くことになりました。
「沖田、お前パスポート持ってるか?」
いきなり、斉藤課長に聞かれ、何事かと思った。
「一応持ってますけど。」
「じゃあ、お前たち、アメリカ支社に言って来い。海外研修だ。」
その一言で、海外研修が決まった。
さっそく、田中に自慢しにいく。
「よう、田中。エリートはつれーわ。いきなりアメリカ行ってこいって。」
「あ、お前も? 海外研修はエリート行かねーから。主力とかエリートが一週間とか居ないのは、まずいから。だから、いけるのは、俺達みたいに居なくても影響がなさそうなやつね。あ、開発はエリート枠だけどな。」
「え?マジで? お前もって、田中も行くの?」
「うん、営業からは俺。あと開発は上条さんらしい。情シスからも1名って聞いてる。」
アメリカ支社は、開発部門がかなり凄いらしいので、こっちもエリートだしてるそうだ。それ以外は、業務にあんまり影響の出ないやつがいくらしい・・・ 上条さんは、あれでも某有名大学の工学部をほぼトップで卒業している。
とりあえず、自慢できないことが分かったので、帰ることにする。
「た、た、大変だ!沖田!」
田中と上条さんがいきなり血相を変えてやってくる。
「なんだよ、パスポート持ってなかったとか?」
「んな訳あるか。な、なんと、花子が海外研修のメンバーに入ったらしい。」
俺と赤坂とサスケ以外の2課のメンバーに、安堵の空気が流れる。 いや、おまえら、それおかしいだろ?
「はあ?総務は枠ないんじゃないの?」
「情シス枠を力ずくで奪ったらしい・・・」
「・・・・」
どうやら、俺達が海外研修に行くという話を聞きつけた花子は、怒りくるったらしい。 知るか。
上司に、どうして総務は海外研修にいけないのか、人種差別ではないか、とか散々怒鳴り散らしたそうだ。しかし、まったく効果が無いため、別な部署の枠を奪うべく、実力行使にでたらしい。
といっても、実は、情シスはそもそも人を選出する気がなかったそうだ。理由は「忙しくて、そんな暇あるか!ボケ!」とのこと。花子が、代わりに言ってあげますという流れに持っていくと、勝手にしろ、といわれたらしい。
「ワシントン条約に引っかかると思うんだが。」
「つうか、武器の輸出だろ、それ。」
「どっちかっていうと、侵略に近いかも。」
「たしかに、安保の破棄と取られても、文句はいえん。」
などという意見が社内のあちこちから出たが、身の危険を感じた上司がOKを出したらしい。
こうして、また悲劇が始まる。
さて、空港に集合しているわけだが、なんか、約2名ほど荷物の量がおかしい。
赤坂は馬鹿でかいスーツケースを持っている。おそらく衣装類であろう。
「その荷物って衣装?」
「ええ、結構いろいろと。さすがに一部は送りましたけど。」
げげ、もっとあるのかよ・・・
もう一人。花子は日帰り旅行にしか見えない。こっちは突っ込む気力すら失うので、スルーしておく。
あと、俺と花子は英語が話せない。今回のメンバーで、英語がダメなのは、俺と花子のみ。あの田中ですら、一応話せるらしい。まあ、俺は赤坂かサスケに通訳を頼めばいいし、仮想身体になってしまえば、会話は問題ない。
問題は花子だ。しかし、やつは根拠のない笑顔で、拳を突き出して見せた。
・・・拳で語り合うから大丈夫、ってやつか。 意味が分からん。ほっとくことにした。
そういえば、上条さんが遅れてくるらしい。かなり珍しいことだが、時間的には問題ないため、ゆっくり待つことにした。
しばらくして、上条さんが到着すると、イヤホンのようなものを渡された。
「なんですか、これ?」
「沖田と花子は英語ダメだろ? だから翻訳機。 実は、これ作ってて遅れた。仕組みは仮想身体からの流用だけど。」
「な、なんですとーーー。」
上条さん、GJ。 とりあえず、つけてみることにした。赤坂に英語で話しかけてもらう。
「どうですか? わかります? 今日はヘタレ日和ですね。」
・・・分かるんだが、分かりたくない。俺の微妙な顔で、その成果は確認されたらしい。
「へー凄いっすね。」
「サスケの口調も、そのまま翻訳されるんだな。」
「いや、今のは日本語っすよ。」
・・・。 ためしてみたら、やっぱりいつもの口調で翻訳されていた。謎システムである。
「あっ。」
上条さんが、忘れてた、という表情をしている。
「どうしました?」
「聞き取ることしか考えてなかった。話すほうの機能を忘れてた。」
・・・・。 向こうについたら、速攻で作ってもらえることになった。まあ、聞き取れるだけでもぜんぜん違うんだが。
ようやく、着いた。なんでこんなに時間が掛かるんだ・・・ まあ、昔は船で数ヶ月かけてた訳だから、それに比べれば楽なもんだけど。
とりあえず、挨拶だけして、ホテルに直行することになった。
会議室に通され、各部署の担当者と思われるメンバーと挨拶を交わしていく。当然、総務の担当者はいないけどな。
戦闘班はリーダーのアーノルドが前衛職、ジャックも戦闘職だがどっちかっていうとシーフとのこと。サスケに近い立ち位置のようだ。ハリーとミランダが魔法職で、ハリーはヒーラーがメインとのこと。結構バランスの良いチーム構成だ。
こちらも俺から挨拶していくが、なぜか花子がいた。
「花子はなんでこっちに居るの?」
「だって、情シスの話とか分からないし。」
「それは分かるんだが、お前総務だろ?」
「こっちの総務ってまったく別物だから、交流のしようがないんだよね。」
「じゃあ、なんでこの研修に参加したの?」
一斉に注目を浴びる花子。
「決まってるでしょう、アメリカだよ、アメリカ。」
まったく理解できないので、放置しておくことにする。
お互いのフォーメーションや、魔物関連の話をしたり、明日以降のスケジュールの確認などをして、本日は終了とする。
「あれ?上条さんいないね。」
「ああ、やることあるから、先にホテル行っててくれって。」
どうも、上条さんは早速、俺と花子の翻訳機を作りに開発のほうにいってしまったらしい。
とりあえず、上条さんを置いて、先にホテルに行くことにする。さすがに疲れたので、寝ることにした。
次の日。とりあえず、昨日の会議室に集合する。あと、花子については、放置すると危険なので、戦闘班で面倒を見ることになった。うちも花子とか危険なのだが、魔物が1匹増えたぐらいであるという、訳の分からない理屈で押し切られた。
でも、上条さんいないんだが。
「すまん、遅くなった。」
もの凄く眠そうな上条さんと開発関係の人たちが入ってくる。どうやら、昨日の翻訳機がこっちのメンバーのツボにはまったらしく、結局徹夜でいろいろな話をしていたらしい。というか、上条さんはこっちのメンバーといってもおかしくないぐらい、馴染んでしまっている・・・
「じゃあ、俺は一旦ホテル行って寝るんで。あと、これ。」
といって、上条さんは完成した翻訳機を渡すと、眠い目を擦りながら行ってしまった。残されたメンバーで、本日の最初の予定である。支社内の見学をしていく。
正直、あまり変わりはない。個人の席がブースになっているぐらいか。こういうのってアメリカっぽいと思う。でも、自分の席にあまり居ないので、羨ましいかと聞かれても、それほどではなかったりする。
あと、感想としては、とにかく広い。トレーニング室とか、日本の数倍あるし。機器も充実しているように思う。
お昼になったので、社員食堂へ向かうと、上条さんが合流してきた。
社員食堂は、正直、良くも悪くもアメリカ。量は多いが、味がアメリカンだった。これはしょうがないだろう。寿司もあったりするが、アボガドロールとかだし。まあ、1週間ぐらいは我慢できそうなので、良しとする。赤坂とサスケはインスタント味噌汁持参だったりするが。
食事が終わると、田中は三河屋から大量の課題を出されているようなので、そそくさと営業スタッフと消えていく。
上条さんとか俺達はとりあえず、開発のところに行って、装備関連の確認をすることにした。
まず、俺の装備は汎用品なので、特になし。アメリカでも一般的な装備だそうだ。ただ、上条さんが装備関連の事故とかについて、確認していた。恐らく、俺の光る件の類似事象がないかどうかを確認しているのであろう。
花子は装備がないので借りることになるが、こいつはモンクなので、アメリカではあまり見ないそうだ。防具は汎用品でいいが、武器はクロー系のものがあったので、それを借りることにする。サイズが大丈夫かと思ったが、一番小さいものでなんとかなりそうだ。
問題の2人。まずサスケだが、さすがにアメリカには忍者が居ないので、大うけした。まあ、日本でもこいつしか居ないけど。質問攻めにされるが、上条さんとサスケがどんどん答えていく。しかし、英語を流暢に話す忍者ってかなりシュールだ。どうも、アメリカでも流行りそうな感触があるが、このエンチャントができるのは、日本だけらしい。
そして、赤坂。もう、はっきり言って、ヤバイ。送ってあった荷物も含め、ファッションショー状態だった。しかも、恐ろしいことに、かなりの人数が、キャラ名を知っている・・・ なんだよ、お前ら・・・ しかし、魔法少女クレナイだけは封印されているので、もって来てなかったが、やはりクレナイはないのか、という質問はあった。これについては、上条さんの表情が曇ったことで、なぜか理解されていた。なぜ、それで理解できる?
そして、例によって、ハリーとミランダの魔法少女への食いつきっぷりが半端じゃない。ハリーは全部知ってやがった。静岡さん同様、魔法職の基本とかいうタイプだった。こいつとは友達になれそうにない。ミランダの方は、上条さんに作ってくれとか直談判していた。さすがに上条さんも苦笑いしていたけど。
「やっぱり、チャイナドレスはないの?」
「は?花子、お前あったら着るつもりなの?」
「いや、負けていられないでしょう。」
「負けるって、意味わかんないから。そもそも、お前総務だし。」
イジケる花子を見ながら、明日以降、暴走したら、その場で退去させることを決めた。
予定をはるかにオーバーしたため、この日は結局これで終わってしまった・・・
翌日。異世界の案内をしてもらうことになっていた。
とりあえず、手ごろなところに案内してもらう。第一印象は、どこも変わらないな、という感じだった。魔物の類も、殆ど同じだ。
しかし、戦闘スタイルが結構違っていた。まず、装備。前衛職のアーノルドやジャックはそれ程変わらない。まあ。外人さんなんで、俺より似合ってるぐらいか。
ハリーとミランダの武器が銃だった。ハンドガンってやつ。別に弾が入っているわけではなく、魔力をこめて使うタイプである。やはり銃社会なので、こっちの方がイメージし易いという。ハリーは名前からして、映画に出てくるような杖持ってるかと思ってたのに。ちなみに、ハリーは結構ガタイはいいし、メガネもかけていなければ、額に傷もない。どっちかっていうと、アクション映画に出てくるヒーローっぽい。
一番の違いが弓職の扱いだった。日本では、結構居るのだが、アメリカだと殆どいないそうだ。理由はやはり銃だそうだ。文化的に弓より銃なのだが、銃を使うには魔法が必要になるため、魔法職が取って代わっているそうだ。なので、ジャックみたいに、シーフとかの前衛よりになってしまうらしい。
しばらく進んで行くと、ゴブリンの集団がいた。とりあえず戦闘を見せてもらうことにした。
「Go!」
アーノルドの掛け声で、ミランダとハリーが範囲のファイアを放つ。ショットガンぽい感じだ。綺麗に着弾したところに、アーノルドが突っ込んでいき、剣で倒していく。横からジャックもゴブリンの集団に襲い掛かり、あっという間に討伐完了していた。さすがに彼らのレベルだと、この辺は楽勝だという。基本的な動き自体は、あまり変わらない感じのようだ。
次のゴブリン達がいたので、今度は俺達が対応する。 あ、花子は見学で。
「ファイア(範囲)」
赤坂が範囲でファイアを放つが、それでゴブリンは全滅してしまった・・・
「「え?」」
びびる、アーノルド達。まあ、いきなり全滅とか、ちょっとやりすぎだよな・・・
「MPは大丈夫なのか?」
ハリーが赤坂のMP量を心配する。通常、高火力の魔法は、それなりの量のMPを消費する。
「ええ、問題ないですけど。」
赤坂のMP量は規格外であることを説明するが、納得してもらえていないようだ。やっぱり良い所を見せようと、頑張ってるようにしか見えないよな、普通。
そのあと、交互に討伐を進めるが、どんどんハリーとミランダの表情が厳しくなってきた。
赤坂のMPがまったく切れることがないため、あせり始めているらしい。 なんか、悪いことしてるような雰囲気になってきた・・
案件ではないため、適当なところで切り上げて、町の様子とかを見せてもらうことにする。
冒険者ギルドは、やはり変わらない感じだった。ただ、やはり外人のほうが、素直に町に溶け込んでる感じはする。
あと、もっとも重要な「猫耳」についてだが、こちらにも居ることを確認した。やはり全ては「猫耳」に通じる、という説は正しかったようだ。
午前中いっぱいで、戻ってきた。お昼は昨日の社員食堂で済ませる。
午後からは、銃について、見せてもらうことにした。
銃は見た目が銃だが、弾はこめない。基本的には杖と同じである。一応、ライフルとかショットガンのようなものも作れるそうだが、見た目が違うだけで、機能的にはハンドガンと変わらないそうだ。なので、携帯性などでハンドガンが好まれるそうだ。
赤坂が、やっぱりというか、マスケット銃についていろいろ聞いていたが、おそらく某首を食べられてしまう系のためだろう。上条さんいわく、日本でも作れるけど、どうなのよ。だそうだ。 俺は何のことか、訳が分からないよ。
銃については、得体のしれない盛り上がりを見せたが、ようやく落ち着いて、ホテルへ帰った。
今日は、実際に討伐案件を受けてみる。ただし、メンバーの入れ替えをしてみる。俺のチームは、俺、花子、ジャック、ミランダ。アーノルドのチームが、アーノルド、ハリー、赤坂、サスケとしてみた。一応、ミランダは回復もできるそうなので、なんとかなるでしょう、とのこと。どちらかというと、赤坂の回復に疑問が残るため、赤坂の居るほうにヒーラーを配置する必要があるので、そこは目をつぶる。 まあ、それほど離れない予定なので、いざという時には、フォローできるし。
◆◆
「じゃあ、サスケ。斥候よろしく頼むよ。」
「アーノルドさん、了解っす。」
サスケは森の中に消えていく。赤坂もレーダーをチェックしていくが、あっという間にサスケはレーダーから消えていった。
「サスケがレーダーから消えたんですが、忍者のスキルかなにかですか?」
レーダーを見ていたハリーが赤坂に質問する。
「忍者というより、サスケ自身のスキルみたいなものですね。」
「ゴブリン5匹ほどの集団を、北東150m辺りで発見っす。」
「「え?150m?」」
アーノルドとハリーは赤坂に問いかけるようにつぶやく。
「この後どうしましょうか?」
赤坂はにっこり微笑みながら、この後の対応を促す。
「このままやっちゃっていいすか?」
アーノルドがはっと我に帰る。
「いや、そのままこちらに誘導できるか?」
「了解っす、誘導するっす。」
しばらくして、サスケが姿を現し、その後ろにはゴブリン達も姿を見せ始める。
「赤坂とハリーは範囲攻撃準備、サスケは私の後ろに回ってくれ。」
アーノルドからの指示で、ハリーと赤坂は範囲攻撃の準備をする。十分な射程範囲に入ったことを確認したのち、ハリーと赤坂は範囲攻撃を撃つ。
「ファイア(範囲)」
ゴブリン達は、二人の範囲攻撃であっさり全滅する。が、アーノルドが呆然と立ち尽くしている。
「なあ、そんなに強力なものは撃ったつもりがないんだが・・・」
ハリーも呆然としながらつぶやく。
赤坂とサスケは、そんな二人を見ながら、え?っという感じで首をすくめた。
気を取り直して、再度サスケが斥候にでる。
「オークとゴブリンの集団発見っす。オークが2、ゴブリンが8っすね。誘導するっす。」
「オークは俺が抑える。ゴブリンに範囲を撃ってくれ。」
アーノルドが指示を出すと、ハリーと赤坂は範囲の準備をする。
サスケが姿を現し、その後ろにオーク達が姿を現した。ハリーと赤坂が範囲を撃つ。
「ファイア(範囲)」
ゴブリン5匹が範囲攻撃で崩れていった。アーノルドはオーク2匹と対峙する。しかし、オークはゴブリンにファイアを放った魔法職2人にターゲットを向けた。
「まずい。赤坂、ハリー、下がってくれ。」
アーノルドが魔法職2人にむかってそう言った次の瞬間、サスケが魔法職に向かうオークに襲い掛かる。刀を袈裟懸けに切りつける。オークはそのまま崩れていった。
呆然とするハリーの隣で、赤坂がアーノルドに対峙するオークにサンダーを放つ。アーノルドは、赤坂のサンダーでマヒ状態となっているオークに切りつけ、オークはゆっくりと倒れていった。
アーノルドとハリーは、呆然と赤坂とサスケを畏怖の念をこめて見つめ続けた。、
◆◆
「じゃあ、次はこっちがいきますか。ジャック、西側の探索を頼むよ。」
「ラジャー、沖田。」
ジャックは森に入っていった。俺は花子に、わかってるよね?という視線を投げると、花子は膨れながらうなずいてきた。
「まずい、ゴブリン20匹ぐらい居る。見つかった。」
「ジャック、そのままこっちに誘導して。ミランダは左側に向けて範囲攻撃準備ね。花子は俺が指示するまで待機。」
ジャックが姿を現し、その後ろにゴブリン達が見える。
「ジャック、ミランダの方に抜けていって。ミランダは俺とジャックがすれ違うタイミングで左側へ範囲。」
ジャックが俺の脇を抜けるタイミングで、ミランダが範囲攻撃を撃つ。
「花子、左側から殲滅で。ジャックはそのままミランダの護衛。」
俺はゴブリン達の突撃を盾で抑えながら、剣でゴブリン達を突いていく。花子は意気揚々とファイアを食らったゴブリン達を血祭りに上げていく。あっという間にゴブリンは半数がいなくなり、徐々に撤退を始めた。
「追撃する。ミランダは奥に範囲。花子は範囲を確認したあとに突っ込んでいい。ジャックも範囲に合わせて。」
ミランダの範囲攻撃を確認し、俺達3人はゴブリンの残党に襲い掛かる。 あっという間にゴブリンは全滅した。
「私達って、こんなに強かった?」
ミランダがハリーに、呆然としながら問いかける。
「いや、でも・・・」
花子がニコニコしながら戻ってくる。ほんと、なんとかとハサミは使いようだわ。
昨日同様に、どんどん進めていく。 思ったより混乱もなく、即席パーティの割には、順調だった。 ただ、こうしてみると、赤坂とサスケの能力は異常というのが、よく分かる。ジャックもベテランと呼んでいいレベルなのだが、捜索範囲やスピードはサスケにかなわない。 ミランダについても、精度は赤坂より上だが、威力とかMP量は赤坂の方が上というのがはっきり分かる。
「そろそろ、おなかすいたんだけど。」
花子の腹時計がお昼を告げているらしい。俺達は昼にすることにした。
アーノルドたちは、携帯用食料をバックからとりだしているが、赤坂が四次元ポケット改め四次元バックの試作品から調理道具を取り出していく。
「あ、それ試作品?」
「ええ、モニターです。ほぼ完成品ですけどね。」
アーノルドたちが目を見張っているのが分かる。
「なあ、赤坂、そのバックはなんだ? そして、なぜ調理道具をだしているんだ?」
アーノルド達に、バックはほぼ無限の収納ができる試作品、調理道具はオークやゴブリンを調理するためであることを説明する。
「オークとかゴブリンって食べられるの?」
ミランダは信じられない、という顔をしていた。まあ、俺達もそうだったけど。
そんな中、赤坂はマイペースで料理していく。しばらくして、おいしそうな匂いがしてくる。
「なあ、俺達もちょっともらえないか?」
ジャックが興味津々で聞いてくる。
「当然、皆さんの分ございますよ。」
赤坂はにっこり微笑む。まあ、十分な量を狩ってるから、材料には困らないしな。
こうして、俺達は、ゴブリンパイと、オークソテーにありついた。
「「「うまい!」」」
アーノルドたちが一斉に顔を見合わせた。ミランダは赤坂にレシピを聞いているようだ。
花子は黙々と俺の分まで食っている。あ?なに食ってんだよ? 結局、サスケと赤坂にちょっと分けてもらった・・・
午後からは、元のチームでそのまま討伐を続けるが、数回ほど花子が暴走した以外は、特に問題なく終わった。
後編は、来週の週末ぐらいを目標にUP予定です。いくつかのネタを悩み中です。決まり次第UPになると思います。問題はその次の話で、なんかイマイチ面白くないような気がする・・修正して書き続けるか、止めて次の話にいくかも検討中。




