14.会議 会議 会議
本編です。といっても、ネタをつなぎ合わせただけですが。
■■14.会議 会議 会議
このところ、平和な日々が続いている。平和といっても、相変わらず護衛とか討伐とかはしている訳で、斬った張ったの世界の中での平和なわけだが。
経費の確認で、田中のところに行った。花子のところは誰かに頼むので、田中のところぐらいは自分でいく。
ところが赤坂が一緒にいくと。 そういえば、○○野郎とか、へ○れ、とか言われなくなった。
「田中。これなんだけどさ。」
「沖田か。ああ、やっといてやるわ。」
なんか、田中がいい人になってる。 俺と赤坂は、顔を見合わせた。
「田中さん、やっぱりアレですか? 疫病神がバレた? 改心した?」
「いや、もともとばれてるし。 って、誰が疫病神だよ! 赤阪ちゃん酷すぎ・・」
で、田中によると、どうやら三河屋こと、三河課長がこっちに戻ってくるらしい。それで、突っ込まれそうな資料は、早めに処理しておきたいそうだ。
三河屋は、越後屋の天敵ともいわれる、やり手の営業マンで、次期部長の呼び名が高い。
海外に出向していたが、この出向は栄転とも左遷とも言われる、話題の人事だったらしい。 俺とか田中が入社する前の話なので、俺達も噂でしか知らないが。
で、その出向先で、傾いていた経営を、三河屋が鮮やかな手腕で立て直したらしい。 つまり凱旋だ。
その1週間後、三河屋が帰ってきた。
とある日の社員食堂。
「三河屋が、調子にのって、うちらに無理難題を押し付けてくるわけよ。」
あ、サスケが固まってる。 まあ、前科あるからね。
「じゃあ田中、あっち連れてって、一回死んでもらう?」
サスケ? 顔青いよ? 分かって言ってるけどw
「あ、それいいかも。 って、良いわけあるかーーーー!」
これこれ、田中、落ち着け。 お前、注目浴びまくってるから。
とりあえず、田中はほっといて仕事に戻ることにする。
田中からSOSが来る。しょうがないので、赤坂とサスケを連れて、指定の会議室へ向かう。
会議室に入ると、田中たちが居た。ちなみに、すでに花子と上条さんがいた。俺達が席に着くと、お互いに顔を見合わせる。 誰も内容を知らされていないらしい。
「第10回 田中支援会議!」
俺達は、席を立った。
「いや、ちょっとちょっと。」
どうやら、三河屋の無茶振りで、俺達に相談したいらしい。
「まずね、三河屋がいうには、日本の業務環境はなってない。ってことらしいのよ。」
まあ、それはある意味正論だ。 海外のことは良く知らんが。
「で、業務環境を改善すれば、以前から問題になってる、女性戦闘職の離職率の件や、今後の求人活動などにも影響を与え、しいては売り上げアップ間違いなし。とか言い出した。 発表しないといけないんだけど、なんかネタない?」
意外とまともで驚いた。
女性戦闘職の件は、寿退社などもあるが、シャワーが使えない、とか、美容に悪いとかいう問題が結構な割合を占めているので、この仕事でそれはないでしょう、という気もしないではない。
「でも、トイレの問題はありますね。」
あ、赤坂とか女性陣は、トイレは結構大変そうだね。男は外でも適当に済ませられるが、女性は気を使う。
「そういえば昔、トイレで森の中に入っていったら、いつの間にかゴブリンが背後に立ってた、って話があったな。」
「それは有名ですね。私もトイレの時は、レーダーチェックしてますから。 特に沖田さんの動き?」
一斉に俺に視線が集まる。痛い、痛い、止めて・・
「俺、覗きとかしてないよね、ね、ね、サスケ? なんとか言って・・」
その、意味ありげに目線をそらすのは や め ろ
「冗談です。魔物をチェックしてるのは本当ですが。」
最近、赤坂の攻撃が半端ないんだが・・・
「戦闘職って大変だよな。トイレもおちおち行けないとか。」
「結界とかテントの応用とか、箱については試作品あるだけどな。」
「結界は使えない人もいますからね、俺とか。それにあれは使いにくいらしいですしね。」
結界はそもそも、微妙な扱いを受けている。魔法の壁による防御な訳だが、人により強度が異なる。また、MPの消費量も異なるのである。簡単に説明すると、100の強度の結界を張れるとしよう。ゴブリンの攻撃を10とした場合、10回の攻撃を結界で防げる。これだけを聞くと、とても有効だが、自分の結界の強度というのは、一律にならない。あるときは100、あるときは50というばらつきがでる。そもそも、自分の結界がどの程度のものか、というのが分からない。結果が全てだ。
また、敵の攻撃も一律ではないため、10のときもあれば、30のときもある。よって結界がどの程度持つか、は運次第である。
さらに、結界で使用するMP量もランダムになる。余裕があるときはいいが、節約したいときなどには、致命傷になりかねない。
なので、ある程度の上位クラスにならないと、結界は使われない、というのが一般的である。
「なんだよね。やっぱ、テント型トイレってのが本命になるのかね。」
開発部でも、トイレは考えているらしい。
「そうすると、水洗になるんですか。」
「いや、それは無理、水については制約が大きいから。」
水は制約が大きい。人が生きていくのには、水が必要不可欠である。しかし、水は圧縮できず、使う量をそのまま持ち運ぶ必要があった。よって、10Lなら、10Lのままの重さや、容積で持ち運ぶ必要がある。なので、水は節約される。謹製テントもシャワーが無い理由はそれである。
では、魔法で作ればいい、という考えもあるが、魔法で作れる水の量というのは、意外と少ない。昔、魔法職の女性が、護衛任務中にあった事である。寝る前にシャワーを浴びたいと魔法を使ったところ、結構なMPが減ってしまった。しかも、その夜に魔物の襲撃があり、戦闘中にMPが枯渇したらしい。なんとか終わったらしいが、魔法で水を作るのは、緊急事態のみ、という暗黙の了解がある。
「やはり、穴は掘らないとだめですか。」
「以前うちが開発した、携帯トイレ。あれは悲惨な事件があったしな。」
なにげにトイレ事情にくわしい上条さん。ひょっとして、トイレ担当?
携帯トイレ事件。 それは伝説であった。携帯型トイレが以前あった。工事現場などで見られるトイレを、持ち運べるぐらいにコンパクトにしたもの、と思ってもらえればいい。そして、使った後、防水、防臭された形で持ち運ぶのである。
悲劇は戦闘中に発生した。荷物を斬られたところ、運悪く携帯トイレも斬られてしまい、中身が溢れたそうだ・・・
花子とかだと、そのまま掴んで投げつけそうだが。ゴリラみたいに。 ゴリラだし。
「でも、箱だけでもあるとうれしいですね。目隠しと安全性も保てますし。」
女性には切実な問題である。 一応、念のために断っておくが、例の記録システムは、そこだけは記録されないようになっている。あと女性に限り入浴も。 まさに、謎システムである。
「じゃあ、トイレについては、開発部でも実用化すすめるよう、言っておくわ。水洗とかウォシュレットとかは無理だけど。」
これって劇的な業務改善に思えるんだが。まさかこのメンバーでこんな建設的な意見がでるとは・・・
またきやがった。とりあえず、会議室に行ってみる。
「今度はなんだよ?」
「いや、前回のが、何気に好評でさ。 次の宿題がでた。」
「なら、自分でやれ。トイレの開発で忙しいんだ。」
上条さん、やっぱトイレ担当だったんだ・・・
「そ、そう言わずに・・」
今回は、将来の社員となる子供たちを、如何にして取り込んでいくか。だそうだ。
「それは簡単っすよ、向こうの世界に連れて行けばいいっす。子供はそういうの好きっす。」
「それ、ダメだから。法律違反で営業停止になっちゃう。」
そう、仮想身体とはいえ、未成年はダメという法律がある。生き返るとはいえ、一応死ぬ可能性もあるし。 ん?待てよ・・・
「あ、上条さん、アレ使えませんかね?例のテストで使った。」
「ああ、アレか。 いけそうだな。」
周りのみんなは????となっていた。
俺はみんなに説明する。そう、光る装備の件で、俺がジャイアントスパイダーに殺されかかった、あのシミュレーターを。 シミュレーターは、環境や魔物の種類、強さを自由に変えることができる。つまり、安全に見学させることも、無敵で戦うこともできるのである。また、そのリアルさは保証付である。
「そんなものがあったんですか。知らなかったです。」
「そのうち、実用化されて訓練にも使えるようになる予定だけどね。」
「じゃあ、女の子は魔法少女にもなれるんですね?」
いや、赤坂、それは君の趣味だから。
「俺は<ピーーーー>になってみたいっす。」
「じゃあ、私はチャイナドレスきて、拳でなぎ倒すってやつかな。」
花子、お前はすでにやってるから、それ。
さっきから、上条さんが本気モードでメモとってるんだが・・・ 俺は、勝手に盛り上がるやつらを置いて、トイレに行くふりをして逃げた・・
後日。 このプランは、レジャー関連を扱う関連会社が出資し、勇者パークとかいうテーマパークの、目玉アトラクションとしてデビューした。当然、魔法少女あり、チャイナドレスあり、<ピーーーー>ありの、子供たちの心を鷲掴みする、超ヒットとなった。さらに、ユニコーンライドとかいう、ジェットコースターにいたっては、ユニコーンに乗ったことがある赤坂が監修したらしい。さすがにあのスピードは危険なので、安全なスピードでつくられているらしいが。
さらに、その10年後に、シミュレーションの上級者バージョンをやりこんだ、赤坂やサスケのような若者が、うちに大量入社してきたのである・・・
一応、俺達は発案者として、金一封と永久フリーパスなんぞを貰ったが、俺に一人で遊園地いけと?
またまたきやがった。
「今度はなんだよ。」
「・・・なんか、面白いこと考えろと。」
「意味わかんね。」
俺達は、一斉に席を立つ。
「まあまあ、とりあえず飯でも食おうや。奢るから。」
次の瞬間、一斉に席に着く。
ということで、田中のおごりで出前を頼みまくった。
「そういえば、最近ゴブリンパイ食ってないっすね。」
「「なんじゃそりゃ。」」
こらこら、おまえら噴出すな。
ゴブリンパイは、赤坂の創作料理である。なにげに赤坂は料理が得意だった。しかも、もの凄く。 で、そんな赤坂がゴブリンを見て思いついたのがゴブリンパイだ。さすがにゴブリンは食えないと思っていたが、結構うまかった。
「あと、オークソテーとか、スケルトンラーメンとかもありますよ。」
「た、食べてみたい・・・」
花子、お前、そこの机を食いそうだが?
オークソテーは、文字通り、オークのソテーだが、オークの肉は結構癖がある。しかし、赤坂はそこをクリアした。また、スケルトンラーメンは、発想からしてすごい。スケルトンの骨から出汁をとったスープを使っている。スケルトンをみて、出汁を取るというその発想はなかった。で、やってみたら、うまかった。スパイダー関係は、赤坂が拒絶反応を起こした・・・ 俺もちょっと勘弁だけど。
「それってこっちでも売れるんじゃないか。」
上条さんがラーメンに食いついたようです。
「いや、たぶん無理。あっちの素材を持ち込むと、保健所とかうるさそうだし。」
「・・・・・・」
「いや待て、じゃあ、向こうなら大丈夫ってことか。」
今度は田中が食いつく。
「まあ、基本は向こうで手に入る材料で作ってますから。 あと麺とかについては、こっちから持ち込む分には、あまりうるさくいわれないと思います。」
「うし、企画決定。向こうでラーメン屋をやる。さっそく越後屋と三河屋に話を通してくる!」
なぜか、全員うなずいている・・・ こいつら、やる気だ・・・
事態は恐ろしいスピードで進んだ。食い物はおそろしい。
後日、王都に「勇者ラーメン」の1号店がオープンした。俺達はオープニングスタッフとしてこき使われた。
連日、長蛇の列が出来てしまった。一番人気はオークのチャーシュー山盛り。
予想以上の反響に、問題が山済みである。まず、材料がたりない。スタッフもたりない。たりないものだらけである。
まず、材料の確保である。出汁のスケルトンはちょっと強めで、剣が効きにくい。よって、それほど倒されていなかったため、戦闘部全体に討伐指令がでたのである。また、冒険者ギルドにもスケルトンの討伐依頼がでた。ほかの材料は、比較的低レベルでも大丈夫なので、こちらは新人の育成もかねて確保していく。
つぎの問題は保存である。スケルトンは痛まないが、オークなどは生であるため、どうしても傷みやすい。討伐してきたはいいが、痛んでました、というのはまずい。食中毒は信用問題である。よって、携帯用冷蔵庫の開発が進められた。また、1回の討伐で持てる量には限りがある。これについても、運搬方法の検討が進められた。
そこで、真田課長の出番だった。なんと、冷凍機能付四次元格納庫(携帯版)という、某猫型ロボットをも越える、得体の知れないものを発明したのである。さすがにこれは異世界での流通大革命をおこしてしまうため、今後の扱いについては、上層部で検討中となっている。
また、この四次元ポケットは、水問題やトイレ問題も解決した。水を大量に持ち運び可能となり、ウォシュレットや、シャワーどころか風呂すらも実装されたのである。そして、仕様を変更することで、排泄物を四次元のどこかに廃棄可能となった。どこなのかは、よく分からないが、おそらくこっちの次元には影響はないだろう、とのこと。送り込まれる次元ではたまったものではないが、そこは考えるのは止めておこうと思う。
後日、トイレは、どうもブラックホールに繋がっていることが判明し、急遽安全機能が追加された。幸いにして、被害にあったものはいなかったが。
そして、勇者ラーメンであるが、昼休み限定の異世界ラーメンツアー(限定5組、護衛付)も開催され、予約が2年先までいっぱいだそうだ。
さらに5年後・・・ ほぼ村レベルまでという、王国全体へ出店するのであった。
次回更新ですが、早くて来週、遅ければ再来週ぐらいになりそうです。次回は戦闘ありの予定ですが、なかなか進みません・・




