12.サスケの恋
ようやく12話です。読んで頂いている皆様、ありがとうございます。今回はサスケが主役です。殆どサスケしかでてきません。サスケが嫌いな人にも、読んで頂けるような内容にはしたつもりですが・・
■■12.サスケの恋
服部佐助の休日は、抹茶で始まる。
「タミさん、うまいっすよ。結構なお手前っす。」
「サスケ坊ちゃんにそう言っていただけますと、このタミ、恐悦至極にございます。」
サスケにタミさんといわれたこの着物の女性、服部家のメイドさん、いや女中さんである。
サスケの家は、高級住宅地の一角にある、大きな日本家屋である。ちなみに、近所からは忍者屋敷と言われている。なぜなら、本物の忍者屋敷であった。
サスケは服部半蔵の子孫にあたるらしい。あたるんじゃないかな? あたることにしておこう・・・
とにかく、先祖が忍者であり、サスケの家には、どんでん返し、隠し梯子や隠し部屋などのカラクリが普通に存在している。サスケは、高校に入るまで、他の家にも、そういうカラクリがあると信じていた。 どうでもいい話である。
さて、サスケ。休みの日には、家の近くの公園に行く日課がある。公園といっても、砂場や遊具のある公園ではなく、カップルのデートコースになるような公園だったりする。
で、この公園のベンチで、午前中はひたすらぼーっとしてる。 もともとは、体を動かしに来ていたが、佐助の身体能力で全力を出すと、やばいくらい目立ってしまう。普通の人は100mを10ちょっとでは走らないし、広いとはいえ公園で100mを全力疾走する人は、ちょっと見かけない。また、サスケはバスケのフリースローサークルあたりからジャンプして、ダンクができたりする。お前はNBAの選手かと。で、そのジャンプ力を生かして、その辺の木に登ったりする。 本人いわく、忍者ならそれくらいするっす。とかいっているが、今の日本に忍者とか普通はその辺にはいないし、公園でそういう修行的なことはしないであろう、という事実をサスケは知らないし、気にもしていない。
その結果、あちこちのプロスポーツのスカウトとか、マスコミとか、警察とか、大騒ぎになったのである。それ以降、公園に来る習慣は継続しているが、やることがなく、ぽーっとしてる。
そんなサスケであったが、とある姉妹と知り合いになっていた。
姉のほうは、サスケよりちょっと下、妹のほうは小学生の高学年ぐらいであろう。二人とも、清楚で美しい顔立ちをしており、将来は絶世の美女確定、という感じだった。
事の起こりは、ボーっとしているサスケがあまりにもアレだったので、通りかかった二人が、それを見て思わず笑ってしまった所から始まる。 正直、二人以外にも、大勢がこそこそと笑っていたのだが、この二人だけしか、笑ったことをサスケに謝らなかった。これもどうかとは思ったりするが、話を進める。
「「ふふふ」」
「へ?」
「あ、ごめんなさい。悪気はなかったのですが、どうしても・・・」
「ああ、別に気にしてないっす。いつものことっす。」
「お兄さん、いつもここで何しているの?」
「ぼーっとしてるっす。」
「それって楽しいの?」
「うーん、わかんないっす。」
「変な人。」
「ちょっと、香織。やめなさい。」
「香織ちゃんていうんすか。かわいいっすね。」
香織ちゃんというその女の子は、ちょっと赤くなった。
「でも、お姉さんのほうもかわいいっすけどね。 二人ともかわいいっすね。」
サスケは結構、やり手かもしれないが、おそらく天然であろう。
「でも、お兄さんって、変な話方するね。」
「ちょっと、香織。いい加減にしなさい。」
「いや、別にいいっすよ。実際、よく言われるっす。」
という感じで、これをキッカケに、時々公園で話をするようになったのである。
実は、サスケは結構背が高いし、見た目は結構かっこよかったりする。 知らなかったでしょう。作者も今初めて知った・・
つまり、この姉妹とサスケの会話しているところは、結構お似合いかも?という設定を、無理やりにでも作りたかった作者の意図が見え見えである。
なんか、書いてて、ムカついてきたので、止めてやろうか、とも思うが、とりあえず続けることにする・・
あ、状況によっては、サスケもげろ ということになる可能性もあることは、一応、お断りしておく。
それから、サスケはこの姉妹と公園で話をするようになった。姉の方は栞というらしい。
栞さんって、清楚でかわいくって、すっごくいいっすよね。
日に日にその思いが強くなっていく。そして、その思いから、それに相応しい男になろう、という思いへと繋がっていく。
そう、サスケはその栞という少女を好きになっていた。
サスケは自分にそれなりに自信があった。幼少の頃から厳しい訓練に耐えてきた、という実績に基づく自信である。そして、2課における仕事でも、十分その成果を発揮していた。
しかし、サスケは思った。 果たして、今の自分は、栞さんに相応しい男であろうか。いや、より高みを目指さなくては。
そこにサスケにとって、思わぬ落とし穴があった。
そもそも、サスケは真面目な性格であった。幼少のころから、周りの子供たちとも遊ぶことなく、忍者としての訓練に明け暮れる毎日を過ごしてきた。そしてそれは、サスケを学校で孤立させた。サスケにとって、孤立することはそれ程、苦になることではなかった。しかし、友達と仲良くしましょう、という教えがサスケを苦しめた。 サスケは考えた。何故自分が孤立しているのか。そして、それは自分が真面目であるからである、と考えた。サスケはお調子者を演じることにした。語尾に「っす」という言葉をつけることで。 これは子供にとって、てきめんな効果があった。こうして、サスケはその真面目な性格を、さらに加速させていく。
そして、サスケはその真面目さゆえに、自信過剰なタイプではなかった。むしろ用心深いタイプであろう。そしてその自覚もあった。しかし、それが、2課という環境において、事態を悪化させたのだ。 サスケは幼少からの訓練で、類稀な才能を開花させてきた。そして、結果も出してきていたと思っていた。
たにかに、サスケは訓練で十分な結果を出してきていた。言い換えると、訓練でしか結果を出していなかった。また2課での実戦においても、沖田、赤坂のフォローの元、という条件下のみで、その結果をだしてきていたのだ。
訓練と実戦の違い。それは想定外のことが起こる確率であろう。訓練とはシナリオがあり、それに合わせた動きをする。そこにはシナリオにない、想定外のアクシデントは発生しない。しかし、実戦においては、シナリオはなく、状況は刻々と変わるのである。当然、想定外のアクシデントも発生する。
では、想定外のアクシデントに対応するために、必要なものは何か。それは経験や、経験に基づく勘である。サスケには実戦という経験が圧倒的に不足していた。たしかに2課での実戦でも、成果は出してきていた。しかしそれは、沖田、赤坂のフォローにより、サスケにはその状況の変化や、想定外のアクシデントというものを考える必要がない状況にあったから、といえる。もし、沖田がフォローしなかったら、沖田が赤坂に、サスケのフォローとなる動きを指示していなかったら。 サスケはもっと早く、その事実を知ったことであろう。そして、それはサスケにとって、その心を折られる結果になっていたかもしれない。むしろ、努力し、自信を持っていたサスケであるが故に、普通の人よりも、心を折られる可能性は高いだろう。そして、これまで挫折らしい挫折をしてこなかったサスケにとって、それは重くのしかかるであろう。
そして、サスケはようやく、思い知る。自分に経験が不足しており、それを回りに助けられていた、という事実を。
沖田の死という形で。
サスケは悩んだ。果たして、自分はこのまま、この仕事を続けていいのであろうか。 続ける資格があるのであろうか。
そして、一つの決断をする。 自分を鍛えなおす。そして、沖田や赤坂に認めてもらえるようになったら、改めて沖田のチームに入れてもらおう。
サスケは辞表を提出した。会社を辞めなくとも、自分を鍛えることは可能であったが、沖田や赤坂がそばにいる状況に満足してしまうことが怖かった。
しかし、斉藤はサスケの辞表を受け取らなかった。 サスケは悩んだ。むしろ、何を自分が悩んでいたのかすら分からずに、出口のない袋小路に嵌っていた。
「サスケお兄さん、こんにちわ。」
サスケは気がついたら、いつもの公園のベンチにすわっていた。そうだ、今日は休日である。
「香織ちゃん、こんにちわっす。 あれ?栞さんは?」
香織もサスケの脇に座る。
「栞お姉さんは、今日はラブラブデートなの。」
ががーーーーん。栞さん、付き合ってる人いたっすか・・・ しかもラブラブっすか・・・
サスケは、その人生において、最大ともいえるショックを受けていた。おそらく沖田の死より、ショックを受けていたかもしれない。
よくよく考えれば、サスケはその手の話をしていない。真面目ゆえ、といえば真面目ゆえなのだが。
それに、サスケは他人が自分をどう思うか、というものをあまり意識していなかった。女中という自分に好意を持ってくれる人達に囲まれて暮らしてきた、というのもあるだろう。自然と、周りは自分に好意を持ってくれるもの、という思いがあった。
サスケはダブルパンチで、立ち直れなくなっていた。
「サスケお兄さん、どうしたの?」
「もう、ダメっす・・・」
ショックで顔色の悪いサスケを見て、香織は靴を脱いでベンチの上に立った。
そして、サスケの頭を撫でた。
「私ね、この間ピアノの発表会があったの。先生に真ん中のところを注意しなさい、って言われていたのに、自分で大丈夫って勝手に思って、気にしなかったの。 でも、注意しなさいって言われたところで間違っちゃって、終わってから泣いちゃったの。 そしたら、先生が、また次があるから、次は注意しましょうね。って言ってくれて、こういう風に頭をなでてくれたの。だから、私は次は先生の注意を守って、頑張ることにしたの。 サスケお兄さんも頑張れるように、私が頭を撫でてあげる。」
そうだ、自分は何を悩んでいたっすか。まだ、次はあるっす。自分は甘えていただけっす。やるっす。
サスケは香織を見上げた。そこには昔、絵画でみたような天使がいた。天使は自分に微笑みかけていた。
でも、こんな小さい子に守ってもらってるようで、恥ずかしいっす。そうっす、次は自分が守るっす。守れるようになるっす。沖田さんも、赤坂さんも、香織ちゃんも、自分が守れるようになるっす!
サスケは、守られる存在たる、新人研修の切り上げを申し出た。新人研修の切り上げは、実績、経験のある中途社員に向けた制度であったが、サスケの申し出では受け入れられた。サスケは、目指すべき沖田や赤坂と同じ土俵に立ったのである。
そして、いくつかの案件をこなし、ストーカー被害にあっていた女性をその脅威から守り、確実に成長をとげていた。
とある休日。 サスケは珍しく、ウキウキしながら公園のベンチに座っていた。
「サスケお兄さん、こんにちわ。」
「あ、香織ちゃん、こんにちわ。」
そう、香織に自信を持てた自分を見てもらうために。 そして、香織を守るべき存在は、自分以外にいないことを確認するために。
「紹介するね。私の彼の健くん。」
「健です。はじめまして。」
「・・・・・」
「じゃあ、これから健君とラブラブデートだから、もう行くね」
そういって、香織は手をつないで、スキップしながら去っていった。
「なんすか、それ!!」
サスケは固まっていた。おそらく1時間ほど固まっていただろうか。サスケは、ふと空を見上げた。
「ふっ。自分には仕事があるっす。別に天使なんていらないっす。」
サスケはその頬に流れるものを拭うと、明日に向かって走っていった。そう、ワールドレコードで・・・
サスケは気がついていなかったが、走るサスケを見送る影があった。
「ふふふ。サスケ? 私より先に幸せになろうなんて、100万年早いわ。」
・・・赤坂さん ・・・・いつの間に ・・・・
最後に赤坂がでていますが、特別出演で、伏線とかではないです。当初は赤坂にストーリーテラーをやらせる予定でしたが、男としてきっつい展開になったため、止めました。 で、ネタのつもりで最後にだしています。
あと、このあとの13話以降でつまづいています。ここまで勢いで書いたため、設定がずれ始めており、一旦見直しも必要・・ 次の更新は未定です。




