暁
若干日が飛びます
その間の話はまた追々するつもりです
では、どうぞ
「じゃあ、時間は50分。用意――始め!」
号令が響く。それを合図にプリントを表にかえして解き始めた。一科目目は国語。次は英語でその後は数学、理科、社会と続く。1つの部屋に試験官と二人きりだから不正は不可能な状態。
(後は悠との約束通りある程度本気でやればいいか)
やってやろうじゃないか
*
「はい、お疲れ様」
その声に一息つく。疲れた。試験官の居なくなった後脱力し机にもたれかかった。
「おつかれ」
そう言って顔の近くに置かれたのはマグカップ。置いたのは勿論悠だった。
「誰のせいだと思ってるの……」
言いながら紅茶を飲む。本日もたいへん美味しいです
「あぁ、悪かったな。でも、俺も想定外だったんだよ」
不意に頭を撫でてきた。この前から何気に気に入ってるようだ。気持ちいいからさせたままにしておく。
「それにしたって昨日1日で照らし合わせて足りないとこ補って、三日目で試験とは思わなかった」
これは、こことあそこが大して変わらなかったからできたことだ。全く異なっていたらかなりヤバかっただろう。
「そうだな。まったく、栞奈さん何考えてるんだか…」
悠は悠で大変だったらしい。まぁ、悠も教師だというから雑用に駆り出されたんだろう。そんなことを暫く話していた。
「し、失礼します!」
ガタッと大きな音をたてて一人の女性が入ってきた。かなり慌てているようだった。
「山本先生。どうしたんです?」
悠がその人に問いかける。口調が変わるっているのは気のせいだろうか。
「あぁ、月嶋先生! 先生がこの子の保護者で間違えないですよね!?」
山本先生と呼ばれた女性は30代前半ぐらいで眼鏡をかけた、所謂スレンダー。全体的に地味だが中の上ぐらいだ。勿体ない
「そうですね。正しくは後見人ですが」
興奮している山本先生と冷静な悠、みごとに正反対で見ていて面白い。
「天宮さん、全科満点。創立以来初めての快挙です!!」
テンションのピークを迎えたであろう山本先生は勢いのままそう言った。
「……え?」
えっと、これはどういうことだろう?
*
その後も山本先生と言われた彼女は興奮したまま話し続けていた。途中若干正気にもどったのか
「私は山本林。英語科の教師よ」
と相変わらずのノリで教えてくれた。そんな彼女も去って再び二人きりの部屋。
「1問か2問はおとしたはずなのに」
密かに呟いた。……つもりだった
「予想はしてたが、本気でやれと言ったろ?」
悠が私の独り言に文句をつけてくる。
「だって、目立つと面倒でしょ」
反論しておく。山本先生の様子からしても失敗したと思っているのだ。私は平和に日々を過ごせればいい。
「お前のは誤魔化しきれない。今は大丈夫でもいつかはばれる。解ってるんだろ、琴李」
そう言って私の頭をまた撫で始める悠。ふてくされる私に
「とりあえず、合格おめでとう」
と優しい笑顔で言ってくれた。
ありがとうございました。
林さん登場です。気に入ったので今後もちょくちょくでてくるかなあと思います。
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