表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Amour la planète  作者: 皆川恋桜
序章
5/27

新月 (悠)

 予告どおり悠君視点です。

では、どうぞ

 その日も、いつもと変わらない日になるはずだった。あの時、あいつが来るまでは。


―おーい悠。聞こえてる?

「あぁ、ルイ。今回は何だ?」

 唐突に響いてきた声にかえす。かれこれ15年は続いているこのやり取り。


―今夜、何時もの場所に来て。お客様だよ

「客?」

 聞きなれない言葉に正直驚いた。15年間で初めてじゃないだろうか


―うん。短くて3日、長くて1ヶ月ぐらい面倒みてやれるようにして

「はぁ!? 今からか! 誰かも分からないのに!!」

 無茶ぶりが過ぎる。正直やってられるかと思った。


―ふぅん…悠らしくないね。僕が神だってこと忘れたの…?

 急に雰囲気の変わった声に鳥肌がたつ。神と人間の格の違いを痛感されられる。


―これは、お願いじゃない。命令だよ

その決定的な言葉に、渋々頷かざるを得なかった。

「わかったよ」


「さて、そろそろか」

 指定された時間に桜の大木の前に立って呟く。その堂々とした佇まいにこの木の“生命いのち”を強く感じた。


―これでいいのか?

その幹に手を立てて尋ねる。相手は勿論あの理不尽神(ルイ)だ。暫くして


―もちろん!

 という声がした。同時に世界が大きく揺れる。次の瞬間、一人の少女が出現した。


「っ」

 思わず息を飲んだ。美しい黒髪が風と舞う。次第に開かれた双眸(ひとみ)は水面に映った夜空のように澄みきった群青色。


「貴方が、悠?」

 声が響く。その余韻はとても心地よくいつまでもそれに浸っていたいと思った。


「あぁ」

 それでも口は反射的に動き、

「ようこそ、先年桜のこの世界に」

 心からの歓迎の言葉を紡いだ。


 その後、桜から少しした処にある俺の家に移動した。そこは数十年前に建てられた洋館で若干古いが澄みやすい場所。今はその中央に位置する談話室の暖炉の前の椅子に座っている。


「ありがとう」

 差し出したマグカップをとる手は思わず眉を顰めてしまうほど白かった。それから暫くは心地の良い沈黙が続く。話しかけようとして名前を知らないことに気づいた。知りたい、そう思った。


「で、名前は?」

 少女はきょとんとしてから、納得したように頷いて答えてくれた。


「琴李、天宮琴李」

 その後続いた問いにルイがほぼ何も説明せずに琴李を放り出したことを知り、頭が痛くなった。とりあえずこの世界のことを説明しないといけない。彼女がこれからここで生きていくためにも。


「な、んで」

 感情も何もかも抜け落ちた声で彼女は呟いた。ほぼ手付かずの紅茶がマグカップと共に落ちたことにも彼女は気づいていないのだろう。


「バランスをとるため」

 無言だが、先を求められているのがわかった。

「強力すぎる力ゆえに均衡が取れなくなったんだ。後……一般人に慣れるため」


「それ、その人達は知ってるの…?」

 恐る恐る訊いてくる彼女はきっと解っているのだろう。


「一部のみだ。大半は知らない」

 その答に彼女は愕然とした顔をした。そして悔しそうに顔を俯かせる。


「こんな話の後でなんだが、琴李にはこの学院に入ってもらうことになるだろう」

 その言葉に彼女はハッと顔を上げた。


「近いうちに試験を受けてもらうことになる」

 今度は俺の視線が俯いていく。彼女の反応を見たくないがために。

「悪いが、これは決定事項なんだ」

 これは、この少女が生きていくために必要なことだから


 こうして、夜はふけていく


ありがとうございます

 悠君会でした。次からは琴李ちゃん視点に戻ります

感想、ご指摘ありましたら、気軽にお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ