夜桜-ⅰ
いきなりですが長かったため前後でわけました。
では、前半です。どうぞ
目を開けるとそこには大きな桜の木があった。夜闇の中に咲き誇る満開の桜、その幹に手を当てこちらを見ている人。
風が吹いた。花弁が夜空に舞い踊る。
「――貴方が、悠?」
「ああ」
ちょっとした静寂が辺りを満たす。
「ようこそ、千年桜の咲くこの世界に」
一際強い風が吹いて、視界が桜色に染まっていく。
――これが、すべての始まり――
*
場所は変わって、桜の木から約10分ほどの処にある1つの館。私はそこで暖炉の前にある対面式の椅子に座っていた。
「紅茶だ」
一人で何処かに行っていた悠はそう言いながら私の前にマグカップを置いた。
「ありがとう」
マグカップを両手で包むようにして暖をとる。いくら春といっても夜はまだ冷えるのだ。
「で、名前は?」
同じくマグカップを持った悠は私の向かいの椅子に座った。彼は紅茶を一口飲んでから、そう言った。それに、まだ双方名乗ってないことに今更ながら思い至る。
「琴李、天宮琴李。貴方は?」
問い返しながら相手を見た。満月のような瞳に夜空のような髪、顔はかなり整っていて、某アイドルグループは軽く超えているだろう。なんてことを考えていると返答がきた。
「月嶋悠だ。ルイから聞いてないのか?」
「えぇ、名前だけ。『向こうには悠って奴がいるから、そいつに全部聞け』って」
あの神が言っていたことを思い出しながら答える。
「じゃあ、何も知らないのか」
その確認にうなずく。すると悠はため息をついて紅茶をもう一口飲んだ。
ありがとうございました。
悠君登場です。暫くは悠くん会になると思います。
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