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五十四話 闇の始動

 1人取り残されたサラはコウキに言われた通り城の方へと向かった時だった。


―――こっちだ。


 頭の中に声が響いた。


「―――ッこ、これは!?」


 夢の中で聞いた声にそっくりだった。


「どこにいる」


―――このまま真っ直ぐ。


 声に導かれるままサラは向かったのだった。


 しばらく歩くとそこは町はずれの小高い丘だった。


 周囲には戦争によって崩壊したと思われる瓦礫が置かれている。


 サラはそのまま丘を越えると一軒の廃墟が見えた。そして、その廃墟の前に立っている1人の女性の姿があった。


 緊張した様子で近づいてくとその姿ははっきりとらえることができた。


 青く短い髪に紅い瞳をもった女性だった。


 瞬時にその人物が魔族であることを理解した。


「お前が我を呼んだのか?」


 サラの問いに女はゆっくりと視線を動かした。


「そうだ。私は女王ベルナデットの側近、名はウェパル」


 目の前の女性はそう言ったがサラはピンと来なかった。


 これまで魔人として生きて来てウェパルと言う名の魔人など聞いたことも無かったからだ。


 しかし、当の相手はこちら側のことを知っているようだった。


「サラフォンティール。貴様は何時までそうしている」

「貴様こそ何が言いたいんだ?」

「お前はいつまであの人間のもとにいるつもりなのだと言っている」

「我はコウキ様と共に歩むと決めた。見ず知らずの貴様にとやかく言われる筋合いはない!」


 サラの言葉に熱が籠る。しかしウェパルは表情一つ変えることなく言葉を放つ。


「貴様はあの男のせいで力を失った。だから今一度貴様に力を授ける代わりに再びこちら側に戻って来い」

「冗談じゃない。我は今のままで良い。それに魔族側に戻る気など毛頭ない。どういう風の吹き回しで我の前に出てきたかは知らん。他を当たってくれ」


 棘のある言葉を吐くサラだった。


だが次の瞬間、


「戦争だ」


 その単語を耳にしたサラの瞳は大きく見開かれた。


 彼女の反応を見たウェパルの口は僅かにつり上がった。


「ベルナデット様は貴様の力を評価している。あの将軍たちに匹敵するほどの武術とセンスは我々の勝利の糧となることは間違いない。だからサラフォンティール、ベルナデット様の元に来い」


 手を差し出すウェパルにサラは首を横に振る。


「不可能だ。我は貴様らの元になど戻る気はない」

「ほう、こちらは貴様を高く評価しているのにまだ拒むのか。まあいい。貴様には思い出させてやる。そうすれば今まで貴様が受けてきたあの方の恩恵を今一度確かめるがいい」


 そう言いながらウェパルはサラへと迫る。


 サラは逃げようとするが身体に力が入らない。


「なにを、した」

「ちょっとした悪戯だ」


 ウェパルはサラの頭部へと手を伸ばす。


「や、めろ………」

「思い出せ」


 サラの頭部にウェパルの手が置かれた瞬間、サラの意識はトんだ。






 それは今から二百年以上前のことだ。


 当時まだ魔族などの存在など認知されていなかった頃、サンクチュアリの貴族の中にレインアント家があった。


 騎士家であったレインアント家の当主、ルークと妻のアイリーンの間に女の子が生まれた。


 2人は愛娘にサラフォンティールと言う名を授けた。


 サラフォンティールが5歳になったころ、彼女には弟のライオットが生まれた。


 サラフォンティールは幼少の頃よりその才覚を発揮し、12歳になる頃には棒術の型は全てマスターしていた。


 また、類まれなる魔力の持ち主でもあり数多くの魔法を扱うことができた。


 まさに神童と呼ばれる彼女が騎士団になったのは15の頃だ。


 レインアント家は貴族の中でも下に位置するのだが、彼女の成り上がりは凄まじく多くの上流貴族を追い抜き、戦争で多くの功績を叩きだした。


 そして彼女が所隊長を任されるのにはそう時間は有しなかった。


「父上、母上、サラフォンティールただ今帰還しました」

「お帰り、サラ」

「お帰りなさい」

「姉さんお帰り。すごいや、また勲章をもらったんだね」


 ルークとアイリーンそれにライオットは長女であり一族の希望であるサラの帰還を祝福した。


 他国との戦争でサラは敵大将の首を見事打ち取り通算4度目の勲章を得たのだ。ちなみにこの時彼女は20歳であった。


「ライオット、魔法学の方はどうだ?」

「うん。バッチリだよ。姉さんに教わった通りにやったら大成功さ」

「それは良かった。でもライオット、いつまでも他力に頼っていてはならんぞ」

「分かってるよ、姉さん」


 隣で笑うライオットの横で肉を口にする。


 この家族で食卓を囲むことが彼女にとって何よりも平和で落ち着いていられる場所でもあった。


「ところで、サラ。お前ももう20歳だ、結婚は―――」

「父上、そのことは良いのです。私は今のままで十分満足しています」


 この頃20歳とはすでに結婚適齢期であり彼女の友人たちは皆10代で結婚していた。


 当然サラにも縁談を持ち込まれているのだが彼女は興味が無く全て断っていた。


 そして今回の縁談も断ったばかりであった。


「そう言ってねサラ、私はあなたに女としての喜びを感じて欲しいの」

「母上、それは間違いです。喜びは人それぞれ、私は今のままで十分幸せです。それに、これまで積み上げてきたものが台無しになってしまいます。目標はあと5年。あと5年でレインアント家を上流貴族にまでのし上がらせることです」

「相変わらず堅いなあ。ま、姉さんらしいと言えばそうだけど」

「たしかに今の我々があるのもひとえにサラのおかげと言っても過言ではないからな」

「でも私は心配だわ。あ、そうだわサラ、エリン君はどうかしら」

「エリンって言ったら確か姉さんの幼馴染の」

「そうよ。彼だったらきっと良い旦那様になってくださるわ」


 諦めきれないアイリーンは幼馴染の名を出してきた。しかし、サラは断った。


「それはまずないです。私とアイツは腐れ縁であってそれ以上でもそれ以下でもありません」


 そう言うサラにアイリーンはため息をついたのだった。


 その後しばらくして、サラは王宮内の訓練場で休憩していたときだ。


 目の前に1人の男性の姿があった。


 サラと同じ黒髪で色白、背丈はサラよりも若干高めのスラッとした体型の青年だった。


「なんだ、エリンか」

「なんだとはひどいな。隣いいか?」


 サラが頷く前にエリンは座った。


「相変わらずすごい成績だな」

「そんなことは無い。私なんかまだまだ」

「はは、そう言うと思ったよ」

「そう言うお前こそどうなんだ?」

「普通かな。キミに比べればまだまだだよ」


 そう言うエリンにサラは軽く笑った。


 エリン・カルバーン。レインアント家とカルバーン家の両家の縁で彼とは3つの頃からの幼馴染である。


 実力はさることながらその人望の厚さから部下から上司までの信頼は厚い。またルックスから女性からの人気は高い。しかし、本人はあまり良く思っていないのである。


「ところで何故ここにいる? お前は別件でいないはずでは?」

「思った以上に仕事が早く片付いたんだ。それでちょっとキミの顔を見に来たってわけさ」

「なるほど、暇でしょうがないから私の所にきて暇を潰そうってわけか」

「あらら、お見通しか」


 笑うエリンを横にサラは立ち上がった。


「どうしたの?」

「暇なのだろ?」


 そう言ってサラはエリンに剣を投げた。


「いいぜ、でもお手柔らかに」


 両者は構え、そして2人の剣は火花を散らせた。





 程なくして隣国との戦いが起こった。


 サラ率いる別働隊は森林の中を移動していた。


 馬は目立つため小隊は徒歩で適地へと向かっていたのだった。


 サラを筆頭に部下たちが一列になって移動している最中、数名の部下にサラは言った。


「これより、二手に分かれるいいな」


 サラの命令に部下たちは返事をする。しかし、その内の1名だけ返事をしなかった。


「おい、ダン。返事が無いぞ!」

「すみません。サラフォンティール隊長」


 反発する目で答えたダンにサラは鼻を鳴らした。


「ケッ、下級貴族の分際で」

「なにか言ったか?」

「い~え。何も」


 ダンを一瞥するとサラは先頭を切って出た。


 サラは分かっていた。自分が下級貴族で、部下が自分よりも上の貴族の出身であるため反発心を持っていることを。だが、それでもまとめ上げなくてはいけない。


 部下の不平不満を取り除き一つの集団として一致団結させるためにこれまで努力してきた。しかし、それでも完全に拭うことはできなかった。


 サラとダンを含む4人はそのまま前に進み、もう4人は若干の遠回りをすることになった。


 獣道を歩くこと30分程経過した時だっただろうか。


 後方を歩くダンは言った。


「なあ、隊長」

「なんだ?」

「もし、今回の作戦が失敗したら俺たちどうなるんでしょうね?」

「さあな、今はそんなくだらない事を考えるな。集中しろ」

「おうおう言ってくれるねえ。下級の貴族から成り上がっただけのことはある。でも、隊長、幾らなんでも少し冷たすぎやしませんかねえ」

 

 ダンの言葉を無視するサラであったがなおも言葉を繋げるのであった。


「ちったぁ俺の言葉にも耳を貸してくれないかい?」

「なにが言いたい?」


 サラが振り返った瞬間、


「ッ!!」


 サラの腹には剣が突き刺さった。


「ガフッ――――」


 血を吐くサラにダンは言った。


「こういうことだ。下民がッ」


 うずくまるサラにタンを吐いた。


「腹が立つんだよ。下民の分際で俺たちに指図するのが、それに―――」


 ダンは顔を蹴った。


 サラは鼻血を出して仰向けに倒れた。


「女のくせに生意気なんだよ。おい、お前ら」


 すると、部下たちはダンの指示でサラを取り押さえると身に纏うもの全てに手を掛けた。


「な、何をする!!」

「なに? もちろん、こうするのさッ!!」


 するとダンはサラの下半身をひん剥いた。


「やめ―――ッ」


 口元を押さえつけられたサラは必死になって叫ぼうとする。


「こりゃたまげた。まだキレイそうじゃじゃねえか、どれ」

「ン――――――ッ!!」


 下腹部に感じるダンの指の感覚にサラは唸った。


「コイツ、処女だぜ!!」


 悦びの声を上げるダンに部下たちの笑い声が混じる。


「おいダン。まさかここで犯るのか?」

「もちろんだ。ちょっと遅れるが、まあ問題はないだろ」


 そう言うとダンは下半身を露わにするとソレをサラの目の前にチラつかせる。


「たーいちょーさーん。これがナニか分かるかな~分かるよね~。コレは~隊長さんの、初めてを奪うものだよ~」


 歪んだ笑みを浮かべながらもがくサラを見つめた。


「じゃあ、そう言うことでいただきますッと!」


 その瞬間、サラの身体は大きく反り上がった。


「おほおおおお、たまらんッ!! やっぱ女は初物が一番だ」


 愉しそうな表情をするダンは容赦なく腰を動かす。


 その間、サラは涙を流しながら唸り声を上げる。


「ダン、中には出すなよ。次俺なんだから」

「勝手に決めるな、次は俺だ」

「俺だって」


 次々に言葉にする部下たちにダン言った。


「落ち着け、まず俺がイってからだ!!」


 すると、ダンは腹に刺さったままの剣を掴むと容赦なく捻った。


 激痛のなかサラの籠った叫び声は打ち付けられる淫靡な音に掻き消されてしまった。


「ング―――――――ッ!!!!」

「うあヤベエ締まり半端ね――――ッ!!」


 ダンの腰はいっそう動きだしそして、


「受け止めろ!!」


 ついに中を汚されてしまった。


「おい、中に出すなって言ったのに」

「わりいな、でもまだ少し時間もあることだ。もう少し遊ぼうぜ」


 目下には身体を痙攣させるサラの姿があった。


 その後、どのくらい時間が経過したのか分からない。


 木々の臭いに混じり異臭が立ち込める。


 その中に全裸で仰向けになったサラの姿があった。


 全身の精液に混じり血液も混じっていた。


 腹部の剣は抜かれており、傷口からはおびただしい量の血が流れていた。


 まだ、息があるようで身体はゆっくりと上下に動いている。


 そのときだ、薄れる意識の中声が聞こえた。


「あら、こんなところに人間が、やだ、男臭い」


 声からして少女のものだった。


 黒髪のツインテールに真っ赤な瞳。手にはパラソルをもったゴスロリの格好をした少女の姿があった。


「ねえアナタ、なんでこんなところにいるのかしら?」


 問いかける少女にサラは無言を返す。


「まあいいわ。今アナタ絶望してる?」


 軽快に話してくる少女の問いにサラは思った。


―――当然だ。なぜこんな目に遭わなければならないのだ。なぜ、私を認めない。どんな思いでこれまで生きてきたのか。心も身体も理想も全て凌辱された。憎い、殺したい、蹂躙したい………。


「……せ、かい………を…こわ……」


 僅かに開いた口に少女は反応した。


「あら、こんなに凌辱(もてあそ)ばれてまだしゃべれるのね。ふふっ面白い」


 少女はそう言うとしゃがんだ。


「じゃあ、そんな絶望しているあなたにとっておきのサプライズを提供します」


 すると少女はサラの額にパラソルの先で軽く小突いた。


 刹那、サラの肉体から魂が切り離された。


―――記憶とか人間性とか、色々いじくってみよっかな~


「ふふふふふ」


 新しいおもちゃを貰った子供のような笑みを浮かべた少女はパラソルを開くとサラの魂を連れて事情に出現した魔法陣の中に吸い込まれていった。


 その後、サラの遺体が発見されたのは1ヶ月以上たってからのことだった。


 周囲には途中で敵の攻撃似合いサラは殿を務めて無くなったと言うことになり、彼女の死をきっかけにレインアント家は没落の一途をたどるようになり、カルバーン家と合併したのだった。





「こ、これが、我の、き、おく」

「そうだ」


 涙を流すサラにウェパルは言い放つ。


 記憶の奥底に眠っていた真実にサラは落胆した。


 実は人間であり部下に裏切られ、絶望し、魂を黒く染め魔人になったこと。


 サラはショックを受けた。


 全身の力が抜け、膝から崩落ちた。


「わかっただろ。これが貴様が今、この世に存在で来ている証拠だ。ベルナデット様が居なかったら貴様は今頃ただの醜い肉の塊になっていただろう」


 今のサラにはウェパルの言葉など耳に届いている筈はなかった。


「今回はこの辺にしておこう。去らばだ、近いうちにまた会うだろう」


 そう言い残すとウェパルは魔法陣の中に消えて行った。


「ハァ、ハァ…ウ―――――ッ!!!」


 嘔吐した。何度も、何度も、胃の中が空になるまで何度も嘔吐を繰り返した。





 目の前の少女はベルナデットと言った。


 だが、コウキはすぐに受け入れなかった。


 なぜなら、


「あの時確かに殺した。俺には分かる、アレは確かに本物だった」


 鬼気迫る表情をするコウキをベルナデットはニコニコしながら見つめている。


「確かに本物よ。でも、もし本物がもう1つあったとしたら、どうかしら」

「まさか、双子!?」

「ご名答。そうよ、アレは私の双子の妹。私たちすごーく似ているから、心も身体も魔力も全部」

「なんてことだ」

「そう落ち込まないで、せっかくの感動の再会なんですから」

「ざっけんな!! 殺す、いまここで、今度こそ!!」


 ロッドを構える。


「まって、まだ私は何も言ってないわ」

「知らねえ、さっさとぶっころ――」

「宴よ」


 ベルナデットの言葉に魔法陣は消えた。


「宴、だと?」

「そう、宴。人間も魔族も、エルフもドワーフもみーんな一緒に!! もちろん主催は私、ベルナデット。そして、主役はあ・な・たよ。佐藤康貴くんッ」


 その瞬間コウキの顔はいっそう険しいものとなった。


「ふざっけんな。何が宴だ、お前が言ってんのは戦争だ!!」


 刹那、コウキは魔王を放った。打ち出された魔法は真っ直ぐベルナデットへと向かったしかし、突如現れた魔法陣によってそれは防がれてしまったのだった。


「誰だッ!!」


 目の前に現れたのは水色の髪の毛をもつ女の魔人、ウェパルだった。


「遅れて申し訳ありません」

「ふふっいいのよ。こっちはこっちで楽しめたから。それでは佐藤くん宴の準備があるので。そのうちまた会えることを楽しみにしているわ」

「逃げんなッ」


 刹那、2人の姿は一瞬で消えた。


 静寂の中1人残されたコウキはロッドを床に叩きつけた。


「何が宴だ、そんな物俺が、俺たちがぶっ壊してやるッ」


 堅く拳を握りしめた。


「………そういえば、サラは無事だろうか」


 頭に血が上っていたがすぐに平静さを持ち直した。


 深呼吸してロッドを拾うと足元に魔法陣を展開した。


 



「サラ!!」


 瓦礫にもたれかかるサラの目の前にコウキが現れた。


 虚ろな目で主を見つめる。


 乾燥した唇を震わせていた。


「なにがあったんだ!?」


 呼びかける声にサラはゆっくりと顔を上げた。


「私は、人間でした」

「何をいっているんだ」

「魔人に会いました。私は、世界に絶望して、魔人になりました。あの魔人は、教えてくれました」

「しっかりしろッ!」


 肩を揺さぶると、サラの瞳には再び涙が浮かんだ。


「私は!! あなたの言う通り堕天した人間です。憎しみの塊です!」

「落ち着けって!!」

「いいえ。私はいつも通りです!! この世を憎んだ悪しき人間です。ですから私はあなたとはもう一緒にいれない、この手で誰かを救うことなどできないのです。こんな卑しき存在など放っておいてもらって結構です!!!」


 ヒステリックを起こすサラをコウキは必死になって止めた。


「おい、サラッ!!」


 サラを抱きしめる、しかし思った以上に力が強く振りほどかれそうになった。


「放してください!!」

「黙れッ!!」


 次の瞬間、


「――――ッ!?!?」


 サラの唇にコウキは強引に押し付けた。


 目を白黒しながら徐々に身体の力が抜けていった。


「―――――あっ………」


 唇を離すとサラの口から小さく声が漏れた。


「サラッ!!」

「ハイッ!!」

「今お前の目の前に見えているのは誰だ」

「こ、コウキ様です」

「そうだ。お前を最も信頼している者だ!!」


 顔を真っ赤にしがらもしっかりと目を合わせる。


「いいか。俺はお前が誰だったかなんてどうでもいい。俺は今のお前が好きなんだ。俺だけじゃない、アリシアやカグラ、カトレアさんだってお前を好きで信頼してる。だからそんなこと言わないでくれ。俺が言えたたちじゃないけど、過去のことよりも今を大切にしてほしいんだ」

「コウキ様、わ、私、その………」

「無理して何も言わなくていい」


 ゆっくりと彼女を抱きしめると自身の胸にサラの鼓動が感じられる。


 するとサラもコウキの背中に手を回す。


「申し訳ありません………」


 耳元で囁く。


「いいよ。俺こそごめんな、変なマネして」

「構いません。私のためになさってくれたのですもの」


 互いの鼓動を感じた後、サラは全てを打ち明けた。


 コウキは黙ってそれを聞いているだけであった。


「――――そう言うことだったんだね」

「はい。それと、私のことは………」

「別に話す気はないよ。それはサラ自身で決めてくれ。ただ、フレイにだけは伝えておきたいと思うんだけど」

「構いません。私の――レインアント家の子孫であるならば知る権利はあります」

「そうか、分かった。伝えておく。それと」

「例の件ですね」

「ああ。俺も戻ったらすぐに雅道に伝えておくよ」

「承知しました」


 2人は立ち上がると空を見上げた。


 澄み切った空が大地を覆うように広がっている。


「なんとしても食い止めて見せる」

「はい」


 コウキとサラは城へと歩き始めたのだった。


最近自分の中で戦う神父がブームに。そして言いたい「汝らは何ぞや」と。

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