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四話 依頼

 翌朝俺は夜明けとともに目が覚めた。


「ふぁ~~....ああ!?」


 動けない。そんなバカな!もがいたがどうにもならない。


 だんだんと意識がはっきりとしてくる。


 なんだ?このあたたくもっちりとしたこの感覚.....ハッ!? 


 サラは俺の身体を抱き枕の様に抱きしめて寝ている。おまけにサラは寝巻を脱いでパンツしか履いていない。寝ている最中邪魔になって脱いだのだ。


「おいおい。どういうことだよ。サラ、ねえサラ起きろ」


 身体を動かすがびくともしない。クソッ、このままだとまずい。“朝”だからな!!


 動くたんびに顔に柔らかな感触が。あああああもう!!朝から何をしてるんだ俺は!!顔面に彼女の鼓動をもろに感じる。


「お願い、サラ!起きてくれ!!」


「う~~ん......」


 全く起きる気配がない。コイツめちゃ朝が弱いのかよ!!


「おい、おい、おい......」

 顔の右半分に広がる最高の感触に耐えながら呼びかけるが返事はない。


「いい加減にし――――あぶっ」


 サラは俺の頭ごと抱きしめてきた。そして悲劇?が起きた。


「ぼがががが――――」


 谷間の間に俺の顔面が埋まってしまった。


 うおおおおおおおおおやべーーーーーくっ苦しい........鼻で息をしているがそれも時間の問題である。しかしなんて力だ。さすが魔人、って感心している場合じゃない。


 恐らく、たいていの(しょうねん)はこの展開を一度は夢見ていたに違いない。だが、実際その立場になってみると喜んでいる場合じゃない。息がしずらく今にも窒息しそうなのだ。


「ほい、はら!!」


 うずくまりながら何とか声を出すが全く起きるそぶりを見せない。まさかわざとやっているわけじゃないよな。


「ア~ン........」


おいコラ何変に感じてんだよ!!こっちは死にそうなのに!!......仕方がない。すまん、許せ。


 サラの柔らかい胸の一部を軽く甘噛みした。歯に柔らかな弾力が伝わる。


「ああああああああん........ハッ!?」


 サラは盛大に感じた直後眼を覚ました。胸に生暖かい感触が伝わる。視線を胸元に向けるとそこには、今にも死にそうな顔で胸を噛んでいる主の姿があった。


 サラの顔はみるみるうちに青ざめる。


「あわわわわわわわわわわわわわわわわ―――――!!!!!!」


 サラすぐに俺を解放しベッドから急いで降りた。


「ももももももももう仕訳ございません!!!」


 頭を垂れる。


「あ......起きたのね......」


 ぐったりとした声で答えた。


「主であるコウキ様にこのような失態を犯してしまい申し訳ありませぬ!!」

「いや、いいよ。大丈夫だから。」

「いいえ!よくありませぬ!!私めに罰をお与えください!!」

「罰だなんて。」

「でしたら今すぐこの卑しき女の首をささげるのみでございます。」


 サラは短刀を召喚し自身の首元に押し当てた。


「ばっばか!!なにすんだよ!!」


 サラの腕を掴む。


「お放しください!!」

「だめだ!!」


 強引に手から短刀を奪い取った。


「なぜ止めるのです!!」

「死なれては俺が困るからだ!!」


 サラの両肩を掴む。


「!!!!」


 サラは急に驚いた顔したと思うと、俯いた。


「今回のはしょうがない。サラだってわざとやったわけではないんだ」


 言葉を繋げる。


「せっかくこれから二人で生活し行くんだ。サラに先に死なれたら悲しいよ。」


 言葉を発しながらサラの頭を撫でる。まるで絹糸のように柔らかく、繊細な黒髪をやさしく撫で下ろす。


「コウキ様........」


 涙目で俺の顔を見上げる。


 そっと抱きしめる。


 サラの胸が俺の胸板に当たる。さっき口で堪能したときとは違った興奮が。しかし、自分の唾液も一緒についてしまったので何とも複雑である。


 昔ドラマで似たようなシチュエーションがあったのを思い出した。実際に試してみると効果覿面だった。


 サラは黙って俺に抱かれたままでいる。


「落ち着いたかい?」

「......はい......」


 顔は真っ赤に紅潮している。


 全く、朝から落ち着かないな........


「さ、着替えて食事でもしよう」

「...はい」


 サラは俺から離れると着替えを開始した。彼女の白く長い美脚に目が行く。するとサラは視線を感じたのか、恥ずかしそうに俺に背を向けた。


 さ、さて、俺も着替えるか。


 成るべく見ないように俺も背を向けた。


 下の食堂で朝食を済ませた後、俺達はギルドのブランチへと向かった。


 しかし、真っ直ぐには向かわずにサラの防具と武器を買いに武器屋へと向かった。そこは俺が今来ているマントを買った店である。店に入るとサラはやはりハルバートの方へと向かった。あの武器が彼女にとって扱いやすいらしい。


 初めは安い武器でいいと言ったが俺は「せっかく買うんだったら高価な物で長く使えれる物を選べばいい」と言い、6万ゴールドのハルバートと4万ゴールドの防具一式を買い総額10万ゴールドになった。


「すみません」

「なに謝るんだよ。これが無いと依頼はこなせないんだから、気にする必要はないよ」

「はい。しかし(わたくし)は魔法で武器を出すことができるためわざわざ買ってもらう必要などなかった筈なのでは」

「俺も最初はそう思ったんだけど、俺ならともかく他の人がいきなり武器を出すのをみたら変に疑われるだろ、だからあえて武器をかったんだ。他の人が居ないときにだせばいいし、人目に付きそうなところではその武器を使えばいい。一種のカモフラージュさ」

「そうだったのですか。私めのためにそこまでお考えでいらしたとは」

「サラはここは魔界ではないんだ、そこは注意してくれ」

「はい、ところで本日は何しにギルドに向かうのですか?」

「今日は陣形の確認のためにギルドで狩りでも受けようかと思ってね」

「はい」


 ギルドのブランチの前に着いた。ここで、忘れてはいけないのが今の状態である。数日前に俺はエキドナ討伐に出かけた。しかし、俺は倒さず仲間にしてしまった。これではギルドに怪しまれる。生還したのか、それとも成功したのか。そこで俺はギルドから配布される「ロケットアイ」を破壊しておいた。


 ここでロケットアイに着いて説明しておく。ペンダント型の魔法アイテムで、ギルドのクライアントに使用される。


 所有者は目的 (主に対象生物) を教える。これは、決められた目的の物しか見ないように命令されている。例えばクライアントが魔物Aの討伐とする。所有者はロケットアイに討伐目的の魔物Aが死んだ時だけ発動しろと命じる。ロケットアイはそれ以外の者には反応しない。そして、ロケットアイは目的の物の前にかざした時に埋め込まれている人の眼のような紋様をした鉱石で記憶し、あとから所有者が確認し報酬を与える。


 たいがい、ロケットアイが壊れるのは戦いで破損した場合と相場が決まっている。自発的に破壊する者などいないからだ。


「そんじゃ、中に入ろうか」

「はい」


 ブランチは国に数か所存在する。その中でも今いるブランチはジハードの中で一番広い。区役所を少し大きくした建物である。

掲示板には数10件の依頼が書いてある紙が貼っている。


 さて、どれにしようかな.....


 黒狼(こくろう)の討伐、ゴブリン討伐、薬草調達、瓦礫撤去.....etc。

迷うなぁ、今回は今後の戦闘に向けての陣形確認だから......簡単なゴブリン討伐にしよう。クライアントレベルは☆3つの依頼だ。クライアントレベルとは依頼内容の難易度の事を示す。最高難易度は☆7である。


「サラ」

「はい、なんでしょう?」

「これからゴブリン討伐の依頼を受けようと思うんだけど、サラは何か受けたい依頼はないかい?」

「いいえ、コウキ様にお任せいたします。」

「そうか。分かった。それじゃ手続きを済ませてくるからちょっと外で待ってて。と忘れるところだった、その前にサラのギルド登録が先だった」

「はい。コウキ様。その、どのようにすれば登録ができるのですか?」

「ああ、それならそこの受付カウンターに行けばできるよ、あとでき終ったら先に外で待ってて。」

「はい」


 そう言ってサラは受付カウンターへと向かった。俺はクライアントの受付窓口の列に並ぶことにした。


 俺がサラを外に出るようにしたのには理由がある。別に一緒に居ても構わないのだが何せさっきっから周りの下衆どもがサラを色目で見ているからだ。テーブルに座っているい野郎どもがサラを見ているし、そのほかにもあちこちから視線を感じる。


 俺のサラに指一本でも触れてみろ、その時がお前らの最期だからな。と思いつつ俺はロケットアイを受け取り早々と出口を出た。


「お待たせ。それじゃ行きますか。ちゃんとできた?」

「はい」


 サラはギルドのカードを見せてきた。このカードには登録者の身体の一部(大抵毛髪)をカードに埋め込むことによって盗難や紛失、無断使用を防ぐらしい。俺もどうやってギルドが管理しているかはよく知らない。


 かくして俺達は今回の依頼ゴブリン討伐へと向かった。依頼主はここから五キロの場所にある「コルボ村」の村長からである。なんでもここ最近ゴブリンの被害が急増していて村人のみならず立ち寄るに人々にも被害が及んでいるとのこと。おかげで物資などが運ばれなくなってしまっている。


 こういう場合は王宮に被害申請を申し込めばいいと思った。しかし、王宮の事だ、今はそれどころじゃない一刻も早く国を建てなおさねば、なんて理由で断られたに違いない。

 確かに魔王軍との戦争で被害が甚大な物となったのは事実だ。現に〈ジハード〉だってまだ完全に復旧作業が終えてはいない。だからと言って自国の国民が困っているのを放っておくのはどうかと思う。まあ、あくまでも俺の勝手な予想なのだが。


 進み始めて約20分が経過した。距離にして1キロ以上は歩いた。町の郊外は瓦礫や陥没した台地があり、多くの人々が復旧作業を行っていた。


「近いうち俺らも普及作業に当たろう。少しでもみんなが安心して暮らせるように」

「はい。私にもその責任があります」

「サラだけの責任じゃないよ。これは皆の責任だ。互いに衝突し合えば必ず何かが犠牲になる。現にこの状況を見ればわかる。争いになると周りの事なんて気にしなくなる。だから平気で殺せるし、大切な者を容易に失うことがきる。君のいた魔界にだって戦争はあったろ?」

「はい、何度か争いが起こりました。そのたんびに多くの魔界の住人が命を落としました」

「結局争いなんてそんなもんさ、それが魔界だろうが人間界だろうが、互いに自分たちの居場所を壊していくもの.......虚しい限りさ」

「コウキ様は、もしまた戦争が起きたらどうするおつもりなのです?」

「そうだなぁ、できればない世界になってほしいよ」

「そうですか。コウキ様は優しいお心をお持ちなのですね」

「そんなことないさ。現にこうしてゴブリンを討伐しようとしている。彼らにだって家族はいる。仲間もいる。彼らだって生きるためにこうして人間を襲っている。そんな彼らを俺達は殺すために向かってるんだ。言ってることとやってることが矛盾しているようにも見えるかもしれないけど、仕方がない事さ。別に殺すことを仕方がないで片づけるのはあまりにもひどすぎるけど、実際そうなのだから。生きてくためには.......」


 争い事は嫌だ、しかし俺達が生きて行くには他の生物を殺さなくてはならない。もしかしたら、魔界の住人たちとも共存できたかもしれない。しかし後の祭り、解かりあえなかったとは何とも無情な世の中だ。


「私にはあまり理解することができません。これまで弱者には死、強者には生。私が生きてきた世界ではこれが当たり前でした。ですから、たとえ争いで肉親が死んだとしても所詮それが弱者であったためのこと、死んでも仕方がないことだと私は思ってまいりました」

「そういう考えもあるね、弱肉強食の世界と言うものか。でもね、それではダメなんだ。そうなってしまってはまた強者の中で争いが起き、いずれは滅ぶ運命にある。君の考えも重要だけど、今こうして人間の俺と魔人のサラの様に仲良くしている方がいいとは思わないかい?協力して生きて行く方が殺し合うよりもよっぽどいい」

「コウキ様は殺生に対して深いお考えお有りなのですね。」

「まあね。これまで多くの(もの)を見てきたから、自然と考えるようになったんだ」


 あの頃の俺、いや、俺達はサラの考えの権化とも言うべき者だった。


「そうなのですか。私にもコウキ様のお考えを理解することは可能でしょうか?」

「そうだねぇ、どうだろう。これから俺と共に行動する中で何か見えてきたら、それじゃないか?」


 するとサラは足を止めた。


「解りました。このサラフォンティール、主であるコウキ様に一生ついて行きます」


 頭を垂れた。


「おいおい、やめてくれよ。ほら立って。誰か来たら恥ずかしい」

「......はい」


 サラは立ち上がった。


「はあ、なんだか久しぶりに真面目な話をしたせいで頭が疲れた。ちょいとここらで休憩でも取るか」

「はい」


 俺達は近くにあった大きな石の上に座って休憩を取った。


「話しながら歩いたからのどが渇いた」


 俺はマントの中から水筒を二本取り出し、一本をさらに渡した。


「―――プハア、美味い。さて、今はどのへんかな」


 地図を取り出して確認する。現在地は大体半分の所にいるから、あと一時間もしないうちに着くな。


「あと少ししたら出発しよう」

「はい。承知いたしました」


 数分後、俺達はコルボへ向けて出発した。


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