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四十七話 モノリス

 遺跡があるのはヴァッサーから見て北に位置する。


 そしてサンクチュアリから見て西にある。


 ヴァッサーとサンクチュアリ、遺跡は比較的近くに存在するのである。


 コウキ達は雅道の力により遺跡の調査に同行することが許された。


 ヴァッサーを出発して一日半。


 コウキ達はようやく遺跡のある山へと到着することができた。


 周りは森に囲まれており、一度後れを取ってしまったら完全に迷うことは間違いなかった。


 馬車の中でぐっすりとカグラは眠りに着いている。当然コウキの隣で。


「あの山って大陸最大の山だよね?」


 向かいのカトレアは言った。


「うん。オリン山って言ってこの大陸でも最大の大きさを持っているよ。でもあんなところに遺跡なんてあったんだな」

「アタシも生きてて初めて聞いたよ」

「そっか」


 その後、馬車は止まり、コウキ達は遺跡の入り口らしき所へと案内された。


 そこは山の一部が崩れおち、その中から現れたようにであった。


「ここがそうなのか?」

「そうだ。俺も今回が初めてだからわくわくする」

「それは分かる。昔、廃墟病院に行った以来だな」

「あの時はマジで焦ったけどな」


 コウキと雅道は談笑を繰り広げていると、調査班の一人が向かって来た。


「お待ちしておりました。雅道様」

「こちらこそ、あるがとうござます。サクージさん」


 目の前の男性はサクージといった。


 ズングリムックリとした中年体型で、口元のちょび髭が特徴である。


 どこかで見たことがあるフォルムにコウキは一瞬驚いた。


「こちらの方たちは?」

「僕の友人さ。今回同行を許可されている」

「こ、こんにちは」


 コウキ達は挨拶をする。


「サクージと申します。では早速ご案内いたしますのでどうぞ、こちらへ」


 サクージの案内のもと、雅道、コウキと続いて遺跡の中へと入って行く。


 入り口は比較的大きく、難なく進むことができる。


 しかし、中は驚くほど暗く、途中途中に設置したランプの灯りを頼りに進むほかなかった。


「なんか、不気味ですね」


 アリシアはコウキの袖はギュッと握った。


「ハハッ大丈夫だよ。そんな迷うほどでもないよ。ですよね、サクージさん」

「五人ほど行方不明ですよ。でもご安心を、私がいれば大丈夫です」

「........」


 アリシアは更に強く握りしめた。


 しばらく進むと、開けたところに案内された。


 天井はドーム状になっており壁には無数の文字や絵が刻まれており、さらに奥には三つの通路があった。


「すごい、これが遺跡ですか」

「ココはほんの一部です。この先に行くともっと沢山同じような部屋があります」


 サラの言葉にサクージは言う。


「では、この先は雅道様と私で」

「コウキもお願いしたい」

「わかりました」

「どういうことだ?」

「この先にある物は重要な物があるんだ。言ったろ? 知ってほし事があるって」

「そう言うことか。悪いな、皆はここで待っててくれ」

「了解しました。お気をつけて」

「兄さんあとでねー」


 見送られる中、コウキと雅道はサクージに連れられて三つある内の中央の通路へと入って行った。


 五分程中を進むと、目の前には黒い円柱が見えた。


 高さはコウキの腰くらいである。


「コレはなんですか?」


 雅道は言った。


「転送装置です」

「転送装置?」

「はい。こちらへ来てください」


 するとサクージは円柱の上に触れた。


 その瞬間、3人の姿は消えた。


「「!!!!!」」


 2人は驚きの表情を浮かべた。


「なんすかここ!?」

「サクージさん!!」

「落ち着きください。ここは〝記憶の間〟という所です」

「なんですかそれは?」


 雅道は言った。


「古代語の翻訳なので本当の意味かは解りませんが、我々はそう呼んでおります」


 発光水晶に照らされたその空間は、全体が黒い鉱物で覆われており、さっきの部屋同様ドーム状になっている。


 ただ一つ違うのはそこら中に黒い壁が不規則に点在していた。


「コレはモノリスです。コレには記憶が刻まれております」


 サクージは近くにあるモノリスを照らす。するとそこには色あせてはいるが絵が描かれてあった。


「なんだ、これは………」


 雅道から声が漏れる。


「え、どれどれ」


 そこにはたしかに絵があった。


 しかし、どれも不可思議な物ばかりであった。


目の前には1人の男性と思われる姿が描いており、彼の手には武器が握られてあった。

 

 しかし、それはこの世界の物では見かけない、〝刀〟と〝細長い紙〟の形状だった。


 さらに、その傍らには仮面が描かれている。


 下には、男性の姿があり両手には武器が握られている。


「これは、双剣か?」

「いや、俺には銃に見える」


 雅道の言葉にコウキは答える。


「これも面白いですよ」


 サクージの元に向かった。


 見たこともない怪物に立ち向か男の姿があった。


 その男の周りには7つの武器が描かれている。


 横のモノリスには亜人と思われる人の中にまじり、甲冑を纏い手には刀を持った姿もある。


「なんだこの絵は」

「わかりません。古代人の創作ものなのか、あるいは神話を模した物なのか、歴史なのかわかりません」

「でも、おかしなものばかりです。これだけものがありながらこの世界にはその名残と言えるものが一切見当たらない」

「確かに。この(ぶき)だって当時から存在しているのあれば、とっくに見慣れている筈なのに。全くその片鱗すら見当たらない」


 コウキも腕を組んで言う。


「雅道様、コレを」


 サクージが指すのはこの中でも一番大きいモノリスだった。


 大分古いモノなのか、他のと比べて一番褪せている。


 鎧に兵士に立ち向かう双剣を持った戦士が映っており、鎧兵士の奥には首のない人型の黒い巨人があった。


「これが、例の物だっていうんですか?」

「例の物って?」

「古代兵器だよ」

「なんだって!!」


 コウキの声が反響する。


「――――そんなものが存在するのか?! だってあるのかすら分からないのに?」

「これだけはあるんだよ。現にその場所を示す資料も得ている」

「古代兵器なんて掘ってどうずんだよ。戦争でもおっぱじめるつもりか!?」

「そうならないために僕らが先に手を打つんだ」

「......なるほど。でも、そんなの使えるのか?」

「さぁね、だからこの遺跡をもっとよく調べる必要がるんだ。なにか他に手がかりになる物が出るかもしれないからね」

「へえ。で、名前ってあるのか?」


 するとサクージは答えた。


「はい。破壊の申し子――ネフィルムと呼んでおります」


「ネフィルム.......」


 コウキは復唱する。


「はい。更にこんな言葉も見つかっております。〝世界は繰り返される〟と」

「どういうことです?」


 雅道は訊いた。


「それは分かりません。ですが、これは何かの予言ではないかと判断しています」


 結局深い意味話では解読していないという分けだった。


 しかし、雅道にとってそれは最高に愉快なことであった。


「な、コウキ。面白いだろ?」

「まあ、な」


 コウキはモノリスを見つめたまま返事をした。




「ただいま」


 コウキ達はサラたちのいる部屋へと戻った。


「いかがでしたか?」

「古い絵がいっぱい飾ってあるだけの部屋だったよ」

「あとでお話し聞かせてください」

「もちろん」


 アリシアは「やったぁ」と笑顔を見せた。


 もちろん古代兵器については雅道とサクージから言わないよう念を押されてているが。


「でも、ホントこの遺跡って不思議だな。ずっと昔の物なのに内装は比較的きれいだ」


 カトレアの言葉に雅道も頷く。


「確かにそうですね。僕も気になるところですが、もう時間のようです」

「戻るのか?」


 コウキは言った。


「うん。送るよ」

「いいて。魔法があるから」

「そう言うな。ちょっと二人きりで話もしたいし。な?」


 雅道の懇願する目に負けたのか、コウキは渋々了承した。


 遺跡から出ると外はとっくに暗くなっていた。


 コウキと雅道は一緒の馬車にのり、サラたちは別の馬車に乗った。


 馬車が出発して数分が経ったころ。


「なあ康貴」

「なんだ?」

「あのモノリスだけど、僕はアレが本当にあった出来事だと思うんだ」

「まあ、古代兵器もあった事だしな」


 雅道は首を横に振った。


「この世界の文明はある一定の周期でリセットされていると考えている」

「ん? どういうことだ?」

「前の世界ではマヤ文明があるのはしっているだろ?」

「もちろん」

「あの文明には暦みたいのがあってさ。あれって時代の節目がしるされているんだ」

「つまり、終りってことか?」

「まあ、そういう風に言う人もいるようだけど。中には新たな時代の幕開けって解釈する人もいる。他にも、アステカとかあの辺の文明も一定の周期で自ら文明を捨ててゼロから始めるってものあるらしい」

「ようは、この世界でもそれと同じことが起きているって言いたいのか?」

「そう言うこと。あくまでも僕の考えだけどな。だからあの古代兵器だってきっとその遺物である可能性が高い」

「お前ホントそう言うの好きだな。知識と言い、ある意味尊敬できるよ」

「ふふっそれはどうも」

「――ところで、なぜヴァッサーとは逆の方向なんだ?」

「なぜって言ったじゃないか。送るって、サンクチュアリに」


 その瞬間コウキの顔は青ざめた。


「ざっけんなよ、お前騙したな!!」

「人聞きの悪い。僕は送ると言ったんだ。それにのったお前が悪い」

「この野郎!!」

「お、やるか」


 その頃、後ろの馬車では。


「なんだか、前が騒がしいな」

「仲がいいなあ。あの2人は」

「ちょっと心配です」

「アッシも一緒が良かった」

「いや、このままのほうがいいだろう。カグラ、お前の寝るといい」

「はーい」


 サラに言われ、カグラはサラの膝の上に頭を乗せた。


「ワタシもねるかな」

「ならアタシも」


 こうしてサラは3人が寝た後、1人窓の外を眺めていた。




 同時刻。


 夜空には満月が上り初めの頃、馬車を眺める1人の影があった。


 月の逆光で姿を確認することは難しいが、シルエットだけははっきりと確認できる。


 巻き毛のツインテールにメイドのような姿でパラソルを片手にくるくると回している。


 それは女性でることが解る。


 しかし、少し違うところは彼女は何の魔法陣も発動することなく中に浮いているという点であった。

 

 すると、パラソルの動きが止まった。


「ハァ......やっと見つかりましたわ」


 彼女はうっとりと〝紅い瞳〟を細めたのだった。


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