四十六話 遺跡の存在
雅道、コウキは確かに彼にそう言った。
雅道は剣を納めるとゆっくりと降下していく。
つられてコウキも降下する。
2人は氷上に立つと互いの顔を見る。
するとサラたちが来た。
「コウキ様、これは一体どういうこ.......この方は?」
サラは雅道の方へと視線を向ける。
「初めまして。僕は雅道・セントワードと申します」
雅道はゆっくりと4人にお辞儀をする。
するとカトレアが声を上げた。
「セントワードって、サンクチュアリの王族の名じゃないか!!」
「「ええ!?」」
アリシアとカグラは驚愕の声を上げた。
サラもカグラも驚きの表情を浮かべる。
「そういうことだ。じゃあな」
コウキは4人を引き寄せると、ロッドを天にかざし魔法陣を作り上げた。
刹那、雅道は剣を引き抜き魔法陣を〝両断〟した。
「チッ、邪魔をするな!!」
「そうはいくか。お前が勝手にいなくなったせいでコッチがえらく迷惑掛かったと思っているんだ」
「知るか、それ以前に迷惑かけただろ。いなくなったどころでいちいち騒いでんじゃねよ」
「なんだと、フレイがどれだけお前のこと心配したとおもっているんだ!」
「剣を突きだしてきたアイツが心配している筈がないだろ」
2人の間に火花が起こる。
その様子を4人は状況も掴めないまま、茫然と眺めていた。
「ワタシたち完全に蚊帳の外ですね」
「うむ。しかしあの2人はどういう関係なのだ?」
「やけに親しそうだから、友達なんじゃないかい?」
「兄さん、王族とお知り合いなんですね。すごいです」
コウキと雅道は互いを睨みつけながらゆっくりと上昇していく。
「なんかヤバくない?」
カトレアの言葉に3人は頷く。
「俺の邪魔はさせない。お前を倒す」
「お前には話さなければならないが山ほどある」
鬼気迫る顔の2人は互いに武器を構える。
刹那、2人の体は急上昇した。
「とっととお国へ戻りな!!」
コウキは拡散する火の玉を何十発も放つ。
「相変わらず温い魔法だ!!」
雅道の剣はコウキの魔法を斬り裂く。
コウキは距離を詰められないよう一定の距離を持って対応しているのだが、雅道は問答無用に向かってくる。
「吹き飛べ!!」
〈隕石砲〉を放つ。
しかしこれもあっけなく斬られる。
「無駄だ。俺にお前の魔法は通用しない」
「うっせえ!!」
顔色一つ変えない雅道にコウキは毒を吐く。
「クソッ!!」
コウキは〈風刀〉で応戦するも雅道の前では無意味であった。
「学習しろ!!」
雅道の剣をコウキはギリギリのところで避けるのであった。
「コウキ様が、押されている」
サラは信じられない顔でいた。
自分を完膚なきまでに叩きのめしたコウキが圧倒されている姿をサラは、夢でも見ているかのような気持ちになった。
「兄さんが........」
カグラはカトレアの腕を抱きしめた。
「大丈夫だ」
カグラの頭を撫でたのだった。
雅道はコウキに詰め寄る。
「とっとと降参したらどうだ?」
「あいにく、俺は今そんな余裕はございませんのでね!!」
ロッドと剣が衝突する。
雅道の剣はコウキのロッドを斬ることはできなかった。
「腕はなまっていないようだな。嫁のケツばっかむさぼっているわけじゃないようだな!!」
「毎日トレーニングしてるからな。童貞、お前もなかなかの腕じゃないかッ!! 」
ロッドを弾き再び斬りかかるがコウキはロッドをかざす。
「専属のコーチがいるんでね!!!」
「そうかい!!!」
2人は一進一退の攻防を繰り広げる。
コウキは一旦離れ、空にロッドをかざすした。
「〈神造火炎玉〉!!!」
魔法陣からは巨大な炎の塊が作りだされる。
コウキはロッドを振りかざした。
巨大な炎の塊は雅道の方へと降り注ぐ。
雅道は避けること無く真っ直ぐ突き進むと、雅道の身体は炎の中へと消えていた。
誰しもが決着が着いたと思われたがそれは違った。
驚いたことに、コウキの作りだした魔法は吸い込まれるように消えて行く。
その瞬間コウキは思い出したような表情を浮かべた。
「しまった!!」
気付いたころには遅く、雅道の姿が現れた。
雅道は剣の腹で〈神造火炎玉〉を吸収していたのだ。
「後の祭りだ!!」
白銀の剣は燃え盛る炎の如く、真っ赤な剣と化していた。
刹那、コウキの頭上には雅道が剣を振りかぶる体勢でいた。
「倍返しだ!!」
振りかざされた剣からは、炎が噴き出され、コウキに襲い掛かる。
コウキは防御するが、一瞬で弾かれてしまった。
「ウアアアアアア―――――ッ!!!」
コウキの身体は氷上を砕き、海中打ち付けられた。
水しぶきが上がる中、4人は呆気に取られていた。
コウキがやられた。
それもたった一撃で。
カグラは震えながら刀を握るがサラに制された。
「やめろ」
「でも!」
すると雅道は4人の元へと降り立った。
4人は一気に警戒態勢に入るが、雅道は表情一つ変えることなく彼女たちの元へ歩み寄る。
「お見苦しいところを見せてしまって申し訳ありません。大丈夫、コウキは生きてまますよ」
笑顔で言った。
その頃、コウキは仰向けになりながら海中で揺られていた。
「クソ........しょっぺぇ........」
コウキはゆっくりと瞳を閉じた。
コウキが目覚めると、目の前には4人の顔が目に映った。
「お目覚めになられたのですね!!」
サラはコウキの手を握った。
「うん」
ぼんやりする頭で起き上がると、そこは宿のベッドではなかった。
他にもベッドが並べられていることから病院であることが伺えた。
「ヴァッサー城の医務室です」
アリシアは言った。
病院ではなく城の医務室であった。
周りにはコウキ達の他誰もいなく、会話する声が異様に響く。
「雅道は?」
「席を外しました」
サラが答えた。
コウキは「そうか」といい再び横になった。
「なあコウキ。あの人とお前はどういう関係なんだ?」
「昔の仲間だ。そう言えばどのくらい寝てた?」
「2時間程だ」
「そんなもんか」
コウキは窓の外を見た。
すると、
「お目覚めのようだな」
ドアの方から声が聞こえた。
そこには雅道が立っていた。手には何かの果実が握られている。
「ほれっ」
果実を投げるとコウキは起き上がり受け取った。
「なんだこれ?」
「ワイバーンフルーツだ。皮を剥いて食べるんだって」
「ふーん」
するとアリシアは「剥きます」と言って受け取ると器用に皮を剥き始めた。
「で、まず訊きたいんだが、なんでお前がこの国にいるんだ?」
「今回は寄り道で来たんだ。本当は別件の用事でね」
雅道は近くの椅子を取って座った。
コウキはアリシアから受け取りかぶりつく。
「美味いな........。そうか」
「僕も驚いた、康貴に会うなんて。まさか女の子たちと旅をしているなんて」
「いろいろあったんだよ」
コウキはカグラに食べさせた。
そのまま言葉を繋げた。
「――――その別件って言うのは商売か? 懲りないなあお前は」
「そうじゃない。もっと重要なことだ」
「へえ、何さ」
すると雅道は真剣な顔になった。
「遺跡の調査に来たんだ」
「遺跡? この辺にそんなのがあるのか?」
「ああ。数日前に情報が入ってね。それで今回はその視察にきたんだ」
「でも、なんで一国の王族のアナタがわざわざ現地まで足を運ぶんです? そんなの調査班にでも任せておけばいい話なのでは?」
突然、カトレアが口を開いた。
確かに彼女の言う通りわざわざ雅道が出向く必要は感じられない。
「ちょっと面白い、いや、重大な物を発見したんだ」
「っておい、そんなこと言っていいのかよ。一応俺ら部外者だぜ?」
「大丈夫、これから当事者になればいい」
「それってまさか」
雅道は頷いた。
「一緒に来ればいい。なにちょっと権力を使えばいい話さ」
雅道は笑った。
「勝手に決めんなよ!」
「この件に関しては康貴にも知って欲しいことがある」
雅道はコウキの目を真っ直ぐ見つめた。
思わずコウキは顔を強張らせる。
「いいんじゃない? 遺跡。アタシは興味あるな」
カトレアは言った。
「わ、ワタシも行ってみたいです」
「アッシも!」
コウキはサラの方を見た。
「コウキ様の判断にお任せします」
「だってさ。さあ康貴、どうする?」
雅道の言葉にコウキは一瞬思いを巡らせたがすぐに諦めたように返事をした。
「解った」
「これで決まり。この後出発だから準備の方はよろしく」
「すぐ!?」
「当然だ。僕も一応王族だからね。何かと忙しいのさ。じゃ、そう言うことで」
雅道は出て行ってしまった。
「なんだかすごいことになってしまいましたね」
「まったくだ」
サラの言葉にコウキはやるせない思いで返事を返したのだった。




