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四十三話 嫉妬と奥手

「......あのカトレアさん?」

「なんだ? コウキ」

「歩きづらいんだけど」


 カトレアはコウキと腕を組んで歩いていた。


「そうか? アタシはそうでもないけど」


 カトレアは白を切るような態度で言った。


「おい、貴様。コウキ様が不便でいらしているんだ。どかぬか」

「はいはい。分かったよネエさん」


 サラの言葉でカトレアはようやくコウキから離れた。


 それでもコウキの隣をバッチリマークしている。


 今日、カトレアはコウキから眼帯をプレゼントして貰ったのだ。


 それは今から1時間前に遡る。




 宿でのこと。


「カトレアさん」

「どうした?」

「カトレアさんはその、右目の傷は気にならないの?」

「別に気にしたことは無いな。どうしてそう思うんだ?」

「だってカトレアさんは女性だし、そう言うのって気にしているのかと思ったんだ」

「言ってなかったと思うけど、アタシのこの傷は前にいった依頼に失敗したときに相手側から付けられたんだよ。ケジメとして」


 カトレアの言葉に4人はいたたまれない表情を作った。


「女としての身を捨てて暗殺者として生きてくことを強要されたのさ。だからアタシは女だからとかそう言う理由でこの傷を気にしてなんかいないのさ、自業自得さ」


 自嘲するように言った。


「そんなのおかしいよ。カトレアさんは綺麗な女性ひとだ。女を捨てたとかそんなくだらない過去のことは捨てていいんだよ。もう暗殺者じゃないんだ。一人の女性として生きていいんだよ」


 コウキの言葉にカトレアは少し嬉しく感じた。


「ふふっそうか。お前がそう思うのなら、そう生き方もアリかもしれないな」


 カトレアはコウキの前に立つとコウキの目を見つめた。


 僅かに身長差があるためコウキは少し見上げるようにカトレアを見る。


 するとカトレアはコウキを抱きしめた。


「「「!!!!!!!!!」」」


 3人は驚愕の目でカトレアを見た。


 カトレアは自身の胸にコウキの頭をうずくめる。


「お前はどこまでもやさしんだな。だからアタシはそんなお前に惚れたのかもしれないな」


 コウキの頭に向かって囁くが今のコウキには何も聞こえていなかった。


 顔全体に伝わる弾力に思考は完全に停止させられていた。


「貴様ァ!!!」

「何するんですか!?」

「アッシの兄さんに!!」


 サラとアリシアとカグラは


 全身の力が抜けされるがままのコウキの身体を3人無理やり引きはがした。


「ちょっとなんだい。そんな必死になって」

「貴様、こ、コウキ様をだ、抱きしめるなどと、そ、そんな無理やり!」


 カトレアの前に立って言う。


 その後ろでアリシアとカグラは呆けた顔をしているコウキを支える。


「何もそんなにムキになる必要が何処にあるんだい? アタシはスキンシップのつもりでやったに過ぎないさ。ネエさん」

「貴様の言うスキンシップは度が過ぎている!」

「尺度ってヒトそれぞれじゃないの? ネエさんだってやらないのかい?」

「我は貴様のような不埒な真似は断じてしていない。膝枕までが限度だ」

「膝枕ってネエさん、奥手だねえ」


 カトレアはせせ笑った。


 (しゃく)に障ったのかサラは詰め寄る。


「貴様に言われたくない!! 大体今朝のアレもスキンシップと言うのか」


 それは遡ること数時間前になる。




「――――アレ?」


 目が覚めた。

 

 起き上がろうとするができない。


 誰かが上に乗っかっているようだった。


「う~ん。誰だ? サラ? アリシア? カグラ?」


 ボンヤリすり頭で見た。

 その途端思考が一気に覚醒する。


「か、かかかかかカトレアさん!!」


 布団の上には全裸のカトレアが馬乗りになっていた。


「おはよう。コウキ」

「おはようじゃなよ! なにしてんの!?」

「何って、起こそうと思って」

「そうじゃなくて、なんで全裸?!」


 褐色の肌が朝日に照らされている。


 張りのある胸がコウキの視界の中に入ってくる。


「ははっコウキ、何顔を赤くしてんのさ」


 視線に気づいたカトレアは悪戯な笑みを浮かべてコウキの頬を突く。


「それに。ここも随分元気なんだな」


 カトレアは自身の股を見て言う。


 ちょうどコウキのコウキの上に乗っかっている。


「それは、生理現象であって決死しそう言うあれではなくて.....ああもう、イイからどいてくれ!!」

「アハハ――――」


 その瞬間カトレアの喉元に冷たい刃が触れた。


 目を移すとそこにはカグラが桜華を突きだしていた。


 更に逆にはサラがハルバートを構えている。


 後ろにはアリシアが矢を構えていた。


「随分楽しそうじゃないか」


 サラは言った。


「怖い顔をしないでおくれよ。ただのお遊びじゃないか。ちょっとおチビその剣をどかしてくれない? 上手くしゃべれないんだけど」


 カグラに言うが無言が返ってくる。


「やはり貴様は信用ならん。幾らコウキ様が了承しても我らは貴様を認めることはできない」


 サラの言葉に二人は頷く。


 一方コウキはこの状況を掴めていないようでただただ混乱するだけであった。




「―――まあ、それはそれ。コレはコレ。アタシがコウキに対してどう接しようがアタシの自由じゃないか。別に主従関係とかそう言うのは本人は全く考えていないし、ネエさんが勝手にコウキの従者としているだけだろ?」


 カトレアの言葉にサラは言葉を詰まらす。


「それにアタシらはみんな対等の立場だろ?」


 アリシアとカグラも黙り込んでしまった。


「まあまあケンカしないしない。皆の気持ちもわかるけど、カトレアさんの言うことは間違いじゃない。っと言っても皆納得がいくわけでもないか」


 考える素振りを見せるとコウキは再び口を開いた。

「―――気分転換に外に出よう」


 そして何も解決しないまま現在に至る。


「――――本当にこれで良かったの?」

「お前から貰った物なら何でもいいさ」


 カトレアは笑顔で答える。


 コウキ自身もう少し可愛げのある物でも良かったんじゃないかと思っていたがカトレアがコレでいいと言ったため眼帯にした。


「なら良かった。ところで――――」


 後ろを振り向くと無表情の3人がコウキを見ていた。


「ど、どうしたの?」


 コウキの言葉に答えたのはアリシアだった。


「コウキさん、なんだかカトレアさんに甘くないですか?」

「え、いや、そんなことは無いと思うけど」

「今朝のだって本当はコウキさん怒っていいと思うんですけど」

「あれはいきなりだったし。それで怒るのもちょっとねえ」


 戸惑いを隠せないコウキをカトレアは楽しそうに見ている。


「まさか兄さん、アネさんのおっぱいが大きいから、だからひいきしてるんですか!?」

「何を言ってんだお前は!!」

「だって明らかに姐さんのより大きかったじゃないですか」

「そうなのですか。コウキ様、私だって負けてないです!!」

「わ、ワタシだってまだ!!」


 3人はコウキに肉迫する。


「お前ら落ち着け、いつから俺が胸好きになったんだよ。別に大きいからとか、見た目とかでヒトに優劣を付ける気はないって!!」


 すると横のカトレアは笑い出した。


「アハハハハ―――アンタらって面白いな。でも確かにアリシアの言う通りかもしれないねぇ。どうなんだい?」

「とくに何もないよ」


 その答えに納得がいかない様子の3人である。


「だとさ。アンタらがどれだけコウキのことが好きなのかは分からないけど、まあ別に変に手を出したりしないから安心しな」


 といって腕をコウキの方に回し、頭を自分の胸に押し当てた。


「もう、コウキ様!! なにまんざらでもない顔をしているんですか!!」


 サラは悔しそうにカトレアを睨んだのだった。


週間投稿が厳しくなってしまったので隔週にしたいと思います。

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