表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/69

三十九話 セキガン

 2日後、4人は狩りの最中だった。


 コウキはあの日以降妙な視線を感じることが無くなったため自分の思い過ごしであろうと決めつけていた。


 森の中を進むごと1時間弱は経過した。


 少し足が疲れてきので数分の休憩に移った。


 マントの中から人数分の木製の水筒をだし皆に渡していった。


「―――ぷはぁ。兄さん、ツノシシってどんな生き物なんですかぁ?」


 隣のカグラは訊いた。


「簡単に言うとデカくて突っ込んでくる生き物」

「コウキさんそれでは大雑把すぎます。ツノシシは頭に大きな一本角を持った全身毛むくじゃらの牙ブタの様な生き物の事を言うんだよ」

「へえ、そうなんですか」

「ありがとうアリシア。あ、そう言えば、最近カグラの角ってどうなの?」

「え、そうですねえ。前よりは少し出てきた気がするんですけど」


 前髪を上げて見せてくる。


「どれどれ?」

「それは、きゃはははは―――く、くすぐったいです!」


 コウキは額にある伸びかけの角の先を指で撫でるとカグラは笑い出した。


「や、やめてください!!」


 両手で額を押さえて頬と耳をほんのり赤く染めながら訴える姿は可愛いものだった。


 すると、目の前にいるサラは水筒に口を付けながらジト目でコウキを見つめてくる。


 コウキは察したのか余所を見ながら再び水筒に口を付ける。


「早いとこ見つからないものですかねぇ」


 アリシアは水筒をコウキに渡して言った。


「そう簡単には見つからないでしょ。常に同じところをぐるぐる回っている分けじゃないからね。こういうときに目の良いアリシアが頼りだ。頼むぜ」

「あ、はい! 頑張ります!!」


 森の中では障害物が多く、思うように獲物を見つけることが無図解しい。


 〈完全探知(ディティールポイント)〉を使えばいいのだが、探知してそこまで移動しても、移動途中で獲物に動かれてしまう。


 移動しながら発動することができない魔法であるため案外使い勝手が悪いのが本音だ。


 だから、原始的であるが目でとらえる他ない。


「兄さん兄さん! アッシも頑張りますから!!」


 マントを掴みカグラは訴えてきた。


「ああ、もちろん期待してるからな~」

「えへへ~」


 瞳を細め照れる。


 カグラにとってコウキに頭を撫でてもらうことは最高の幸せなことだった。


「そろそろ休憩も終わりにして、さがすか」

「了解しました。行くぞお前たち」

「はい」

「はい姐さん」


 4人は森の中を探索した。


 途中、針狐の中型やウサギなどの小型に出くわしたが、肝心のツノシシを見つけることはできなかった。


 困り果てた4人は一度仕事を中断し、遊ぶことにした。


 普段は仕事メインであるため4人でこうして自然の中で遊ぶことは無かった。


 とはいうものの遊ぶ方法はあまりにも少なすぎるためすぐに飽きてしまった。


 辺りには気持ち悪いほどの数の雪だるまが覆い尽くしていた。


「やり過ぎましたね」


 アリシアは言った。


「.....そうだね」


 大きい雪だるまであればそれなりに見栄えはいいが、小さい雪だるまだとまるで地面から生えているかのような不気味さを醸し出していた。


 コウキとアリシアは苦笑いを浮かべ、サラとカグラは雪玉を作って雪だるま目がけて投げていた。


「仕事に戻りたいけど、この調子だと今回の依頼は失敗だな」

「そうですか.....残念です」

「しょうがないさ、きっともうこの辺にはいないか。あるいは誰かに倒されてしまったか。だね」

「そうですかぁ.....」

「まあ気を落とすなって。アリシアは良く頑張ってくれたよ」


 コウキはアリシアの小さな肩を抱き励ました。


「コウキさん........」


 アリシアはコウキを見上げる。


 そこには笑顔で励ましてくるコウキの顔があり自然と自分の顔もほころんだ。


 今度こそ力になってみせる。そう決めたアリシアであった。


 気付けば太陽は沈みかけていた。


 辺りはうっすらと陰りを見せている。


 コウキ達は失敗の報告をするために街に戻ることにした。


 その帰り道、コウキは視線の先にあるもの映った。


 それは、人のようなそうでないような、何かの生き物であるような動きをする影を見つけた。


 すぐさま発光水晶を取り出しその影があった方へ向い、その後ろを3人は追いかける。


「コウキ様、一体なにが?」

「向こうの方に何か影を見たんだ」

「見間違いでは?」

「それを確かめに行くのさ」


 影があった場所に着いた。


 そこは森の中にしては不自然に開けた空間だった。


「なんかへんですね、ここ」


 カグラは言った。


「多分、前に誰かが使ったんだと思う。泊とか、戦う為の本拠地とかね。それにしてもいないなぁ、なんだったんだろ?」



 コウキは1人で先へ進む。


「コウキ様ー一人で奥は危険です!」

「あーわかってる―――!!」


 コウキの返事が返ってきた、その瞬間――――。


「!!! 姐さん!!」

「マズイ!! コウキ様!!」


 その刹那、草むらの中から1つの影が飛び出した。


「!!!」


 コウキが気付いた時には既にその影は迫っていた。


「―――――殺す........」


 その影は呟いた。


 影は手に持つ剣をコウキに向かって突き刺すが、コウキは瞬時にロッドを出し攻撃を防いだ。


「な、なんだヤツは!?」

「アッシが行きます!!」


 カグラが桜華を抜刀した瞬間、3人の周りにはいつの間にか6人の影が囲んでいた。


「これでは!?」


 アリシアは悲鳴に近い声を上げる。


「クッ何者だ貴様ら!!」


 サラは怒鳴るが影は微動だにしない。


 それどころか武器を構えているのに攻撃する素振りすら見せない。


 まるで何かが終わるのを待っているかのように。


 どうする? このままでは手足が出せん。こっちは6対3、向こうは1対1。こちら側としては1人2体と少々分が悪いが我らなら問題ない。しかし、コウキ様はどうだ、明らかに距離を取られている、それに向こうの方が明らかに戦闘能力は上だ。迂闊に手は出せない、他に伏兵している可能性を考えると.......クソッ!!


 サラは考えたが答えが出ない。


 このまま足止めを喰らい、コウキがやられるのを待つしかないのか。


 不意を突かれた自分に腹が立ってしょうがなかった。


「サラさん!! コウキさんが!!」


 サラはコウキの見た。


 落とした発光水晶の光が徐々に弱まる中、コウキは影に押されているのが見えた。


 コウキは魔法使いの弱点である距離を取られてしまったため魔法を発動することが出来ないでいる。


 相手は双剣使いであるため連続した斬撃が襲い掛かってくる。


 コウキはそれら全てをロッドで防いでいる。


 日頃のサラとの特訓の成果がこの場で発揮された瞬間でもあった。


 しかし、それでも現状自分が押されていることには変わりが無かった。


 攻撃を防ぐ中、視界に取り囲まれるサラたちの姿が目に入った。


 瞬時に理解した。


 彼女らは迂闊に攻撃できない事を。


「俺は大丈夫だ!! ヤレ―――――!!!!」


 コウキは叫んだ。


「し、しかし!!」


 サラは狼狽えた。


 コウキは大丈夫だと言ったがそれでも心配だった。


「ワタシが!!」


 アリシアが弓を構えたがサラに食い止められた。


「待て!! 迂闊に!!」

「いいから早くしろ―――!!」


 コウキが再び叫んだときだった。


 その一瞬の隙を影は逃さなかった。


 影はロッドを持つ右手に向かって左足で蹴り上げた。


「グアッ!!!」


 右手の小指と薬指の骨が折れてしまった。


 左手で持ち替えようとするが、左腕を双剣が貫く。


「クソガァ!!」


 ロッドが雪面に落ちると同時に今度は右足で左の胴体を蹴られ肋骨から聞いたことも無いような音がコウキの中から聞こえた。


 体勢が崩れた瞬間、衝撃が走った。


 コウキは自身の胸を見ると、そこには剣が刺さっていた。


「ア、ア.......ア........」


 声を出す事はおろか息すらまともにすることができない。


 剣が身体から引き抜かれたとき、コウキの身体からおびただしい量の血液が流れ出て、雪面を赤く染める。


 すべてがスローモーションに感じた。


 蹴られ、刺され、蹴られ、刺されるこの一連の動作がコウキにとって1分以上も続いていたかのように感じた。


 崩れるように膝から前へ倒れた。


「コウキ様―――――――――――!!!!!!!」

「い、イヤ――――――――!!!!!」

「あにさ――――――ン!!」


 3人の悲痛な叫びが森の中に響き渡った。


 影は剣に着いた血を払い、仲間に合図を送った。


 その瞬間今まで黙っていた6つの影は一斉に動き出した。


「......のせい.......我の.....せいで........」


 サラは闇の力で2本のハルバートを出した。


 自分のせいだ。自分のせいでコウキは殺されてしまった。


 主の言うことを素直に聞かず、躊躇してしまった挙句、攻撃のチャンスまで与えてしまった。

 

 サラはこの瞬間今まで感じたことの無い後悔と殺意に襲われた。


「お前たち、行くぞ」

「.....はい」

「.......殺します」


 コウキの教えである『殺さない』の教えはもはやどこかに消えていた。


 今3人にあるのはこの7人を殺すこと。


 アリシアとカグラも同様に後悔していた。


 もっと早くから気づいていれば、見えていれば愛するコウキを死なせずにできたのに。


 心のどこかで躊躇していた自分に腹が立った。


 影が2回目の合図をした瞬間、サラとカグラは既に斬りかかっていた。


 サラの攻撃は武器で防がれるが力任せに振ったハルバートで武器もろとも一刀両断した。


 もっと早くこうしておけばよかった。


 サラは心の中でずっと唱えている。


 カグラは一瞬で相手の懐に入り込み桜華を一振りした。


「ぶちまろ......雑魚が.......」


 その刹那相手の全身から一斉に血が噴き出した。


 2体同時にアリシアの元へと向かって来た。

 

 アリシアは手前の1体を弓を5発撃ち、内4発が弾かれたしまったがおとりで本命の1発は相手の額を貫いた。


 暗くなろうが関係ない、今のアリシアには全て見えている。


 後ろの相手に対しては弓を投げ捨てナイフを引き抜いた。


 剣が振り下ろされるが瞬時に避け首元を一突きした。


「殺す、殺す!!」


 サラの2本のハルバートは相手の身体を切り刻み、ついには肉片だけになってしまった。


「死ね」


 桜華の刃は肉眼では捕えきれない速さでブツ切りにしてった。


 瞬く間に目の前に6人は殺されてしまった。


 残りはコウキを殺したあの影だけである。


 アリシアは何発も矢を撃つが全て双剣によって弾き返されてしまった。


「我が行く」


 鬼の形相で攻め寄るがまるで舞いを踊るかのような動きで全て避けられてしまった。


「キサマ!!」

「怒りによる攻撃など当たらん」


 刹那横からカグラが刀を振るうが避けられる。


 強い、そう感じた。


 3人掛かりでも倒せない。しかし殺さなければコウキに申し訳ない。


 サラとカグラは何度も何度も斬りかかるが全て外れてしまう。


 息が切れる。相手の言う通り怒りに身を任せてしまったため体力の配分がなっていなかった。


「.........任務は完了した」


 しかしそのとき双剣使いは背後の気配に気が付き振り向いた。


「ガッ―――――!?!?!?」


 突然首を掴まれた。


 それも尋常じゃない程の強さで。


 何度も引きはがそうともがくが、もがけばもがくほど握力は強くなる一方である。


「だ......だれ.......だ」


 そのとき、2人からは信じられない言葉がでた。


「こ、コウキ、様?!」

「兄さん......」


 コウキ。それはさっき自分が殺した相手であった。


 そんなバカな、そんな筈がない。


「!!!!!」


 目の前には闇の中でゆらゆらと怪しく光る赤い一つの点が浮かんでる。

 

「アガガガガ――――――」


 意識が次第に遠のいて行く。


 抵抗する手に力が入らなくなっていく。


「こ、コウキ様!! コウキ様!! コウキ様!!!」


 サラが叫んだ。


「ハッ.......サラ」


 コウキは手を緩めた。


 同時に赤い一点の明かりはスゥっと消えた。

 

 そして双剣使いは倒れた。

 

 コウキはロッドを拾い炎を出した。


 炎に照らされるコウキの姿があった。


 服にはまだ乾ききっていない血がベットリと付いている。


 その瞬間。


「あああああああ―――――!!!」


 サラはコウキに飛びついた。


「コウキ様――――――!!!!」


 力いっぱいコウキを抱きしめる。


「生きて、本当に生きて―――」


 顔をクシャクシャにして涙声で言う。


「あはは、心配かけたね」


 サラの頭を撫でる。


 そしてコウキは惨状をみてため息をついた。


「殺してしまったんだね」

「も、申し訳ありません.......」

「気にするな」


 コウキはアリシアとカグラに目を向ける。


「2人ともごめんね」


 その途端―――。


「あにさぁあああああん!!」

「コウキさぁあああああん!!」


 2人も抱きついてきた。


 コウキは3人を目いっぱい抱きしめた。


 しばらくしてコウキは発光水晶のスタンドを作り辺りを照らした。


「コウキさん、どうやって復活したんですか?」


 アリシアの問いに一瞬悩んだ表情を見せたがすぐに答えた。


「運よく心臓に外れててね、一瞬を突いて回復魔法をはいこの通りってわけさ」

「さすがコウキ様」


 寄り添うサラは言った。


「兄さん、あのときすごく怖かったです。目が赤く光ってました」

「あ、あれはほら、怒ってたから」

「そうなんですか」


 一瞬ホットしたコウキであった。


「ところでどうします?」


 アリシアの足元には両手足を氷漬けにされた双剣使いの姿があった。


「そうだねえまずは情報を聞きだすことから先だね」


 コウキは顔を隠している頭巾をとった。


「この人、女!? それもダークエルフだ」


 コウキを襲った正体は白髪のダークエルフだった。


「おい起きろ」


 サラが前髪を鷲掴み顔を持ち上げた。


「このヒト、目が.......」


 アリシアは呟いた。


 彼女の右目には生なましいい傷跡が残っていた。


「........うっ.......」


 隻眼のダークエルフは苦しそうに瞳を開けたのだった。


チート能力なのか単に運が強いのか、それとも.........

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ