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三十八話 本と視線

今回はショートストーリーです。

 小国トセで過ごす事二週間が経過し、コウキ達は新たな国にいた。


 今度はロイトの西側の小国ミノに移動していた。


 ミノは過去に三日だけ滞在していた経験がある。


 毎度の様に、先に宿を取り観光していた。


 この国は、正直言ってあまり目立つものは無かった。


 トセでは川があったがミノは特になかった。いや、訪れる時期を誤ってしまったのだ。


 ミノは春になると一面に鮮やかな花畑が広がるのだが、それは春から夏の限られた期間だけであり、季節を過ぎてしまえば何もないただの小国である。


 失敗した。


 コウキはそう思った。


 今更別の場所に移動しようにも宿は5日分払ってしまったため、5日間はこの何にもない国で過ごさなければならなかった。


「コウキさん」

「なんだい?」


 アリシアはコウキのマントを引っ張った。


「ちょっとあそこに寄っても良いですか?」


 アリシアが指さすほうには武器屋があった。


「いいよ」


 コウキは先に3人を見せに入れた。


 後ろを振り返る。


「.........」

「どうしましたー?」


 カグラが声をかけてきた。


「なんでもなよ」


 店に入った。


 アリシアは矢の補給のために立ち寄りたかったみたいだ。


 サラとカグラは互いに剣を見ているなか、コウキは何もすることなく3人の姿を眺めていた。


 しばらく待ているとアリシアの買い物は終え、4人は店を出た。


 俺も何か買おうかなとコウキは考えていると、ある一軒の古本屋が目に入った。


「古本屋。ちょっと寄ってみてもいいか?」

「勿論です」


 サラは言った。


 店自体が狭く、本が所狭しと並んでいる。


 店内に入ると、瞬く間に本独特のにおいがした。


 早速コウキは本を物色し始めた。


 普段は郷土の本や魔法関連の本を主に読んでいるが今回は物語を攻めようと考えていた。


 おとぎ話や民話、神話など意外とその時代の風潮や文化、皮肉などを物語として起こしたものや事実を元に作られたものも多くあるため異世界の古い歴史や文化を知るにはこういった物語形式のものが最もなじみやすいのだ。


 コウキが探している横でアリシアも本を探していた。


「アリシアも何か読むのかい?」

「はい。魔法関連の本でも読もうかと」

「魔法関連か。魔法使いでも目指すの?」

「いえ、少し勉強しておこうかと。眷属魔法の幅が広がりますし」

「眷属魔法使えたんだ」

「ええ、でもまだ属性が一つしかなくて。少し剣術以外にも学ぼうかと」

「なら教えてやるよ」

「本当ですか、やったぁ。じゃあ別の本でも探します」

「直接身体で学んだ方が身につきやすいしね」


 こうしてコウキは短編集を買い、アリシアは分厚い長編物を買った。


 店を出るとコウキは一瞬立ち止まった。そして辺りを見渡す。


「コウキ様?」

「………なんでもないや、行こうか」

「?」


 サラは不思議そうにコウキを見たのだった。


 宿に戻るとコウキとアリシアは早速買った本を読み始めた。


 サラはカグラと剣術の話をしている。


 この時コウキはいつも以上に集中してしまう為周りの音が一切遮断されてしまうのだ。


 アリシアは読み始めて数分、喜怒哀楽の表情が激しかった。


 時計の針が夕方の5時をさした。


「―――――読んだ読んだ」


 コウキは本を閉じた。


「もう読んだのですか?」

 

 サラは言った。


「いやいやまだ半分だよ」


 アリシアも本を閉じた。


「結構面白いです」

「何の本を買ったの?」

「騎士と王女の恋愛ものです。コウキさんは?」


 オーソドックスな恋愛ものをだなと思った。


「俺は短編集だよ。今読んでたのは竜と人間の血を持つ主人公が竜を倒す話さ」


 コウキが買った本の内容のほとんどが人間、亜人、竜が争う内容が記されているものだった。


 コウキの予想ではこの本の内容は昔あった出来事であると考えている。過去のにも人間と亜人の戦争があったと聞いている。また今読んでる主人公キルは竜人族であることは明白だった。


 こういう風に文献に残すってどの世界でも変わらないことだな。と思うコウキであった。


「本ってイイですよね。読んでるだけで現実逃避できるっているか、なんていうか」


 アリシアのその言葉を聞いた瞬間、コウキの脳裏に高校生の頃の記憶が蘇った。


 コウキの同級生に本好きの女の子がいた。


 常に本を読んでいて、何度か話をしたことがあった。そのときアリシアと同じことを言っていた。


「......長谷川......」

「ハセ? コウキさんハセってなんですか」

「ハセガワ、昔の友達さ。アリシアと同じこと言ってたなって思ってね」

「そうなんですか」


 コウキは頷いた。


「彼女やアリシアの言う通り、本ってそう言う魔法があるのかもしれないね」

「よかった、コウキさんが話が通じる人で」


 2人で話を盛り上がっているなか、サラとカグラはつまらなさそうに2人の会話を見ていたのだった。




 外もだいぶ暗くなった。


 コウキは窓に向かいカーテンを閉めようとした時だった。


 外をジッと見つめている。と思ったら閉めてしまった。


 コウキはミノに来てからずっと視線を感じていた。


 外で買い物をしているときも誰かに見られているかのような感じがしてならなかった。


 気のせいだと思いたいが、道にも変な胸騒ぎがした。


「厄介事はごめんだ......」


 コウキはそうつぶやいたのであった。


コウキが呼んでた短編集で出てきた竜と人間のハーフの物語は前に書いて没にした物語です。

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