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三十四話 カグラとチョーカー

「か、カグラ!!」


 驚きのあまりアリシア叫んだ。


「皆さん。助太刀いたします!!」


 カグラは桜華を構えると再び針狐に向かって斬りかかる。小さい体から繰り出される、その速さと力強さは尋常じゃなかった。斬られた死体は血を撒き散らしながら宙を舞う。アリシアは弓を拾い射る準備に掛かるが、カグラがどんどん斬り殺してゆくため狙いが定まらない。コウキはその光景をまじまじと眺めていた。


 こ、これが鬼人族。すげえ、すげえよ!!


 コウキが興奮しているのをよそに、サラはハルバートで斬りかかっていた。そのときだった。


「カグラ!!」


 アリシアの視線の先に映っていたのはカグラの背後へと迫っている針狐の姿があった。すぐに気付いたが、カグラは足場が悪く対応に遅れてしまったことで回避及び防御にタイムラグが生じた。刹那、サラが背後の針狐の胴体を切り落とした。


「注意を怠るな!」

「あ、は、はい! 姐さん!!」


 その後、カグラの活躍により針狐は殲滅し、辺りには大量の針狐の死体が散らばっていた。コウキ達は手分けしてロケットアイで記憶させるとカグラと話した。


「驚いたよ。どうしたのさ」

「本当だよ。でも来てくれて助かった」


 コウキとアリシアは言った。カグラは照れくさそうに頭を掻く。


「しかし何故お前はここにいるんだ?」

「確かに。どうしたんだい?」


 するとカグラは若干俯いてしまった。


「カグラ?」

「あ、あの、その......」


 何か言いたげな様子だった。初めは聞き取れたが最後の方が良く聞こえなかった。


「ごめん、聞こえない。もう一度お願い」

「あ、アッシを!! 仲間に入れてください!!!!」


 カグラは桜華を置き、土下座をして言った。突然のことでコウキ達は驚きを隠せなかった。


「わ、分かったから頭を上げて!! 一番の理由は解ったから。ことの経緯を話してくれるかい?」


 カグラは頭を上げた。


「......はいそれは――――――」


どうやらあの後考えた結果コウキたちの仲間にしてもらおうと探したら今日、偶然にも見かけて後を付けていたら見失ってしまったが、何かが戦っている音がしたため行ってみるとコウキたちだった。しかし、突然押しかけても迷惑をかけるだけだったためタイミングを計っていると、ちょうどアリシアがピンチだったためこれはチャンスと思い加勢と言うカタチで出てきたという分けであった。


「―――なるほどねぇ。でも、いいのかい? せっかくの自由だし」

「イイんです。アッシ、初めてヒトに親切にしてもらいました。奴隷にも関わらずヒトとして見てもらいました。美味しいご飯と服ももらいました。こんな経験初めてです。ですからアッシ、初めて本気で誰かのために尽くしたいと思いました。だからお願いします!! 仲間にしてください。雑用でも何でもします。ですから、ですから――――」


正直かなり安い感じではあった。しかし、カグラにとってそれは今まで生きてきた中で感じた初めての感情で、感謝の意でもあった。一瞬コウキは考える素振りを見せた。


 カグラは再び地面に顔を押し付けた。コウキはカグラの元まで歩み寄ると、片膝を着いた。


「カグラ。そんなことしなくても良いよ。さ、顔を上げて」


 カグラは瞳にうっすらと涙を浮かべながらコウキの顔を見る。


「俺の一存では決めれないな」


 口を弧の字にしながらコウキはサラとアリシアの方を見る。


「お前にはまだまだ指導が必要だ。これから我がみっちりと叩き込んでやるからな」

「カグラには助けてもらっちゃったから、借りはしっかり代えさせてもらうからね」


 2人からは賛同と伺える声が上がった。


「だってさ。キミの力、俺たちにくれるか?」

「.....てことは」


 カグラの表情が一気に明るくなる。


「ああ。ようこそ、カグ―――――!!!」


 刹那、カグラはコウキに飛びついた。勢いでコウキは仰向けに倒れてしまった。首に腕を回しているため互いの頬が触れ合う。


「うわ~~~~ん!! あ、ありがどうごじゃいましゅう~~~~」


 カグラは泣きながら3人に向けて言った。


「全く、カグラは泣き虫だなぁ」


 コウキはカグラの頭を撫でる。すると、視界には2人を見下ろすサラとアリシアの姿があった。何故か2人は羨望の眼差しでコウキ達を見つめていた。




 はれてカグラはコウキ達の新しい仲間となった。4人はギルドにいた。依頼達成の報告とカグラのハンター登録をしていた。コウキは1人、カウンターで換金し残りの2人はカグラに付き添い別のカウンターで登録を済ませた。


 帰り道の事だった。ふとアリシアはカグラの首元に目がいった。首元には今まで首輪がしてあったため僅かに痣が出来ていた。


「カグラ、首の痣大丈夫?」

「はい。平気ですよ」

「でも嫌でしょ? 気にならないの、女の子なんだし」

 

 コウキは言った。


「そんな、アッシは別に気にしませんよ」

「でも、こっちとしては少し気になるな」

「そ、そうですか。でしたら何か隠せるもんでもあれば.....」


 するとカグラはコウキの首元をジッと見た。視線が首元にいっていること気づいたコウキは言った。


「コレが気になるのか?」

「あ、はい」


 コウキはチョーカーを摩る。


「そう言えばコウキさんいつでもチョーカーしてますよね。お風呂の時も」

「私も少し気になっていました」


 アリシアとサラは言う。アリシアはコウキの首元に顔を近づける。コウキは妙にドキドキしながら若干顎を上げた。


「綺麗な石が入っていますね」

 

 アリシアの言う綺麗な石とは当然チョーカーについている物である。前の方に3つ間隔を開けて小さくて白い透明な石が埋め込まれていた。


「まあね。これはあれだ、おしゃれだ」

「おしゃれですか。さすがコウキ様だ。どんな時でも身なりを意識しておられるとは」

「ハハッ、そういうこと」

「アッシも欲しいです」

「そうか。ならどっか寄るか」

「ええっイイですよ。そ、それよりくれたお金、返します!!」


 ちょっと言ってみたつもりだったのに、まさかコウキから了承を得ると思っていなかったカグラはとっさにコウキから渡された皮袋を取り出すが、それはコウキに阻まれてしまった。


「いいよ。カグラが持ってな。それと、これから買うのはキミへのプレゼントさ」

「〝プレゼント〟ですか?」

「そうだ。我のペンダントや」

「ワタシの髪留めはコウキさんからの貰った物なんだよ」

「そう言うこと。仲間になった記念にと言うことで――――」


 雑貨店に着いた。中に入ると早速目的のチョーカーを探すが見つからなかった。幾ら雑貨店と言ってもさすがにチョーカーまでは完備されてはいなかった。コウキ達は渋々諦めることとなった。このロイトにはフォッシルの様にアクセサリー店の様な専門店は存在しなくほとんどが雑貨店にアクセサリーなどが置いてあるだけだった。するとコウキは何か思い出したのか、おもむろにマントの中に手を入れて何かを探し始めた。


「確かこの辺に~......あった!!」


 右手にはチョーカーがあった。コウキが付けているチョーカーと同じく色は黒、唯一違うのは紫色の石が一つ付いてあるだけだった。


「これは?」


 カグラは言う。


「俺が前に付けてたチョーカーだよ。お古だけど、良かったら貰ってくれるか?」

「い、イイんですか!!」

「ああ。もちろん。特殊な素材で出来てるからサイズも勝手に調整してくれるんだ」


 カグラに渡すと早速カグラは付け始めた。細い首に合わせてチョーカーは瞬時に縮む。


「どうですか? みなさん!!」

「良く似合ってる」

「いいんじゃないか」

「カッコイイよ、カグラ」

「えへへ、兄さんと同じです~」


 よほど嬉しかったのかカグラはコウキの腰に抱きつく。そしてカグラはコウキの顔をしたから見上げた。


「ありがとうございます!」

「おう。どういたしまして」


 笑顔でコウキはカグラの頭を撫でると、頬を赤く染めながら満面の笑みで見る。その横で、サラとアリシアの顔は引きつった笑顔を見せている。


「か、カグラ。いい加減コウキ様から離れたらどうだ?」

「そうだよ、コウキさんも大変でしょうから、ね?」

「俺は別に」

「大変ですよね? コウキさん??」

「あ、はい。カグラ、もういいか?」

「はい。失礼しました」


 カグラは少し名残惜しそうにコウキから離れた。


「全く、カグラ。幾ら嬉しいからと言ってコウキ様に、だ、抱きつくようなマネはしてはならぬ」

「え~なんでですか」

「いきなり抱きついたらコウキ様が驚かれてしまうだろ。主に迷惑を掛けないのも従者の役目だ」

「わ、分かりました......」


 カグラはしょんぼりとしてしまった。


「サラ、少し言い過ぎだ。それにあれだよ、2人だってしたかったらいつでもしていいぞ?」


 コウキの何気ない言葉にサラとアリシアは一瞬で顔を赤く染めた。コウキ自身は何で赤くしてしまったのか理解できなかった。アリシアは何故かモジモジし始めた。


「そ、そんないつでもだなんて......」


 横にいるサラは胸の下で腕を組みコウキから顔を背けている。何やらブツブツ言っているがコウキには聞き取ることが出来なかった。「どうした?」と2人に訊いてみたがイマイチ反応が無かった。見かねたコウキは2人の愛大に入り、後ろから腕を周り2人の肩を抱く。


「なに。どうした?」

 

 サラとアリシアの顔を交互に見る。しかし2人はコウキに顔を見せない。


「べ、別になんでもありません」

「ワタシも。そ、そう言えば、ワタシお腹が空きました」

「私もです」

「確かに、何も食べてないな。カグラはどうだ?」

「アッシもお腹が空きました」

「そうか、ならどっか店にでも寄って帰るか」

「ええ。もちろんコウキ様のおごりで」

「いつも俺のおごりじゃ――――」

「いいから行きましょう」


 2人はコウキから離れて先に行ってしまった。ここでようやく理解したのかカグラは言った。


「兄さんも大変ですね」


 カグラも前の2人について行ってしまった。


「え、なにが? ねえ!!」


 残されたコウキは何が何だかわからなかった。乙女(おんな)心が理解できない、そんな25歳の魔法使いであった。


作中では説明していませんでしたが、カグラの着ている服も所謂民族衣装で名前は『ヤシャノマイヒメ』と言います。

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