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三十二話 生きる糧と許すこと

 コウキとアリシアは驚愕表情を受けべている中、サラだけはピンと来きていない様子だった。


「あの、2人とも何をそんなに驚いて.....」

「サラは知らないのか。鬼人族について」

「はい。初めて聞く名前です」

「簡単に言うとめちゃくちゃ強くてめちゃくちゃ数の少ない亜人の種族なんだよ」

「少ない以前にすでに絶滅したんじゃないかって言われているんです」


 鬼人族。それはかつて大陸に存在した戦闘種族である。1人1人の戦闘能力はけた外れに高く、並みの人間では1人に10人かがりで挑んでも瞬殺されてしまう。また、戦闘能力が高いため種族全体としては他の種族と比べて数が少なく少数部族であった。そんな彼らが絶滅の危機までに追いやられてしまった。理由として挙げられているのは部族間争いが原因と言われている。部族内で覇権争いが勃発し結果としてただでさえ少ないその数を同族間の争いで更に激減してしまった。先の戦争での目撃例を最後にその姿は見えなくなった。結果、完全に鬼人族と言う種族はこの世界からいなくなったとされていた。


「絶滅なんてしないですよ」

「でもさ、ほら。額に角が無いじゃん」

「それはまだ生える途中なので。でも少しだけ」


 カグラは額の髪を上げる。すると確かに若干ではあるが左右に小さくコブが出来ている。


「う~ん....」


 コウキは複雑な顔でカグラのコブを見る。


 まあ、百歩譲って本当に鬼人族だとしたらなんでこんなところにいるのか。鬼人族だったらロイトのような小国の奴隷市場で売られているのはおかしな話だし、並みのハンターが手を出せるほどの額じゃ無い筈だ。でも、カグラちゃんの様にまだ角が完全に生えていない者もいることを考えると人間として通るのかもしれない。


 コウキはまじまじと額のコブを見つめていると。


「あ、兄さん。そんなに見ないでください」


 カグラは頬を赤くして俯いてしまった。


「あ、ごめん」

「コウキさん、まさか」

「コウキ様?」

「まて、俺は決してそのようなことは」


 慌てるコウキをみて少しカグラはほほ笑んだ。


「話を戻そう。まあ、キミが鬼人族であることは解った。これから肝心の問題に移ろうと思う。カグラちゃんが奪われた服と武器は俺達で取り返す」

「え?!」

「なに、心配するな。ゲンさんとはもう知り合いの域だ。話せば何とかなる」

「そんなに簡単に行くでしょうか?」


 アリシアは言う。


「相手だって大人だ。カグラちゃんにしたことは確かにひどいことかもしれないけど、一応大人だし」

「話し合いだとらちがあきません。ここは武力行使で行くのは?」


 サラは言った。


「本当はそれの方が手っ取り早いんだ。けど、ハンターの規約でハンター間の戦闘は原則禁止されるんだ。もしもバレテ通報されたら一発で資格は剥奪」

「そうだったのですか」

「うん。だからここは穏便に済まさなければならない」


 3人が話し合っているなか、カグラは思い切って口を開いた。


「あ、あの、御三方。さっきからアッシのために話し合ってくれているようですが、これはアッシが撒いた種です。御三方には関係のないことです」

「正直な所そうなんだ。でもね、カグラちゃん。ここで会ったのも何かの縁ってやつだ。それに困っているヒトを見過ごすわけにいかないよ」

「そうだぞカグラ。コウキ様は非常に膳のあるお方だ。ここはコウキ様の意志に従うのが得策だ」

「大丈夫だよ。ワタシたちを信じて」

「....はい......」


 俯いて返事をした。しかし、その声は、どこか嬉しさを孕んでいるようだった。


「あの、カグラちゃん」


 アリシアは真剣で、少し申し訳なさそうな声を表情で言った。


「なんですか? 姉さん」

「その、イヤならいいんだけど。なんで鬼人族のカグラちゃんが奴隷なんてしてるの? ご、ごめんね、変なこと訊いて......」


 アリシアはずっと疑問に思っていた。あの最強の種族である鬼人族が何故奴隷として、しかもこんな小国でいるのか。コウキはその疑問を意中に納めていたがアリシアは思い切って訊いてみた。きっと嫌な顔をされて断られるに違いない。そう思っていた。


「イイですよ。アリシア姉さんには助けてもらった恩があります」

「いやいや、カグラちゃん。断っていいんだよ。アリシア、キミは何を訊いてるんだ」

「ごめんなさい。どうしても気になって.....」

「大丈夫です。こんな暖かい場所とご飯を頂きました。せめてそれだけでもさせてください」

「.....キミがそうしたいならいいけど。途中で嫌になったりしたらいつでも切っていいからね」

「分かりました。それじゃあ、何処から話せばいいのでしょう?」

「じゃあ、何処出身?」


 アリシアは言った。


「出身はヴァッサーの近くの山の中です」

「ほう、キミヴァッサーからか」

「コウキ様〝ヴァッサー〟とは?」

「ここから南の大国だよ」

「なるほど。続きをどうぞ」

「はい。アッシの家族はそこでアッシが9歳になるまで過ごしていました。ですが、あの魔族との大戦が激しくなってしまって、アッシら家族が住んでいた山は焼けて住めなくなりました」


 9歳。ちょうど6年前だから俺たちが転生した時か。


「それからどうしたんだ?」

「はい。その後は良く覚えてないですか、どこかの森の中で暮らしました」

「あの、ちょっといいか? なんでキミら家族は山や森ばかりで街や村に住もうとしなかったんだい?」

「アッシにも良く分かりません。オットウとオッカアは何も教えてくれませんでした」


 解っていたんだな。自分たち鬼人族の今の立場が。人口の多い街や村に行けば恐れられて迫害を受ける。それか奴隷商か何かに捕獲されて売り飛ばされるか。きっとまだ小さい子供を守るためだったんだな。


「そうか......で、その後は?」

「その(あと)は、毎日脅えながらも何とか暮らしてました。あるときでした。突然、騎士さん達がアッシらの家に来ました。突然のことでアッシは驚きました。オットウとオッカアはアッシを隠してそのまま騎士さん達に連れられて行ってしまいました」

「なんで騎士たちにばれたの?」


 アリシアは言った。


「分かりません」

「俺が思うに誰かみ見られてそのまま王宮にまでその情報が回ったのかもな。王宮(アイツ)ら目的も為ならとことんやるからな。で、そのあとご両親は?」

「はい。戦争が終わった後もアッシは何とか一人で家で待っていたんですが、とうとう帰って来ませんでした。アッシはやっと解りました。オットウとオッカアは戦争に行って死んだんだって。そのあと一人暮らしを続けていました。ですが、とうとう苦しくなって家の中を探しました。売ってお金にしようと探しているときです、オットウとオッカアの部屋からアッシに残した武器と服がありました」

「それが盗られた武器と服ってわけか」

「はい。それでアッシは考えました。このままこれを売って暮らすか、街に出て生活するか」

「で、街に出たと」

「そうです。でも、アッシ学がないんでできるのは身体を使うことだけでした。ハンターになることも考えましたが、アッシ一人ではすぐに死んで終わりです。ですからアッシに残されたのは戦闘専門の奴隷になることでした。奴隷になれば衣食住には困らないと思ったんで」

「そんな奴隷があるんですね」

 

 静かにアリシアはコウキに言った。


「あるよ。戦闘専門奴隷はかなり需要があるんだ。一般の奴隷と違ってね」

「ですが、アッシ。いつもヘマばかりしてこれまで何度も売られては買いの繰り返しでした......」


 サラとアリシアはその後声が出なかった。


「.....解ったありがとう。ねえサラ、アリシア。2人は前に奴隷市場で言った事覚えてる?」

「はい」


 サラが返事をした。


「キミたちが言った、運命や必要性。確かにそうかもしれない。でもね、奴隷にある人の中にはカグラちゃんの様に生きてくために望んでなるヒトもいるんだ」


 コウキの言葉を聞いて、2人はしばらくの沈黙の後サラは口を開いた。


「カグラ。我はお前に謝らなければならない。我の父と母の命を奪い、お前をこんな目に遭わせたのは我らのせいだ」


 カグラの瞳は大きく見開かれた。


「つまり、姐さんは.....」

「魔人だ。お前の両親の仇だ。だからお前は我を殺す権利がある」

「サラ.....」


 サラは罪悪感に見舞われた。今まで散々多くの命を奪ってきた。顔も名前も知らないヒトたちを。しかし、この時、実感が湧いた。奪われて残された者の姿を初めて目で見た。声を聴いた。サラは自分の存在が憎たらしくなった。しかし、カグラの言葉は違った。


「.........気にしてません。戦いで亡くなるのは当然です」

「我を憎く思わないのか?」

「ないと言えば嘘になります。ですが、それならアッシらだって仲間同士で争って数が減りました。そうなると憎むのはアッシら鬼人族自身にあります。でも、憎みあっているとまた争いが始まります。オットウが言ってました。〝憎しみは己を滅ぼす〟って」


 アリシアは祖母の言葉が蘇った『憎んではいけない』。よく自分にそう言い聞かされていた言葉だ。


「だから―――」


 カグラはサラの手を取る。


「アッシはサラ姐さんを恨んだりしません。相手が魔人だとしても.....」


 カグラは笑顔でサラを見る。


「......す、すまなかったな.........ありがとう..........」


 後悔と感謝の籠った声でカグラの目を見て言ったのだった。




「...さて。これからだが、まだ時間はある今から行けばまだ間に合う」

「取り返しに行くのですね?」


 アリシアは言った。


「うん。きっとまだこの町にいる筈だ。カグラちゃん。ゲンさんたちがいる所は解るね?」

「はい。宿ですからバッチリ覚えてます」

「よし。そうと決まればまずは、カグラちゃんの服だな」


 コウキはマントの中から色々と出したがどれもカグラが着ることができるものは無かった。


「しゃーない。街に出て服を買ってそのままゲンさんの所に出向くいいね?」

「了解です」

「はい」

「分かりました」


 サラ、アリシア、カグラと順に返事をした。するとカグラは言った。


「あの、アッシの事はカグラでイイです。〝ちゃん〟はちょっと恥ずかしいです」

「そうか。解った。じゃあ、取り返しに行くぞ。カグラ!!」

「はい!!」


 4人は、カグラの武器と衣服を取り返すべく、街へと向かったのであった。


戦闘用の奴隷は消耗品であるため非常に安価で取引されます。一般の奴隷は長期間使用を目的とされているため、価格に差が生じます。

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