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三十話 交流

 ロイトで過ごすこと5日が過ぎた。南側に位置しているため真冬であっても比較的気温は暖かく、フォッシルに比べると幾分過ごしやすい環境である。周辺に生息する原生生物も何種類かはまだ活動を行っており、ハンターとして仕事も充実している。


 現在、コウキ達は『ユキイタチ』と呼ばれる全身が白い毛でおおわれた原生生物の採取作業を行っていた。この依頼の目的はユキイタチの毛である。ユキイタチの体毛は加工することによって貴族やお金持ちが愛用するマフラーやコート、カーペットと言った物の原料となっている。この依頼は非常に難しく、肝心のユキイタチはすばしっこく、また大きさも猫位であるため困難を強いられる。それ以上に要である毛を傷つけてはならいため慎重さを必要とされている。


 アリシアは狙を定め、矢を放った。矢はユキイタチを越えすぐ前の地面に突き刺さる。方向転換する一瞬の隙を突き、コウキの最小限にまで抑えた〈雷刃サンダーボルト〉で感電させて、弱ったところをサラが拾い上げ首を180度回転させた。


「これで3匹目か」

「やっとですね」

「だね。サラ、これ」


 コウキは袋を投げ渡す。中には先ほど捕まえたユキイタチが2匹入っている。受け取ると袋に入れる。それを再びコウキのもとに戻した。依頼を受けて3時間は経過した。現在の所1時間に1匹の割合で進んでいるが、これでは目標の5匹まであと2時間も郊外の森の中を散策しなければならない。ユキイタチは頻繁に姿を現すことが無い。今回は奇跡とも言えることだったため、コウキは考えた結果現時点で切り上げることにした。


 太陽は午後3時の位置にある。このまま戻っても良いが何せこの後日課の剣術訓練が待っていた。アリシアが先にサラとやっているなか、コウキはこの後の予定を考えていた。


 そこそこ時間がある。この後また別の依頼を受けるのもアリかもしれない。ここんとこ受ける依頼は1日1回の簡単な依頼ばかりだし。まあ今回は別として.......どうしようか。


 ぼんやりと考えていると、アリシアの番が終了した。


「コウキ様、出番ですよ」

「え~俺~?」

「〝え~〟ではありません。ここ最近サボり気味ではないですか」


 ロイトに来てからコウキは剣術訓練をしていなかった。何かと理由を付けて訓練をサボていた。


「だってほら、さっき魔法使ったし。疲れたし。25だし」

「私157歳ですが」

「.........ダメ?」

「はい」

「どうしても?」

「どうしてもです」

「あとで抱きしめてあげるから、ね?」

「だ、ダメです!!」

「じゃあ、チューしてあげる!!」

「.....ダメです!!!」

「サラさん......」


 アリシアは呆れたように2人を見る。よほどやりたくないのかコウキの説得を試みるがやはり結果はダメだった。話し合いの結果「5分間だけなら」と、しぶしぶコウキは了承した。


「そんじゃあ、お手柔らかに」

「おねがいします」


 2人はコウキが作った鉄の模擬刀を構えた。コウキは構えると、一気にサラに向かって斬りかかる。しかし、すぐに切り払われる。何度も斬りかかるが終始サラが切り払いをしている。と、次の瞬間、サラに突き立てるが避けられると同時に胴体目がけてサラが斬りかかる。コウキはそれを後ろに向かって跳躍し回避する。


「やりますね。ですが!」


 サラは完全には振り切らず途中で止め、一歩前へ出て再び斬りかかるのをコウキは何とか防ぐ。しかし、その衝撃で体勢が崩れてしまい模擬刀が手から離れてしまった。


「あ!!」


 気付けば目の前には刃先が。


「......参りました」


 コウキは降参し、そのまま地面に座り込む。


「疲れた」

「サボっているからです。アリシアは真面目にしているから伸びが早いんです」

「だって若いし」

「コウキ様。これに懲りて真面目に専念してください」

「....はい」


 立ち上がった時だった。


「なんだい兄ちゃん。もうおしまいか?」

 

 突然声がし、向くと数人の男女がこちらを見ていた。その身なりからすぐに同じハンターであることが理解できた。


「驚かせて済まないな。俺達もちょうどこの辺で狩りをしててな。戻る最中ぶつかり合う音がして来てみたらお前さんたちが練習しているのが見えてついな」

「いえ、そんな。お見苦しいところを」

「いやいや。面白かったぜ? お前さんの必死こいた顔とか」


 すると後ろにいる仲間が一斉にクスクスと笑い始めた。


「いやはや。僕もまだまだ未熟ですから、はは....」

「ま、頑張りな。そこのお嬢ちゃんも、コイツに抜かされないようにな」


 男のパーティーはそのまま街の方へと向かって行った。コウキは笑顔で見送っている横で、サラはその後ろ姿を睨みつけていた。


「なんですか。あの者たちは」

「まあ、あれだ。ベテランのハンターなんだろ?」

「仮にそうだとしてもあんなヒトと馬鹿にしたような言い方は許せません!」

「確かにそうだね」

「コウキ様は腹がたたないのですか?」

「そりゃあ、立つさでも事実だし......それにひとつ解ったことがあったしね」

「すみません。後半何と言ったのですか?」

「いや、いいんだ。さて、帰るか」


 コウキ達も街の方へと戻って行った。


 依頼の結果は割と成功に近かった。一匹5000ゴールドが3匹で15000ゴールドの報酬となった。もちろん報酬は3人で均等に分け、宿に戻るときだった。


「あ」

「お、さっきの兄ちゃんじゃねーか」


 ギルドの外に先ほど声をかけてきたパーティーがいた。


「どうも」

「帰るのか?」

「はい。今日はもう疲れたので」

「そうかい。お前さん、この後暇なら一緒に一杯どうだ? せっかく会ったんだ。いいだろ?」


 見た目30代のパーティーのリーダーであろう男はコウキに話を持ち出してきた。コウキは2人を見るが、サラとアリシアは「任せます」と言う目で見てきた。


 そう滅多にないことだ。たまにはいいかな、こういうのも。


「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」

「よし、決まりだ。行くぞお前ら」

 

 男は残りのメンバーに声をかけた。




 時間は夕方5時を過ぎていた。コウキ達は酒場で男のパーティーメンバーと一緒にテーブルを囲んでいた。後に男は「ゲン」と名乗った。コウキとアリシアはジュースを、サラはお酒を飲んでいた。


「なんだい、コウキ。お前飲めないのか!!」

「まあ、はい」

「それじゃあ、なんで一緒にきたんだよ」

「ゲンさんのせっかくの申し出を断る訳にもいかないので」

「お前イイやつだな!! おい、この兄ちゃんにどんどんジュースを持ってこい!!」

「アハハ......」


 コウキはゲンをよそに他のテーブルを囲んでいるメンバーを見た。


 いない。どこにいったんだ?


「どうした、手が止まってるぞ」

「あ、いや。んなことないすよ!!」


 コウキは一気に飲み干した。サラもアリシアも他の女性メンバーと話をして盛り上がっていた。コウキはその後、酔ったゲンの武勇伝を延々と聞かされたのであった。




 数日後、アリシアの矢の補充のため再び市場のあるところまで出向いていた。武器屋により帰り道の事再び奴隷が売られている前を通った時。


「お買い上げありがとうございます!!」


 威勢のいい声が奴隷売場から聞こえてきた。気になりみると、檻の中から1人の亜人の女性が首輪に紐を付けられて出てきた。商人は男に渡すと同時に代金を受け取った。亜人の女性は男たちに引き取られその場を離れて言った。


「コウキさん。あの首輪はなんですか?」

「あれは奴隷輪(サーヴァントリング)といって奴隷を拘束し服従させるための魔法道具だよ。あれを付けられている間は所有者に一切の抵抗は出来ないんだ」

「そうですか。あの女性(ひと)、どうなるんでしょうか」

「分からないな。何故そう思うんだい?」

「見た目からしてあまり戦いには向いていないようだったんで........」

「う~んどうなんだろうな。きっと何か役に立つから買われたんだろ?」

「そ、そうですか」


 この時コウキは大方理解していた。あの女性の行き着く未来が。しかし、それはあえて口にしなかった。アリシアにはもう少し肯定的に、前向きに見て欲しかった。彼女にはその先を理解するのはもう少し後になってからでいいと判断した。


「コウキ様。この後の予定は?」


 サラが割り込むように話しかけてきた。

 

「そうだな~今日は魚でも獲りに行こうか。たしか川が在る筈だからそこでのんびりしよか」

「イイですね。なら早く行きましょう」

「アリシアは何か希望は?」

「ワタシも賛成です」

「よっしゃ。そんじゃ行くか。実は俺、趣味が魚釣りなんだよ」

「そうなのですか。初めて知りました。」

「そう言えば言ってなかったね。なかなか俺上手いいから、見てな」


 自賛するコウキを2人は笑顔で見る。


 コウキ達はブランチへと向かったのであった。


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