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二十六話 名も無き漢の料理

 10月も終盤になり、冬がすぐ手前なった頃コウキ達はまだフォッシルで生活していた。王子マリウスの一件以来、変な噂が立ち何かしらの報いを受けると思っていたコウキであったがガイウス王が美味いこと取り繕ってくれたおかげで城内での問題は外部に漏れることは無かった。

 

 ハァ、もうすぐ今年の終わりが迫って来てるわけだが、何分することが無くて本当に困る。転生前は年末の特番や街にはイベントが多くあって楽しかったのに、今では依頼依頼....なんか、こうなんつーの? 気分が晴れる事ないかね。祭りは中止になったし、気分転換になることとかないかね――――――!!


 とソファーで横になりながらそんなことを思うコウキであった。サラとアリシアはの2人は、アリシアの要望で2時間前にいつもの訓練をしに今は外出している。一方コウキは「気分が乗らない」の一点張りでこの日の訓練は行わなかった。


 どうしよう、暇だ。


 時計を見ると夕方の4時手前だった。


 あ、そう言えば、シズとリズの約束。まだ有効かな?


 約束とは前に2人と交わした『新作の料理を食べさせてくれる』ということである。


 あれから結構経ったけどどうなったんだろすげえ気になるな。どうせ2人はまだ帰ってこなさそうだし、いっちょ行ってみますか。


 身体を起こし、一階の食堂の方へと向かった。時間的にまだ余裕あるため今のうちに訊いてみることにした。着くとちょうどシズとリズが準備に取り掛かっていた。コウキは邪魔にならない程度の距離で2人に近づく。


「よ、お2人さん」

「あれコウキじゃん」

「コウキさんこんにちは。どうしたんですか?」

「いや、この前言った新作料理。あれどうなったのかなって」

「あ~あれね。それが全くできないの」

「ええ! なんでさ。結構経つよね?」

「料理作るにしても色々大変なんです。コストやお客さんのニーズ、それに創作料理ってとても大変なんですよ」

「そうかあ。言われてみればそうだもんな。悪いな、邪魔しちゃって」

「いいえ。こちらこそできてなくて....」

 

 コウキは食堂を後にした。


 ふむ。キノコ料理はまだか.....あ、いいこと思いついた。ここは日ごろの感謝を込めて一肌脱ぎますか。


 その足でコウキは宿を出た。少し歩いたところに小さな食品外があった。コウキはその中でまず向かった先は肉屋だった。店頭には綺麗にさばかれた肉が並べられている。その中で選んだのは薄い肉が何枚も重ねられた塩漬けの燻製を手に取った。次いでチーズも買った。


 会計を済ませ向かったのは青果店である。ここでコウキはある食材を探していた。しばらく探す事数分、目的の野菜を見つけ出すことができた。続けて今度は香辛料を求めて店を探した。見つけたはいいが何分香辛料は高く、200グラム2000ゴールドもした。その反面塩はその4分の1の価格で買うことができた。肝心のオイルも買った。


 よし、これで役者は揃った。問題は場所だな。厨房は当然使えないから....屋外しかないよな。


 コウキは在る場所へと向かった。数十分後コウキは人気のない場所にいた。辺りは草むらと木に囲まれておりそれ以外何もない。まず場所を確保するために〈風刀(ヴァン)〉で草を刈りスペースを作った。そして土の造形魔法でテーブルと椅子、『U』時のカマを作った。時間もくらなってきたためスタンドも作りその上に発光水晶を置いた。


「コレでひとまず完成。あとは.....」


 マントの中からさっき買った食材と自前のお料理器具を取り出し準備は整った。


 野外で料理なんて久しぶりだな。最後にしたの何時だっけ.....まあいいや。


「KOKI’Sキッチン、なんちゃって.....さっさとやるか。」


 コウキはまずカマにたいまつを入れたそしてその上に魔で作った鉄板を置き、下のたいまつに火をつけた。ある程度燃えたら買ってきた食材を調理し始めた。包丁でまずキノコとブロッコリーもどきをカットする。キノコはつばを切って、ブロッコリーもどきは食べやすいように小さいサイズに切る。次に何かの肉の塩漬け燻製を一口大にまで切る。鉄板が充分に暖まったらフライパンを置きその中に何かの実のオイルを流し込む。もちろん適量で。ある程度熱が通ったら先に燻製、次にキノコと順に入れていく。


「お~いい音してきた~」


 フライパンから食欲を奮い立たせるような音が辺りに広がる。そこで一度塩を一つまみと香辛料を加えて味を調整する。


 本当はココにガーリックチップがあればもっと香ばしくていいんだけど、贅沢は言ってられないな。


「どれどれお味は.....よしっ多分大丈夫だろう。ていうかやっぱさみーなー」

 基本コウキは適量で済ませる。3枚の皿を用意した。そろそろ仕上げのときである。十分火が通り柔らかくなった具材の上にチーズを乗っけた。乗せた瞬間すぐに形を変え、具材全体を覆ってしまった。すぐさま具材を取り分け皿に盛った。残りは別の容器に入れてマントの中にしまった。


 出来た。コレで2人が美味しいと言ったら問題ないか。あとはシズとリズに任せるとして.......


 木のコップの中にフルーツジュースを入れようとした瞬間―――


「コウキ様、どうしたのですか?」

「コウキさんでしたか」


 サラとアリシアだ。実はコウキが料理しているこの場所は2人が訓練している場所の近だったのだ。


「いや、暇だったからたまに料理でもしようと思ってね。とりあえず座ってよ」


 2人は土でできた椅子に腰かけた。2人の目の前には今さっき出来上がったばかりの料理が置いてある。訓練で突かれた2人にとって目の前の料理は宝石に等しい位に輝いて見える。


「ゴクン......コウキ様.....」

「まだ、ですか.......」

「解ってるって。さてと食べるとしようか。いただきま~す。」

「「いただきます!」」


 2人はフォークを手に取り皿の上に乗っている具材を刺した。2人は口に運ぶなりおかしな声を上げる。


「あは~おいひいです.....」

「あ、ああああ.......チーズがお肉が....キノコが......」

「おいおい、そんなにか!!」


 コウキも食べる。


 燻製とキノコとブロッコリーもどきの絶妙な食感が歯の神経からフルに伝わる。また燻製の塩気と香辛料とチーズのクリーミーな味わいが濃厚かつ優美なハーモニーを舌の上で奏でる。


 うん、問題ない。やっぱりあのオイルを使ったのが良かったな。でも、もうちょっとチーズ多くても良かったかな。


 向いの2人はバクバク食べ進む。気付けばすでに皿の上には何も残っていなかった。食べ終えた2人は名残惜しそうに皿を見つめる。そんな様子を見たコウキはあるモノを出した。


「これは?」

「パンだよ。皿の上に残ったオイルをこのパンに付けて食べてごらん」


 2人はコウキから受け取ると早速試した。


「.....おお、すごいパンが!!」

「コウキさんすごい.......」


 目を真ん丸にして驚く姿はどこか可愛げがあった。コウキは残りを食べ終えパンを手に取ったのだった。

 

 食事を終えた3人はしばらく星空の下で食後の余韻に浸っていた。


「コウキさんって料理もできたんですね。驚きました」

「まあ、1人で行動する期間が長がかったからね。色々試していくうちに出来るようになったんだよ」

「そうなのですか。でもなぜこんなところで?」

「場所が無くてね。だから作るなら屋外にしたんだよ。それにどうせ作るなら2人に食べてほしいし」

「ありがとうございます。ところであの料理はなんて言う料理なのですか?」

「あれはオリジナル、つってもテレ......元の料理にちょっと俺が手を加えただけなんだけどね」

「それでもあれだけ美味しい料理を作れるのはすごいです」

 

 どうやら好評のようだ。これだけ称賛するんだから間違いないだろう。


 その後寒くなり、3人は片づけを済ませ宿に戻って行った。


 時間は経ち時間は夜の9時を周ろうとしていた。サラとアリシアは疲れのためかベッドに入るなりすぐに寝息を立ててしまった。ちょうど食堂が終わった頃、コウキは起こさないようにそっと部屋から出た。


 食堂に着くと2人は片づけを行っていた。


「よっ」

「どうしたの? 今日はもう終わりよ」

「2人に要があって来ました」


 アズとリズは一瞬目を見開いたがすぐに元に戻った。


「まあいいわ。その辺に適当に座ってて」

「いや、俺も手伝うその方が早く終わるだろ」

「ダメですよ。お客さんなんですから」

「いいって、どうせ待つ間暇だし」


 コウキは半ば強引に片づけの手伝いをした。コウキが手伝ったおかげで掃除は20分ほどで片付いた。


「ありがと。おかげで今日は早く寝れそうだわ」

「ありがとうございました。で、要件とは?」

「ああ、これの事さ」


 マントの中から容器を取り出した。


「これはなに?」

「まあ見てなって」


 そう言って容器の蓋をあけると湯気が立ち込めた。中からとてもイイ匂いがする。


「なにこれ、すごく美味しそう」

「俺が作ったんだ。食べてよ」

「イイんですか?」

「勿論だ」


 2人はフォークを取り出しそれぞれ料理を口に運んだ。その途端に2人の目はカッと見開いた。


「す、すごい美味しい。ね、お姉ちゃん」

「ホント、アンタにこんな才能があったなんて....でもどうして急に?」

「〝新作料理に困ってる〟って言ってたから参考になればいいなって思って」

「そんなわざわざ......」

「いいのいいの。で、どう?」

「ええ。これを参考にすれば何かいいのできるかも。ありがと、美味しかった。」

「そりゃどうも」

 

 するとコウキはしゃがみ目線が2人と同じくらいになった。


「今度こそ、頼んだぜ」


 2人の頭に手を置き軽く撫でた。そして立ち上がった。


「んじゃ寝る。お休み」

「おやすみ......」

「.......なさい」


 シズとリズは頬を赤く染めながらコウキを見送ったのであった。


 後日、新作料理は完成し、その評判はとても良い物だった。その料理を見てサラとアリシアは驚いている横でコウキは密かにガッツポーズをとっていた。


もともとコウキは1人暮らしだったため家事能力が高いです。

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