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二十五話 決戦

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 翌日午前10時25分、コウキは決戦の場となる闘技場へと案内されていた。案内されてから数分後、扉の前に立たされると案内人の男性は扉を開けコウキはそのまま中へと入って行った。中に入るとそこはまるで中世のコロシアムの様な空間だった。周りには何十人かの貴族が観客席に座っている。その中にアリシアとサラもいる。


 驚いた。城内にこんな空間があったのか....いや、違うな。これは空間魔法か。


 コウキの考え通りここは空間魔法で作りだした騎士たちの模擬戦用の特殊空間である。真っ直ぐ進むと戦闘場内に入った。すでにマリウスはそこにいた。白銀の甲冑を身に纏い、地には大剣が突き刺さした状態で待っていた。


「やあ遅いじゃないか」

「あなたが早いだけです」

「確かに、そうかもね」


 マリウスは既に勝ったかのような表情でコウキを見る。コウキは眼鏡の奥の瞳を細める。


「それではこれより、マリウス王子とハンターサトウの決闘を始める。ルールはどちらかが降参するか戦闘不能になった時点で勝利とする」


 騎士の格好をした男性は言った。


 コウキはマントからロッドを出す。マリウスも突き刺した大剣抜き構える。


「...準備はよろしな。それでは、始め!!!」


 周りが見守る中、決闘は始まった。その瞬間、一瞬だけコウキの足元に魔法陣が現れたと思うとすぐに消えてしまった。


「それじゃあ早速終わらせるとするよ!!」

「!!!!」


 刹那マリウスは大剣を持ったとは思えない速さでコウキのいる方まで移動した。目の前まで迫った時、その両手で思い切り振り下ろす。確実にマリウスの方が早い。『決まった』誰もが思ったとき――――≪ガギンッ≫ 刃は魔法障壁によって防がれた。


「ははっ、なかなかやるようだね!」

「あなたも良いとこツイてくる」


 コウキは当たる寸前で、魔法障壁で攻撃を防いだ。


 コイツ魔法使いの事良く分かってるな。


 魔法使いにとって最も苦手とするのが至近距離である。魔法使いの攻撃手段は遠距離が主流である。しかし、それは一定の離れた距離相手にのみ有効である。だが、相手が高速で且つ懐にまで迫られたとき対処のしようがない。つまり、至近距離から攻められると技を繰り出すことが難しいのである。いくら無詠唱のコウキでも魔法(わざ)を繰り出すのに極わずかなタイムラグを有する。マリウスは、高速で移動し近距離で攻撃することによって魔法使いであるコウキに攻撃魔法発動する隙を与えないつもりでいる。


「でも!!」

 今度は高速で右に移動し攻撃する。コウキは何とか防ぐ。


 速い、それに一撃が思重い。


 四方八方から連続する攻撃を防ぐ中、コウキは考えた。


 アイツはあそこまで俊敏に、それでもってこのパワー.....やっぱそうか。コレで正解だったぜ。


「そらそらどうした!! 防ぐだけで精一杯かい!!!」


 マリウスは一撃加えた後、急にコウキから距離を置いた。


「ハァ......つまんない。さっきから僕ばっか攻撃して、これじゃあ決闘の意味ないじゃないか」


 次の瞬間、マリウスは片刃の大剣の裏、つまり刃の無い方をコウキに向けたとき、何もないところから幾つもの小さな刃が飛び出した。それはまるで巨大なノコギリの様である。


「!!!!」

「ハハッ驚いただろ? 僕だけの特別な武器〝タクティカルブレード〟って言うんだ」


 そしてこの時コウキはマリウスの手と足を見て、速さと強さの秘密を暴いたのであった。


 コイツ、アレを付けていたのか。思った通りだ。


 コウキの言う『アレ』とはマリウスが付けているグローブと靴にある。本来ならば大剣を持った状態で高速移動攻撃は普通の人間であれば不可能な動きである。しかし、マリウスはそれをやってのけている理由はそれにある。


 『パワーハンド』と『ソニックシューズ』この2つをマリウスは身に着けている。前者は身に付ければどんなに重い物も簡単に持ち上げることができる。後者は脚力を最大限まで高め高速で移動可能になる。コウキのマントと同じ魔法アイテムである。しかし、この2つには欠点があり、いずれも常時魔力を消費し続けるため実戦投入されることは無く、主に作業用として採用されている物である。


 てことは当然、魔力は消費するからおそらく蓄積石でも身に着けてるに違いないな。ったくなんでもかんでも物頼りかよ。他力本願もいいとこだ!!


「さ~て。さっさと終わられるよ!!」


 再びマリウスは動き出した。今度はジグザグに移動しながらその距離を狭めて行く。今度はコウキも〈業火(イグニス)〉で迎撃するがやはり当たることは無かった。


 ギザギザの刃が襲いかかるがそれも魔法障壁で防ぐ。しかしこれで分かったのはマリウスの目的は予想通りの事だった。




 アリシアは不安そうにコウキの姿を見つめていた。


「コウキさん、大丈夫でしょうか....」

「大丈夫だ。心配ない」

「で、でも、全く攻撃が当たらないんじゃ......」

「アリシア、お前は不思議に思わないのか?」

「何がですか?」


 サラには理解で来ていたがアリシアにはサラの言っていることが解らなかった。


「相手があんなに高速で、多方から攻撃をしているのになぜコウキ様は〝全て〟防ぐことが出来ているんだ?」

「あっ!」


 言われてようやく気付いた。確かにサラの言う通り先ほどからコウキはまるで見えているかのようにマリウスの攻撃を防いでいる。この時周りもようやく気付き始めていた。しかし、最も理解しているのはマリウス以外他ならなかった。


 マリウスは焦っていた。何故攻撃が当たらないのか。今まで挑んだ者は全てこの刃で仕留めて来たのに、この男だけは全くと言っていいほど歯が立たない。何時しかマリウスは婚約よりもコウキを『殺す』ことに意識が向き始めていた。


「とっとと死ね!! 生意気なんだよ!!!!」


 今度は大剣が2つに割れた。右手には通常の剣を、左手にはギザギザのソードブレイカーを握っている。そしてマリウスは跳躍した。


「眷属魔法――――〈バーニングブレード〉!!」


 すると2つの剣の先に魔法陣が現れ剣先から降下してゆくと同時に剣が燃え始めた。


「タァアアア―――――!!!!」


 回転しながら斬撃するが一撃目は防がれてしまった。マリウスは身体を無理やり捻らせながら左手のソードブレイカ―で斬りかかった瞬間――――


「はい、どうぞ......」


 目の前には赤い魔法陣があった。


「え?」

 

 刹那マリウスの断末魔と共に身体は爆発し吹き飛ばされた。吹き飛ばされた衝撃で地面に跳ね飛ばされ身体は二転三転と転がる。


 周りも一瞬何が起こったのか分からなかった。


 コウキは指で眼鏡の位置を直した。


「どう? 俺の〈業火拡散(イグニスバレット)〉。〝加減した〟割にはなかなかクルだろ?」


 コウキはマリウスの一瞬の隙を突いたのだ。位と度に複数の〈業火(イグニス)〉を受けたマリウスの身体は致死量に至らなかったものの、そのダメージは相当な物だった。爆発で外装は砕け、衝撃で左鎖骨の損傷及び右肋骨骨折、複数の内臓も損傷していた。また、顔面の一部に火傷を負っていた。


「な、なんで.....僕の.....」


 うつ伏せになりながら何とか言葉を発する。


「ん? ああ、それね。俺の索敵魔法だ。」


 コウキは索敵魔法〈完全探知(ディティールポイント)〉を発動していたのだ。この魔法は任意の範囲を対象に周辺の物体の位置を正確に把握することができる魔法である。しかし、この魔法は発動時一切移動することができないため普段はあまり使わない魔法である。


「簡単に言うとお前が何処にいようと全てお見通しの魔法さ」


 そう言ってコウキはマリウスの方へと歩きだす。


「ほら何してる。さっさと立て。お前が〝つまらない〟と言ったから攻撃してやったのに」

「く、クソぅ......」

「自慢の武器はどうした。」


 コウキは足元で地面に這いつくばるマリウスを見下ろす。マリウスは目でコウキを睨みつけるがコウキは(あわ)れんだ目で見返す。


「やっぱりそうだよな。所詮はアイテム頼り、お前の力じゃないもんな。そりゃ何もできないわな」

「う、うるさい.....平民風情が....」

 

 マリウスの言葉を無視しコウキは言葉を繋げる。


「お前、今まで散々好き勝手にして来たようだが、それは全てお前の力じゃないだろ。自分の立場や権力を振りかざし、さも自分だけの力であるかのように......だがそれは違う。そんなの力でもなんでもない。周りの力が働いた結果であってお前の力じゃない。今回だって結局自分だけじゃどうにもならないから親父さんの力でこうなった。決闘もそうだ。確かにお前の装備は目を引くものはある。だけどそれは全部他人が用意した物だろ?」


 マリウスは歯を食いしばる。


「所詮お前は周りから与えてもらったモノを自分自身の力と勘違いしているだけだ。だから満たされないんだよ。理解(わか)るか?」


「う、う、うるさい!! 何が〝他人〟だ!! 僕がどうしようと僕の勝手じゃないか、お前に何が解る!! お前ごときが僕に説教するな!!!! 僕は認めない、こんなこと!!!!!」


 マリウスは無理やり身体を持ち上げる。


「誰か!! 速く回復を!! 武器を!! 何をしてる早くするんだ!! 僕が負けてしまうじゃないか!!!!」


 痛みに耐えながらマリウスは周りにいる兵に訴えるが誰も反応を示さない。

「何を言ってんだお前、これは決闘だ、助けが入る分けないだろうが。」

「うるさい!! 僕は僕の好きなようにするだけだ!! お金も女も地位も名誉も!! だからお前は死ね!!!」


 マリウスは空いた右手で腰の短剣を引き抜き渾身の力でコウキに刺し掛かる。幾らコウキでもこの距離なら確実に避けることはできない。そう誰もが思った刹那―――


「!!!!」


 短剣は魔法障壁で防がれてしまった。


「オラァア!!!!」

「ブシュッ―――――!!!!!」


 コウキはロッドでマリウスの顔を殴った。ロッドの右フック下顎に綺麗に入り、顔の形が変形したように見えた。そのまま倒れた。


「これを機にもう一度考え直すんだな。あと、サラは俺のモンだ。この先もずっと.....誰かに渡すつもりははなからねえ。覚えておけ。」


 ピクピクと痙攣しているマリウスに言うとコウキは言葉を繋げて言った。


「おい審判、終ったぞ?」


 ポカーンと眺めている審判は弾かれたように決闘の終了を言った。




 その後マリウスはタンカーに運ばれていた。そしてコウキはガイウスに呼び出された。


「なんでしょうか」

「その、ありがとう」

「なにがですか?」

「いや、マリウスについてだ。今まで誰も手を付けていなかったせいであんなんなってしまって。サトウ君が代わりに説教してくれたおかげで、マリウスもきっと変わるだろう」

「いや別に。大体王様、あなた方がしっかりとしなかったからアンなのになったんですから。子供が可愛いからと言って甘やかしの放任はいけません。」

「.....そうだな、キミの言う通りだ......今回の件、本当にすまなかった。」

「まあわかりゃいいんスよ。じゃ、僕はこれにて失礼します」

「うむ、それではな。ありがとう......」


 この時、ガイウスは王でなくただ一人の父親の顔をしていた。




「大丈夫でしたか?」


 部屋を出るなりサラが心配そうな顔で迫ってきた。


「ああ、問題ない。それよりも疲れたよ。」

「ですね。でもコウキさん、すごいです。一撃で倒すなんて。」

「そうだ、コウキ様はお強いのだ」


 サラは胸を張って言った。


「話はあとでゆっくりとしよう。まずは早いとこ(ここ)からでるか。


 コウキはその辺にいた使用人を捕まえて城の外まで案内してもらった。



 時間は経ち3人は宿でゆっくりしていた。あの騒動から数時間が経過した。


 あ~疲れた。ここ数日は本当に忙しかった。ゴーレムの相手をし、馬鹿王子の相手をし、ホントマジで疲れがヤバい。多分明日明後日には噂が立つだろうな~『王子が決闘でフルボッコ』みたいな? 身バレしてるから色々面倒なもとに巻き込まれなきゃいいけど。


 珍しくコウキがロングソファーでぼんやりと思っていると、隣にサラが座ってきた。


「隣、良いでしょうか」

「どうぞ」

「......その、ありがとうございました」

「どしたの急に?!」

「この度の件、コウキ様に多大なご迷惑が掛かってしまって....」

「だから、あれはあの王子(バカ)が1人で騒ぎ立てたのが原因であってサラは何も悪くないよ」

「......はい。あと、その、あの言葉、本当ですか?」

「なにが?」

「『サラは俺のモン』っておっしゃりましたよね」


 その瞬間コウキの顔は赤くなり、変な汗が噴き出た。


「え!? あれ聞こえてたの!!」

「はい。かなり大きな声でしたよ」

「あ、あ、あ、あ......ま、マジか!! うわぁ恥ずかし~」

「そんなことありません。どうなんのですか?」


 サラは眉を八の字にして見つめてくる。


「......本当だ。あ、当たり前じゃないか。あの時からキミは俺の大事な、存在なんだからな。」

「コウキ様.......」


 サラはコウキの手を取ると自身の胸の上に手を持っていき、自分の手を重ねる。


「ありがとうございます」


 彼女はやさしく微笑む。その顔は今まで見てきた中で一際暖かく、柔らかで、喜びに満ちていた。


「.....お、おう。そ、それとだ、アリシア」

「ひゃいっ!?!?」


 突然呼ばれたアリシアは変な返事をしてしまった。


「こっちへ」


 『聞いてなかったといは言わせないぞ』と言わんばかりの意味を含んだ目でアリシアを見る。隣に座ったアリシアは突然コウキに引き寄せられた。


「アリシア、キミも俺にとって大切な存在だ。だから、俺がいるから何も心配はない」

「あ、は、はい」


 この時ヒトのぬくもりを久しぶりに感じることができた。それと同時に祖母との記憶が蘇った。一瞬、アリシアの瞳が潤んだことは、2人は知らない。


 俺にとって掛け替えのない仲間だ。だから俺は全力で守る。たとえ世界を敵に回そうとも、人の道を外そうとも.......ね。


コウキが〈妖精(フェアリーカーテン)の衣〉を使わなかった理由は、発動してしまうと武器と共にマリウスも殺してしまう恐れがあったため、魔法障壁で応戦することにしました。

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