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二十四話 前日

 1時間後3人はフォッシル城内にいた。


 吹き抜けた天井にステンドグラス、赤い絨毯が一直線に敷かれ、左右線に沿って並ぶ衛兵たち。後ろには城内に住む貴族たち。そして、その先の玉座に座っているのが現国王ガイウス・アース・フォッシル。52歳にも関わらず大柄な体格で髪は白髪の無い綺麗な金髪、口と顎には立派な髭が蓄えられている。見るからに国の王と言うべきオーラを放っている。

 

 そんな中にコウキとサラとアリシアの3人は跪き頭を垂れている。今のところ予定通りに王からの感謝の意を受けている。


「――――この度は実にご苦労だった。サトウ君、レインアント君、アルバーニ君。本当に我が国のために戦ってくれてありがとう」

「いえ、僕達はハンターとしての役目を果たしただけです」

「そう謙遜するな。表を上げよ」


 3人は顔を上げる。


「これより褒美を与えたいと思うのだが、何か要望はあるか?」


 褒美を与えると言っても今の所特に欲しい物とか無いんだよな。強いて言うならそこにいるアンタの息子の結婚話を取り消ししてほしいな。


 後ろにいる2人も同じ気持ちだった。


「いえ、我々にはそのような物は必要ありません。こうして王様にお褒めのお言葉を受ける事自体が大変名誉なことであり、褒美以上でございます。ですから褒美は必要ありません」

「ん? そうか。ならば―――――」

「もう、父上。彼らはいいと言っているじゃないか。それよりも僕とサラフォンティールの結婚について今ここで話を付けようじゃないか」


 突然マリウスの声が遮る様に響き渡った。マリウスの態度に誰も注意する者はいない。それどころか周りの騎士や貴族たちはさも当然の空気を出している。これがこの王宮にとって普通の事なのか、割り切っているのか。それとも相手が自分よりも下の存在だからなのか、コウキ達には解らない。


「これこれ、マリウス、今話をしている最中だ」

「だって話長いんだもん」


 そう言ってマリウスは王を遮りコウキ達の前へ出る。


 コウキは思った。幾ら第2位の国を治めるほどの素晴らしい王であっても、子育て―――教育に関しては一切向いていないのだと。王に限った事ではないにしろ、周りの環境がそうさせているのかと思うとコウキはある種の嫌悪感を抱いた。


コウキはマリウスをただジッと見つめている。マリウスはコウキの事など気にも留めずにサラの方を見つめている。


「僕はね、キミの様な強くて美しい女性が好みなんだ。そして僕は今度こそ見つけてしまった。サラフォンティール、キミと言う気高く美しく力を持った女性を.....これは運命に違いない。僕らは―――――」


 クサくダサい台詞をつらつらと並べていく姿をコウキ達は蔑視の目で見つめているがマリウスは気にも留めずに並べて行く。


「―――――それにね、キミはそんなところに居るよりも僕と一緒にいる方が断然幸せに決まっている」

「ちょっといいでしょうか」


 コウキは立ち上がりマリウスに向けて言った。


「先ほどからあなたの意見しか述べていないようですが、彼女の意見を聞いていません。ここは彼女の意志を確認するべきではないでしょうか」


 サラの方を向く。


「......そうだね。一応聞いておくとしようか」

「私はこのままコウキ様と旅を続けるつもりでいます」

「だそうですよ。どうなさいますか?」

「え~なんでさ。僕がこんなにキミの事を愛しているのに。父上だって、皆だって認めているんだよ!? 嫌だね僕は認めない。だいたいこんな薄汚い黒ずくめの男と一緒に旅を続けて何がいいと言うのさ?」


 その瞬間、サラから殺気が漏れたがコウキは目でサラに抑えるよう注意する。


「お言葉ですが、彼女の意見を尊重するべきではないでしょうか。王子様、あなたはしたいかもしれませんが彼女はする意志は持っていません。したがってこの求婚は意味をなさないかと」


 コウキは表情一つ崩さず言葉を繋げていった。


「うるさいな~僕がしたんだからそれでいいじゃないか」


 マリウスは露骨に嫌な表情をしてコウキを見る。


 すると王が口を開いて言った。


「サトウ君。キミたちの意見も確かに解るが、私も父親として子供の幸せを一番に思っている。そこで提案なのだが、この際決闘で決めたらどうかな? キミとマリウスで戦い勝った方が自由にできる。どうだい? 男なら大切な人を懸けて戦ってみてはどうだろうか」

「もちろん僕は賛成だね。キミはどうなんだい?」


 一体どういった思考を持ち合わせているんだよ。『提案』ふざけるな。なにが『幸せ』だ、何が『決闘だ』。話し合いと言う方法は使わないのかよ脳筋が!! 大体、少数の意見が通らないなんて結局権力でものを言わせようとしているようにしか思えない.......民主主義もクソも関係ないのは事実なんだよなぁ。強者に対し弱者がそれに従う。やっぱり俺はまだ日本人としての気質があるのか。割り切ったつもりだったけど.....無駄に抗っていても仕方がないか.......


「.......解りました」

「うむ。それでは明日闘技場で行うとする。本日はこれで終わりとする。キミたちには一晩ここに泊まってもらうが、よろしいかな?」

「はい。問題ございません」


 コウキはマリウスを見つめる。マリウスは余裕から来るのか不敵な笑みを浮かべていた。




 3人はその後、使用人に案内されそれぞれ部屋に案内された。コウキとアリシアは一般のゲストルームへ、サラだけは特別豪華な部屋を案内されたいわゆるVIPルームと言うやつである。


 移動中コウキは使用人と話をしていた。相手は中年の女性でここでは10年以上も使用人として働いているらしかった。


「――――それでね、ここでの話なんだけど、あのマリウス王子。本当にわがままで皆困っているのよ」

「そうなんですか。それは大変ですね」

「そうなのよ、もう何度目かわからないけど。あなたも、あなたの仲間も大変ね」

「ええ、まあ」

「――――はい、付きました。ごゆっくりどうぞ」

「ありがとうございます」


 部屋に入るなりコウキは備品の全てを確認した。罠でも仕掛けていると踏んだからだ。しかし、怪しい物は何一つ見つからなかった。そしてひと段落するとコウキは椅子にふんぞり返った


「なんでこうなったんだよ.....意味が解んねえ....」


 コウキは天井に向けて呟いた。そのとき、さっきの会話を思い出した。


 どうやらあのマリウス王子は末っ子で一番甘やかされて育ってきたらしい。そのせいであんな性格になってしまい、前までは皆注意していたのだが今では諦めがつき半ば放置気味であると言う。おまけに女性関係も自由奔放で気に入っては換え気に入っては換えの繰り返しだそうだ。その度に立場と権力を行使していると言う。


 だからあの時『今度こそ』っていていたのか。全く王様も王様で諦めんなよ。国事で忙しいにしろ。子供が可愛いのは解るけども、放置はダメだ。だから自由奔放唯我独尊状態が続くんだよなあ。ったく女はおもちゃじゃないんだから......でも、ちょうどいい機会だ。


 と、不気味な笑みを浮かべているときだった。突然部屋がノックされた。コウキは「どうぞ」と言って部屋に入らせた。


「コウキさん」


 ドアの向こうから出てきたのはアリシアだった。


「アリシアか、イイよ入ってきて」

「失礼します」


 アリシアは隣に席に座った。


「その、大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない。アリシアこそ平気かい? 何か不快な事とか無かったかい?」

「ワタシは特に。でも、サラさんが.......」

「だな。あの王子、どうやら今までにも同じ事があったようなんだよ」

「ええ!? そんなんですか!?」

「さっき使用人のおばさんがぺちゃくちゃ俺に話してくれた」

「そんな、それじゃ今まで......」

「いろんな女の人がアイツに弄ばれてきたんだ」

「ひどい。」


 アリシアは怒りに近い目でそうつぶやいた。


「まあ、安心しな。俺が勝てばいいんだ」


 そしてその身で己の馬鹿(おろか)さを理解すればいい。


「頑張ってください。負けないで」

「ありがと」


 コウキはアリシアの頭を撫でる。アリシアは少し頬を桜色に染め瞳を細める。


「あ、あのこのあとの晩餐会は出席しますか?」

「え、そんなのあったっけ?」

「さっき言ってましたよ。時間になれば迎えに来るそうです」

「そうか。じゃあそれまで暇でも潰すかな」




 その後コウキとアリシアは気を紛らわすかのように談笑し、時間が来たと言ってアリシアは部屋を出た。コウキはクローゼットの中にあったタキシードの様な服を取り出し着替えることにした。


 先ほどの使用人に案内されたコウキは晩餐会の会場にいた。辺りは美しく彩られた花や絵画、女性たちと男性。貴族たちが談笑している中、コウキは1人壁にもたれながらその光景を眺めていた。


 やはりこういう場に俺は場違いなような気がする。俺みたいな者がこういう華やかな場所にいること自体身に合わない。それに明日決闘だといのになぜ貴族(かれ)らはなぜこうも楽しそうなんだ。おたくの大事な王子がもしかしたら死ぬかもしれないのに.....決闘とかは貴族(かれ)らにとっては一つの余興に過ぎないのかもな。


 1人渋い顔でコウキはジュースの入ったグラスを口にする。中の氷が≪カラン≫と音を立てて崩れたとき、誰かが呼ぶ声が聞こえた。声がする方を見るとそこには、淡い水色のドレスを纏ったアリシアの姿があった。


「ここに居たんですね。探しました」

「お、おう。そうか......」


 可愛らしさから一転大人びた綺麗な女性へと変わりえた姿にコウキは一瞬目を奪われてしまった。


「ど、どうですか?」


 ど、『どうですか?』って.....そりゃあもちろん....


「似合ってるよ。とっても」

「本当ですか!? よかたぁ、ワタシこういうの初めてで....」


 テレるアリシアに微笑みかけ、再びグラスに口を付ける。


 しばらくすると辺りが急に騒がしくなった。そして貴族たちは道を開けるように左右に開けて行く。


「なんだ?」


 2人で眺めているとその正体が解った。


「遅れてしまい申し訳ありません」


 そこには赤いドレスに身を包んだサラの姿があった。強調された胸元、くびれた腰のライン......どれをとっても一線を画していた。思わず手からグラスを落としそうになる。 


 隣にいるアリシアは「キレイ」と呟いた。


「いや、待ってないよ」

「サラさん綺麗です!」

「ありがとう。アリシア、お前も綺麗だぞ」


 アリシアは「えへへ」と頬を赤く染めほほ笑む。


 人々の視線を集める中3人はいつも通りの会話をする。そんな時アイツは来た。


「やあやあキミたち」


 マリウスが来た。白地に金の刺繍の入った正装で3人に向かってくる。コウキはそのまま無視しているときだった。流れでマリウスはサラの肩に手を掛けようとした時―――


「まだあなたのものじゃない。気易く触ってもらっては困ります」


 一瞬マリウスは驚いた表情を浮かべたがすぐにいつも道理の勝ち誇ったような表情に戻った。マリウスは「それは失敬」と言って手を退けた。


「なんの用です? 僕らは今話の途中なのですが」

「いやなに、ちょっと軽い挨拶程度さ。それでは僕はこれで失礼するよ。明日、楽しみにしているよ」


 そう言ってマリウスは他の女性の貴族たちの中へと消えて行った。


「なんだアイツ。気持ち悪い」

「すみません。私のせいで........」

「気にする必要はないよ。全部アイツのわがままのせいだ」


 一発お灸をすえてやる必要があるようだな。


 コウキは空になったグラスに口を付けたのだった。


 その後、晩餐会は終わりその日は終わりを告げた。


年内最後の投稿となります。これまで付き合ってくださった皆様、実にありがとうございます。来年も皆様に楽しんでいただけるように努めていきたいと思います。あと、一言でもいいので感想書いてくれたらうれしいです。それでは皆さん良いお年を!!

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