二十三話 一難去ってまた一難
住民の避難が完了し、招集を受けたハンターたちは一度城の中庭で待機していた。集まったハンターの数はおよそ400人近くまで集まっている。実際はもっと多い筈なのだが考えられる理由として、命惜しさに他に混じって避難したと思われる。こういう時にこそその人の本性が垣間見える、とコウキは思った。
ほどなくして1人の騎士が壇上に上がり現状とその対応について話した。
その時の内容を説明するとこうだ。現在3体の大型ゴーレムが確認できている。いずれも西の方角から迫ってきており、騎士団はその対応にあたっている。報告によると3体の内鉱物ベースが2体と岩石が1体。3体とも真っ直ぐ城に向かってきている。幸いにも現在の所被害は最小限に抑えられているがそれも時間の問題だそうだ。そこでハンターたちは騎士団の指示のもと加勢し、3体のゴーレムを迎撃するとのことだった。
コイツは面倒なことになったな。大型のゴーレムと来たか。と言うことは約15メートル級だ。おまけに鉱物が2体、一番面倒だ。
コウキは苦い顔をしながら話を聞いている。その横でアリシアは脅えた表情でコウキの袖を掴んでいる。
「大丈夫。皆付いているから」
「は、はい」
アリシアにとってゴーレムとは話だけでしか聞いたことが無かったため、未知なる恐怖との戦いだった。
「安心しろ。何かあれば我がお前を守る」
サラはハルバートを強く握る。
その後、陣形の確認を済ませたハンターたちは迎撃する準備に取り掛かった。城から見て西側に集中した。その間も振動は激しさを増す。これでいかにゴーレムが強大な存在か思い知らされる思いだった。
騎士の説明した陣形は、後衛に魔法使い、中衛に弓使い、前衛に剣士。と言う風に城に近づくにつれ防御を上げて行く戦法だった。前衛にいるハンターたちの耳には遠くから聞こえて来る騎士たちの悲鳴や叫び声が鮮明になってくる。何人かの剣士たちは震えている者や今にも泣きだしそうな者までいる。
日は沈み、辺りは暗くなるため現在は巨大な発光水晶で視界を確保している。しかし、それでも暗闇は払えても恐怖はさらうことはできない。その時――――
「来たぞ――――――!!!!!!!!!!!」
叫び声と共に赤い3つの光が現れた。
「前衛突撃!!!!!!」
ハンターたちは恐怖を掻き消すが如く雄叫びを挙げながら3体のゴーレム目がけて武器を振るう。剣士たちは足元を重点的に攻めた。これも作戦の1つである。まず、前衛の剣士たちが足元を攻撃し、動きを鈍らせる。次に一度前衛を後退させ中衛の弓使いたちが上半身を攻撃し相手の攻撃を封じる。その隙に後衛の魔法使いたちが急所の頭部を攻撃する。
そして再び剣士たちが攻撃をする。何故この様なローテーションを組むのか、それはゴーレムの特性にある。ゴーレムには全体を形成するために必要な核と呼ばれるいわば心臓とも言うべきものがある。仮に腕を破壊したとしても核が無事であれば即時再生される。
騎士団が今回採用した戦法はそこを突いている。再生されると言えど多少の時間を有する。その間ゴーレムの動きはわずかにだが止まるため、初めに足元を攻撃しある程度まで破壊した後すぐに上半身に切り替える。そうすることによって再生している間再び攻撃を受け再生する。を繰り返すため、ゴーレムには動く隙を与えないため、その隙に陣形の取り直しができ、効率よく撃破できる。と予想していた筈だったがそれはすぐに打ち破られた。
ゴーレムは大木の様なその腕で足元にいる剣士たちを一撃で薙ぎ払った。払われた剣士たちは宙を舞い、そのまま吹き飛ばされる者から地面に真っ逆さまに落下していく者までいた。一瞬で辺りには死体の山が出来てしまった。その光景を見た他のハンターたちはわれ先へと武器を捨て、逃げ出してしまった。その刹那―――――
オォオオオオオオオオオン!!!
と地響きのような唸り声を発したゴーレムは拳を地面に突き立てる。途端に地面は陥没し、追い打ちをかけるように近くのハンターたちを呑みこんでゆく。
サラは跳躍し、その攻撃を避けたが、刹那もう一体が腕を振り払って来た。サラは瞬時に膝を曲げ、ギリギリのところでそれを避ける。
残された騎士団とハンターたちは呆然と、地獄絵図と化したその光景を眺めている。ゴーレムたちは屍を踏み付けるように再び動き出した。
コウキはアリシアとサラを呼び2人に言った。
「まずいことになった。もう作戦云々の問題じゃない」
「ではどうすれば?」
「もうあの人たちには戦う気力は無い。だから俺らで相手をする」
「そ、そんな、ワタシたちにできるんですか!?」
「ああ。何とかなるさ」
コウキは2人に作戦を伝えた。
「いいね」
「御意」
「りょ、了解です」
3人はゴーレムへと向かった。
コウキ達の最初の標的は岩石ベースのゴーレムだった。コウキは〈風乗り(エアライド)〉で飛翔しゴーレムの前に飛び出した。瞬時に魔法陣を展開し、〈電爆〉を10発ほど投げ込んだむと、電気含んだ泡たちは一斉に弾け中から電気が飛び出す。すると強力な電磁フィールドを形成し、中にいるゴーレムの表面はみるみるうちにヒビが入り砕け始める。同時に周りにあった発光水晶をまでも破壊してしまったが構っている暇は無かった。
ゴーレムは全身の岩石が砕け散ってしまったため、アメフト選手の様な外観は、今ではガリガリの男性の様な姿に変わってしまった。サラはゴーレムに瞬時に上り、弱点である頭部の核に向かってハルバートを真横に振る。すると刃は簡単に通り、バスケットボール代の大きさの核を破壊した。核は比較的脆く壊すのは容易にできるが、それに行き着くまでが困難を強いられる。
1体目を破壊したコウキ達の次の目標は鉱物ベースの内、無機質な色をしたゴーレムだった。見た目から瞬時に鉄であると判断したコウキは、3つの魔法陣を展開すると火炎放射の様に炎を噴き出す〈火炎猛攻〉を繰り出した。炎を受けるゴーレムの表面は熱を帯びまっ赤に染まって行く。全身がほぼ赤く染まった瞬間属性を切り替え〈絶対零度〉を出し、ゴーレムを瞬間冷凍した。全身が凍りついたゴーレムにサラはハルバートの先端を突き刺した瞬間、全身から砕け落ちる音と共に核が現れた。アリシアはソレを見逃すことなく矢を射る。射られた矢は真っ直ぐ核を貫き粉砕した。
「良くやった。次で最後だ!!」
残った最後の1体は、他のとは違い鈍色のカラダをしている。ゴーレムはコウキ達の方に向かって拳を振り下ろしてきた。コウキは瞬時に防御魔法の陣を出し、拳を防ぐ。コウキは地面に沈むことなく、平然と攻撃を受け止める。ゴーレムは何度も拳を振るうがびくともしない。
「おいおい、これ以上地面に穴開けてどうするんだよ」
次の瞬間、振り下ろしたゴーレムの左腕は切り落とされた。
「的はデカい方がやりやすい」
ロッドの先から巨大な剣が出現していた。眷属魔法〈山斬剣〉である。コウキはサラとの特訓の成果をここで試していたのだ。
すげえ、一撃で斬れた。さっすがサラ、恩に着るぜ。
コウキは瞬時に残った右腕も切り落とした。しかし、先ほど切った左腕が再生を始めていた。コウキは構うことなく足を切断した。四肢を失った胴体は落下したと同時に飛翔し、首元目がけて振り下ろした。残された首に剣を突き刺した。
これで3体のゴーレムは完全に沈黙した。周りは信じられないような光景に視線を奪われる。あれほど苦戦を強いられたゴーレムをいとも簡単に倒してしまった3人を見つめていた。まさに〝神業〟と言う言葉が合う光景だ太ことは間違いない。
コウキの作戦は完璧に終わった。コウキは下手に凝ったマネはせず、単純に弱そうなヤツから順に倒し行くだけのものだった。確かに騎士団が採用した作戦は良いものだ。しかし、一番シンプルな方法が最も相手にとって有効であることをこの時、周りにいたハンターや騎士たちは理解した。最後の方はコウキの独り舞台となってしまったが。
「ふう.......終わったか」
「はい。街に被害が無くてよかったです」
「ですが、沢山の人が.....」
サラはそこらじゅうに散らばっている死体を眺める。
「守ると言うことはそういうことだ。何かの犠牲に成り立ってこうして守られている。彼らは十分戦ったさ......」
コウキはわずかに照らされている英雄たちの屍に向けてそう言った。
その後、祭りは中止になった。結果生き残ったハンターは200人とちょっと、騎士たちは全体の2パーセントもの損害を受けた。王宮は今回の件に関して調査を行っていたがゴーレムが出現した理由は解明することはできなかった。それから1週間が経った頃、そのときはやって来た。
コウキ達は森や周辺家屋の修復作業の手伝いを終え宿に戻っている最中、突然1台の馬車が3人を通り越した時と思ったら急に止まりだした。3人は不思議に思っていると中から数人の男性が出てきた。その中央には金髪碧眼
の美男子がいた。すると彼はコウキ達に近づくと言った。
「探しました。キミたちが先のゴーレムの件で活躍した3人ですね?」
「あ、いや。活躍したかはわかりませんが、一体どういったご用件で?」
「いやいや失敬。僕の名は、マリウス・ニード・フォッシル。わが父、ガイウス・アース・フォッシルの命でキミたちを城に招待するためにここまで来たのだよ」
こいつは驚いた。王子だったのか!! でもなぜ俺達の事を知っているんだ? あの時あの場にいたのは騎士とハンターだけだ。仮に俺達の事を話したとしてもここまでピンポイントで特定をするのは難しいぞ?
「...それはそれは、随分とご足労を」
コウキが跪き、2人も跪こうとした時だった。
「いやいや、よしてくれたまえ。実を言うとだね、僕もあの場にいたのだよ。いやーキミたちの戦いぶりは実に素晴らしいものだったよ。あの後父上にそのことを話したら是非お礼を言いたいなんて言うからこの1週間血眼に待って探したよ。もう本当に大変だったんだ。初めは北の方から――――――」
は、話が長い上に早口で何言ってるのか全然わからない。
コウキ達は早く終わることを願いながら待っていると。
「―――――でね、僕は感じたんだ、いや、全身にこうビビッと来たんだよ」
王子マリウスは突然歩み始めた。そしてコウキをすり抜けると立ち止まった。
「僕はキミの虜になってしまった。単刀直入に言う、僕と結婚してほしい」
王子マリウスは跪くと彼女の手を取る。
「!!!!!!!!!」
彼女は目を大きく見開き動揺が隠せないでいた。
コウキは一瞬何が起こったのか理解できなかった。違う、理解の範疇を越えた出来事に脳が混乱していたのだ。
「さあ、話はあとだ。とりあえず城で」
「いやいや、王子様。さすがに――――」
「なんだね。王子の求婚の邪魔をすると言うのかい?」
「.............いえ...............」
なんだコイツ!? 俺の仲間を横取りするつもりなのか? 考えられない。どうかしてやがる!! ......でも、下手に手を出せばただじゃ済まないし。もう、どうすればいいんだよ!!!
「さ、行こうか。」
王子マリウスは半ば強引に手を引くと馬車の方へと向かって行く。
「あ、ちょ!!」
その後ろを追いかけるように残された2人も向かう。4人が乗り込むと護衛に当たっていた男性も乗り込んで馬車は出発した。
まさかの展開に一同困惑していた。しかし、一番この中で困惑していたのはサラフォンティール以外いなかった。




