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第四十話 『主人公が真面目になる話。』

途中で読み辛かったらごめんなさい。


取り残された利一は反省していた。


自分だって知られたくないことがあるように、リナティアにだって知られたくない事情はあるに決まっている。


利一の感覚では話すことから始まる信頼も、一般的には信頼したからこそ心のうちを話すのだから。


リナティアにとって利一はそこまで信頼できない存在であった。


リナティアはむずかしい立場に居る。


初めて利一がリナティアの必死な姿を見たあの日。

リナティアは失敗することを恐れていた。


いざ実際に関わってからも彼女がどこか距離をおくように振る舞っていたのは、親しい人なら誰でも気付くことだろう。


そして王族であるリナティアに引け目を感じている人々は、その振る舞いをこれ幸いと自分からも距離を置いて今日も過ごしている。


だがリナティアが距離を置くのは自分がいざ失敗したとき、見つからないようにしたいという逃げる気持ちからの行動だ。


そんなリナティアが簡単に人を信頼出来るわけがない。

最初こそ異世界から無理やり呼び出され、余りにも理不尽な運命に流される利一達を支えていた。


だがそれはただの同情である。

優しさからの行動ではあっても、そこには何か足りない。


信頼は得たかったのだろう。

しかし信頼し合う関係に発展させる気はあったのか分からないままだ。


利一は考える。

果たしてリナティアは未来を見て生きているのだろうか?


長い間、自分のことで精一杯だった利一はこの時久しぶりに人のことを気にかけた。


思えばリナティアは最初からずっとその時その時を必死で生きている。

その姿を利一は好きになったのだし、誇れる生き方だと感じた。


だけどそれだけでは駄目なのではないか?


利一は未来を見て生きることしかできない。

自分は元の世界に帰られるのか、また帰るべきなのか。

自分の敵は何なのかを考える時間よりも、次はいつくるのかを考える時間の方が長い。


今を必死に生きなければ未来は来ないのだけれど、利一はそうして未来を見て、予測して生きなければ、人は生きていけないような気がした。


見通しの悪い利一には今を見る勇気がなく。

未来を諦めたリナティアには未来を望む力がない。


利一はリナティアに拒絶されたばかりだが、まだ諦めてはいけないのだと心を奮い立たせる。


________________________________________



「鎧の形のした魔導兵器か。商業連合でそれほどの物が作られているという報告は他にない。」

「回収した契約書の通りならば事実であります。どこから仕入れたにせよ大型の魔導兵器を橋の向こうから検問を抜けて取り寄せることは不可能だと思われます。」

「しかしな。こちら側では未だに機械技術の輸入が遅れ、お前の証言にある大きさの魔導兵器を運べるような運搬手段はあるまい。ましてや誰にも気付かれないようになど。」


リボルブは国王に旅の報告をしていた。

国王は自分の能力を使い話の真偽を確かめるため、必ず調査に携わった人間と直接話すのだ。


だからこそ調査期限は余程のことが無ければ厳守しなければならない。


だから重大事実どころか最低限の情報さえ集まらないリボルブは焦っていたのである。


「お言葉ですが陛下、どうやら犯人は門番を懐柔していたようなのです。」

「ならば街そのものには出入り出来たのだな。だとしてもそれだけではどこで作られたのか断定できん。この契約書も魔法的効果のあるものではないからな。偽造を疑うとして……しばらく宰相と話をしてみよう。場合によってはもう一度現地へ行き再調査もあり得る、準備しておけ。」

「承知いたしました。」


リボルブはギリギリ首が繋がったと同時に昇進の話が流れたことを理解した。


報告を終えるとリボルブは兵舎の自室へ真っ直ぐむかう。


近衛騎士にあるまじきことであるが、滅多なことでは回ってこない昇進の機会を逃した今、リボルブは悔しさに泣きそうだった。


それだけの執着心があったのだ。


だというのに人生の重要な局面で解決不可能だと言い切れる事件を担当するはめになるとは、リボルブは運がなかった。


リボルブが再調査している間に副団長が異動してしまえば、もうずっと昇進はない。


本人は知らないが、滅びを待つだけのこの国から逃げ出すこともできず、生きている間に報われる可能性も消えたリボルブは最悪の不幸の始まり、人生の分岐点に立っていた。


とりあえず寝よう。

明日は戦闘で溶けた剣を直さないとな。


予定だけを考えて眠れなくなる苛立ちについての思考を断ち切って無理やり眠るリボルブは、その日悪夢を見た。


________________________________________



黒い炎が辺り一面に広がっている。


頭を揺さぶるような頭痛が何度も襲い掛かり、その痛みに耐えるので精一杯で何も考えることは出来なかった。


ここはどこだっただろう。


確か、何かを見せたくてどこかに向かっていたんだったか。


何か大切なものだったような気がするけど、それでいて今はもう必要のないものになっているような気もする。


ここはどこなんだろう。


視界が真っ赤ではっきりと見えないけど、たぶん見たことのある場所だ。


ここはどこだ。


火が燃え広がっているなんて、大きな火事じゃないか。


痛みに耐えて閉じそうな目を開く。


街の中なのか。


見たことがあるはずなんだ。


ただ黒い炎で燃えているからいつもと違うだけで、いつも来ていた場所のような気がする。


ここはなんで消火されないんだ。


誰でもいいから火を消して。


いやでも、こんなにも大きな炎じゃもう消えないのかも。


そうだ、水魔法を使える人はとても少ないじゃないか。


消火もなにもないんだ。


燃え尽きるのを見届けるしかない。


でもここは結局どこなんだろう。


一瞬だけ誰かに呼ばれた気がして頭痛が少し良くなった。


もっと視界が広くなったとき、僕は勘違いをしていたことに気付いた。


注意深く見てみれば何も燃えてなんかない。


なんで僕は火事だなんて勘違いをしたんだろう。


ここは僕たちがいつも集まる秘密基地じゃないか。


今日はだれも居ないのかな。


……さっきまで誰かが居た気がする。


ああ、何か違和感があると思えばあれがないんだ。


昨日盗んできた物が全部無くなってる。


テーブルとかどうしたんだろう。


あれは売らずに使うって言ってたと思うんだけど。


駄目だ、また頭痛がひどくなってきた。


でも僕はまだなにか忘れている。


今日ここに来たのには理由があったんだ。


なんだっけ。


いやいや、さっきはもう少し具体的に覚えてた。


えっと、そう。何かを見せに来たんだ。


また誰かに名前を呼ばれた気がしたけど、今度はもっと炎が強くなった。


そういえばこの黒い炎はどこから出てるんだろう。


見た限り何も燃えてないんだけどな。


そんなことよりもここに来た理由が思い出せない方が辛い。


いつもは理由なく来てるんだ。


理由があったのならそれはとても大切なことなはずなんだ。


________________________________________



リボルブは急に吐き気を感じて起きた。

寝間着は汗でぬれ、全身が強張っているのを感じる。


起きてまで錯乱はしないが、呼吸を整える必要があるほどにうなされてた。


一度は克服した見てはいけないはずの夢を見てしまったリボルブは、外に出られる姿に着替える。


すぐにでも向かわないといけない場所ができたのだ。


刃先が溶けて固まった剣を携えて、普段使う剣が騎士団の借り物の剣ゆえに行くことのほぼない鍛冶屋へ向かう。


まだ日は出ない時間だがリボルブはそこの店主と古くからの付き合いで、その関係は親子のようとすら言える仲だった。


リボルブの秘密を知り、なおかつ支援できる唯一の存在がその鍛冶屋なのだ。


城門の勝手口を出て人のいない大通りを歩く。


灯りはどの家にも灯っておらず月明かりで照らされるだけの道は暗い。


だがリボルブは普段から慣れているだけでなく、自身の体質で完璧に見通すことができるから迷うようなことはない。


またたとえ夜襲に会おうとも撃退することはたやすい。


昔は路地裏にひっそりと店を構えていた鍛冶屋も、今では世界的に実力を認められ大通りに面した大きな店舗がある。


店主は研究のためそこに住み込んでいるので、リボルブにとっては都合が良かった。


店裏の扉の鍵を預かっているリボルブはその鍵で店に入った。


店主が寝ているのは二階だが、入った気配は伝わっている。


二階に上がるのを嫌う店主のためにもそのまま待った。


「こんな夜更けにどうした? リボルブ。」


店主は寝間着のまま下りてきた。


名前はジーグ。

鍛冶師になった際に家を捨てたらしく家名はない。


四十後半という年齢に見合わない筋肉量を持ったおっさんである。


世界的に有名な名匠で、彼が本気で鍛えた剣は大貴族の財産とも釣り合わないと言われている。


そんな人物ならば普段から風格の漂う人なのだろうと他人からは思われている。


だがもちろんどんな人間にだって気を抜くときはある。

リボルブを見る目はあまり真剣みの無いもので、その姿は体は大きくとも威圧感の欠片もない。


「『エーケ』の修理を頼む。また夢を見たんだ。」


ジーグの表情が険しくなる。


「あれは克服したんじゃなかったのか? 前に刃こぼれした時は見なかったと言っていたよな。」

「ああ、だが今回は少し相手が悪かった。相性の悪い魔法で溶かされた上に能力まで使ったんだ。」

「……能力は使うなと何度も注意したよな。」

「生き残るには必要だったんだ。」


口数は互いに少なかった。

この状態になったリボルブに余裕がないことをジーグが理解しているからである。


「急ぎで朝までに直す。その様子じゃ再封印も必要だな。」

「頼む。無理は出来るくらいの休暇は取れるはずだ。」


ジーグは作業場へといなくなった。


リボルブは固い木の椅子にもたれかかったまま、さっきよりも落ち着いた気分で眠りにつく。

あと最初の方スマホで書いたのでミスがあったらすいません。

夢を主観で書いてみました。

というよりはそれ以外で書くと詳しすぎる気がして、出来ませんでした。


怒ってたら許してほしい

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