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第十七話 『主人公が謝る話。』

『終わりはいつか来るだろう。主は終わらない約束などしないからな。』


白龍は利一の内心を知ってか知らずか、少しだけフォローした。


「帰る方法は世界を救う以外にないのか?」


考え事をしている時の利一に自分の言葉づかいを気にする余裕はない。


『ふむ。ただ帰るだけならば他の方法もあるな。神に直接帰してくれるよう頼んだなら、もしかすると世界移動を行ってくれるかもしれん。まあ主は頼みを聞かないだろうがな。』


「ならアンタから他の神様に頼んで貰えないか? すぐ帰せとは言わないが、帰れる保障はほしい。」


『それは出来ないな。私が交信できるのは主のみだ。』


この時の利一は元の世界へ帰りたいと思っていなかった。リナティアへの恩返しもまだしていないし、何より彼女を守りたいという願望が大きかった。


「なら神様にはどうしたら会えるんだ? それを教えてくれ。」


『気に入られた人間はその神に呼び出されて神器を授かる…というのはまだ知られていない話だったかな?  魔力の扱いが飛びぬけて上手い人間に限るが。』


(なるほど、俺には到底無理な話だったか。)


利一の魔力の扱いは並より上程度である。あまり才能があるとは言えない。


「質問責めして悪かったな。いろいろ分かって助かったよ。」


≪気にすることは無い。私にはお前の抱えている不安が見えているよ。≫


さっきまでとは違う、直接頭に響いてくる声。


利一は自分でも把握出来ていない内心を見抜かれたことに驚きを感じる。


≪大丈夫だ、他の者には聞こえぬようにしてある。お前が隠し通そうとしていることを暴くつもりも無いさ。≫


白龍が微かに悪い笑みを浮かべる。


(まさか、あれがばれているのか!? 不可避とか卑怯だぞ!)


利一の言う『あれ』とは、スカート捲りのことである。


≪その言葉づかい…私はお前がやったことをばらしてもいいんだぞ?≫




「本当に申し訳なかったと思っております。」




腰を九十度に曲げた完璧な謝罪だ。今度は声に出して謝っている。


≪ククク…。また会うこともあるだろう。その時まで生きていてくれよ。≫


これもまた利一にだけ言ったのだが、そこに深い意味があったのかは定かでない。



『さあ、私の話はこれで終わりだ。ここからはお前たちの思うように世界を救えばいい。』


________________________________________



聖地の結界の外へ出た利一たちは、リボルブの待つ馬車に辿り着く。


「ご無事でしたか。思っていたよりは短かったですね。」


「話を聞いてきただけだからな。」


情報交換を終えた利一たちは森の中馬車を走らせる。


「しかし、世界を救うって言っても何をすればいいんですかね?」


馬車の中でエイリが言う。


自分たちの思うように世界を救うというのが、一体何を意味するのか。それが分からなければどうしようもない。


それよりも利一にはそれよりも気になることがあるのだが。


「城に帰ってからすぐ度に出るのですか? そもそもまたこのメンバーで旅に出るのですか?」


旅に慣れていない利一と恵人にとっては長旅を続けるのは辛い。


それに今のメンバーだけで旅をしていくというのは、かなりの問題があるように思える。


(王女様に巫女さんが二人ってのは目立ちすぎるよな…)


利一が気にしていることはそのまま王国のメリットになるのだが、それを知らない利一は暗殺の危険性などを考え、あくまで真面目に考察していた。


「これからの旅については、もう一度お父様とお話したうえで考えることになります。神託についても話さなければなりませんからね。」


リナティアの中ではある程度予想はついているものの、それを話してしまっては余計な混乱が起こるかもしれないので話さない。


馬車はスピードをだして来た道を戻っている。


馬車を引いているのは二頭の馬。どちらも力強い走りをする名馬だ。


この旅でも、今のところ疲れている様子はない。


その二頭を操り、馬車を走らせているのは、馭者であるリボルブだ。


(今なにか見えたような…)


リボルブは進む先に一瞬違和感を感じ、馬車を急停止させる。


「おい、何か有ったのか?」


急停止した馬車の中から、利一が出てくる。


リボルブは馭者席から降りると、通るはずだった道を調べる。


道を横切る形で、糸のような何かが張ってあるようだ。


(…これは鉄線じゃないか!)


リボルブの判断が早かったのもあり、馬車は奇襲を避けることができる。


「罠です! 皆さん武器を構えてください!」


________________________________________



冒険者の暗殺を依頼された暗殺団は一本しかない道に細い鉄線を張り、馬車がかかった混乱に乗じて襲撃する予定だった。


(ちっ、手前で気づきやがった! 触れれば馬の首も馭者の首も吹っ飛ぶはずだったんだが)


ここにいる人間は全部で六人。暗殺団のメンバー全員だ。


余り馬車に近づくと気配を悟られるので、ある程度離れたところに待機している。


「お前ら! 全員で囲って皆殺しだ! 動きの速い奴は裏回って襲え!」


団長の命令で団員たちが馬車へと突撃する。


(俺も行くか…戦闘中に不意をついて一人ずつ殺していこう。)


常人ならば難しいであろうことでも、彼ならば可能である。


(今日の魔力量だと二倍が限界か…だが、やるしかないな。)


彼の使う無属性魔法『高速化』があれば、人が避けられない速度で攻撃が出来るのだから。

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