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第0話
楽しんでもらえたら非常に救われます。
夜の遅い時間。
大きな部屋に小さな少女が一人、佇んでいる。
月明かり差し込む窓はランプの光を受けて赤く照らされていた。
その姿は美しく芸術的で、それでいて寂しい光景だった。
少女の名前はリナティア。
別の世界のとある国にいる、王女様である。
机に向かう彼女はため息をついた。
広げられた研究の報告書や学問書は名のある研究者が書いたものだが、どれだけ読んでも何一つ役立つ情報がなかったのだ。
神託により告げられ、行われた儀式。
その儀式は「異世界から人を召喚する」というものだった。
残る機会は二回。
そのうちの一度は明日に迫っている。
「どうか……力なき私に神のご加護を」
解決策がない以上、儀式の成功を祈るくらいしかリナティアには出来なかった。
何の成果もないなら起きていても仕方がないと、彼女はランプの灯を消す。
王女として振る舞わなければならないリナティアの、眠る姿は不安に怯える少女そのものだった。
(この話は 2014/11/1 に追加しました)