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五分で読める AI短編小説集

お手伝いさんの秘密

作者: アイキカイ
掲載日:2026/02/21

 佐藤くんは、昨日からちょっと悩んでいた。

「これ、どう思う?」

 会社の同僚、田村さんに相談する。手に持っていたのは、部屋の掃除を頼むために頼んだお手伝いさんの名刺だった。

「またお手伝いさん?」

「うん、今日の午後から来るんだけどさ……」

「お手伝いさんを雇うのって、ちょっと気になるんだよね」

「どうして?」

「だってさ、うちのマンション、掃除するところなんてそんなにないしさ。大体、仕事終わったら帰って寝るだけだし。なのに、わざわざお手伝いさんに頼む意味が……」

 田村さんはにっこりと笑った。

「まあ、掃除でも料理でも、頼むと楽にはなるけどな。でも、ちょっと変な感じだな、確かに」

「でしょ?」

 佐藤くんは腕を組んで考え込む。

「うーん……でも一度頼んでみたら、意外と楽になるんじゃないかって思ってるんだ」

 その午後、ついにお手伝いさんが来た。

 名前は、橋本さん、という。

 40代くらいの落ち着いた感じの女性で、非常に丁寧に挨拶してきた。

「よろしくお願いいたします」

 仕事が始まると、最初はお互いぎこちない感じだったけど、徐々に会話も弾んできた。

 橋本さんは、掃除はもちろん、キッチンの整理整頓までしてくれる。その姿勢に、佐藤くんはついつい感心していた。

「ほんと、助かります」

「いえいえ、佐藤様のためなら」

 そう言いながら、何度も何度も、丁寧に掃除をしてくれる橋本さん。

 でも、佐藤くんの中にふとした疑問が湧く。

「そういえば、橋本さん。なんで掃除のお仕事にしたんですか? 何か、別の仕事してたんじゃないですか?」

 橋本さんは一瞬手を止めた後、にこやかに答える。

「ええ、実は元々は……」

「何か、すごいことしてたんですか?」

 橋本さんは少し恥ずかしそうに続ける。

「ええ、その……忍者、だったんです」

 佐藤くんは目を丸くする。

「え、忍者……?」

 橋本さんはうなずいた。

「はい。足音を立てずに移動するのは得意ですし、隠れるのも得意です。どこでも掃除道具を持ち込んで、気づかれないようにするのが仕事でした」

「忍者……?」

「はい。もう辞めたんですけど」

 佐藤くんは一瞬、言葉を失う。

「それって、本当に……?」

「もちろん、今はお手伝い業ですけど、昔は……」

 そのとき、玄関のチャイムが鳴った。

「おっと、すみません。ちょっと失礼しますね」

橋本さんは素早く、ドアに向かう。

 佐藤くんは驚きながらも、橋本さんがどんな応対をするのか興味津々で見ていた。

 すると、橋本さんは玄関を開け、さっと一言。

「何かお探しですか?」

 そこで、玄関に立っていたのは佐藤くんの上司、田村さんだった。

「え、何してんの?」

「いや、ちょっと前に気になったから見に来ちゃった」

 田村さんはキョトンとした顔をして、橋本さんを見ている。

「なんで君がここに?」

「掃除の……お手伝いに来てるんです」

「掃除?」

 田村さんがびっくりして、佐藤くんを見た。

「お前、そんなに掃除しないタイプだろ?」

「いや、でも……」

 そのとき、橋本さんがにっこりと笑って言った。

「いや、実は、私、田村さんのお掃除もしてたんですよ」

「え……?」

 田村さんは驚きの表情を浮かべる。

「あなたが?」

「はい。実は……」

橋本さんは肩をすくめて言った。

「私、数年前に、田村さんのアパートを掃除したんです。こっそり」

 その瞬間、佐藤くんと田村さんは目を見開いた。

「え、あの時の?」

 田村さんは顔を赤らめ、目を合わせられない。

「ま、まさか! それ、どういうことですか?」

 橋本さんはニヤリと笑った。

「いやぁ、別に気にしないでください。田村さんはほんとうに掃除しないんですね」

 佐藤くんは唖然としながらも、思わず笑ってしまう。

「おお、なるほど! そういうわけだったんだ……」

 田村さんは顔を真っ赤にして、下を向く。

「なんで、そんなに掃除を……」

「私が忍者だったからですよ」

「忍者……?!」

 田村さんは、もう一度目を丸くする。

「じゃあ、あの時、俺がいなくなった隙に掃除してたのも?」

「はい。あの時も、見えないようにこっそりと」

 佐藤くんが笑いながら言った。

「それなら、これからもお願いするしかないね、橋本さん」

 橋本さんはにっこりと微笑んで言った。

「もちろん。どんなに隠れても、私はお掃除しますから」

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