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白い夜の小さな物語  作者: 夜月黎


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2/2

クリスマスのおくりもの

それは雪の降る朝でした。


ゆめちゃんのお家では、買ったばかりのクリスマスツリーを飾りました。

ゆめちゃんは嬉しくて嬉しくて、きらきら光るツリーをずっと見ていました。


お母さんにごはんを食べなさい、と言われたけど、ゆめちゃんはツリーの前から動きません。

去年までは無かったクリスマスツリー。

よほど嬉しかったのですね。


でも、お母さんは困ってしまいました。

そこでお母さんは、クリスマスツリーにぶら下がっている白いおひげのサンタクロースを指さして言いました。


「ゆめちゃん、ちゃんといい子にしてないと、サンタのおじいさん、来てくれなくなるよ」


「サンタさん?ゆめのとこにもくるの?」


にこっと笑ったお母さんは大きくうなずきます。


「いい子にしてたらね。ゆめちゃんの欲しいもの持ってきてくれるのよ」


ゆめちゃんは立ち上がって、もう一度、確認します。


「ほんと?」


お母さんももう一度うなずきます。


「じゃあ、ごはん、たべる!ゆめいい子にする!」


ゆめちゃんは跳ね上がって、お母さんに抱きつきました。


それからのゆめちゃんは、ごはんも残さず食べて、お母さんのお手伝いもして、いい子にしてます。


サンタさん、何くれるかなぁ?


最近のゆめちゃんはいつもそう言って楽しそうにしてます。

ゆめちゃんは、いつもプレゼントのことを考えています。


なにがいいかなぁ。


前に本屋さんで見つけた、開くと妖精さんが飛び出してくる綺麗な絵本。

お母さんが持ってるようなきらきらした指輪や首飾り。

ピンクの可愛いリボン。


でも、ゆめちゃんの欲しいものは実は決まってます。


大きな大きな、ゆめちゃんより大きなくまさんのぬいぐるみ。


前にお母さんにお願いしたけど、ダメって言われました。


でも、大丈夫。

サンタさんなら、きっと持ってきてくれます。

ゆめちゃんはわくわくしながら、クリスマスを待ちました。



そして、クリスマスの日がきました。

ゆめちゃんは、窓の側でずっとお外を見ていました。

サンタさんが来るのを待っているのです。


外はもう真っ白。

屋根も道路も雪でいっぱいで、ゆめちゃんは心配です。


サンタさん、本当にこれるかなぁ。


窓の側から離れないゆめちゃんを見て、お母さんはやっぱりちょっとあきれ顔でゆめちゃんを見ていました。



お昼を少し過ぎた頃、ゆめちゃんのお友達が遊びに来ました。

幼稚園で同じ組のりなちゃんです。

りなちゃんは、ゆめちゃんと同じ年なのに色んなことをたくさん知ってます。

そんなりなちゃんをゆめちゃんはいつも羨ましく思ってました。


お人形遊びにも飽きたころ、ゆめちゃんとりなちゃんのお話はやっぱりクリスマスのことになりました。


ゆめちゃんは、はしゃいで言います。


「わたしはね、おっきなくまさんのぬいぐるみ、サンタさんにもらうの!!」


それからりなちゃんに聞きます。


「りなちゃんは?」


りなちゃんはそんなゆめちゃんに驚いています。


「ゆめちゃんは、サンタクロースしんじてるんだ?サンタさんなんていないのよ」


「うそだよっ」


いつもは尊敬しているりなちゃんですが、今日だけは許せません。


「あのね、サンタさんはお父さんなんだよ」


「うそだっ、サンタさんはくるよ!?」


そう言ってゆめちゃんは、泣き出してしまいました。


りなちゃんはなにか悪いことをしてしまった気になって、帰ってしまいました。


りなちゃんが帰ったあとも、ゆめちゃんはずっと泣いていました。


目の前にあるクリスマスツリーは、昨日と同じく、赤に青に、きらきらと光っています。

でも……ゆめちゃんは昨日とはちがっています。

なんでも知ってるりなちゃんが言うことです。

まちがっているはずがないんです。


サンタさんなんて、いないんだ。

サンタさんなんて、来ないんだ。


ゆめちゃんは何度もそう言って泣きました。

せっかくのケーキも食べずに、お部屋に閉じこもってしまいます。


毛布にくるまったゆめちゃんは、真っ暗な窓の外を見ました。

外は雪が降りしきっています。


ゆめちゃんは、また、悲しくなってきます。


「おかあさんの、ウソつき」


ぼそりとそう言って、ゆめちゃんはまた涙を零しました。


そのときです。


窓の外で、何かがきらきらと輝きました。


そして、しゃらんしゃらん、と遠くの方から鈴の音が聞こえてきました。


不思議に思ってゆめちゃんは、窓のそばにいきます。  


しゃららん、しゃららん――


鈴の音がだんだんと近づいてきます。


ゆめちゃんは、じっと雪の向こうの光を見つめます。


鈴の音と一緒に、光もどんどん近づいてきます。


しゃららん、しゃららん、しゃららん――


いくつもの鈴がいっせいに鳴って、すごく綺麗な音です。


ゆめちゃんは、泣いていたのも忘れて窓の外を見ていました。

ゆめちゃんのまえですーっと窓が開きました。

そして雪の上にすべりおりてきたソリの上から、やさしい声がきこえます。


「そんなこと言ってはいかんよ」


そう言いながらゆめちゃんの部屋に入って来たのは、赤い服を着た白いおひげのおじいさんでした。


そう、サンタさんです。


ゆめちゃんは嬉しくなってサンタさんにとびつきました。

そして、すぐにさっき言ったことを謝ります。


「ごめんなさい」


サンタさんはやさしい目をしてうなずきながら、大きな温かい手でゆめちゃんの頭をなでてくれました。


「ゆめちゃんはいい子じゃのう。さぁ、プレゼントをあげよう」


サンタさんはソリの中の大きな白い袋に手を伸ばしました。

ゆめちゃんは窓からのりだしてそれを見つめます。


がさごそと少し探してから、サンタさんは手のひらにのるくらいの大きさの包みを取り出しました。


「これをあげよう」


そう言ってサンタさんはその小さな包みをゆめちゃんに渡しました。


けど、ゆめちゃんは不服そうです。

それでも、サンタさんが、


「あけてごらん」


と言うと、ゆめちゃんはその包みをていねいに開けました。


中から出てきたのはくまさんのぬいぐるみです。

ゆめちゃんがほしかったものです。

でも、ゆめちゃんがほしかったのはこんな小さなものではありません。

もっとずっと大きなくまさんです。

ゆめちゃんが泣きそうな顔でサンタさんを見上げるとサンタさんは言いました。


「わしからあげられるのはこれだけだが、このくまさんには夢とそれを信じる勇気とが入っておる。ほんとうだと思うものは、自分で決めていいんじゃよ」


サンタさんはやさしく笑います。


「これはゆめちゃんにきっかけを与えるものにすぎんが、大切にしてくれるとうれしいのう」


ゆめちゃんにはちょっと難しすぎてわかりませんでしたが、サンタさんが大切にしてほしいと言った、小さなぬいぐるみは大切にしようと思いました。


「ゆめちゃんはわしを信じてくれたからのう。嬉しいよ」


そう言ってサンタさんはトナカイの首の光る鈴をひとつ、外しました。

そしてゆめちゃんをベッドまでつれていくと、枕元でそれを静かに鳴らしました。

雪が降るときのように静かで、それでもうつくしい不思議なメロディがゆめちゃんの耳に届きます。


「いつまでも、夢を忘れないでおくれ」


サンタさんが最後に言いました。


ゆめちゃんはそのあとのことをもう覚えていませんでした。


次の日の朝。

目を覚ましたゆめちゃんは、ゆうべのことを思い出してとびおきました。


「サンタさんっっ?!」 


大声で呼びますが、誰も返事をしません。

ゆめちゃんは枕元にある大きな包みに気づきました。


「サンタさんがくれたのと、ちがう……」


ちょっと残念に思いながらもゆめちゃんがそのプレゼントに手を伸ばしたときです。


しゃらん。


ききおぼえのある音がゆめちゃんの手元で鳴りました。


「すず……?トナカイさんの鈴!!」


ゆめちゃんは両手で鈴をもちあげました。

昨日のように光ってはいませんでしたが、それは確かにサンタさんがくれた鈴でした。

そして、そのすぐそばには小さなくまのぬいぐるみも、ちゃんとありました。


「サンタさん、本当にきたんだ……」


ゆめちゃんは大喜びでお母さんのところにかけていきました。


外はやっぱり雪がしんしんと降っていて、街を真っ白に染めていました。

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