14のその先に
───第15階層、ボス部屋。
キョウ達が転移した先は煌びやかで広々とした玉座の間だった。
「ここが終点か」
ディザベルは、この玉座の間を、そしてそこで俺達を待っていたモンスターを見るなり、そう呟いた。
玉座の間で俺達を待っていたのは屍の軍勢だった。
剣、槍、弓、杖など様々な武器を持った数百を超えるスケルトンの軍勢。
肉が腐り身体のあちこちから骨が見えている巨大なドラゴンのゾンビが2体。
そしてこのアンデッドの軍勢を率いる屍の王、エルダーリッチが玉座に座っていた。
「キョウ、お前に言っておく事がある」
ディザベルは俺にそう言うなり白金で出来た超巨大なハサミを開いた状態で横向きに自分の正面に召喚した。
開かれた2つの刃の中には数百のスケルトンの軍勢が全てその中に収まっている。
ディザベルは召喚したハサミを身体を動かさずに操作して、開かれた刃を閉じた。
2つの刃に挟み込まれたスケルトン達は刃線に触れた瞬間、光となって消滅していった。
恐らくだが、あのハサミにも13階層で見せたように何かしらの魔法、例えば浄化などが付与されているのだろう。
スケルトンの軍勢を一瞬で葬ったディザベルはエルダーリッチ目掛けて無数の白金の剣を発射する。
エルダーリッチは、すぐさま玉座から立ち上がり紫色の魔法陣を展開し降り注ぐ白金の剣を防ごうとした。
まるで工事現場のような爆音が玉座の間に鳴り響く中、いつの間にか発射されていた2本の巨大な白金の剣がドラゴンゾンビの胸を貫き消滅させていた。
床が割れ、壁が崩壊し、玉座が砕け散る中、エルダーリッチは防御に徹するしかない。
……最早、どちらがラスボスなのか分からない。
俺がエルダーリッチに一種の同情を感じているとディザベルによる1分以上に及ぶ制圧射撃が唐突に終わりを告げた。
視界を遮っていた粉塵が次第に晴れてゆくと、エルダーリッチが五体満足で立っていた。
───と言っても展開していた紫色の魔法陣は所々が砕け破損し、身に纏っていた衣服や王冠は攻撃の余波で引きちぎれ紛失していた。
満身創痍という言葉がエルダーリッチの状態を表すのに、この上なく最適である。
だが満身創痍ではあっても戦意を喪失してはいない。
エルダーリッチは、自分をこんな目に合わせたあの女を殺そうと、怒りと憎しみが込められた視線を正面に向ける。
───だが半裸の男がいるだけで、あの女がいない。
一体何処に行った!?とエルダーリッチは女を探そうとした瞬間、目の前の男がこちらに向かって指を差す。
後ろだ───と。
ディザベルは攻撃を防ぎ切ったと思い込んでいたエルダーリッチの真後ろの床に刺さっていた白金の剣と自分の位置を入れ替えていた。
ディザベルはエルダーリッチが気付き、振り向くよりも疾くエルダーリッチの頭部を右足で思いっきり蹴り飛ばした。
エルダーリッチの頭部は凄まじいスピードで吹っ飛び、キョウの頬を掠めて壁に激突し、粉々に砕け散った。
同時に第15階層攻略完了を告げる宝箱と、これまでの階層とは違い、下の階への階段ではなく魔法陣が現れた。
多分、あの魔法陣でダンジョンの外に出る事が出来るのだろう。ディザベルの言う通り、ここが最後だった訳だ。
未だかつて誰も踏破した事のないダンジョンを完全攻略したというのに、ディザベルは一ミリも感情を動かすことなく、俺の足元に白金の剣を刺し、それと自分の位置を入れ替えて戻って来た。
「キョウ、お前は弱い」
そして戻って来るなり至近距離で罵倒して来た。
「そりゃあディザベルと比べたら弱いかもしれないけど」
「そういう意味じゃ無い。……確かに他の有象無象と比べればお前は強い。だがそれでは足りない。私が安心して任せられるような、共に肩を並べられるような強さが今のお前には無いって言ってるんだ」
「…………確かに、な……」
ディザベルが言う通り、俺がもっと強ければディザベルが捕まる事も、13階層で乗っ取られる事も、こんな状態にもなる事は無かったはずだ。
「今のままじゃお前は足手纏い、ディザベルのウィークポイントにだってなる時がある。だから───」
ディザベルは右人差し指で俺の胸に優しく触れた。
「だからもっと強くなりなさい。ディザベルが安心して背中を任せられるような、ディザベルを守れるくらい強く───」
そう言い残して大人のディザベルは元の子供の姿に戻ってしまった。




