俺は鑑定を覚えたい!
5階層のボス部屋前の広間に辿り着いたキョウ達一行。
これまでもそうだったが、どうやらボス部屋前の部屋はモンスターの出ない安全地帯になっているようで5階層にもなれば安全地帯で休憩している冒険者の姿もチラホラと見える。
キョウ達は他の冒険者達と同じようにボス部屋前の広間で昼食を含めた休憩を取っていた。
一応ディザベルの機嫌は、おやつに手作りプリンを出したらV字回復した。
「さて、お主が鑑定と言っていた『スペクタクルズ・アイ』を教えようかのぅ」
「いよっ!待ってました!!」
キョウは拍手をしてディザベルの魔法勉強会に参加する。
「前回教えたアイテムボックスもそうじゃが、このスペクタクルズ・アイも繊細な魔法でのぅ、最悪失明───」
「失明ッ!?」
「最悪の話じゃ。ワシが教える以上そんな事態に陥る事は無い。もし万が一、そんな事になってもワシが治す」
「それなら良かった……ん?アイテムボックスも繊細って言った?」
「うむ。あれは失敗したら時空の狭間に身体を持って行かれて五体満足とはいかぬじゃろうな」
「えぇぇぇ……何で後出しでそんな事言うの……怖すぎる……!」
「なんじゃあ?ワシの一番弟子ともあろうものが、もしや怖気づいたのか?」
「あぁ!?やるぞやるぞやるぞ!!さあ早く俺にスペクタクルズ・アイを教えろ!!」
「始めからそうしていればよい、そこに座れ」
「ウッス」
ディザベルに言われるがままキョウが床に座るとディザベルはキョウの背後に立ち、キョウの両目を両手で覆う。
「光の魔力を両の眼に。魔力の濃度は濃く、それでいて厚さは薄く均等に……」
キョウはディザベルの指示通りに魔力を操作し、ディザベルはキョウの魔力コントロールの微細な変化を身体で感じながら細かに指示を変え『スペクタクルズ・アイ』の完成への手助けをする。
「……うむ、こんなものじゃろ」
ディザベルはキョウの両目を覆っていた手を退ける。
「……どれ、これをその目で調べてみよ」
ディザベルは自身のアイテムボックスから透き通るようなターコイズブルーの指輪を取り出すと、キョウの正面に立ってそれを見せる。
「…………いざァ!」
キョウは両目をかっぴらいてディザベルの手のひらに置かれた指輪を凝視する。
「…………」
「どうじゃ、何か分かったか?」
「…………なっ、何も見えない……!?」
「なぬ!?」
ディザベルは慌てて自分の出した指輪をスペクタクルズ・アイで見るが問題なく調べる事が出来た。
……となると指輪の故障ではない、キョウのスペクタクルズ・アイが成功しなかったという事。
「何故じゃ、どうなっておる!?お主の魔力操作は完璧なはずじゃ!」
「そんな事言われても……んん!?」
キョウは顔を上げてディザベルを見ると信じられないものが視界に映った。
「なんじゃ、どうした!?」
「し、白……」
「白?」
───そう、キョウが誤って成功させたのは鑑定ではなく透視。
彼の目には服が透けて見え、純白の下着姿のディザベルが映っていた。
そして、その透視の魔法も徐々に効果が強くなっていき、ディザベルの下着も透け始めて来た。
「うわっ!?」
キョウは咄嗟にディザベルから視線を逸らす。
ディザベルはキョウのその様子を見てようやく彼が何の魔法を偶発的に成功させたのかが分かった。
「──────ッッッ!!!」
ディザベルは慌てて自分の胸と股を手で覆い隠す。
「この馬鹿ッ!早く解除しろ!!」
「ああっ、そうか!」
ディザベルに言われて気付いたキョウは、慌てて両目に流していた魔力を止めて透視の魔法を解除する。
「…………あの……ルルさん?」
キョウはゆっくりとディザベルの方を向き、顔色を伺う。
「もう休憩は終わりじゃ!さっさと次に進むぞ!」
ディザベルは立ち上がりボス部屋に向かって行ってしまった。
「えぇ……いつも自分から見せに来てるの───にィ!?」
音も無くキョウの足元に5本の白金の剣が飛んで来た。
キョウは漫画やアニメの様に足をバタバタと動かして必死に避け切った。
「ちょおっ!?ルルさん!待って!!」
キョウは1人でボス部屋に入るディザベルを慌てて追いかけ、ボス部屋に入った。
5階層のボスは王冠を被ったゴブリンの上位種、ゴブリンキングが1匹。
杖を持ったゴブリンシャーマンが2匹。
鉄装備のアーマードゴブリンが30匹。
その全てが機嫌最悪のディザベルに八つ当たりされ、一瞬でバラバラに引き裂かれた。
「お、お見事です……」
ディザベルはキョウの言葉に反応せず、出て来た宝箱も無視してツカツカと歩き次の階に降りて行った。
「ちょ、ちょっと!」
キョウは出て来た宝箱をそのままアイテムボックスに投げ入れ、ディザベルの後を追った。




