帰るまでがゴブリン討伐
巣穴から出るまでの間、ディザベルは歩きながら先程自分が晒してしまった醜態を悔いていた。
……ワシとしたことが、まさか……あの程度で取り乱してしまうとは……!
以前であれば気分を害する事はあっても、子供の頃の様に錯乱する事など無かったはずだ。
まさか身体や味覚だけではなく、心まで若返っているのか……?
どちらにせよ、あの場にキョウがいなくてよかった……あんな情けない姿、絶対に見せるわけにはいかぬからな。
しかし困った。
今回の様に、ふとした拍子に精神を乱していては、キョウと一緒にいる事が困難になってしまう。それだけは嫌だ。
精神安定の魔法でも常用するしか無いか?持っている魔道具に使えそうな物はあったか?
ディザベルは今後の身の振り方を考えていたら、いつの間にかゴブリンの巣穴を脱出していた。
そんなディザベルを待っていたのは、今回ゴブリンに連れ去られていた被害者の女子供16人と、それらを運びだしたディザベルのゴーレムだった。
…………そういえば、こやつらの事をすっかり忘れておったわ。
「あ~……それはワシのゴーレムじゃ、心配要らぬ」
ディザベルは不安がっている人達の前に出て自分が助けに来た事など、大体の事情を説明し、皆を落ち着かせる。
「……という訳で、これからお主らをゴーレムがおぶって町へ帰る。道中の護衛もゴーレムがやる、こやつらはそこらのAランク冒険者より強いから心配は要らぬ」
ゴーレム達が被害者達をおんぶし、それを囲むように20体のゴーレムを護衛隊に編成する。
ディザベルは護衛隊の真ん中辺りで魔法の絨毯に乗り寛ぎながら町に向かってゴーレム隊を発進させた。
「連れ去られた人達が帰って来たぞ~!!」
「町の英雄の帰還だぁぁぁ!!」
「なんじゃあああ!?」
時刻は夕暮れ時。
被害者達を連れて無事に町に戻ったディザベルは、町の危機を救った英雄として歓待され、揉みくちゃにされてしまった。
「まさかこんな嬢ちゃんが?」
「冒険者は見かけによらないとはよく言ったもんだねぇ」
「お姉ちゃんがアイツらを倒したの?本当~?」
「た、倒したとも!あっ、コラ!服を引っ張るでない!」
この誰からも歓迎され持て囃されるような状況、あやつであれば喜んだのだろうか?ワシにとっては面倒なだけじゃ、さっさと帰りたい……。
しかしすっかり日が暮れてしまった。夜間の移動は何かと面倒じゃからな、今日は此処で1泊するしかない、か……。
「今日はお疲れでしょう?歓迎の準備は出来ております、こちらへどうぞ」
「うむ」
この男、町の長かギルドの人間かは知らんが今回の事を色々と根掘り葉掘り聞くつもりじゃろう?本当に面倒な事この上ない。適当にいなして朝になったらすぐに此処を立つか。
「「ルルちゃん!」」
「んん!?」
不意に両手をプリアルとフィルメアの姉妹2人に引っ張られた。
「なんじゃ2人共?」
「私、ルルちゃんみたいに魔法が使えるようになりたい!」
「私も!私も強くなりたいです!!」
2人は羨望の眼差しでディザベルを見つめる。
「……うむ!では明日、朝から2人の家で魔法を教えよう!」
「「ホント!?」」
「うむ、本当じゃとも」
「やったね、お姉ちゃん!」
「うん!」
プリアルとフィルメアはディザベルの言葉を聞いて飛び跳ねて喜ぶ。
「ふふ、2人共、今日は帰ってよく休むように!」
「「はーい!」」
プリアルとフィルメアは元気よく両親の下へ帰って行く。
ワシも今日は疲れた、早く休みたいものだ。
「つかぬ事をお聞きしますが貴女様は冒険者ですよね?失礼ですが冒険者ランクは?」
男がディザベルに探りを入れて来る。
はぁ……歓迎とは言うが……ただより安いものは無いな……。




